遊戯王5D's-The After   作:辛麺焼き

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第15話:侵略者

「さて、それよりも知りたいことがあるのでは?」

 

問いかけるカプリコンは、遊星の答えを待たず、ゆっくりと歩き回りながら話し始めた。

 

「我々の目的は……お察しの通りですが、アーククレイドルを再び呼び出すことです」

「やはり……!」

 

遊星の目には明確な怒りの色。

それも当然、あの無限霊廟が何なのか、そこに座していた男がどれほどの想いをそれに懸けていたのか、遊星は痛いほどに理解している。

だからこそ、「彼」の齎そうとした悲劇を許すことはできない。

 

「彼」は自分の未来を切り開こうとしていた。ただ、決定的に時間が足りなかった。だから、やり方を間違えた。

ゆえにこそ「彼」の夢を、その願いを受け継いだ者として、その間違えたやり方を繰り返させるわけにはいかない。

 

「となれば当然、その先の目的は一つ。この街に落下させ、全てを消し去ります。我々にとってはそれこそがもっとも重要なのです」

「そうはさせない! この街の未来は、オレ達が守る!」

 

意気込む遊星を、カプリコンは「まあお待ちを」と制する。

 

「身の上話を、一つしましょう」

 

 

 

 

 

涼が転送された先は、旧サテライトを望むシティの海岸線沿い、そこに点在する半島状の港の一つだった。

こうして外から見てみると、旧モーメントの遥か直上に、わずかだが空の歪みのようなものが見て取れる。

分厚い黒雲の垂れこめる中、その一点だけが。

 

「あそこだけ雲の流れがおかしい……遊星の予測通り、連中の狙いはアーククレイドルってわけか」

 

とすれば当然、その狙いはこの街を消し去ること。

だが、イリアステルと異なり、そうする理由は今のところわかっていない。

もっとも、涼にとってはどうでもいいことだ。止めるか、倒されるか、そのどちらかだ。

 

「さって、俺の相手はどこのどいつだ?」

「俺だ」

 

横合いからかけられたのは聞き覚えのある声。

振り返れば、そこにいたのは、サングラスをかけた痩せぎすの男。

 

「お前は……キャンサーとか言ったか」

「いかにも。先日はよくもまあ、俺たちの修練場を土足で荒らしてくれたものだ」

「修練場ってのはそういうものじゃねえのか?」

「減らず口を。……まあいい、やることは変わらん」

 

やり取りも広がらぬうちに、キャンサーが左腕を突き付け、そこに装着されたカニのハサミ型のデュエルディスクが展開する。応じて、涼も自身のディスクを起動した。

 

「行くぞ」

「何だ、寂しいな。もう少し話でもしねえか?」

「情報を与えるつもりはない」

「ああそうかい。じゃあ、ぶっ飛ばしてから聞かせてもらう!」

 

 

「「デュエル!」」

 

 

 

涼:LP4000

キャンサー:LP4000

 

遠雷轟く中、先攻は涼がとった。

 

「先攻ドロー! 俺はモンスターをセットし、ターンエンド!」

 

涼:手札6→5

 

「俺のターン、ドロー」

 

キャンサー:手札5→6

 

今目の前にいる痩身の男は、鬼柳が戦った自称キャンサー、決闘神官を騙る下っ端とは違う本物だ。

当然、その力も大きく上回っているはず。

いやおうなしに、涼の警戒心は高まる。

 

(どう出てくる……)

「永続魔法《ワーム・コール》を発動。相手フィールドにのみモンスターが存在する場合、手札からワームを伏せることができる。俺は《ワーム・カルタロス》を伏せる」

 

キャンサー:手札6→4

 

「さらにモンスターをもう一枚セットし、カードを3枚伏せる」

 

キャンサー:手札4→0

 

「ターンエンドだ」

「いきなり手札ゼロだと? 俺のターン!」

 

涼:手札5→6

 

いきなり手札を使い切るという不可解なプレイングに、涼は警戒心を高める。

間違いなくあの伏せカードに何かがあるのだろう。

 

(ワームか……どんなカードがいたのかよく覚えてねえが、ステータスはそんなに高くなかったはずだ。ここは、数を減らしに行くか!)

