遊戯王5D's-The After   作:辛麺焼き

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19話は22時に投稿します。


第18話:最終決戦

「なん……だと?」

 

冷徹な声で投げかけられたカプリコンの問いを、その意味を、遊星は掴みかねていた。

世界のために一人を犠牲にしてもいいのか、という問いかけ。

 

「まあ、普通の人間はそれを是とするでしょうな。ただそれを是とする者は、総じて自分が犠牲になることを拒否するのですが」

「何を……言っている?」

「これは人類の在り方そのものと言っても過言ではありません。だからこそ、全てを救うハッピーエンドが好まれ、同時に忌避されるのです。そんな都合のいい話があるか、と。……ええ、そうですとも、そんな都合のいい話はありません。古今東西、どこにもね」

 

ですが、と上がった視線には、強い敵意。

 

「だからこそ、ワタシは問うのですよ。それでいいのか、と」

「……!?」

「例えば……今、世界が滅びようとしています。そして、誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとしましょうか。貴方は自ら犠牲になる英雄ですか? それとも、誰かが名乗り出るのを待っているだけですか?」

 

その問いに遊星が答えることのできる時間を与えることもなく、カプリコンはただ語る。

 

「ええ、貴方は間違いなく、自らの命を捨てることを選ぶでしょう。貴方はそんな臆病者ではない。ええ、きっと貴方は躊躇わないでしょう。暗闇の中にわずかな灯をともし、命尽きるその時まで歩き続けるのでしょう。その灯を世界に届けるために、自らを薪として灯にくべるのでしょう。……そしてそうなれば、貴方の仲間たちは貴方を取り戻そうとするでしょう。例え世界を滅ぼしてでも」

「バカな!? ジャックやアキ達がそんなことを……」

「しないと言い切れますか? 本当に? 彼ら、彼女らにとって貴方は、一時の悲しみと共にたやすく思い出に成り果てる、そんな程度の人間だと?」

 

さすがにこの問いには、遊星も即答できなかった。

仲間たちから強い信頼を受けているのは実感しているが、自分がそれに相応しいのかどうかという自問は今でも続いている。それを理由に立ち止まることはもはやないとしても。

 

「ええ、これは我々の行いの正当化ではありません。これは過ちです。間違った行いです。しかし、やり遂げるのです。―――かつて我々は、苦しみに満ちた暗闇から救われました。だからこそ我々は、今度はあえて暗闇に身を投じることを選んだのです。志同じくする同胞と共に、我らを救い賜うたかの方のために」

「……………」

「ゆえに、我々の邪魔はさせません。……さあ、準備が出来たようですね」

 

カプリコンのその宣告と共に、彼の背後でゆっくりと回転していた旧モーメント「Uru」が爆発的な光を放った。

周囲を満たしていく極彩色の光は、かつて、再建される前のこの場所でルドガーと戦ったあの時を、否応なく思い出させた。

その光が膨れ上がり、一瞬にして視界が白に支配された。

 

 

 

 

―――お願い。

 

 

 

 

―――止めて。

 

 

 

 

―――わたしを目覚めさせないで。

 

 

 

 

 

「……!? 今のは……」

 

頭上を埋め尽くす色は複雑に移り変わり、周囲は荒涼とした鉄の大地が広がり、無数のガラクタが転がっている。

そして、見回す視界の中に既視感を覚え、そこを注視した遊星は一瞬でここがどこなのかを理解した。

 

「ここは……!」

『そうです。ようこそ不動遊星、我々の戦いの場へ』

 

振り仰いだのは空。

高台の先であるそこに、明らかに急ごしらえの、半分になったデュエルリングのようなものと、佇むカプリコンの姿があった。

 

『無限霊廟アーククレイドル……亜空間に消えたこの場所に、ようやく接続することが出来ました』

「なに!?」

『我々の作戦の全てはここに帰結します。マイナスのエネルギーを溜め込むことによってアーククレイドル中心部のモーメントを一時的にでも逆回転させ、地上に引き寄せる……そのエネルギーを増幅するためには、やはりデュエルが一番ですからね。神官たちのデュエルディスクには、特殊なモーメントを搭載しています。それがデュエルのエネルギーをここに転送したのです。快く戦いに応じていただき、ありがとうございました』

