「ぐ、ぐうう……ひどい目にあったな……」
スコルピオとのライディングデュエルの果て、破れかぶれの突撃をかけてきたスコルピオによって諸共地割れに転落したブルーノだったが、意識を失っていたのはわずかな時間だった。
目覚めてみればスコルピオはおらず、デルタイーグルが近くで横倒しになっていた。上げた顔の目の前に後輪があり、少しずれていれば下敷きになっていたところだ。
「そういえば、あいつの結界の中で戦っていたんだったか。デルタイーグル……まだ走れるな?」
立ち上がって愛機を起こしたところで、ブルーノは周囲の光景に見覚えがあることに気づいた。
気づいて、そして愕然となった。
「!? 馬鹿な……ここはアーククレイドル! 現出してしまったのか!?」
大慌てでデルタイーグルに飛び乗り、開口部を探して外に飛び出す。
そこで彼が見たのは、極彩色の空間に浮かぶ無限霊廟、それを取り巻く光の道だった。
「まだ外の世界には出ていないのか……だが、この道は一体」
言いかけて気づいた。道が展開されているということは、当然そこを走る者がいるということ。
つまりは、
「! ライディングデュエル……遊星が戦っているのか! どこを走っている……?」
遊星の姿を探して視線を巡らせるブルーノだったが、その矢先に恐らくカプリコンが呼び出しただろう異形のモンスターを見つけ、我が目を疑った。
あれは、確か。
(方界……!? あれは確か、パラドックスが観測した並行世界のデータにあった……別次元のモンスターカード!)
なぜあれがこの世界に、と思いかけて、機械の体に戦慄が走るのをほとんど実感した。
確か、あのデッキには最強のモンスターが存在したはず。それこそ、ブルーノが知る限りでは、時械神かジャックの《スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン》くらいしか対処できるカードが存在しない。
もしもあれが呼び出されたら。
「まずい……!!」
カプリコンの目論見を崩し、優位に立つ遊星。
しかし、彼の中のデュエリストの本能というべき感覚が、ひっきりなしに危険を伝えて来ていた。
その予感を、カプリコンの方が裏付ける。
『……やむを得ませんか』
「……?」
『ワタシは魔法カードを発動します。《逆境の宝札》により、カードを2枚ドロー』
カプリコン:手札3→4
『さらに魔法カード《悪夢再び》を発動。墓地からヴィジャムとインディオラを手札に戻します』
カプリコン:手札4→5
『では……これを見せるしかありませんね。ワタシは手札のヴィジャムとインディオラと《方界超獣バスター・ガンダイル》、3枚の方界モンスターを公開することで、このカードを特殊召喚!』
『闇よ、夜よ、暗黒よ! 光を喰らい世をくらませ! 《暗黒方界神クリムゾン・ノヴァ》!!』
闇が凝り、そこから浮かび上がる姿がある。
ヴィジャムが変異したかのような丸い本体を正方形の結界で包み、キューブの連なる尾と刃物を煌かせる両腕を広げる、巨体。
「攻撃力3000……これが奴の切り札なのか!?」
『ワタシはさらに、《方界波動》を発動! クリムゾン・ノヴァの攻撃力を倍化し、《サテライト・ウォリアー》の攻撃力を半減させます』
「なにっ!?」
『そう、これが第二の手段です。バトルフェイズ! 攻撃力6000のクリムゾン・ノヴァで《サテライト・ウォリアー》を攻撃!』
闇のエネルギーが集約され、それが波動となって《サテライト・ウォリアー》を襲う。
「トラップ発動! 《アイアン・リゾルブ》! ライフを半分払い、バトルフェイズを終了する!」
遊星:LP350→175
『なるほど。……ワタシはカードを伏せてターンエンドですが、ここでクリムゾン・ノヴァの効果発動!』
カプリコンが右手を掲げた瞬間、クリムゾン・ノヴァの体が不気味に明滅し始めた。
