カプリコンの言葉の意味を、遊星は正しく理解していた。
エクリプスが目覚めたのは全てが滅び去った時代。それはまさに、
「……イリアステルが覆そうとした、この世界の本来の未来……破滅の未来か!?」
「そのとおりです。……それによってようやく、我々の大願が果たされるはずでした。しかし、その希望もつかの間のこと」
そこでようやく、カプリコンが遊星に向き直った。
眼の奥に燃える怒りの炎をしいて押し隠し、つとめて冷静に語る。
「全ての人類が滅びてもなお、最後の一人が諦めなかった。過去へ遡り歴史を変えようと試みた。そして……」
「それは……!」
ここまで来ればわかる。
イリアステルを率いる「神」、無限界帝Z-ONE。
3人の同志と共に破滅の未来を変えるために戦い続け、破局の原因であるモーメントをこの町ごと消し去ることでそれを成し遂げようとした、もう一人の遊星自身。
「……不動遊星、貴方がその警告を受け取り、人々の心を変えた。破滅の未来を回避した。それこそ、我々にとって第二の破局だったのです」
「どういうことだ……お前たちは世界が滅びてもいいとでも言うのか!?」
心底からのその問いかけを、
「勿論。それが我々の望みですから」
カプリコンは、いともあっさりと肯定した。
「ふざけるな! お前たちが何を企んでいるかは知らないが、そのために世界を滅ぼすなど認めるわけにはいかない!」
「認めてほしいわけではありません。……人類が滅びねば、我々の大願は決して果たされません。しかし、この世界全ての人類を我々だけで根絶するなど、どれほどの力があろうと、しょせん無理な話。だからこそ、モーメントの暴走によるあの絶滅は、まさに我々にとっては福音でした。……それを」
ぎろり、と音がしたような錯覚と共に、目だけでカプリコンが遊星を睨む。
「貴方方が余計なことをしたばかりに、我々の大願は挫かれました。認めるわけには行かない? こちらの台詞ですよ、不動遊星。大人しくチーム・ニューワールドに敗北していれば、我々はこのような手間をかけずに済んだものを」
腸が煮えくり返るという形容の意味を、今こそ遊星は実感していた。
Z-ONEが、アポリアが、パラドックスが、そしてアンチノミーが……彼らがどれほどのものを背負って戦っていたのか。
全てを失っても人類の未来を切り開こうとしたその意志を、先導者となった今、遊星は真に理解している。
ゆえにこそ、エゴでその全てを覆そうというエクリプスを、絶対に認めることはできなかった。
でなければ、自分たちの、イリアステルの、積み上げてきた意志の繋がりは無意味になってしまう。
何よりエクリプスのやっていることは、同じ手段であってもイリアステルとは決定的に違う。
イリアステルはこの町諸共モーメントを消滅させることで、未来世界で起きた機皇帝の暴走、そしてモーメントの逆転による絶滅を、原因ごと取り除いて未来を変えようと考えた。
決定的に方法を間違えたが、そこには確かに未来を憂う意志があった。
(だが、こいつらは違う!)
何の目的があるにせよ、その志全てを無に帰そうとしている。
「オレと戦え、カプリコン!! その野望は絶対に阻止して見せる!」
「お前たちを滅ぼしてやる、とまでは言えないのが貴方の甘さです。どうやってもこの世界を守るつもりですか」
「当たり前だ! お前たちの勝手のために、世界を滅ぼされてたまるものか!」
そこで、カプリコンはすう、と目を冷たく細めて言った。
「……我々のために世界を滅ぼすわけにはいかない、ですか。では質問ですが」
「それならば、世界存続のためにたった一人が犠牲になるのは許容できると?」
「ここは……!?」
ブルーノが転送されたのは、今までいた場所とは打って変わった廃墟の中だった。
直接見たことはないが、彼はこの光景を知っていた。
(これは……パラドックスの実験に付き合っていた時に、記録データで見たことがある。確か、ダークシグナー事件の時の……分断されていた時期のサテライト最深部だ)
「だが、なぜ僕がここに……まさか、また時間を超えて過去に来てしまったのか!?」
「そうではない」
背後に違和感。かけられた声に振り返る。
そこにいたのは、メガネをかけたどこにでもいそうな青年だった。ただ一つ、左のレンズにアルファベットを重ねたようなマークを薄く刻み込んでいることを除いては。
「何者だ?」
「俺はエクリプスに属する
「亜空間というわけか……だが、なぜこんな廃墟を選んだ?」
「コースになりそうな場所で、一番開けているのがここだったからな。貴様を飛ばす場所は本来なら別の地点だったが……あまり多くを語ることもあるまい。始めるか」
見ると、スコルピオと名乗った男の後ろに、赤いD・ホイールが出現している。
特にカスタムされている様子のない、ベーシックモデルだ。
「……そんな機体で僕のデルタイーグルと渡り合うつもりか? ライディングデュエルは、ただデュエルが強いだけで勝てるものではないぞ」
「甘く見るなよ、イリアステルの残党。この時代に合わせて外見は変えてあるが、中身は天空城から引き揚げたオーパーツだ。貴様の機体にも引けは取らん」
「いいだろう。ならば!」
愛機に飛び乗り、モーメントエンジンを作動させる。
スコルピオも同時にDホイールに乗り込んだ。
「この空間には、ダークシグナー復活当時のサテライト最深部を丸ごと再現している。よってコースはこの町全体! どこをどう走ろうが自由だ。そして第一コーナーはあの丁字路。あそこを先に曲がった方が先攻・後攻を選ぶ。覚悟はいいか!」
「その言葉、そっくりそのまま返す! 行くぞ、エクリプス!!」
「潔し! 始めるぞ!」
「「ライディングデュエル! アクセラレーション!!」」
第一コーナーとなっている丁字路までは、まっすぐに道が伸びている。
そして、最低100Km/hが基本のDホイールの中でも、加速力・コーナリング性能共にデルタイーグルは頭一つ抜けている。
機械の写し身でこそあれど、アンチノミーことブルーノのライディング技術は本物だ。だからこそ、デルタイーグルの性能を十二分に発揮できる。
だからこそ、
(速い……そして無駄がない!)