「……!」

『もっとも、完全なノーリスクとはいきません。ここに来るだけなら、皆のデュエルによって膨れ上がった分だけでも十分でしたが……さすがにこれほどのデカブツに時空の壁を破らせるとなれば、ワタシも儀式を行う必要がありまして』

 

もったいぶって語るカプリコンに、遊星は波立つ感情を抑えてただ耳を傾ける。

現状を正確に把握しなければ、対処の手は根本から間違ったものになる。それは避けねばならない。

 

『これより、アーククレイドルを現世に招来するための儀式を始める!』

 

その言葉に続いて、遊星の後ろで疾駆の時を待つボルガニック遊星号を導くように、何かが鳴動し始める。

 

『それはこの地のシステムを用いたライディングデュエルによって行われます。そう、決闘神官であるこのワタシが! 不動遊星、貴方を完膚なきまでに叩き潰し、その背に託された未来を否定するのです。未来のシンボルである貴方の死は、すなわち破滅への扉を開くことに同じ!』

「これは……」

『この儀式の進行は、アーククレイドル中枢の太陽ギア、その先のモーメントに連動しています。つまり貴方が敗北すれば、モーメントはマイナス回転を始め、ネオ童美野シティへ墜落します。それに連動して旧モーメント『Uru』も逆回転を始め、それは加速し続ける! 最終的にはこの町のみならず、世界全てをマイナスエネルギーが炸裂し、破壊することになります』

 

間違いない。

これはダークシグナー事件の時、レクス・ゴドウィンが遊星たちに挑んできた、冥界の王を迎えるための儀式と同じだ。

ならば、

 

「カプリコン! オレがこのデュエルに勝てば、アーククレイドルは!?」

『今度こそ眠りにつくでしょう。しかし、それはさせません! アスクレピオス様第一のしもべである、このワタシが!』

「ならばこのデュエル、受けて立つ!!」

『潔し!』

 

遊星が叫んだ瞬間、アーククレイドルの中心部から聞き覚えのある合成音声が聞こえてきた。

 

【ライディングデュエルが開始されます。ライディングデュエルが開始されます。ルート上の一般車両は直ちに退避してください】

「!? この音声は……!」

『ここは元々ネオ童美野シティだった場所ですよ? 当時のシステムはそのまま生きています。ただし、我々の術によって少しだけ改造していますが』

 

ボルガニック遊星号の周囲にライディングレーンの展開を示す防壁が競り上がり、そこから光の道が空中へと伸びていく。複雑怪奇なコースを描く、立体的なこれこそがこの決戦のフィールド。

いやおうなしにレクスとの戦いを思い出すが、あの時とは違いジャックもクロウもおらず、見守る仲間もいない。

 

(だが……例え共にいなくても、オレには確かに仲間がいる! そしてあの時、Z-ONEに託された、彼に見せたオレたちの未来を、決して嘘にはしない!)

『ワタシはこのままデュエルを行います。では……覚悟はよろしいかな?』

「ああ! 行くぞ、カプリコン!!」

 

 

「『デュエル!!』」

 

 

 

遊星:LP4000

カプリコン:LP4000

 

光の道をたどり、空中へ走り出す遊星号。

感覚は普通にライディングデュエルをする時と変わらない。少なくとも、道がいきなり消えて墜落することはなさそうだ。

 

『決着がつくまでこの道が消えることはありませんので、ご安心を。では、勝負を仕掛けた身として先攻は差し上げましょう』

「ならばオレのターン! ドロー!」

 

遊星:手札5→6 

 

「オレはモンスターをセット!」

 

遊星:手札6→5

 

「さらにカードをセットし、ターンエンド!」

 

遊星:手札5→4

 

『まずは様子見ですか? ワタシのターン、ドロー』

 

ディスクの代わりにデュエルリングのシステムを使っているカプリコンが、手元に置かれたデッキからカードを引く。

その周辺だけ見れば、デュエルモンスターズ黎明期の懐かしい光景に見えなくもない。

 

カプリコン:手札5→6 

 

『ワタシは《流星方界器デューザ》を召喚します』

 

そのカプリコンが呼び出したのは、伸縮自在の腕を持った黒いメカ。

一応ヒト型に近いシルエットだが、どことなく生物的な意匠も垣間見える。

 