『ワタシのターンの終了時、全てのプレイヤーに3000のダメージを与えます。これで終わりです! ここで―――』
「カウンタートラップ《ダメージ・ポラリライザー》! ダメージを与える効果を無効にし、お互いに1枚ドローする!」
が、爆発的に放たれた破壊の波動が途中で一気に減衰し、カプリコンの狙ったような衝撃は発生しなかった。
さすがのカプリコンも、なかなかトドメの一撃が届かない状況に歯噛みし始める。
遊星:手札2→3
カプリコン:手札4
『ぬうっ、しぶとい……!』
「このエンドフェイズ、《スターダスト・ウォリアー》がフィールドに復活する! オレのターン!」
遊星:手札3→4
しかし、遊星も遊星で余裕はない。
クリムゾン・ノヴァの攻撃力は倍になり6000、《サテライト・ウォリアー》は3750に半減している。
無防備にターンを回せばそこで終わり、つまり何としてもこのターンであのモンスターだけは倒さなければならない。
(そしてこの手札……ならばオレがやるべきことは……)
「魔法カード《
《
速攻魔法
このカード名の①②の効果は自分フィールドに「スターダスト」Sモンスターが存在する場合に発動と処理が出来る。
①:デッキから「シューティング」魔法・罠カードを1枚手札に加える。
②:相手ターンに、墓地のこのカードを除外して発動できる。このターン、自分が受ける戦闘ダメージは0になる。
「そして、バトルフェイズ! 《サテライト・ウォリアー》でクリムゾン・ノヴァを攻撃!」
『むう!?』
攻撃力の劣るモンスターで攻撃を仕掛けて来る。
無謀にしか見えないそれを、カプリコンは決して自暴自棄やヤバレカバレとは思わない。
間違いなく、この攻撃には何かがある。
『その攻撃は通しません! トラップカード《方界転生》! このカードは方界モンスターが攻撃される時、その攻撃を無効にし、さらに攻撃対象となったモンスターと同名のモンスターを2枚まで手札に加える!』
「!」
『手札に加えたモンスターは、同名カードも含め次のワタシのターンの終了時まで特殊召喚できませんがね』
カプリコン:手札4→6
「ならば、《スターダスト・ウォリアー》でクリムゾン・ノヴァを攻撃!」
『一体何を!?』
ボルガニック遊星号はコースの半分ほどを過ぎ、カプリコンのはるか頭上、最高高度の地点に至っている。
そこから、文字通り流星と化した《スターダスト・ウォリアー》が襲い掛かって来た。
「この時、速攻魔法《シューティング・ソニック》を発動! スターダストと名のつくシンクロモンスターが戦闘を行う時、攻撃対象となった相手モンスターをダメージステップに除外する!」
『なっ!?』
「響かせろ、《スターダスト・ウォリアー》!! シューティング・ソニック・ナックル!!」
急降下するその姿に《スターダスト・ドラゴン》の姿がオーバーラップし、流星となったその一撃がクリムゾン・ノヴァを霧散せしめた。
『対象を取らない除外……それを通すために、防御カードを釣り出そうとして《サテライト・ウォリアー》を特攻させたのですか!?』
「ああ、お前がオレを警戒してくれて助かった! オレはこれでターンエンド!」
遊星:手札4
『しかし、負けるわけにはいかないのですよ。ワタシのターン!』
カプリコン:手札6→7
「カプリコン! なぜそこまで……」
『既に語る言葉は尽きました。ワタシは《ネメシス・キーストーン》の効果を発動! 除外されているクリムゾン・ノヴァをデッキに戻し、このカードを守備表示で特殊召喚します』
カプリコン:手札7→6
『さらに魔法カード《融合徴兵》を発動し、クリムゾン・ノヴァを手札に。そして……このカードを使わせていただきましょうか』
一体何が来る、と警戒心を強める遊星だが、別のコースにDホイールが飛び込んできた。