スコルピオのDホイールの性能、それを操るスコルピオ自身の技術の高さに、驚嘆せざるを得ない。
Dホイーラーとしては、確かにこの男は超一流だ。
トップスピードに乗りかけているデルタイーグルに、顔色一つ変えず並走してくる。
アーククレイドルで遊星と戦った時のことを思い出すが、あの時はブルーノもデュエルこそ本気の全力だったが、ライディングの方は若干手加減をしている。
翻って今。
(大昔の神官だって聞いたけど、本当か!? これほどの腕前を持っている奴なんてそうは……)
「っ、しまった!?」
わずかに生じた隙を突かれ、一足先に丁字路を曲がられてしまった。
しかもブルーノとは反対方向。マルチデュエル用の音声通信があるため対戦には支障はないが、こうなるとブルーノとしては色々な意味で未体験の領域に踏み入ることになる。
『では俺の先攻だ。ドロー』
スコルピオ:手札5→6
『カードを2枚セットし、ターンを終了する』
スコルピオ:手札6→4
「伏せカードのみだと? 僕のターン!」
ブルーノ:手札5→6
大通りを挟んで反対側を走るスコルピオの場にはモンスターがいない。
攻め込むチャンスだが、当然あのリバースカードが危険だ。
(だが、ここは……遊星に倣って、臆せず攻める!)
「《TG ラッシュ・ライノ》を召喚!」
先鋒に選んだのは、下級のTGで一番攻撃力の高いラッシュ・ライノ。
だが、同時にスコルピオの場で電光がひらめいた。
『モンスターを召喚したな。俺は手札から《PSYフレームギア・α》の効果を発動する』
「!」
『このモンスターは、俺の場にモンスターが存在せず、貴様がモンスターを召喚・特殊召喚した場合、手札のこのカードと、デッキの《PSYフレーム・ドライバー》を特殊召喚し、さらに同名以外のPSYフレームモンスターをデッキから手に入れる。だがこの効果に対し、俺は罠カード《メタバース》を発動。デッキからフィールド魔法《PSYフレーム・サーキット》を発動する』
現れていたのは、何かの拘束具のような姿をしたおおむね、人型のモンスター。
さらにその横に、装着者と思しき電撃を纏ったサイキッカーが並走している。
『αの効果により、デッキから《PSYフレームギア・β》を手札に加える。さらに《PSYフレーム・サーキット》の効果を発動。PSYフレームが特殊召喚された時、シンクロ召喚を行う』
「なに!?」
『レベル6の《PSYフレーム・ドライバー》に、レベル1のαをチューニング! シンクロ召喚! 《PSYフレームロード・Ζ》!!』
口上も何もなく、チューニングの光の中、PSYフレームギアがそのままドライバーに装着される。
超能力で浮遊しながらスコルピオのDホイールを追い、空を滑るように駆けていく。
スコルピオ:手札4→3→4
(あれが奴のモンスターか……! 攻撃力2500、ならば!)
「手札から《TG ギア・ゾンビ》のモンスター効果発動! ラッシュ・ライノの攻撃力を1000ポイント下げ、特殊召喚する!」
遊星と同じく、ブルーノのデッキも基本の攻撃力はそう高くはない。打点を出すにはシンクロモンスターが必要になる。
サイボーグになったゾンビのテックジーナスがフィールドに現れるが、それをスコルピオのしもべが見咎めた。
『《PSYフレームロード・Z》の効果を発動! 互いのターンに1度、このカードと、相手の特殊召喚された攻撃表示モンスターを除外する! 飛べ、ゼータ!』
「!?」
超能力の力場が出現し、ギア・ゾンビを道連れに《PSYフレームロード・Ζ》が消えた。
「くっ、シンクロ召喚を妨害されたか」
『貴様の得手がアクセルシンクロであることは知っている。ならばシンクロモンスターを用意させないのがもっとも簡単だ』
「だが、お前の場はがら空きだ! バトル! ラッシュ・ライノでダイレクトアタック!」
ブースターを吹かし、ラッシュ・ライノが瓦礫の街を横切ってスコルピオへ突撃する。
だがその眼前に、またしても別のメカが立ちはだかった。
『俺のモンスターが場にいない場合、攻撃宣言時に手札から《PSYフレームギア・β》の効果を発動! このカードと墓地のドライバーを特殊召喚し、攻撃モンスターを破壊!』
電撃に撃たれ、ラッシュ・ライノが砕け散る。
『そして、バトルフェイズを強制終了する。だがここで《PSYフレーム・サーキット》の効果発動!』
「また僕のターンにシンクロを……!」
『チェーンしてトラップカード《レベル・リチューナー》! ドライバーのレベルを1つ下げて5にする。レベル5となったドライバーに、レベル1のβをチューニング! 《超念導体ビヒーマス》をシンクロ召喚!』
間髪入れず2度目のシンクロ召喚、牛のバケモノを象ったサイキック兵器がスコルピオのもとに出現する。
(ビヒーマス……確かあいつの効果は《異次元の女戦士》と同じ、戦闘を行ったモンスターごと除外されるものだったな。だがまずい……!)