『デューザの効果を発動! 召喚した時、デッキから方界カードを墓地に送ります。《方界胤ヴィジャム》を墓地へ』

 

カプリコン:手札6→5

 

『バトルです。デューザで守備モンスターを攻撃! 方界ブースト・ナックル!』

 

大きく振るわれた拳が、遊星の守備モンスターを殴り飛ばす。

緒戦はまずカプリコンが機先を制した形だ。

 

「トラップ発動! 《スクランブル・エッグ》! モンスターが戦闘で破壊された時、デッキから《ロードランナー》を特殊召喚する!」

 

フィールドに現れた卵が割れ、桃色の小さな鳥が遊星号の隣を飛び始める。

 

『《ロードランナー》……なるほど。ワタシはカードを2枚セット』

 

カプリコン:手札3

 

『これにてターンエンドです』

「オレのターン!」

 

遊星:手札4→5

 

(《ロードランナー》は攻撃力1900以上のモンスターには倒されない……だが、貫通ダメージや、効果による破壊を間違いなく狙ってくるはず。ならば今の内に!)

「オレは、手札の《ジャンク・コンバーター》の効果を発動! このカードと、手札のチューナーを1枚墓地に送り、デッキからシンクロンと名のつくモンスターを手札に加える!」

 

遊星:手札5→3

 

「そして、手札に加えた《シンクロン・キャリアー》を召喚!」

『む? そのモンスターは……』

「このモンスターがいる限り、通常召喚の他に1度、シンクロンを召喚できる! 《ジャンク・シンクロン》を召喚!」

 

呼び出されたのは遊星の代名詞たる、涼の言葉を借りれば「最古参で頂点の」チューナーモンスター。

リコイルスターターを引っ張り、早速仕事の準備にかかる。

 

「《ジャンク・シンクロン》の効果で、墓地から《ジャンク・コンバーター》を復活させる。レベル2の《ジャンク・コンバーター》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

「集いし星が、新たな力を呼び起こす! 光さす道となれ!」

 

 

「シンクロ召喚! いでよ、《ジャンク・ウォリアー》!!」

 

 

遊星のデッキにおける切り込み役、シンクロモンスターの中で恐らくもっとも有名な機械戦士が、フィールドに飛び出す。

その真価は、非力な仲間の力を束ねることで発揮される。

 

「《ジャンク・ウォリアー》の効果発動! 自分フィールドのレベル2以下のモンスターの攻撃力分、パワーアップする! だがこの瞬間、オレは墓地の《ジャンク・コンバーター》と、場の《シンクロン・キャリアー》の効果を発動!」

『ぬ!?』

「シンクロンがシンクロ素材になったことで、《シンクロン・キャリアー》の効果により、レベル2のシンクロントークンを生成! さらにシンクロ素材となった《ジャンク・コンバーター》の効果で、墓地のチューナーである《ジャンク・シンクロン》を特殊召喚!」

 

一挙に遊星の場をモンスターが埋め尽くす。

そして、モンスターたちの力が《ジャンク・ウォリアー》に結集し、強大なパワーを生み出す。

 

「オレの場のレベル2以下のモンスターは、《ロードランナー》と《シンクロン・キャリアー》、シンクロントークン! 攻撃力の合計は1300、よって《ジャンク・ウォリアー》の攻撃力は3600まで上昇する! パワー・オブ・フェローズ!!」

『一気に上回って来ましたか!』

「まだだ! オレは、レベル2のシンクロントークンと《シンクロン・キャリアー》、レベル1の《ロードランナー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

「集いし願いが、新たに輝く星となる! 光さす道となれ!!」

 

 

「シンクロ召喚!! 飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!!」

 

 

弱小モンスターを大量に並べたのは、《ジャンク・ウォリアー》の強化のためだけではない。

1体ずつでは非力なそれらが、チューナーによって調律されることにより、強大な力を生む。それがシンクロ召喚の真の意味だと、遊星は信じている。

 

『シグナーの竜と《ジャンク・ウォリアー》……不動遊星のエースが揃いましたか』

「バトルだ! 《ジャンク・ウォリアー》で《流星方界器デューザ》を攻撃!」

 