「俺は、セットされている《ジェネクス・ガイア》を反転召喚! さらに、《ジェネクス・ウンディーネ》を召喚して効果を発動! デッキから水属性モンスターの《黄泉ガエル》を墓地に送り、《ジェネクス・コントローラー》を手札に加える」

 

涼:手札6→5→6

 

「バトルだ! そっちの伏せモンスターは《ワーム・カルタロス》だったよな? 《ジェネクス・ガイア》でそいつに攻撃だ!」

「守備力は400、破壊される」

 

ツルハシの一撃が、潜んでいた《ワーム・カルタロス》を掘り出して投げ飛ばす。

 

「だが、リバースした時に効果を発動。デッキからレベル4以下のワームを手札に加える。これにより俺は《ワーム・ゼクス》を手札に加える」

 

キャンサー:手札0→1

 

「なら、《ジェネクス・ウンディーネ》でもう一体のセットモンスターに攻撃だ!」

「このモンスターも《ワーム・カルタロス》だ。リバース効果により《ワーム・アグリィ》を手札に」

 

キャンサー:手札1→2

 

「手札を補充されたか、だがモンスターは排除したぜ!」

「甘い。俺は、トラップカード《セットアッパー》を発動。俺のモンスターが戦闘で破壊された時、そのモンスター以下の攻撃力を持つモンスターをデッキから伏せる。カルタロスの攻撃力は1200、よって俺は攻撃力100の《ワーム・リンクス》を伏せる」

「後続呼ばれたか!」

「さらに、これをトリガーとしてもう一枚のトラップカード《ワーム・フォール》を発動。このカードは俺の場にモンスターがセットされた時に発動し、デッキからワームと名のつくモンスターをセットできる。よって3枚目の《ワーム・カルタロス》を伏せる」

 

結果的に、モンスターを減らすどころかキャンサーの手札を増やすだけの結果になってしまった。

しかもサーチャーがまた場に出ている。

 

「またカルタロスか。俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!」

 

涼:手札6→3

 

「待て。そのエンドフェイズ、俺は罠カード《W星雲隕石》を発動する。このカードは、場の裏守備モンスターを全てリバースさせる」

「なに!?」

「これにより《ワーム・リンクス》と《ワーム・カルタロス》の効果を発動。まずカルタロスの効果により、《ワーム・テンタクルス》を手札に」

 

キャンサー:手札2→3

 

「リバースした《ワーム・リンクス》の効果により、互いのエンドフェイズに1枚ドローする」

 

キャンサー:手札3→4

 

「そして《W星雲隕石》を発動したターンのエンドフェイズ、俺の場の光属性の爬虫類族を全て裏側守備表示に変更する」

 

姿を現した2体のワームが、再び陰に潜み気配を消す。

 

「俺はその数だけドローする」

 

キャンサー:手札4→6

 

「0枚だった手札が、一気に6枚だと!?」

「最後に、デッキからレベル7以上の光属性の爬虫類族を特殊召喚できる。ここは全力でよかろう、《ワーム・クィーン》を特殊召喚」

 

代わりに、昆虫のような6つ足のワームを下半身とした、白い人型のワームが姿を見せる。

 

「攻撃力2700がいきなり出てきやがった……」

「そして俺のターンだ。ドロー」

 

キャンサー:手札6→7

 

「《ワーム・クィーン》の効果発動。1ターンに1度、俺の場のワームをリリースすることで、そのレベル以下のワームをデッキから特殊召喚する。俺はレベル8のクィーン自身をリリースし、ワームの王である《ワーム・キング》を特殊召喚する」

 

《ワーム・クィーン》の姿が光と化し、その中から四本の強靭な足を持った獣型のワームと、四本の腕を持つ鬼のような姿の人型が合体したケンタウロス体形のモンスターが現れる。

先ほどまでのワームよりも一回り大きく、上位の存在であることが一目でわかる。

 

「攻撃力は……上がってねえな」

「だが強力な効果がある。その前に、俺は《ワーム・カルタロス》を反転召喚し、効果により《ワーム・ディミクレス》を手札に加える」

「そこだ! トラップ発動、《逆転の明札》を使うぜ! 手札の枚数が同じになるようにドローする!」

 

キャンサー:手札7→8

涼:手札3→8

 