「あれは……ブルーノか!? どうしてここに!?」
「遊星、気をつけろ! 奴の使うモンスターは別次元の力を持っている! あれは闇のカードだ!!」
「何!?」
『……スコルピオは敗れましたか。しかしイリアステルの残党よ、その警告はあまりにも遅い!』
言って、カプリコンは手元のリバースカードを開いた。
『トラップカード《方界合神》を発動! 手札のクリムゾン・ノヴァ3体を墓地に送り、融合召喚を行います!』
「融合だと!?」
「来るぞ、遊星!」
『大いなる力よ集え! 偽りの未来を真なる破滅へと導くため、漆黒の闇よりいでよ! 融合召喚!!』
『降臨せよ! 《暗黒方界邪神クリムゾン・ノヴァ・トリニティ》!!』
クリムゾン・ノヴァの体が立方体の結界を突き抜けて大きく伸長・肥大化し、アーククレイドル中枢部とほぼ一体化するような形で赤い悪魔の姿が顕現する。
コースとなっている光の道の中央を貫く形で現れた巨体に、遊星もブルーノも驚愕せざるを得なかった。
だが同時に、ごごんっ、と何かが動くような音が響き、ついでアーククレイドル全体に不気味な虹色の光が巡り始めた。
「これは!?」
「まずい! モーメントの逆回転が始まったのか!?」
『その通り。このモンスターの力により、モーメントを無理矢理マイナス方向に回転させているのです。そして、これで終わらせる! バトルフェイズ!』
攻撃態勢に入った《クリムゾン・ノヴァ・トリニティ》の全身から、不意に無数の光条が放たれ、それが光の道を無差別に破壊していく。
『モンスター効果発動! このカードの攻撃宣言には生贄が必要となる……それは、貴方のライフポイントの半分です!!』
「なっ……うおああああっ!?」
「遊星!!」
煽りを受けてコースアウトしかけた遊星号を、滑り込んだデルタイーグルが押し返して支え、復帰させる。
「すまない、ブルーノ!」
「言っている場合じゃない! 攻撃が来るぞ!」
「! オレは墓地の魔法カード《
『あきらめの悪い……! しかしクリムゾン・ノヴァ・トリニティの効果により、ライフを半減させます!』
遊星:LP175→87
『ゆけ、クリムゾン・ノヴァ・トリニティ! 《サテライト・ウォリアー》を破壊せよ!!』
放たれ続けるビームが集束し、遊星を守るように立ちふさがった《サテライト・ウォリアー》を粉砕した。
だがダメージこそ免れたものの、降りかかる衝撃はこれまでの比ではない。
「ぐあああああ!?」
「なっ、何だこの衝撃は……!」
並走しているデルタイーグルにも無視できないダメージが及ぶが、邪神の攻撃はまだ終わりではない。
『クリムゾン・ノヴァ・トリニティは、攻撃で相手モンスターを破壊した時、もう一度だけ攻撃できる! 砕け散りなさい、《スターダスト・ウォリアー》!!』
そしてさらなる一撃が、星屑の名を持つ機械戦士を粉々に爆砕する。
度重なる攻撃に、耐えきれなかったのはモンスターだけではない。
「!? うおっ……うわぁぁぁぁ!?」
「遊星!!」
光の道がついに崩壊を始め、走るべき道を失ったボルガニック遊星号が乗り手ごと虚空へと落ちていく。
どうにか遊星を拾い上げようと、ブルーノはデルタイーグルにオーバーワークを強いりつつも崩れていく道を軽快に飛び渡る。
だが、伸ばした手が届く刹那、落下してきた道の破片がそれを遮った。
「しまっ……!!」
落下する遊星の視界の中を、アーククレイドルが奇妙にゆっくりと過ぎていく。
世界の狭間に放り出されれば死は免れない。
乗り手から離れたボルガニック遊星号が、虚空の果てへ消えていく。
だがそれでも、
(まだだ……! まだ、オレは戦える! 希望があるから決して絶望はしない!!)
走る道がなかろうと、その心に諦めはなかった。
意志に反して落ち行くその身を、
(あなたには、新たな未来が託された)
(あなたは生きなければならない!)