ブルーノの場はこれでがら空き、返しのターンの攻撃を受ければそれで敗北が決まってしまう。
(あいつのデッキは僕のターン、こっちの行動に反応してモンスターを召喚してカウンターして来るコントロール戦術……だが見る限り、あいつの場にモンスターがいる時には何もできないらしい)
「ならば……チューナーモンスター、《TG ストライカー》を特殊召喚! このモンスターは相手フィールドにのみモンスターが存在する時、特殊召喚できる!」
青い鎧の戦士が現れ、半身を機械化した人狼がその後に続く。
「レベル4以下のモンスターが特殊召喚された時、《TG ワーウルフ》を特殊召喚!」
『ぬ……』
「レベル3のワーウルフに、レベル2のストライカーをチューニング! リミッター解放・レベル5! レギュレーターオープン! アップリンク、オールクリア! GO、シンクロ召喚!」
「カモン! 《TG ハイパー・ライブラリアン》!」
その2体のチューニングにより、ローブと角帽を纏ったサイボーグの司書が姿を見せる。
『出たな、テックジーナスの顔。だがしかし、そいつではビヒーマスと相打ちになるぞ? よしんば攻撃力を上回ったとしても、結果は同じだ』
確かにスコルピオの言う通りだ。しかも彼にとって、場ががら空きになることはむしろ態勢を整えることに繋がる。
もちろん、ブルーノもそれは十分に分かっている。
『しかも貴様の手札は2枚。それでどうするつもりだ』
「……カードを2枚セットし、ターンエンド! 破壊されたラッシュ・ライノの効果により、デッキからテックジーナスを手札に加える!」
ブルーノ:手札2→0→1
『ふん。俺のターン!』
スコルピオ:手札3→4
『スタンバイフェイズ、Ζとギア・ゾンビが帰還する。このままバトルフェイズ! Ζでハイパー・ライブラリアンに、ビヒーマスでギア・ゾンビに攻撃!』
「それは……どちらもそのまま受ける! ぐっ……!」
ブルーノ:LP4000→3900→2100
『無防備に喰らったか。……俺はカードを伏せてターンエンド』
「トラップ発動! 《TGX3-D2》! 墓地のラッシュ・ライノ、ギア・ゾンビ、ワーウルフをデッキに戻し、カードを2枚ドロー!」
スコルピオ:手札3
ブルーノ:手札1→3
「そして僕のターン! ドローだ!」
ブルーノ:手札3→4
改めて、スコルピオの戦術の厄介さをブルーノは理解していた。
とにかく《PSYフレームロード・Ζ》が厄介極まりない。攻撃表示限定とは言え、特殊召喚されたモンスターごとスコルピオのスタンバイフェイズまで跳躍してしまう。
しかもビヒーマスを殴ろうものなら、やはり道連れで除外されてしまい、がら空きにされてしまう。
(つまり攻撃しようにもΖに妨害され、それを掻い潜ってもビヒーマスで止まる……チーム太陽とはまた違う防御型か。だがあの2体をどかせば、今度は別のPSYフレームギアが飛んでくる……一体どこから手をつければいいんだ!?)
常にはないことに、ブルーノは突破口が見いだせずにいた。
どこから対処しても妨害が飛んでくる、まさに八方ふさがり同然の状況だった。
(抜け道があるとすれば……Ζは特殊召喚されたモンスターしか連れていけない。ビヒーマスは戦闘を行ったモンスターごと除外される……通常召喚、かつ効果でモンスターを除去できるカードは……)
「! こいつだ! 《TG ドリル・フィッシュ》を召喚!」
『ぬぅ!?』
望みをかけたのは、頭の先にドリルの角をつけた魚のモンスター。
空中を素早く泳ぎ、スコルピオ目掛けて突きかかる。
「バトル! ドリル・フィッシュでダイレクトアタック!」
『ちっ、防ぐ手はない……!』
スコルピオ:LP4000→3900
「戦闘ダメージを与えたことで、ドリル・フィッシュの効果を発動! 相手モンスターを1体破壊する! 《PSYフレームロード・Ζ》を破壊だ!」
さらに、返す刀でフル装備状態のサイキッカーを貫き、爆散せしめた。
『こんな方法で突破されるとは……だが、攻撃力100のモンスターを残したままだな』
「まだだ! トラップカード《TG1-EM1》を発動! ドリル・フィッシュとビヒーマスのコントロールを入れ替える!」
『何!?』
「ビヒーマスでドリル・フィッシュに攻撃!」
続けてその背後からビヒーマスが襲い掛かって粉砕し、勢いのままブルーノのフィールドに降り立ち並走し始めた。
これで、先ほどとは逆にスコルピオの方ががら空きだ。とはいえ、これでPSYフレームギアの効果発動が可能になってしまったわけだが。
スコルピオ:LP3900→1600
『ぬおおおおお!?』
ダメージを受けて、スコルピオのDホイールが大きく蛇行する。しかし、一体どんな運転をしているのか、失速するどころかますます加速してきている。
(あの体勢から加速!? あいつ、クラッシュが怖くないのか!?)