「一度使うと手放せねえな、こいつは」

「だろうな。俺はさらに《ワーム・リンクス》も反転召喚する。そして《ワーム・キング》の効果を発動。このカードは俺の場のワームをリリースすることで、貴様のカードを1枚破壊する。回数制限はない」

「何だと!?」

「これにより、カルタロスとリンクスを投擲し、貴様の伏せカードを2枚とも破壊する」

 

《ワーム・キング》が脇に控える2体のワームをむんずと掴み、涼のフィールド目掛けて全力で投擲する。……投げられた2体が涙目だったのは気のせいだろうか。

 

「ぐっ、《ガード・ブロック》と《体力増強剤スーパーZ》が……」

「バトルフェイズ。《ワーム・キング》で《ジェネクス・ガイア》を攻撃する」

 

下半身になっている獣型ワームと、キング自身の四つの腕から光線が迸り、地のジェネクスを容赦なく吹き飛ばし、ノックダウンした。

 

涼:LP4000→2300

 

「ぐぁあっ!? ぐ、やっぱダメージが実体化してるか……!」

「……その程度のリアクションでは済まんはずなのだがな。俺はモンスターをセットし、カードを2枚セット。ターンエンドだ」

 

キャンサー:手札8→5

 

「ちっ、俺のターン!」

 

涼:手札8→9

 

「しかし、ためらいなく《ジェネクス・ガイア》を殴って来たな」

「《ジオ・ジェネクス》を呼ばれては《ワーム・キング》と言えども持ちこたえられん。確かにジェネクスのシンクロモンスターはお世辞にも強くはないが、奴は容易に2800打点を出して来る。それに貴様のことだ、無策でただシンクロ召喚するとは思えん」

「ずいぶんとまあ、高く買ってくれたもんだ」

「アクエリアスを倒した男ともなれば、警戒しない方がどうかしているだろう」

 

どうやらキャンサーは、涼の力量を強く警戒しているようだった。

油断や慢心に付け込んでチャンスをつかむのは無理のようだ。

 

「だが、ワームデッキだと分かればこっちにもやり方がある! 俺はチューナーモンスター、《ジェネクス・コントローラー》を召喚!」

 

頭の左右からアンテナを伸ばした二頭身のロボット、涼のデッキの顔たるチューナーが今回も姿を見せる。

 

「さらに、手札のチューナーモンスター《A・ジェネクス・ケミストリ》の効果発動! このカードを捨てることで、場のジェネクス1体の属性を変更する! 俺は《ジェネクス・ウンディーネ》を闇属性に変更!」

「属性を変えただと?」

「闇属性となったレベル3の《ジェネクス・ウンディーネ》に、レベル3の《ジェネクス・コントローラー》をチューニング!」

 

「シンクロ召喚! 起動せよ、《A・ジェネクス・トライアーム》!」

 

チューニングの光が空を貫き、空中から降りてきたのは左腕に三連装のビームガンを備えた黒い戦闘ロボット。

正義の名を冠する者の力を取り入れた、新たなるジェネクスの一角だ。

 

涼:手札9→7

 

「トライアームの効果発動! こいつはシンクロ素材になったチューナー以外のモンスターの属性が、風・水・闇のいずれかの場合、手札を捨てることで効果を発動できる。今は闇属性の効果だ」

「!」

「これにより、光属性モンスターである《ワーム・キング》を破壊する! ライト・ディストラクション!」

 

ビームガンとは逆、振り向けた右手からエネルギー弾が射出され、ワームの王を飲み込んで消し去った。

 

「さらに、カードをドローする」

「こうもあっさり《ワーム・キング》が……アーリー・ジェネクス、やはり光属性には強いか」

「このままバトルだ! トライアームで守備モンスターに攻撃! プラズマ・シューター!」

 

さらに今度は、左腕のビーム砲を連射して守備モンスターを粉砕する。

しかしそこから、触手が突如伸びてトライアームにカウンターの打撃を喰らわせていた。

 

「このカードは《ワーム・ヤガン》。リバースした時、効果により相手モンスターを手札に戻す」

「なに!?」

「さらにトラップカード《セットアッパー》、3枚目だ。《ワーム・ルクイエ》を伏せる」

 