鉄の壁を突き破って伸ばされた巨大な機械の手が、受け止めていた。
『なっ……!?』
「あれは!?」
「……まさか!?」
三者が三者とも、「それ」の意味を理解できなかった。
しかし、「それ」が何であるかは知っていた。
カプリコンがうめく。
『この期に及んで……! しかし、Dホイールもカードも失った今、ライディングデュエルを続けることは不可能! この戦い、ワタシの勝利です!』
「それはどうかな!」
応じる遊星の左腕には、起動状態のデュエルディスク。
「オレのデュエルディスクとDホイールは手作りでね! 最初にそいつの攻撃を受けた時、Dホイールから取り外しておいた!」
遊星のDホイールは完全なハンドメイドであり、当時のサテライトではデュエル用の機能を完全内蔵するには至らなかった。そのため、システムの基幹部分をデュエルディスクと連動させることで補っていたのだが、これが幸いした形だ。
『しかし、これはライディングデュエル! 走れないDホイーラーにターンは回って……な、何ですかこれは!?』
続けて、アーククレイドル全体がかすかに揺れ始める。
事態を察した遊星が謎のアームを伝って内部に走り込み、数秒置いてその全景があらわになった。
それは、機械の巨腕を持った、オウムガイのようなシルエットを持つ特殊なD・ホイール。
本来の主が座していた場所に、遊星が乗り込んでいた。
急速浮上してきたその姿に、ブルーノは一瞬、別の姿を幻視する。
「あれはZ-ONEの……!?」
『ば、馬鹿な!? 無限界帝はとうに死んだはず……!!』
「これが絆の力だ! オレには仲間がいる! どれほど離れようと、例え死によって引き裂かれようとも、決して途切れない仲間の絆がある! だから、お前のやっていることは無駄だ、カプリコン!」
『何を!?』
「たとえオレが志半ばで斃れようと、オレの意志は誰かに受け継がれ、決して消えることはない! 今日まで紡がれた多くの意志の繋がりが、途切れないように、消えないように……数えきれないほどに傷ついても、確かな明日が来るようにと……そう願いを込めて、二度とない今日を走る! オレたちが、イリアステルが、ゴドウィン達が、そして多くの人々がそうしてきたように! その意志が必ず、未来を切り開く!」
『冗談ではない! 我々にとっては、その明日こそ、その未来こそ忌むべきものなのです! この世界は滅びなければならない! それに、受け継ぐことは簡単ではない!』
怒りをあらわにするカプリコンは、どこまでも自分の意志を貫き通す姿勢を崩さない。
ブルーノにはそれがなぜか、
(泣いている……?)
まるで、親に置き去りにされた子供のように見えた。
『思想や意志は、ミームとなり他者に伝わる……しかしそれは伝わっていく過程で変質し、いずれ貴方の理想とは懸け離れた現実へと繋がっていく! 現に見なさい、貴方の場には、その意志を形にすべきモンスターは1体もいない! どれほど意志を繋げようとも、結局はこれが現実なのです!』
「そんなことはない! オレの意志は……オレたちの絆は、まだ断ち切られてはいない!」
フィールドに光が差す。
そこに現れたのは、遊星の墓地に眠っていたはずの機械戦士たち、そして閃光の竜。
「《サテライト・ウォリアー》は破壊された時、オレの墓地に眠るウォリアー、シンクロン、スターダストと名のつくシンクロモンスターを1体ずつ復活させることができる! これにより、《ジャンク・ウォリアー》、《フォーミュラ・シンクロン》、《閃珖竜 スターダスト》を特殊召喚!」
『何だと!?』
「さらに《スターダスト・ウォリアー》の効果! このカードが相手によってフィールドから離れたことで、エクストラデッキから新たな戦士をシンクロ召喚できる! 現れろ《スカー・ウォリアー》!」
そして星屑の光に導かれ、傷だらけの戦士が戦列に加わる。
『ぐうううう……! ワタシはカードを2枚伏せ、ターン、エン』
「《フォーミュラ・シンクロン》の効果発動! シンクロ召喚を行う!」
『!?』
攻撃を終えてしまったカプリコンがターンを終えようとした瞬間、遊星の乗るモーメント・コア・フライホイールの周囲から竜巻が巻き起こった。