『やってくれたな、イリアステルごときが! 貴様らが余計なことをせねば、あのお方は……』
「どういう意味だ!?」
『貴様に語るなど虫唾が走るわァ!! 自分のモンスターが戦闘破壊された時、場からモンスターが消えたことで、手札の《PSYフレームギア・
「このタイミングでだと!?」
三度スコルピオの場に揃うPSYフレームたち。
そして当然、出てきたということは固有の効果が発揮される。
『その後、場のカードを1枚破壊する! ビヒーマスを破壊し、《PSYフレーム・サーキット》の効果によりチューニング! 合計レベルは8だ!』
『シンクロ召喚! 現れよ、《PSYフレームロード・Ω》!!』
出現したのは、まだ現れていないものも含めて全てのPSYフレームギアを装着したサイキッカーの姿。
極限まで増幅された超能力を電撃として纏い、攻撃の時を待つ。
「モンスターが途切れない……どころかまたしてもこっちががら空きか! 何て奴だ……」
『イリアステルには負けられんのだ、イリアステルには! 次のターンで貴様の負けだ!』
「そうはさせるか! バトルを終了し、メインフェイズ2で魔法カード《死者蘇生》を発動! ハイパー・ライブラリアンを復活させる! Ζがもういない以上、除外を恐れることはない」
しかし、スコルピオもまだ止まらない。
『ならばΩの効果発動! 貴様の手札1枚を道連れに、次の俺のスタンバイフェイズへ跳躍する!』
「今度は手札破壊か!? ならこれを使わせてもらう、速攻魔法《リアクション・ドロー》! このターン、相手が効果を発動した回数だけドローする! PSYフレームギアとフィールド魔法とそのΩ、3枚ドロー!」
『だがそのカードは効果を止めるものではない! 飛べ、Ω!』
ブルーノ:手札3→2→4→3
「悪いな……そのカード、大当たりだ!」
『!! 《異次元からの宝札》だと!? これは確か、除外された次のスタンバイフェイズに手札に戻り、除外から戻った時にお互いに2枚ドローするカード……地雷を踏んだか!」
除外処理の間に道が合流し、2台のDホイールが至近距離に並ぶ。
ブルーノからも、若干焦りを見せるスコルピオの様子がはっきりとわかった。
《異次元からの宝札》
通常魔法
このカード名の①の効果は1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードが除外された場合、次のスタンバイフェイズに発動する。このカードを手札に戻す。
②:除外状態のこのカードが持ち主の手札に加わった場合、このカードを相手に見せて発動できる。お互いに2枚ドローする。
「そして、このカードは守られた! 永続魔法《TG-オールクリア》を発動! このカードがある限り、僕のテックジーナスは機械族となり、通常召喚とは別にテックジーナスを召喚できる! よって《TG サイバー・マジシャン》を召喚!」
ブルーノ:手札3→1
「サイバー・マジシャンは手札のテックジーナスをシンクロ素材に出来る! レベル4のラッシュ・ライノに、レベル1のサイバー・マジシャンをチューニング!」
「手札シンクロか!」
「リミッター解放、レベル5! レギュレーターオープン! オールクリア!」
「GO、シンクロ召喚! カモン! 《TG スター・ガーディアン》!」
そして、ブルーノ自身とデルタイーグルを象った星守りの戦士がフィールドに姿を見せる。
これでようやく、テックジーナスの本領を発揮する準備が整ってきた。
「シンクロ召喚が行われたため、ハイパー・ライブラリアンの強制効果によりカードをドロー。さらにスター・ガーディアンが特殊召喚された時、墓地のテックジーナスを回収できる! 僕は《TG サイバー・マジシャン》を再び手札に戻す」
ブルーノ:手札1→3
「ターンエンドだ!」
「ちぃ……俺のターン!」
スコルピオ:手札3→4
「スタンバイフェイズ、Ωと除外されたカードはそれぞれ場と手札に戻る」
「《異次元からの宝札》の効果発動! このカードを公開し、お互いに2枚ドローする!」
ブルーノ:手札3→5
スコルピオ:手札4→6
「お前のデッキは僕のターンに動く戦術だ。それにそのPSYフレームギア、見たところ通常召喚はできないらしいな」
「……その通りだ。PSYフレームギアはカードの効果で特殊召喚しなければ呼ぶことはできない。そして俺の場ががら空きでなければ、PSYフレームギアの効果は使えない。……だが、もはや問題ではない!」
「!」
道が途切れた。
倒壊したビルや瓦礫で塞がっているそこを、2台のDホイールは当然のようにすり抜け、乗り越えていく。
放置されていた自動車をジャンプ台代わりに、スコルピオの機体が跳躍した。
「貴様のモンスターはアクセルシンクロが出来るようだな。ならば、それでは超えられんモンスターを呼ぶまでのこと! 俺は魔法カード《モンスター・シューター》を発動! 手札のモンスターを特殊召喚する。いでよチューナーモンスター《PSYフレームギア・α》!」