攻撃命令を受け、背中のエンジンで加速した《ジャンク・ウォリアー》が渾身の右ストレートを叩き込む。

 

「打ち砕け! スクラップ・フィスト――――!!」

『そうはさせません。ワタシはこの瞬間、トラップカード《方界降世》を発動! デッキからこのモンスター、《方界胤ヴィジャム》を守備表示で特殊召喚し、攻撃対象をこちらに変更します』

 

が、それが届く前に一つ目の開いた種のようなモンスターが割り込み、存分に勢いの乗った鉄拳を確実に受け止めていた。

 

『ヴィジャムは戦闘では破壊されません』

「くっ、ならばスターダストでデューザを攻撃! シューティング・ソニック!!」

『それも通しません! トラップ発動、《方界縁起》! ワタシの場の方界モンスターと同じ数まで、相手モンスターに方界カウンターを置きます』

 

さらにスターダストが攻撃態勢に入った瞬間、《ジャンク・ウォリアー》共々石化したようになって動かなくなってしまった。

 

「これは!?」

『方界カウンターが置かれているモンスターは、効果が無効化され攻撃もできません。これをアンディメンション化と呼びます』

「アンディメンション化だと……!? くっ、オレはこれでターンエンド!」

 

遊星:手札1

 

『拙速が裏目に出ましたな。ワタシのターン!』

 

カプリコン:手札3→4

 

(……とはいえ、アンディメンション化しても、それで攻撃力が下がるわけではありませんからな。では)

『まあとりあえず、《スターダスト・ドラゴン》には消えてもらいましょう。ワタシは永続魔法《方界業》を発動! このカードは、方界モンスターを対象にとり、デッキからヴィジャムを墓地に送ることで、その数×800の攻撃力を追加します。ワタシは2枚墓地へ送り、デューザの攻撃力を1600アップ!』

 

ヴィジャムの幻影が浮かび上がり、それを吸収したデューザの機体からオーラが立ち上る。

 

「攻撃力3200!?」

『しかもこれは永続的なものであり、《方界業》がなくなっても上がったままです。では、バトルフェイズ! デューザで《スターダスト・ドラゴン》を攻撃しますが、この時にデューザの効果を発動! モンスターが墓地に送られたターンの間、ワタシの墓地のモンスター1種類ごとに攻撃力が上がります。今いるのはヴィジャム2枚ですから、1種類で200アップです』

 

《流星方界器デューザ》:ATK3200→3400

 

『ゆけデューザ! 方界ブースト・ナックル!』

 

大きく勢いを増したぶん回しで、スターダストが殴り飛ばされ墜落する。

下敷きになるのを避けるため遊星号は大きく蛇行を強いられたが、それでも衝撃が伝播しライフが削られていく。

 

遊星:LP4000→3100

 

「ぐあっ!? く……なんてヤツだ」

『これでアクセルシンクロは防げましたかね。ターンエンドです』

 

カプリコン:手札3

 

「オレのターン!」

 

遊星:手札1→2

 

(奴のモンスターは戦闘で破壊されないヴィジャムと、攻撃力3200のデューザ……ここはしのぐしかない)

「オレは《ジャンク・ウォリアー》を守備表示に変更! モンスターをセットし、ターンエンド!」

 

遊星:手札2→1

 

『ワタシのターン、ドロー!』

 

カプリコン:手札3→4

 

『やれやれ、守備モンスターでしのがれるのはこちらとしては厳しいのですが。とはいえ……フム、では仕掛けるとしましょう。ワタシはヴィジャムを墓地に送り、手札から《方界帝ゲイラ・ガイル》を特殊召喚!』

 

ふよふよと浮いていたヴィジャムの下に、墓地から突然もう1体のヴィジャムが現れ、ぷよんとくっ付いたところで、後ろから現れた何かに食いつかれる。

それは不気味な鳥のようなモンスターであり、取り込んだヴィジャムが核となってその力を引き出した。

 

「方界モンスターのうち、帝、獣と名のつくモンスターは、場の方界モンスターを墓地へ送ることで特殊召喚されます。そしてその方法で呼び出した場合、攻撃力が上がります。よってゲイラ・ガイルの攻撃力は800ポイントですが……」

 