壁モンスターを絶やさず、涼の攻撃をひたすら防ぎ続けるキャンサー。

防御に特化した戦術というのはいくつかあるが、どれも対処するのは手間がかかる。

その中でも、こうして次々と後続を呼ぶことで攻撃を防ぐタイプは本当に厄介だ。

 

「通らねえな……俺はカードを2枚伏せ、ターンエンド!」

 

涼:手札7→5

 

「俺のターン」

 

キャンサー:手札5→6

 

「《ワーム・ルクイエ》を反転召喚。さらに《ワーム・テンタクルス》を召喚し、効果を発動。墓地の《ワーム・カルタロス》を除外することで、テンタクルスは2回攻撃できる」

「!」

「バトルだ。まずはルクイエでダイレクトアタック」

「通さねえよ! トラップカード《バトル・スタン・ソニック》発動! 攻撃を無効にし、デッキからチューナーモンスター《スペア・ジェネクス》を守備表示で特殊召喚!」

 

四足獣を思わせる紫のワームの突撃を、突如響いた轟音が押しとどめる。

同時に現れた旧型ジェネクスには、イカのような姿のワームが襲い掛かるが、

 

「ならばテンタクルスで攻撃する」

「トラップ発動だ! 《敵襲警報-イエローアラート-》により、手札から《ジェネクス・ブラスト》を特殊召喚! さらにブラストの効果で《A・ジェネクス・チェンジャー》を手札に加える」

 

涼:手札5→4→5

 

「む……ブラストしか攻撃できん上に、殴れば相打ちか。《ワーム・テンタクルス》、攻撃は中止だ」

「さあ、どうするキャンサーさんよ?」

「調子に乗るな」

 

返しつつ、キャンサーは状況を確認する。

 

「ではそのサーチしたカード、排除してくれよう。魔法カード《手札抹殺》を発動」

「げっ!?」

 

キャンサー:手札6→5→4

涼:手札5→5

 

「《A・ジェネクス・チェンジャー》はレベル3の闇属性。トライアームをもう一度シンクロ召喚するつもりだったのだろうが、そうはさせんよ」

「お察しの通りで……面倒な手ばっかり使ってきやがって」

「嫌がらせしかできん今の己を嘆く身としては、素直には喜べんな。とはいえ負けてやるつもりはない。俺はカードをさらに2枚セットし、ターンを終わる」

 

キャンサー:手札4→2

 

「伏せカード3枚に攻撃力2200と1700ね。エンドフェイズ、イエローアラートで出てきた《ジェネクス・ブラスト》は手札に戻る。俺のターン、ドロー!」

 

涼:手札5→6→7

 

涼とて何も、危機感がないわけではない。

アーククレイドルを再召喚し、ネオドミノシティを滅ぼそうというエクリプスの企みを阻止するには、ここで勝利するしかない。

絶対に負けられないデュエルだ。わかっている。

それでも、

 

(でも楽しいなぁ、おい)

 

デュエリストとして、戦い甲斐のある相手とぶつかれるのは喜びだ。

その高揚に嘘をつくことはできない。

 

(……それで行くと、向こうさんはデュエルを手段として割り切ってるタイプか。イリアステル三皇帝を思い出すな)

「俺は《ジェネクス・ブラスト》を手札から召喚!」

「《ウィンドファーム・ジェネクス》を召喚させることはできん。俺は罠カード《奈落の落とし穴》を発動する」

「嘘だろオイ!?」

 

着地するはずだった地面にいきなり落とし穴が開き、《ジェネクス・ブラスト》は手足をばたつかせながら「あれー」とも聞こえなくもない機械音を残して落ちて行ってしまった。

出オチもいいところである。

 

「なるほど、こりゃ確かに嫌がらせだな……!」

「相手の思い通りにさせんのはデュエルの基本だ。手詰まりか?」

「まだまだ! ここはジャックの力を借りるとするぜ、手札の《レアル・ジェネクス・コーディネイター》を捨てて《パワー・ジャイアント》を特殊召喚!」

 

涼:手札7→4

 

「このモンスターは、手札からレベル4以下のモンスターを捨てることで特殊召喚できる。そしてこの方法で特殊召喚した場合、捨てたモンスターのレベル分自身のレベルが下がる!」

