遊戯王5D's-The After   作:辛麺焼き

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本作オリジナルキャラ同士の対戦です。


第4話:赤い帽子の決闘者

街をぶらぶらと歩くが、今日は人通りが少ない。天気が悪いこともあるだろうが、基本的に今日は休日だ。

家でゆっくりしたい人も多いのだろう。

だが、デュエルが出来ないのはかなり退屈だ。

 

(……夜になってから出直すか? ここ最近は不審者も多いって聞くしな)

 

そんなことを考えるほどに、赤い帽子とジャケットを纏うその男……遊凪涼は暇を持て余していた。

本業であるデュエルレーン整備の仕事も、WRGPが終わった今では1か月に1度あるかないか。かなりキツい仕事なので金だけは入るのだが、涼はこの仕事を選んだことを後悔していた。

デュエルが出来る時間を求めて重労働・高収入かつ日数の少ないこの仕事を選んだのだが、デュエルができないと途端にヒマになる。

 

(定期点検は一昨日やったばっかりだからまだ先だし、勝手にやるのもまずいしなぁ)

 

そんな彼が獲物として狙いを定めつつあるのは、ここ1か月ほどでネオ童美野シティに夜な夜な出没するという不審者の集団だった。

男だったり女だったりと目撃証言が一定しないため、複数人であると考えられている。

人気のない場所を中心に歩き回っており、誰かと出会うとデュエルを仕掛けてくる。しかも何やら違法なシステムを使用しているらしく、ダメージが実体化したという情報もあり、何人か病院送りになってもいる。

 

最近ではセキュリティ(今ではハイウェイパトロールに改称されたが、通りがいいので通称として未だにこう呼ばれている)も取り締まりや警備を本格化させているが、何せこの不審者集団、朝が来るとどこへともなくいなくなっているのだ。

おかげで普段何をしているのか、どこに住んでいるのか全くわかっていない。

街頭ビジョンでニュースを見ると、どうやら昨日も出現したようだ。

 

「また怪我人が出たか。この街を荒らす奴はどこのどいつだ?」

 

まるでかつてのサテライト、デュエルギャングたちの争いを思い出させる。

涼もあの頃は少なからず暴れたものだが、同時にそれはリーダー絡みの苦い記憶にもつながっている。

 

(京介が聞いたら何ていうかね)

 

と、

 

「……ん? 何だ、ありゃ」

 

車やD・ホイールが行きかう道路を挟んで向こう側、雑踏に紛れてビルの隙間に入り込む人影があった。

それ自体は、別にどうということはない。近道を試みる者はいるし、だいたいにおいて迷うのがオチだ。

だが、その人影。

 

(……浮いてるな)

 

何が、というわけではない。感覚だ。

人の形をしたものが、人の群れに紛れている、そんな感覚。この距離からでも感じ取れる違和感。

放っておくのはまずいかもしれない、そう考えた涼は、横断歩道を一足飛びに突っ切って後を追った。

 

 

 

何者かの正体は金髪の女だった。

ビルの間を抜けて裏通りに出たが、涼はあえてそこで足を止め、行く先を目で追うにとどめた。

彼女が向かったのはダイダロスブリッジ近辺の港湾部だが、使用頻度が少なく人気がない場所だ。

 

(あんなところに何の用だ? ……誰かいる?)

 

そこで、似たような服装をしている若い男と合流していた。逢引かとも思ったが、そんな甘い空気は欠片もない。

だが、ここでは隠れる場所がない上にダイダロスブリッジと周囲のジャンクションから丸見えだ。数秒思案した後、涼は倉庫の屋根伝いに近づき、建物の隙間に身をひそめて耳をそばだてた。

 

(どれどれ)

「……のよぉ。そっちの進展は?」

「半分と言ったところだな。あれは思った以上に役に立つ」

「とはいっても、抜け殻のカードから抜きだした力だから、要は出がらしでしょ? さすがにそろそろ引き上げ時だと思うんだけど。一度負けたら消滅するのもうまくないわねぇ」

「黄泉の力など使うからそうなるのだ。だからあれほどイリアステルが動いている時に準備を進めておけと言っただろうが」

 

男の方が口にしたその言葉に、涼は直感した。

こいつらは敵だ。

 

(嫌な予感がするな……)

 

そうしている間にも、涼の存在に気づかず二人の男女は話し続けている。

 