コースがカプリコンに近づき、肉声が聞こえ始めた時だ。

鋭くきらめく眼光が、ビームとなって遊星を襲う。

 

「手札から特殊召喚したゲイラ・ガイルの強制効果! 800ダメージを受けていただきます』

「ぐっ!?」

 

遊星:LP3100→2300

 

『バトルフェイズ! デューザで《ジャンク・ウォリアー》を攻撃。方界ブースト・ナックル!』

 

石化した機械戦士が、大ぶりの一撃で砕け散る。

さらにゲイラ・ガイルも竜巻を放って守備モンスターに襲い掛かるが、

 

「《シールド・ウイング》の効果発動! 1ターンに2度、戦闘では破壊されない!」

『それ以前に守備力900では届きませんな。うおーっ!?』

 

呆気なく跳ね返され、カプリコン自身にダメージが降りかかる。

 

カプリコン:LP4000→3900

 

『やれやれ、格好のつかないことです。しかし、ゲイラ・ガイルの効果発動!』

「まだ効果があるのか!」

『そう、方界モンスターはバトルを行った後、自身を墓地に送ることで組み込まれていたヴィジャムを特殊召喚できるのです。というわけで蘇りなさい、2体の《方界胤ヴィジャム》!』

 

ゲイラ・ガイルを構成していたパーツが分離し、ヴィジャム2体がころんと転がり出る。

そして、カプリコンの手には新たなカードが加わっていた。

 

『さらにその後、デッキから次の形態である《方界帝ヴァルカン・ドラグニー》を手札に加えることができます』

 

カプリコン:手札4→3→4

 

『1枚カードを伏せてターンエンド! さあ、かかっておいでなさい』

「オレのターン!」

 

遊星:手札1→2

 

(方界帝……恐らく今手札に加わったモンスターは、3体のヴィジャムを呼び戻すもの。デッキの中に同じ名前のモンスターは3枚が上限……次に手札に加わるのは最終形態ということか)

 

方界モンスターの特性を大まかに理解した遊星だが、状況は悪い。もう1体のモンスターを呼び出されれば《シールド・ウィング》だけでは持ちこたえられないが、シンクロ召喚ができる手札でもない。

 

(速攻を狙ったのが完全に裏目に出た……! ここは耐えるしかない!)

「オレはこのままターンエンド!」

『いつまで持ちこたえられますかね。ワタシのターン、ドロー!』

 

カプリコン:手札3→4

 

『永続魔法《方界法》を発動! そして効果により、手札の《方界合神》を墓地に送り、カードをドローします』

 

カプリコン:手札4→3

 

『ム……このカードでは追撃できませんね。しかし結果は同じ。ワタシは2体のヴィジャムを墓地に送り、《方界帝ヴァルカン・ドラグニー》を特殊召喚!』

 

ヴィジャムが3体に増え、それを取り込んで現れたのは、いわく形容のしがたい意味不明な姿のモンスター。

ヴィジャム3体が縦に並ぶように取り込まれ、最上部の1体が角の生えた頭部を形成、肩に見える部分からは斧のような武器のついた触手の腕が6本、そして鳥足に似た脚部。

 

『方界帝の効果により、800ダメージを受けてもらいます』

 

遊星:LP2300→1500

 

「うわっ……! くっ、このままでは」

『さらに、です。今、ワタシの場の方界モンスターが場を離れましたね? これにより、墓地の罠カード《方界合神》を除外して効果発動! デッキから方界を特殊召喚します。いでよ、《流星方界器デューザ》!』

 

そして、2体目のデューザがヴァルカン・ドラグニーを挟むようにして特殊召喚される。

これで、カプリコンのモンスターは3体。

 

『それではバトルと行きましょう。2体のデューザで《シールド・ウィング》に攻撃! 方界ブースト・ナックル!』

 

叩き付けられる拳を、《シールド・ウィング》は辛うじて受け止める。

しかし、衝撃に耐えきれず防御態勢を解いたそこに、ヴァルカン・ドラグニーの放ったエネルギー弾が襲い掛かった。刃の触手とは何だったのか。

 

「済まない、《シールド・ウィング》……!」

『よくもまあ持ちこたえました。では、ヴァルカン・ドラグニーの効果を発動! このカードを墓地に送り、墓地より3体のヴィジャムを特殊召喚! そして、《方界超帝インディオラ・デス・ボルト》を手札に加えます』