「なるほど、面白い芸だ。ではもう一度見せてもらおう、トラップカード《強制脱出装置》を発動」

「待てぇ!?」

 

手札に逆戻りする《パワー・ジャイアント》。どうあっても涼にシンクロ召喚させるつもりはないようだ。

 

「どうした、特殊召喚せんのか」

「できたらやってるっつーの!? カードを3枚伏せてターンエンド!」

 

涼:手札5→2

 

「俺のターン」

 

キャンサー:手札2→3

 

「《ワーム・ルクイエ》は、リバースしたターンにしか攻撃が出来ない。よって俺は、《ワーム・ルクイエ》をリリースして《ワーム・プリンス》をアドバンス召喚する。このままバトルフェイズに移行」

「トラップカード《パルス・ボム》を発動! 俺の場に機械族モンスターがいる時、相手の場のモンスターと、このターン相手が召喚するモンスターは全て守備表示になる!」

「そう来たか」

 

攻撃態勢に入る2体のワームに対し、《スペア・ジェネクス》が妨害電波を発信する。

周囲の空気に通電する中で爆発が起き、ワームたちは警戒態勢に入り足を止めてしまった。

 

「……このターンは何もできんか。ターンエンドを宣言する」

 

キャンサー:手札3→2

 

「俺のターン! ドローだ!」

 

涼:手札2→3

 

「俺は《A・ジェネクス・ソリッド》を召喚! そして、永続罠《DNA移植手術》を発動! 水属性を宣言する」

「属性を変えたか」

「そして俺は、ソリッドの効果発動! 水属性のジェネクス、ここはソリッド自身を墓地に送ることで、カードを2枚ドローする!」

 

涼:手札3→2→4

 

「さらに、永続罠《リビングデッドの呼び声》を発動! ソリッドを蘇生し、もう一度墓地に送って効果発動! さらに2枚ドロー!」

 

涼:手札4→6

 

「! 今日の運命力は波があり過ぎだ……! 魔法カード、《マジック・プランター》を2枚発動! 《リビングデッドの呼び声》と《DNA移植手術》を墓地に送り、さらに2枚ずつのドローだ!」

 

涼:手札6→8

 

「通常召喚を終えたこのターンで、後は何ができる?」

「さっき俺が何を呼んだのか忘れたか? 手札の《リサイクル・ジェネクス》を捨てることで、《パワー・ジャイアント》をレベル5として特殊召喚!」

 

涼:手札8→6

 

「さらに装備魔法《幻惑の巻物》を装備し、《パワー・ジャイアント》を風属性にする。俺は風属性となったレベル5の《パワー・ジャイアント》に、レベル3の《スペア・ジェネクス》をチューニング!」

 

「シンクロ召喚! 風を纏い空を駆けろ、《レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト》!!」

 

吹き込んだ風に乗って、鳥を象った凧のようなジェネクスが暗い曇天を舞う。

ある程度高度が確保できたところでブースターを吹かし、旋回しながら涼の下に降りてきた。

 

涼:手札6→5

 

「さらにまだまだ! 《埋葬呪文の宝札》を発動だ! 墓地の魔法を3枚除外し、カードを2枚ドローする!」

「このターンだけで8枚もドローするとは……」

「! ようやく引いたぜ、《死者蘇生》を発動! 墓地から《レアル・ジェネクス・マグナ》を復活させ、さらに《思い出のブランコ》! 戻ってこい《ジェネクス・コントローラー》!」

 

2度の蘇生カードという強引な方法で、涼は再びシンクロ素材となるモンスターを揃える。

キャンサーの戦術はモンスターを絶やさず殴り続け、罠で妨害するという、かなり基本に忠実なものだが、それは言い換えれば代わり映えがせず引き出しが少ない代わり、つけ入る隙も少ないということだ。

 

これがパワーやスピードの違いでねじ伏せられるような―――それこそ、涼が知らない未来の―――デッキであればその長所を無意味にできたのだろうが、ないものねだりをしても仕方がない。

 

「レベル4の《レアル・ジェネクス・マグナ》に、レベル3の《ジェネクス・コントローラー》をチューニング! 全ての脅威を払うため、正義の名において起動せよ!」

 