スコルピオ:手札6→4
「俺はレベル8の《PSYフレームロード・Ω》に、レベル1のαをチューニング! シンクロ召喚! 全てを破壊せよ、《ハイパーサイコガンナー》!」
二丁のハンドキャノンを構え、増幅装置を背負った新たなサイキッカーがスコルピオのもとに出現する。
そのカードは、ブルーノも覚えがあるものだった。
「あのモンスターは確か、守備貫通能力を持っていたはず……!」
「そうだ。さらに俺は、魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》を発動! シンクロモンスターを含む素材を場か墓地から除外する! 墓地の《PSYフレームロード・Ζ》と《PSYフレームギア・β》を除外!」
「融合召喚! 現れろ《アルティメットサイキッカー》!」
スコルピオの機体を飛び越えるようにして、渦の中から異形の悪魔が姿を見せる。
広げた翼と組まれた腕、巨大な角、骨を纏ったような肉体はまさに悪魔のそれだが、下半身は足ではなく蛇のものになっている。
「ここで融合か!」
「バトルだ! 《ハイパーサイコガンナー》でスター・ガーディアンに攻撃!」
「そうはさせない! スター・ガーディアンの効果発動! シンクロ召喚を行う! 行くぞ!!」
デルタイーグルが一気に加速し、障害物を全て置き去りにして開けた道へ出る。
一瞬おいて、その姿が光と共に消えた。
「クリア・マインド! リミッター解放、レベル10! バランサーコントロール、オールクリア! ―――集いし絆が時空を超えて、未来の先を照らし出す! 光さす道となれ!」
「GO! アクセル・シンクロ―――――ッ!!」
「カモン! 《シューティング・スター・ドラゴン・
続けてスコルピオを追うように同じコースに現れた、その時に伴っていたモンスターは、遊星の切り札たる流星のドラゴン。その全身に、ブルーノ自身のエースである《TG ブレード・ガンナー》の武器が装着されている。
「何!? ブレード・ガンナーではないだと!? 何だそのモンスターは!?」
「これこそが僕の、新たな切り札だ! 遊星との絆が、僕に新たな力を与えてくれた!」
「ぬう……ならば、俺はリバースカードを使う! 《バスター・モード》により、《ハイパーサイコガンナー》をリリース!」
「更なる力を纏い、敵を粉砕せよ! 《ハイパーサイコガンナー/バスター》!!」
対抗するように、《ハイパーサイコガンナー》の全身に追加装甲が装着され、翼を広げた兵器のような出で立ちとなってシューティング・スター・ドラゴンと対峙する。
「攻撃力はわずかだが上回る! 攻撃続行だ、シューティング・スター・ドラゴンを粉砕しろ! サイキック・ブラスター・バスター!!」
「シューティング・スター・ドラゴンの効果発動! 1ターンに1度、攻撃を無効にする!」
出力を大きく増強した超能力の砲弾が放たれるが、流星の竜はそれを、右腕の銃剣から放ったビームで撃ち落として防いで見せた。
スコルピオが「チッ」と大きく舌打ちする。
「通らんか……! 《アルティメットサイキッカー》をせっかく呼んだというのに。俺はカードを3枚伏せ、ターンエンド!」
スコルピオ:手札0
「僕のターン!」
ブルーノ:手札5→6
ここに来て、ブルーノはさっきからスコルピオのデュエルに覚える違和感の正体に当たりをつけていた。
妨害戦術は大したものだったが、攻撃の手があまりに雑だ。
防御用のトラップも、手札を増強する手段も乏しい。
正直な話、骸骨騎士よりも手ごたえがない。
だからと言って弱いのかと言えば決してそんなことはない、ブルーノも互角に渡り合ってはいるが、一瞬でも油断すればそこから食い破られかねない。
では、この齟齬は何を意味するのか?
「スコルピオ!」
「何だ、いきなり!」
「そのデッキ……お前の本来のデッキじゃないな?」
「!」
問いかけへの返答は沈黙、そして苦々しい表情。
それが、全てを物語っていた。
「淀みなく扱ってはいるが、ところどころに穴が見える。この戦いはお前たちにとっても重要なはずだ、なぜ本来の力を使わない!?」
「使えるものならとっくに使っている! すべては貴様たちのせいだろうが!!」
「何を言っている!?」
スコルピオがイリアステルを憎んでいるのはわかったが、理由まではブルーノにはわからない。
だがその「理由」に、なぜこんな大事な場面で本来のデッキを持って来なかったのか、それが関わっているようだった。
「……チッ、確かに貴様は何も知るまいな。貴様らイリアステルが、破滅の未来を変えるために過去へ現れた……それが全ての間違いだったのだ!」
「何だと!?」
「シンクロ召喚の隆盛に伴い、モーメントは加速し、やがて人々の負の意志を受け取り、それによって逆回転を始めたことで世界は崩壊し、人類は滅亡した。―――ならば、それでいいではないか!」
こいつは一体何を言っているのだ?