アーククレイドルコアのマイナス回転が大きく速度を落とし、風の中を3つの光が駆け抜けていく。
「《シューティング・スター・ドラゴン》……じゃない!?」
「レベル5の《ジャンク・ウォリアー》と《スカー・ウォリアー》に、レベル2のシンクロチューナー《フォーミュラ・シンクロン》をチューニング! オーバートップ・クリアマインド!」
「集いし絆の煌きが、新たな未来を描き出す! 光さす道となれ! ―――リミットオーバー・アクセルシンクロ!!」
「輝け、オレたちの希望の光! 《コズミック・クェーサー・ドラゴン》!!」
光の向こうから、宇宙の可能性を秘めた新たなドラゴンが舞い降りて来る。
過去と現在と未来、3つの力を束ねた、これこそ遊星の新たなる切り札。
「あのモンスターは……《コズミック・ブレイザー・ドラゴン》!? いや、違う……あれが、遊星の新たな進化か!」
『こ、ここまで来てまたしても……!?』
「そしてオレのターン! ドロー!!」
遊星:LP87→44 手札4→5
ドローしたモンスターカードを見て、遊星は息をのんだ。
(そうか……! お前が力を貸してくれるのか! Z-ONE!)
『ぬう……しかし、クリムゾン・ノヴァ・トリニティは効果の対象にならず、また効果で破壊されることもない! 貴方のモンスターでこの邪神を倒すことは不可能!!』
「この世に不要なカードなどない……そして、無敵のカードもまた、ない! お前に見せてやる、カプリコン! 未来のために全てを懸けた、もう一人のオレの意地の力を!」
モーメント・コア・フライホイールが大きく移動し、カプリコンと正対する位置へ現れる。
「オレは手札のチューナーモンスター、《時械神官》の効果発動! 自分フィールドにレベル10以上のモンスターが存在する時、特殊召喚できる! そしてその後、フィールドの他のモンスターを選び、そのレベルを2つ下げることができる!」
そこに現れる、鎧をまとったヒトガタのモンスター。
下半身は何かの台座のような一本足、顔のない形だけの頭部には帽子のような飾りが見える。
「!? あれは……! Z-ONE、君なのか……!」
「そうだ、ブルーノ! Z-ONEの意志は途切れていない! 今もこうして、オレたちと共に戦っている! オレはレベル8のスターダストに、レベル2の《時械神官》をチューニング!」
「集いし願いが未来を紡ぎ、新たな時空の扉を開く! 光さす道となれ!!」
「シンクロ召喚! 降臨せよ、《時械神祖ヴルガータ》!!」
ソリッドビジョンがセフィロトの樹を描き、それが扉のごとく開いていく。
その向こうから現れたのは、ブルーノの知るメタイオンや、遊星の知るどれとも違う、金色のフレームを持つ時械神。
胴体の鏡面に、髭を蓄えた老人の姿をした神の顔が浮かび上がる。
「時械神のシンクロモンスター……!」
『不動遊星の時械神だというのか……!? こ、こんなバカな!? しかし、その力を持ってしても、クリムゾン・ノヴァ・トリニティを倒すことはできない!』
「いや、このターンで決めて見せる! オレは《時械神祖ヴルガータ》で、クリムゾン・ノヴァ・トリニティを攻撃!」
ヴルガータの掲げられた両腕から、閃光が迸る。
「時械神は戦闘では破壊されず、ダメージも0にする! そして、ヴルガータの効果発動! 相手モンスターを攻撃した時、相手の場のモンスターを全て除外する!」
『なぁっ!?』
視界を支配した光が過ぎ去った時、カプリコンのフィールドには何も残っていなかった。
壁となるモンスターはいない。
「そうか! クリムゾン・ノヴァ・トリニティは効果の対象にならず、効果で破壊もできない……だが対象を選ばず、破壊でもないこの効果を防ぐことはできない!」
「この効果を使用したターン、相手が受ける戦闘ダメージは半分になる。そして除外されたモンスターは、このターンの終わりに特殊召喚されるが……」
『トリニティは融合以外の方法では召喚できない……!』
「これで闇のカードは消し去った! 《コズミック・クェーサー・ドラゴン》でダイレクトアタック!」
―――シューティング・ブレイザー・バースト!!