 

カプリコン:手札3→4

 

『そして、3体のヴィジャムを墓地に送ります。紡がれし光よ、漆黒なる闇よ! 世界をあるべき姿へ導くため、大いなる扉を開け!』

 

 

『降臨せよ、レベル4! 《方界超帝インディオラ・デス・ボルト》!!』

 

 

アーククレイドルの中心に位置する塔、その麓の部分に巨体が落着する。

3体のヴィジャムを取り込み、どことなく類人猿を思わせる異形の怪物が、じっと遊星を見上げていた。

 

「あれが奴の、エースモンスターなのか……!?」

『方界帝の効果により、800ダメージを受けなさい!』

 

襲い来る雷撃が、ボルガニック遊星号を撃つ。

 

遊星:LP1500→700

 

「ぐぅっ…ま、まだだ!」

『とことんしぶとい……さすがに不動遊星というべきですか。ワタシはカードを1枚伏せ、ターンエンドです』

 

カプリコン:手札4→2

 

「オレのターン!」

 

遊星:手札2→3

 

『一つ忠告しておきましょう、不動遊星。インディオラ・デス・ボルトは相手によって墓地へ送られた場合、墓地の方界モンスター3体を特殊召喚し、さらにデッキか墓地から方界モンスターを手に入れる効果があります。そう、墓地からもです』

「!!」

『お分かりですね? そしてヴィジャムは戦闘での破壊は不可能。貴方の負けです』

 

絶体絶命という形容の意味を、まさに遊星は実感せざるを得なかった。

このターンでカプリコンを倒さなければ、次のターンの効果ダメージで敗北する。だが、確実に出て来るだろうヴィジャムを、戦闘以外でどうやって突破する?

八方ふさがりに近い、だがそれでも。

 

「オレはまだ諦めない! 魔法カード《貪欲な壺》を発動! 墓地の《シンクロン・キャリアー》、《シールド・ウィング》、《スターダスト・ドラゴン》、《ジャンク・コンバーター》、《ジャンク・シンクロン》……いや、《ロードランナー》をデッキに戻し、2枚のカードを……ドロー!!」

 

遊星:手札3→4

 

引き込んだカードを見て、遊星は直感が正しかったことを悟った。

デッキに戻すカードを選んだ瞬間、《ジャンク・シンクロン》に腕を引っ張られるようなイメージが一瞬だけよぎったのだ。

この手の直感を無視すると大変なことになるというのは身に染みていたが、それが幸いした。

 

「オレは魔法カード、《スピード・チューン》を発動! デッキから《スピード・ウォリアー》を、墓地からシンクロンと名のつくチューナーを特殊召喚する! 復活せよ、《ジャンク・シンクロン》!」

 

そして遊星の場に並ぶ、彼の象徴たる下級モンスターたち。

その並びは、否応なしに《ジャンク・ウォリアー》を想起させる。

 

『フム、またしても《ジャンク・ウォリアー》ですか。しかし攻撃力を高めたところで……』

「レベル2の《スピード・ウォリアー》に、レベル3の《ジャンク・シンクロン》をチューニング!」

 

「集いし記憶が、新たな道を切り拓く! 光さす道となれ!」

 

 

「シンクロ召喚! 何も恐れず駆け抜けろ、《ジャンク・スピーダー》!!」

 

 

馴染みの2体から召喚されたのは、《スピード・ウォリアー》と《ジャンク・ウォリアー》が合体したかのような姿を持つ、ウイングとマフラーをなびかせる白い機械戦士。

背後側のコースから現れたその姿を見て、カプリコンが初めて動揺を見せた。

 

「何と!? そのモンスターは歴史にはなかったもの……! まさか、究極神が!?」

「あいつを知っているのか……!? 《ジャンク・スピーダー》の効果発動! シンクロ召喚に成功した時、デッキからシンクロンと名のつくチューナーを可能な限り守備表示で特殊召喚する!」

 

ボルガニック遊星号を先導するように疾走するその背中を追うように、遊星のデッキから4体のモンスターが我先にと飛び出し、追走を始める。

 