ブルーノには理解が出来なかった。ただ一つわかるのは、スコルピオは本気で、それが回避されたことを嘆いている、ということだけだ。
「人類は遅かれ早かれ、いずれは滅ぶのだ! それがあの時だった、ただそれだけのことだ! なぜだ!? なぜ、そのままにしておけなかった!? なぜそれを変えようと思った!」
「何をふざけたことを!? お前はあの地獄を知った上で言っているのか!?」
人格と記憶の大本である「本物の」アンチノミーからの、いわば伝聞に近いものだが、ブルーノは当時の状況をよく覚えている。
機皇帝の暴走により虐殺される人々。何もできない自分を憎み、しかしそれを「不動遊星」が救ってくれたあの時。
一度は機皇帝と分かり合えたのに、モーメントの暴走で結局は全てが滅んでしまった。残されたのは自分たちだけ。
あの完全なる孤独、完璧なる絶望を、ブルーノは決して忘れることはない。
犠牲を払わずに済む方法を必死で探した。
それを見つけられなかったから、生じる犠牲がもっとも小さく済む方法を求めた。
1人、2人、ダメだった。
10人、100人、話にならなかった。
1000人、10000人、足りないどころではなかった。
世界全てを消し去って、再生して、それでやっとどうにかなる目が出た。
どんなことをしてでも、あの未来を決して実現させないために、そのためだけにイリアステルの戦いはあった。
だからこそ、それを是とするスコルピオの主張が受け入れられない。
どうやら彼らエクリプスも破滅の未来の生き残りらしい、とはわかる。だがそれならば、なおのことこんな主張を叫ぶ意味が理解できない。
「むろん知っている! 確かに悲劇だ。あまりにも、あまりにも多くの者が死んだ! ならば、もういいだろう!? 人類の時代が終わったのだ! 破滅の未来? 結構ではないか! いずれ来る結末、それが来ただけのことだ! 時をさかのぼってまでそれを変えるなど、傲慢というものだろう!」
「傲慢だと!? ならば、お前たちはどうなんだ! やっていることは僕たちと変わらない!」
「いいや、違うな! 俺たちはあるべき未来、あるべき結末のために行動している! すべては流れのままに、滅びが結末ならばそれが世界の結論! それを覆そうなどとは言語道断だ!」
「あんなものがあるべき未来だと言うのか!? 誰もいない、何もない、ただ静かなだけの世界が!?」
「物わかりが悪すぎるぞ、滅四星! 自然な成り行きとして全ては滅んだのだ! 誰が仕組んだわけでもない、ただ流れのままにそうなった! 人類そのものが安易な力に少しずつ溺れ、堕落した結果だ! その結果集合意識がモーメントに伝わり、冥界の扉を開いたことで破滅が呼び込まれた! 全ては人類の自業自得なのだ! 違うか!?」
確信を持って言い放たれるその言葉に、ブルーノはすぐに反論できなかった。
破滅の未来―――あの惨劇をもたらしたのは、モーメントを暴走せしめた人のマイナスの感情だ。そこに誰かの思惑が介在していたわけではない。
人類全体が堕落していたと言われれば、確かにそうかもしれない。デュエルモンスターズという絶対のルールを持つこの社会において、容易に強い力が手に入るシンクロ召喚の登場はまさに革命だった。
だからこそ、誰もがそれに飛びついた。そして、結果があの有様だ。
(だから、Z-ONEやアポリアはシンクロ召喚そのものを否定した。それだけでは足りないから、モーメントを破壊し、新しく作れないようにネオ童美野シティを滅ぼそうとした……)
そのやり方は間違っていると、ブルーノは今になって思う。エクリプスがこうして、かつてのやり方を繰り返して未来を滅ぼそうとしている―――それこそが即ち、モーメントを滅ぼすことは未来を救うことにはならない、という証明だからだ。
同時に、何としても未来を、人類を救おうとした、その覚悟だけは正しかったとも。
Z-ONEには時間がなかった。そして彼は、根本的に人間を信じることができなかった。破滅を招いたそもそもの原因を知っていたからだ。
だから、自分がやらねばならない、自分にしかできないと、全てを背負い込んでいた。
彼が遊星と最期に何を話したのか、それはわからない。
だが少なくとも、その意志は遊星に、そして多くの人々に受け継がれている。それがある限り、未来は必ず変えることができる。
だから、
「―――そうだとしても、僕はお前たちを認めない! 破滅の未来を、二度ともたらすわけには行かないんだ!」
「現身の人形ごときが、まだ言うか!」
「何度でも言ってやる! 滅びることが世界の流れだというのなら、それに抗うのは人のあるべき姿だ! 滅ぶことが正しいんだから大人しく滅べと言われて、唯々諾々と受け入れることは生命体の存在意義に反している!」
言いながら、ブルーノはそこに確信を得ていた。
スコルピオの言う通りだとしても、自分たちがZ-ONEと共にやって来たことは無意味でも無駄でも、ましてや罪悪でもない。
破滅に抗い、救いの道を探す。それは、生きる者として当然のことだ。ただ、イリアステルはそのやり方を間違えた。そして、正しい方法を選ぶ時間がなかった。
「機械のヒトガタ風情が、生命を語るか!」