「日和って様子見に徹するからこういうことになる。おかげで不動遊星に全て阻止されてこの有様だろうが」

「反対したのは私じゃないわよぉ。それはそうとアクエリアス、例の話聞いてる?」

「何だ? 俺はここ最近神殿には戻っていないのだが」

「あーらら、ピスケスと入れ違ったかしら? 別の奴が出て来てるみたいなのよ」

「なに? 別途に従士を投入したわけではなく、か?」

「ええ。ダークシンクロすら使わないみたいだから、少なくとも今回の計画とは関係ないわ」

「ここに来て別勢力か……目的は何だ?」

「とにかく、私は現状を報告に帰るわ。あなたも一度戻りなさいな」

「わかった」

 

瞬間、涼は瞠目した。

女が何の前触れもなく、跳躍するようにして姿を消したからだ。まるで瞬間移動。

一人残った男が呟く。

 

「さて、俺はどうするか……そういえば、時空の歪みを昨日確認したとキャンサーが言っていたが、もしやこの辺りか? 帰りがてら少し調べてみるか」

 

そして、男の姿も掻き消えた。

それを確認した涼が姿を現すと、人の気配は完全に消えていた。

この辺りは今のところ保管されている荷物もないため、警備も特にない。監視カメラが数台ある程度だ(それはそれでどうなのかという意見もあるにはある)。

 

「……ここ最近の不審者騒ぎはあいつらの仕業か。しかし黄泉の力か……まさかとは思うが……」

 

脳裏を一人の男の姿がよぎる。

神々の戦いに傷つく世界を憂い、争いの輪廻を断ち切るために世界を作り変えようとしたあの男。

次の瞬間、

 

「いかんいかん、スコルピオと合流するのだった。……むっ」

「っと!?」

 

強烈な違和感が走った直後、先ほどの男がいきなり現れ、思い切り目が合ってしまった。

 

「貴様、何者だ!?」

「こっちの台詞だ! お前こそ何者だよ!?」

「タイミングからして話を聞いていたな!? 今邪魔をされるわけにはいかん、消えてもらうぞ!」

「会話のドッジボールじゃねえか!? だがいいだろう、デュエルってんなら相手になってやる! せいぜい満足させてくれよ!」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

???:LP4000

涼:LP4000

 

「オレの先攻ドロー! 俺はモンスターをセット! さらにカードを1枚伏せ、永続魔法《補給部隊》を発動!」

 

涼:手札6→3

 

「ターンエンドだ」

「俺のターン!」

 

???:手札5→6

 

「手堅く様子見か。俺は、チューナーモンスター《深海のディーヴァ》を召喚!」

 

謎の男が繰り出してきたのは、人魚の姿をしたチューナーモンスター。

涼やかな歌声が、デッキから仲間を呼び覚ます。

 

「そして、効果を発動! このモンスターの召喚に成功した時、デッキからレベル3以下の海竜族を1枚特殊召喚できる。いでよ、《スカイオニヒトクイエイ》!」

 

巨大な人食いのエイの怪物が、悠然と泳いで現れる。

 

「デッキから素材呼んでくるチューナーだと!?」

「俺たちにとっては、さほど珍しくもない。レベル3の《スカイオニヒトクイエイ》に、レベル2の《深海のディーヴァ》をチューニング! 合計レベルは5、《神海竜ギシルノドン》をシンクロ召喚!」

 

男の背後、海が弾けて現れたのは、翼を持ったドラゴンのモンスター。

水の世界に生きる存在故か、水かきのようなものが見え、角はない。

 

???:手札6→5

 

「バトル! 俺はギシルノドンで、貴様の守備モンスターを攻撃する! ハイドロプレッシャー!」

 

高圧の水が竜の息吹として発射され、涼を守る壁モンスターを薙ぎ払う。

 

「ちっ……破壊された《ジェネクス・サーチャー》の効果発動! このカードがバトルで破壊され墓地に送られた時、デッキから攻撃力1500以下のジェネクスを攻撃表示で特殊召喚する! 来い、《ジェネクス・ガイア》!」

 

しかしその後から、ツルハシを持った炭鉱夫のような姿のロボットがのっそりと出現した。

さらに、

 

「俺のモンスターが破壊されたことで、永続魔法《補給部隊》の効果を発動! カードを1枚ドロー!」

 

涼:手札3→4

 

「モンスターを絶やさず、手札を補充するか。少しはできるようだな……俺はカードを2枚伏せ、ターンを終了する」

 

???:手札5→3

 