「シンクロ召喚! レベル7、《A・ジェネクス・トライフォース》!!」

 

トライアームと対をなす、白い戦闘兵器がガシャッと音を立てて降り立つ。

右腕に三連装のビームキャノン、赤いバイザーが光を放った。

 

涼:手札4

 

「バトルだ! トライフォースで《ワーム・プリンス》を攻撃! プラズマバスター!!」

 

砲身の中心に発生したエネルギーが砲弾となり、射出されたそれがワームの王子を一瞬で爆砕した。

 

「炎属性を素材としたトライフォースの効果発動! バトルでモンスターを墓地に送った時、そいつの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

「ぬうっ!?」

 

キャンサー:LP4000→1800

 

「さらにヴィンディカイトで《ワーム・テンタクルス》を粉砕!」

「全滅か……」

「モンスターを破壊したことで効果発動、デッキからジェネクスを手札に加える」

 

涼:手札4→5

 

「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

 

涼:手札4

 

「俺のターン」

 

キャンサー:手札2→3

 

ドローしたカードを見たキャンサーが、不意に嘆息した。

 

「……切り札を引きずり出すまで粘るつもりだったが、その余裕はないか」

「なんだと?」

「俺は永続魔法カード、《脅威の到来》を発動!」

 

キャンサー:手札3→2

 

「このカードの発動時、墓地のワームと名のつくモンスターを任意の数だけ選び、デッキに戻すことができる。そして、戻した数3枚につき1枚ドローする。俺は墓地にいるカルタロス、プリンス、テンタクルス、ルクイエ、リンクス、キング、クィーン、ゼクス、ヤガン、アグリィ、合計10枚を戻す」

 

キャンサー:手札2→5

 

「さらに《脅威の到来》のもう一つの効果。手札を1枚捨て、このカードを墓地に送ることで、俺のデッキから必要な数だけモンスターを墓地に送り、爬虫類族の融合モンスターを融合召喚する!」

「何ィ!? デッキ融合!?」

「ただし同名カードは1枚しか墓地に送れない。さらにこの効果を発動するターン、俺は通常召喚が出来ず、1回しか攻撃が出来ない。俺は、デッキのワームモンスター、20体を墓地へ!」

 

キャンサーの周りに色とりどりの怪物たちが現れ、それら全てが空中の一点を目掛けて跳躍、渦へと吸い込まれていく。

その奥から響く、鼓動。

 

 

「融合召喚! 現れよ、始まりにして終わりなる者、《ワーム・ゼロ》!」

 

 

渦が弾け、そこに浮かんでいたのは、巨大な球体型のワームモンスター。

近くにあるネオダイダロスブリッジが小さく見えるほどのとんでもない巨影が、じっと場を見下ろしているように思えた。

 

「《ワーム・ゼロ》の効果。このカードの攻撃力は、融合素材となったモンスター1種類につき500となる」

「は!? おい、融合素材は何種類だ」

「20種類だ。よって攻撃力は10000ポイント!」

 

開いた口が塞がらなかった。

涼が知る限り、これほどの攻撃力は遊星とZ-ONEの最終決戦における《究極時械神セフィロン》の20000ポイントのみ。

しかもあの時と違い、単独のモンスターの攻撃力である。

 

「そして《ワーム・ゼロ》は、融合素材の種類の数によって使える効果が増える。2種類以上の効果により、俺は墓地から《ワーム・ヴィクトリー》をセット!」

「後続呼べるのかそいつ!」

「ワームすべての母体だからな。4種類以上の効果により、貴様のカード1枚、《レアル・ジェネクス・ヴィンディカイト》を墓地へ送る! そいつは攻撃対象にならんからな」

「チッ!」

「6種類以上の場合ドローが出来るが……デッキの残り枚数が危険域だ、この効果は使用しない。バトル!」

 

その宣言と共に、《ワーム・ゼロ》の表面が波打ち、内包されているドクロのような顔がわずかに浮き上がる。

 

「《ワーム・ゼロ》で《A・ジェネクス・トライフォース》を攻撃! インヴェイジョン・コメット!!」

 

天から巨大な隕石が、モンスター諸共涼を消し去らんと降り注ぐ。

その脅威を前に、しかし涼は備えていた。

 