カプリコン:LP3300→1300
『むおおおおお!? ぐっ……だが、まだワタシのライフは』
「残させない! オレは《コズミック・クェーサー・ドラゴン》の効果を発動! シンクロ召喚したこのカードを除外することで、リミットオーバー・アクセルシンクロを行う!」
「何だって!?」
『《スターダスト・ウォリアー》と同じ効果を!?』
《コズミック・クェーサー・ドラゴン》の姿が光となってほどけ、飛び出した12の星と環が連なり輝く。
「古の天空を彩る星々よ! 神雨となりて、世界を祓え! リミットオーバー・アクセルシンクロ―――ッ!!」
「光来せよ! 《聖珖神竜 スターダスト・シフル》!!」
決着の時を迎え、現れる3体目のリミットオーバーアクセルシンクロモンスターは、スターダストの名を持つ古の決闘竜。
折り重なる8枚の翼を大きく広げ、希望を示すかのような姿で遊星のもとに舞い降りて来る。
『そ、それは!?』
「これで終わらせる! スターダスト・シフル、ダイレクトアタックだ!」
『まだです! ワタシは罠カード《死者の防人》を発動! 戦闘ダメージを受けたターンの攻撃宣言時、墓地からモンスターを守備表示で復活させ、強制的に戦闘を行わせる! 蘇りなさい、《方界胤ヴィジャム》!!』
スターダスト・シフルの突撃を、墓地から現れたヴィジャムが受け止め、押しとどめた。
『ヴィジャムは戦闘では破壊されない! そして、戦闘を行ったヴィジャムの効果発動! このカードを永続魔法として魔法・罠ゾーンに移動させ、戦闘を行った相手モンスターをアンディメンション化する!』
「!」
『破壊ではないこの効果は、スターダストの能力で止めることはできない! 今度こそ終わりで……なっ!?』
だが、聖珖神竜をアンディメンション化しようとヴィジャムが放った光が、展開された魔法陣に防がれ霧散する。
「スターダスト・シフルの効果発動! 相手のモンスター効果の発動を無効化し、さらに場のカードを破壊する!
『ば、ばかな……!!』
「そして、これで本当に最後だ! 速攻魔法《ファイナル・クロス》を発動!!」
そして間髪入れず、スターダスト・シフルが舞い上がり、その眼前に黄金の光がともる。
膨れ上がるそれを、両手で抱えるようにして集束し、八方に広がろうとするその形を変えていく。
「シンクロモンスターが墓地に送られたターン、オレのシンクロモンスターはもう一度攻撃が出来る! さらに、その対象がスターダストであれば、墓地のシンクロモンスター1体の攻撃力を得る! オレは《スターダスト・ドラゴン》を選ぶ!」
「攻撃力6500……!」
カプリコンの場には、この追撃をかわすだけの手段がない。
決着の瞬間が訪れた。
『お、おのれ……おのれ、不動遊星!! ここまで……ここまでようやく来たというのに! どうして貴方方はあるべき結末を受け入れない!』
「破滅の未来があるべき結末などと、オレは認めない! 仮にそれが正しくても、命ある限りオレは抗う! そして、光さす未来を必ず切り拓く! 仲間たちと共に!!」
遊星の心にはもはや、迷いもためらいもない。
託されたものの重さに折れることは、もう二度とない。未来を救うために今を守る、そのために戦うと決めたのだから。
「行け、スターダスト・シフル!! カプリコンにダイレクトアタック!!」
―――
『ま、負けられない……負けられないというのに! ぐぅぅああぁぁぁぁぁ―――ッ!!!?』
カプリコン:LP1300→0
―――ありがとう。不動遊星。