「現れよ、《ジェット・シンクロン》! 《スターダスト・シンクロン》! 《サテライト・シンクロン》! 《スチーム・シンクロン》!」

 

ジェットエンジンの形を持つ機械族、《スターダスト・ドラゴン》に似た姿のチューナー、人工衛星型のモンスター、そして蒸気機関車型のチューナー。

それぞれが《ジャンク・スピーダー》を囲むように飛び回る。

 

「《スターダスト・シンクロン》の効果発動! 《スターダスト・ドラゴン》の名をテキストに記したカードを手札に加える。オレが加えるのは、《スターダスト・イルミネイト》!」

 

遊星:手札4→3→4

 

『しかし、チューナーだけではシンクロ召喚は出来ません。どうやら逆転はできなかったようで』

「《ジャンク・スピーダー》を忘れているぞ! オレはレベル5の《ジャンク・スピーダー》に、レベル3の《スチーム・シンクロン》をチューニング! 再び飛翔せよ、《スターダスト・ドラゴン》!!」

 

そして、分身たる星屑のドラゴンが再びフィールドに舞い降りる。

 

「さらに魔法カード《スターダスト・イルミネイト》を発動! このカードは、スターダストと名のつくモンスターをデッキから墓地に送る。だがオレの場に《スターダスト・ドラゴン》が存在することにより、墓地に送らず特殊召喚することができる!」

『なんと!?』

「これにより、《スターダスト・トレイル》を特殊召喚!」

 

星の輝きに導かれるように現れたのは、遊星のデッキには珍しい完全な人型のモンスター。

ドラゴンの特徴を備えた赤い髪の女性が遊星号と並ぶように飛び始める。

 

「さらに、レベル4の《スターダスト・トレイル》に、レベル4の《スターダスト・シンクロン》をチューニング!」

 

「星界を切り裂く一筋の光よ! 魂を震わし世界に轟け!!」

 

 

「シンクロ召喚! 飛翔せよ、《閃珖竜 スターダスト》!!」

 

 

スターダストと全く同じ姿をしたドラゴンが、光を放ち舞い上がる。

何かの紋章のような模様が全身に存在している以外、瓜二つのその姿を見て、カプリコンの動揺が大きくなる。

 

『決闘竜!? し、しかもあれは神官の五竜……! 馬鹿な、シグナーの竜と相いれるはずが!?』

 

だが、カプリコンのその言葉とは裏腹に、2体のスターダストは共鳴するように咆哮を上げ、遊星を守る様にその左右を固めて飛行している。

 

『究極神め……どこまでも我々の邪魔をするつもりですか! つくづく余計なことをしてくれましたね、“不動遊星”……!』

「《スターダスト・トレイル》の効果で、スターダスト・トークンを1体生成する!」

 

遊星:手札4→3

 

「さらに魔法カード《流星の宝札》を発動! 2枚ドローする!」

 

遊星:手札3→4

 

「バトルだ! 《閃珖竜 スターダスト》でインディオラ・デス・ボルトを攻撃! シューティング・ブラスト!!」

 

迸ったのは光の衝撃波。

文字通り光の速度で空を貫くそれが、インディオラ・デス・ボルトを違わず捉え爆砕する。

 

カプリコン:LP3900→3800

 

『しかし、ワタシはインディオラ・デス・ボルトの効果を発動! 墓地より3体のヴィジャムを特殊召喚し、さらに《方界帝ゲイラ・ガイル》を手札に戻します』

 

カプリコン:手札2→3

 

『ゲイラ・ガイルは方界モンスターが1体でもいれば特殊召喚できます。さらにこの瞬間、ワタシは永続魔法《方界業》を墓地に送り、効果発動! 相手のライフを半減させます』

「何!?」

 

遊星:LP700→350

 

『これで次のターン、貴方の負けは確定しました』

「そうはさせない! 《スターダスト・ドラゴン》で、攻撃力1600のデューザに攻撃! シューティング・ソニック!」

『ならばデューザの効果を発動! 墓地にいるのは方界帝が2体、よって攻撃力を400アップ! これで戦闘ダメージは減少します』

 

カプリコン:LP3800→3300

 