「俺のターン! ドロー!」

 

涼:手札4→5

 

「こっちも行くぜ! 俺はチューナーモンスター《ジェネクス・コントローラー》を召喚!」

 

頭の左右からアンテナを伸ばした、二頭身のロボットがフィールドに現れ、そのまま座り込む。

戦闘は苦手のようだ。

 

「俺はレベル3・地属性の《ジェネクス・ガイア》に、レベル3の《ジェネクス・コントローラー》をチューニング! 《ジオ・ジェネクス》をシンクロ召喚!」

 

《ジェネクス・コントローラー》が発する信号に従い、変形・展開した《ジェネクス・ガイア》が新たな姿を見せる。

ツルハシが変形したパイルバンカーが腕に移動し、全体的に一回り大型の機体に仕上がった。

だが、それを見たギシルノドンが大きく咆哮を上げた。

 

「な、なんだ?」

「ギシルノドンの効果が発動したのだ。フィールドからレベル3以下のモンスターが墓地に送られた時、このカードの攻撃力は、そのターンのみ3000に書き換えられる!」

「げっ、さらに上回って来やがっただと!?」

 

《ジオ・ジェネクス》の効果で攻撃力を上げて突破するつもりが、さらに攻撃力を上げられてしまった。

いきなり狙いを外された涼だが、さすがにこれで戦意を折るほど軟な男ではない。

 

「俺は罠カード《星蝕-レベル・クライム》を発動! このカードはシンクロモンスターが特殊召喚された時、そいつのレベルを1にすることで、シンクロモンスターの元々のレベルを持ったレベル・クライムトークンを1体生成する!」

 

シンクロ召喚の時のように《ジオ・ジェネクス》から6つの星が飛び出し、そのうち5つをどこからか伸びあがった食虫植物が飲み込んで成長、モンスターとしてフィールドに現れた。

 

「ほう……」

「これで《ジオ・ジェネクス》のレベルは1だ。よってモンスター効果! 俺の場にレベル4以下のジェネクスがいる時、ターン終了まで攻撃力と守備力を交換する! 攻撃モードだ、《ジオ・ジェネクス》!」

 

命令と共に《ジオ・ジェネクス》の腕のパイルバンカーが変形・展開し、巨大なビームの杭が出力される。

 

「レベルを下げることで、他のジェネクスを要さず効果を発動できるというわけか。だが、入れ替わっても攻撃力は2800! ギシルノドンには及ばない」

「俺は魔法カード《エレメンタルパワー》を発動! 俺のモンスターの攻撃力・守備力は、俺のフィールドの属性1種類につき200ポイントアップする! 今、俺の場には地属性と闇属性の2体が存在する。つまり攻撃力が400アップだ!」

「!」

「バトルフェイズ! 攻撃力3200となった《ジオ・ジェネクス》でギシルノドンに攻撃! パワーバンカー!」

 

石畳を踏み込み、巨大化したビームの杭が打ち出される。

正面から突撃を受けたギシルノドンは踏みとどまれず海へと吹き飛ばされ、派手な水柱を立てた。

しぶきが降りかかる。

 

???:LP4000→3800

 

「くっ」

「うわっ、目に入った痛ぇ!? って、何でソリッドビジョンで水しぶきが!」

「この程度で騒ぐな、凡人が」

「誰が凡人だぁ!? レベル・クライムトークンでダイレクトアタックだ!」

 

???:LP3800→3400

 

「ちっ、雑魚トークンとは言え追撃を喰らったか。面白くないな」

「俺はカードを2枚伏せて、ターンエンド! そしてモンスターの攻撃力は元に戻る」

 

涼:手札2

 

「俺のターン!」

 

???:手札3→4

 

「永続罠《リミット・リバース》を発動! 自分の墓地から、攻撃力1000以下のモンスターを1体、攻撃表示で特殊召喚する。甦れ、《スカイオニヒトクイエイ》!」

「またそいつか!」

「さらに俺は、《フライファング》を攻撃表示で召喚!」

 

男の場に、先ほど現れた人食いエイと、ヒレを翼に変えて空を飛ぶサメが現れる。

 

「空飛ぶ人食い魚が2体か。B級パニック映画か?」

「足りないのは予算ではなく人手の方だがな! バトルだ、俺は《フライファング》でレベル・クライムトークンに攻撃! ジュラシック・シャーク・アタック!」

「色々大丈夫なのかよそれ!?」

 