「確かに僕は機械の分身、本物のアンチノミーじゃない。だがそれでも、その心は同じだ! 先に待つのが何であろうと、最後まで人間として生きる! それが僕の……僕たちの答えだ!」
「どうあっても受け入れんか!」
「当然だ! 僕がこの世界に呼び戻されたのは、きっとそのためなんだ。遊星の道を守り、彼の切り拓く未来を守る! その未来を邪魔する者は僕が倒す!」
決意と共に放ったその言葉に、大きく大きく、スコルピオが嘆息した。
「……イリアステルの貴様に話したのが間違いだったな。そしてわかったことがある。俺たちは決して相いれないということだ! 一刻も早く、この世界を滅ぼさねばならんのだからな!」
「それを僕が許さないこともわかったはずだ! このターンで終わらせる! ―――《TG サイバー・マジシャン》を召喚! そして効果により、手札のレベル1、《TG ブースター・ラプトル》にチューニング! カモン、《TG レシプロ・ドラゴン・フライ》!」
2台のD・ホイールが、再び道を異にする。
その先に続く道は交わることなく別の方向に延びており、まるで両者の未来が交わらないことを示しているかのようだった。
『レシプロ……!』
「レシプロ・ドラゴン・フライの効果発動! 自分フィールドのテックジーナスシンクロモンスターを墓地に送り、素材となったモンスターが墓地に揃っていれば、復活させることができる! シューティング・スター・ドラゴンを墓地に送り、ハイパー・ライブラリアンとスター・ガーディアンを復活させる!」
シューティング・スター・ドラゴンの姿が光に包まれ、素材となった2体のテックジーナスへと再び分離する。
「さらにスター・ガーディアンが特殊召喚されたことで、効果により墓地の《TG ドリル・フィッシュ》を手札に戻す」
ブルーノ:手札6→4→5
「《TG-オールクリア》の効果により、さらにテックジーナスを召喚できる! チューナーモンスター、《TG スクリュー・サーペント》を召喚! そしてその効果により、墓地からブースター・ラプトルを復活させる!」
「これは……!」
「レベル1のブースター・ラプトルに、レベル4のスクリュー・サーペントをチューニング! シンクロフライトコントロール! リミッター解放、レベル5! アップリンク、オールクリア!」
「G0、シンクロ召喚! カモン! 《TG パワー・グラディエイター》!」
4体目のシンクロモンスターがフィールドに現れる。
斧と盾で武装した、ブルーノのデッキの切り込み役だ。
「ハイパー・ライブラリアンの効果により、カードをドローする!」
ブルーノ:手札5→4→5
「まだだ! さらに、魔法カード《TG-レギュレーター》を発動! 墓地のテックジーナスを特殊召喚する! 蘇れ、《シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX》!!」
墓地からフィールドへ通じるゲートが開き、シューティング・スター・ドラゴンが再び飛翔する。
後から射出されたブレード・ガンナーの武装が装着され、攻撃の準備が整った。
状況が有利に傾きつつある中、それでもブルーノは油断なく思考を巡らせる。
(バスターモンスターは破壊すれば、元になったシンクロモンスターが装備を捨てて墓地から戻って来る。不確定要素はあの伏せカードのみ……《流星の残影》を引けていない今、僕が選ぶべき攻撃はこれだ!)
結論が出るや否や、アクセルを一気に踏み込むと共に、スロットルを複雑に操作。
最終リミッターの解除されたデルタイーグルが、瞬く間にトップスピードに乗る。
(僕には遊星のような、限界を超越する境地はない。だが、僕に出来ることはいくらでもある!)
「レベル5のパワー・グラディエイターと、レベル2のレシプロ・ドラゴン・フライに、レベル5のスター・ガーディアンをチューニング! ―――トップ・クリアマインド!」
「リミッター解放、レベルマックス! 無限の力よ! 時空を突き破り、未知なる世界を開け! GO! デルタアクセル!」
「カモン! 《TG ハルバード・キャノン》!!」
スピードの世界の果てから到来する、黒光りする装甲に身を包んだ機械戦士。
ブルーノ本来の切り札が、槍斧を引っ提げて暗い空の下を飛ぶ。
「ハイパー・ライブラリアンの強制効果により、さらにドローだ!」
ブルーノ:手札5
『攻撃力4000か……!』
「そしてドリル・フィッシュを特殊召喚し、バトルフェイズ! ドリル・フィッシュでダイレクトアタック!」
『させん! トラップカード《サイキック・ストライク》! 俺の場でもっともレベルの低いサイキック族、《アルティメットサイキッカー》未満のレベルを持つモンスターを全て破壊する!」
まずは効果で確実にモンスターを減らしにかかるが、スコルピオもさすがに無防備に受けてはくれない。
張り巡らされた思念の壁が、ドリル・フィッシュとハイパー・ライブラリアンを破壊する。
『さらに《サイコ・ヒーリング》も発動! 俺のサイキック族は2体、よって2000回復する!』
スコルピオ:LP1600→3600