「トラップカードオープン! 《アイアン・リゾルブ》! ライフを半分払うことで、バトルを終了させる!」

 

涼:LP2300→1150

 

「防いだか。だが、俺は手加減はしない。魔法カード《光の宣告》を発動! 手札の光属性モンスターを任意の数だけ相手に見せることで、次の俺のターンの開始時、その数だけ墓地のモンスターを特殊召喚できる」

「!」

「ただし次のターン、俺は通常召喚が出来ない。俺は《ワーム・オペラ》、《ワーム・ウォーロード》、《ワーム・ソリッド》を見せる。これにより次のターン、ワームたちが3体復活することになる。これでターンエンドだ」

 

キャンサー:手札3

 

「俺のターン!」

 

涼:手札4→5

 

(やべえな、こりゃ……さすがに防御手段も底が見えてる、次のターンを回したら負けだ)

 

だが攻撃しようにも《ワーム・ゼロ》が立ちはだかっている。

攻撃力10000を正面から突破するのは、正直なところ不可能に近い。

 

(属性変更カードも今はねえ……こうなると、あいつを呼ぶしかねえが。……レベルが合わねえ。どうする?)

 

この状況だからこそ真価を発揮する切り札が、涼のデッキにはある。

サテライトで拾ったカードの1枚だが、攻撃力の高いあのカードがなぜ捨てられていたのかは未だに謎だ。

それを呼ぶためのモンスターはいるが、場にいるトライフォースのレベルが高すぎる。

 

(トライアームだったら行けたんだが……あ、いや、待てよ)

 

もう一度手札とにらめっこを繰り返し、涼は突破口の存在に気付いた。

 

(伏せカードはなし、手札もすべて割れてる。墓地は……さっき捨てたのは《ワームドレイク》か。ならば、行ける!)

「俺はチューナーモンスター、《レアル・ジェネクス・コーディネイター》を召喚! だが効果は使わない。そして魔法カード《ワン・フォー・ワン》を発動!」

「!」

「手札の《A・ジェネクス・ベルフレイム》を墓地に送り、デッキからレベル1の《ジェネクス・パワー・プランナー》を特殊召喚する!」

 

涼:手札8→5

 

「行くぜキャンサー! 俺は、レベル7の《A・ジェネクス・トライフォース》と、レベル1の《ジェネクス・パワー・プランナー》に、レベル2の《レアル・ジェネクス・コーディネイター》をチューニング!」

 

「集いし叡智が、最後の希望を呼び覚ます! 我ら、絶対正義の名のもとに!」

 

 

「シンクロ召喚! 起動せよ、最終兵器《A・O・J ディサイシブ・アームズ》!!」

 

 

3体のモンスターによるチューニングの光が地面に落ち、出現したのは巨大な主砲を頭部に、自在可動式の副砲を両腕に見せる、巨大な浮遊砲台。

《ワーム・ゼロ》と比べて3分の2ほどしかないが、これこそがワームを滅ぼす最後の力だ。

その姿を見たキャンサーが、初めて大きく狼狽した。

 

「何だと!? そいつは……」

「ジェネクスデッキだと思って油断してたな? こいつこそが俺のデッキの最強モンスターだ! 俺はディサイシブ・アームズの効果発動! こいつは光属性モンスターが相手の場にいる時、3つの効果から1つを選んで発動できる」

 

三つの砲塔にエネルギーが供給され、光が砲口に生まれ、膨らみ始める。

 

「俺は手札を全て墓地に送り、お前の手札を全て確認! その中に光属性モンスターがあれば、全て墓地に送り、その攻撃力の合計分のダメージを与える!」

「なっ!? 俺の手札には……」

「光属性しかいないよなぁ!? さっき見せてくれたからなぁ!!」

 

キャンサーの手札3枚が全て墓地に送られ、そこから飛び出したエネルギーがディサイシブ・アームズの基部へ吸い込まれ、最後のトリガーを引く。

 

「墓地に送ったモンスターの攻撃力は、500+2350+1000! 合計3850のダメージをくらって、くたばりやがれ―――っ!!」

 

 

―――プロトン・ブラスター・キャノン!!

 

 

「ぬおああああああっ!!?」

 

キャンサー:LP1800→0

 

 

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