『さて、ここまでですかな』

「そうはさせないと言ったはずだ! オレはレベル1のスターダスト・トークンに、レベル1の《ジェット・シンクロン》をチューニング! 希望の力、《フォーミュラ・シンクロン》!」

 

バトルが終了しても遊星の目の光は消えていない。

残るモンスターが一つになり、レーシングカーの姿をしたシンクロチューナーが出現する。

 

「《フォーミュラ・シンクロン》の効果により1枚ドロー!」

 

遊星:手札4→5

 

「さらに行くぞ! ―――クリアマインド!」

 

間髪入れずボルガニック遊星号が急加速し、一気に限界スピードを突破しその姿が消えた。

 

『これは!』

「レベル8の《スターダスト・ドラゴン》に、レベル2のシンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング!」

 

「集いし願いが拳に宿り、鋼を砕く意志となる! 光さす道となれ! ―――アクセル・シンクロ―――ッ!!」

 

 

「現れろ! 《スターダスト・ウォリアー》!!」

 

 

そして別のコースに現れた時に伴っていたのは、遊星の新たなるシンクロモンスター。

《スターダスト・ドラゴン》が人型に変形したかのような姿、頭部や胴体、肩に面影を強く残し、機械の翼にも星屑の輝きがちりばめられている。

 

「まだだ! レベル8の《閃珖竜 スターダスト》に、レベル2の《サテライト・シンクロン》をチューニング!」

 

「集いし夢が、途切れぬ明日を紡ぎ出す! 光さす道となれ!!」

 

 

「シンクロ召喚! 飛び立て、《サテライト・ウォリアー》!!」

 

 

トドメとばかりに降臨したのは、チューニングの光の中から飛び出したロケット。

それが展開し、変形し、ソーラーパネルを模した「X」のウイングを持つ金色の機械戦士へと姿を変える。

 

「《サテライト・ウォリアー》の効果発動! シンクロ召喚した時、オレの墓地のシンクロモンスターの数まで相手の場のカードを破壊する!」

『!?』

「オレの墓地のシンクロモンスターは、2体のスターダストと《ジャンク・ウォリアー》、《ジャンク・スピーダー》、《フォーミュラ・シンクロン》の5体! よって、お前の場にいる3体のヴィジャムと《流星方界器デューザ》、そしてリバースカードを破壊する!」

 

降り注ぐ光が、カプリコンのカードを容赦なく貫き、破砕する。

 

―――コメット・ブラスト!!

 

『ワタシのモンスターが……!』

「そして、破壊した数1枚につき、1000ポイント攻撃力をアップする!」

 

《サテライト・ウォリアー》:ATK2500→7500

 

『ヴィジャムを破壊するためにわざわざメインフェイズ2に……! しかし残念ですが、墓地に送られた《方界業》にはまだ効果があります。このカードを除外することで、方界モンスターを手札に加える! つまりこれで3枚目のデューザを手札に加えれば、ゲイラ・ガイルの効果ダメージでどのみち貴方の負けなのですよ』

「……オレはカードを3枚セットし、ターンエンド!」

 

遊星:手札5→2

 

『ワタシのターン! ドロー!』

 

カプリコン:手札3→4

 

『では行きましょう、墓地の《方界業》を除外し効果発動! デッキから最後の《流星方界器デューザ》を手札に加え、そのまま通常召喚!』

「!」

『そして、これで終わりです! デューザを墓地に送り、《方界帝ゲイラ・ガイル》を特殊召喚!』

 

デューザが姿を消し、ゲイラ・ガイルが遊星にトドメを刺すために風を巻き起こす。

だが、その瞬間遊星が不敵に笑む。

 

『ゲイラ・ガイルが特殊召喚に成功した時、効果発動! 800のダメージを受けるがよろしい!』

「それは“特殊召喚に成功した時”の話だ! オレは《スターダスト・ウォリアー》の効果発動! ヴィクテム・サンクチュアリ!!」

 

星屑の戦士がその体を光の渦に変え、ゲイラ・ガイルを飲み込んで消し去った。

 

「このモンスターをリリースすることで、相手の特殊召喚を無効化し、破壊する!」

『なっ……破壊無効効果ではないのですか!?』

「オレも最初は驚いたさ。だが、これでお前の場にモンスターはいなくなった!」

『ぬ、ぬう……!』

 

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