「だが、2体は残る! シューティング・スター・ドラゴンで《アルティメットサイキッカー》に攻撃! シューティング・ブレード!」
続けて上空に舞い上がったシューティング・スター・ドラゴンが、急降下から地上すれすれを切り裂くように飛行、ビームで形作られた刃が悪魔を一閃する。
スコルピオ:LP3600→3200
『ぬうううッ……!』
「さらに行くぞ! ハルバード・キャノンで《ハイパーサイコガンナー/バスター》に攻撃! レーザースナイプシュート!!」
『ちぃっ、迎え撃て!』
念動砲撃でハルバード・キャノンを狙うハイパーサイコガンナーだが、それよりも速く狙い済ました一射が、背中の増幅ユニットを撃ち抜いていた。
これはまずい、と纏った装甲を脱ぎ捨て、爆発を背中にフィールドに戻る。
スコルピオ:LP3200→2700
『/バスターが破壊された時、墓地から元となったシンクロモンスターが復活する! 効果による召喚にはクローズサモンはできまい!』
「さすがに手の内は割れているか。……だがスコルピオ、これは予想したか!」
言い放ち、ブルーノは決め手となるカードを発動する。
それは、
「ハルバード・キャノンをリリースし、速攻魔法発動! 《バスター・モード・ゼロ》!!」
『何ぃっ!?』
シンクロモンスターを進化させる、異次元からのカード。
「バスターモンスターが使えるのは、お前だけじゃない! シンクロモンスターをリリースすることで、手札からその強化された姿を特殊召喚する!」
「破滅と絶望を砕く力、その身に纏い現れろ! 《TG ハルバード・キャノン/バスター》!!」
虚空から召喚された砲撃支援フレームがハルバード・キャノンの全身を覆い、ただでさえ力強い巨躯がさらに一回り大きなシルエットに変貌する。
得物のハルバードも追加バレルと固定用のスタンドが追加され、完全な砲撃形態に切り替わっていた。
『デルタアクセルのバスター化だと!?』
「さらにこれだけじゃない! お前がシンクロモンスターを呼び戻したことで、このカードを発動できる! 速攻魔法《シンクロ・トランセンド》を発動! 相手のシンクロモンスターよりレベルが1つ高いシンクロモンスターを特殊召喚できる! 対象は当然、レベル9の《ハイパーサイコガンナー》!」
「カモン! 《TG ブレード・ガンナー》!!」
さらにそこに、銃剣を備えた緑の機械戦士が飛来する。
『アクセルシンクロモンスターが3体だと!?』
「いけ、ブレード・ガンナー! 《ハイパーサイコガンナー》を攻撃しろ!」
―――シュート・ブレード!!
スコルピオ:LP2600→2300
『ぐはっ……! お、おのれ……! なぜだ!? なぜ貴様らは邪魔をする! なぜ救おうとする! なぜ滅びたままにしておけなかった!?』
「そっちこそ訊かせろ! どうしてそこまでして世界を滅ぼそうとする!? 破滅の未来に至れば、お前たちもどのみち滅ぶんだぞ!?」
スコルピオの血を吐くような叫びに、ブルーノは彼らが本気であることを改めて理解した。
本気で、エクリプスは世界を滅ぼそうとしている。
「一体何がそこまでさせる!? 破滅の未来に何を求めているって言うんだ!?」
『正しき終わりだ! 永遠など必要ないのだ、そうだろう!? ただ一時の苦しみを置き去りに無に帰るよりも、後の一万世代のために終わりなく朽ち続ける方が望ましいとでもいうのか!?』
「何を……!」
反駁しかけたブルーノを遮り、スコルピオがDホイールを急ターンさせて猛追してきた。
ぶつける気だと悟ったブルーノはデルタイーグルの機首を返して並走を試みるが、ハルバード・キャノンが視界を遮った数秒の間に距離が詰められ、横っ腹にスコルピオの機体がぶち当たっていた。
「認めるか! あり得るか!! どれだけあの時を待ちわびたと思っている! 歴史の終焉! 自由への解放! それを、それを貴様たちが! たとえこのデュエルに敗れようと、貴様は……貴様らだけは許さんぞ、未来人の人形ごときが!!」
必死でデルタイーグルを立て直そうとするが、スコルピオの執念がなさしめるものなのか、恐るべきテクニックで重心と力のかかる場所を小刻みに入れ替えられ、一方的に押され続けている。
「誇りも信頼も力も、我らの大願が叶うのならば何もいらん!! 貴様も、不動遊星も、この俺の手で! 必ず! 必ず殺す! 殺してやる! 殺してやるぞォォォォッ!!」
「遊星のところには行かせない! ハルバード・キャノン、ダイレクトアタックだ!!」
命令を受けたハルバード・キャノンが距離を取り、スコルピオの機体に照準を合わせる。
しかしブルーノを巻き込んでしまうためか、ためらうように何度も砲身を上げては降ろし、その間にもデルタイーグルは道を外れ、かつてのサテライトにあったゼロ・リバースの地割れへと押し込まれていく。
「かまうな! 撃て、撃つんだ、ハルバード・キャノン!!」
『!』
閃光、そして飛来する破壊の塊。
それが、悪鬼の形相のスコルピオが操る彼のDホイールを直撃した。
―――クロージング・ブラスター!!
爆発、そして爆風。
2台のDホイールが、地割れへと飲み込まれていく。
「うがあああああああっ!!!」
「くっ……うおああぁぁぁっ!?」
スコルピオ:LP0