涼:LP4000→2800

 

《フライファング》の突撃でレベル・クライムトークンが吹き飛び、涼に衝突しそのライフを削る。

一方、攻撃した《フライファング》の方はそのままどこかに飛んで行ってしまった。

 

「ぐあ!? ダメージが実体化してやがる……闇のゲームか!?」

「俺たちのデュエルの基本だ、こんなものは。《フライファング》は相手にダメージを与えた場合、バトルの終了時に次の俺のスタンバイフェイズまで一時的に除外される。つまりこの時点ではまだフィールドにいる。続けて《スカイオニヒトクイエイ》でダイレクトアタック!」

「こっちはダイレクトアタッカーかよっ、どわああ!?」

 

涼:LP2800→2200

 

すれ違いざまの噛みつきが衝撃を生み、さらにライフを削る。

見れば左肩が裂け、血が流れている。

 

「チッ、こりゃ長引かせると死ぬな……」

「《スカイオニヒトクイエイ》も同様に、直接攻撃を行った場合、バトルの終了時、次の俺のターンまで除外される。エンドステップに入ったことで2体とも除外され、これによりトラップカード《魔製産卵床》を発動! デッキからレベル4以下の魚族・海竜族・水族のうちいずれかを手札に加える。俺は《悪魂邪苦止》を手札に加えよう」

 

???:手札4→3→4

 

「《悪魂邪苦止》ぃ……? 昔どっかで見たような……」

「さらに《リミット・リバース》は、蘇生したモンスターが破壊以外でフィールドからいなくなったことにより、無意味なカードとしてこのまま残る。よってこのカードをコストに、《マジック・プランター》を発動! さらにカードを2枚ドローさせてもらう」

「ならばその瞬間、俺もトラップカードだ! 《逆転の明札》で、手札が同じになるようにドローさせてもらうぜ」

 

???:手札4→5

涼:手札2→5

 

「だがこれで、お前のフィールドにはカードがなくなった!」

「次のターンで俺の勝ちだ、とは言わせんぞ! そのための《一時休戦》だ」

 

???:手札5→5

涼:手札5→6

 

「これで、次の俺のターンまでお互いに、ダメージは0になる」

「しっかり防御してきたか。甘くねえな」

「ナメてもらっては困る。さらに俺は、永続魔法カード《海の寝床》を発動! このカードは1ターンに1度、墓地にある《魔製産卵床》を場にセットすることができる!」

 

さらにサーチカードを場に戻す。

どうもこの男、ジャックのようなパワー型でも、クロウのような高速展開型でもなく、堅実にアドバンテージを稼いでいく、龍可に近いタイプのデュエリストらしい。

 

「さらにもう一枚のカードを伏せる。これでターンエンドだ」

 

???:手札5→3

 

「俺のターン!」

 

涼:手札6→7

 

(奴のモンスターは大した攻撃力じゃねえ……だが、攻撃すると次のターンまでフィールドから消えちまう。壁としてライフを守ってくれない代わり、延々と攻撃し続けてくるわけか。参ったなこりゃ)

 

男のモンスターはスピリットに近い特性を持っているようだが、その厄介さは涼も知っている。

壁モンスターとしては機能しない代わり、相手のターンにはフィールドにいないため、排除されて攻め手を失うことがない。

 

(しかも、除外をトリガーにしてあの罠カードで次々とモンスターを呼んでくるってわけか。こりゃ、攻め込む方法より向こうの攻撃を防ぐ手段がないとダメだな)

 

少なくとも、直接攻撃ができる《スカイオニヒトクイエイ》をどうにかしないといずれライフを削り切られるのが目に見えている。

つまり狙うは、相手の攻撃宣言時。

 

「俺は罠カード、《正統なる血統》を発動! 墓地の通常モンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する! よみがえれ、《ジェネクス・コントローラー》!」

「む」

「さらに俺の場に《ジェネクス・コントローラー》が存在することにより、魔法発動! 《エレメンタル・コール》! デッキからレベル5以下で、闇属性ではないジェネクス1体を、守備表示で特殊召喚できる。来い、《ジェネクス・ブラスト》!」

 

二頭身のチューナーロボットが再びフィールドに戻り、さらに送風ファンに手足と頭がついたような緑のロボットがデッキから飛び出す。

 

「特殊召喚に成功した、《ジェネクス・ブラスト》の効果発動! デッキからジェネクスと名のつく闇属性モンスターを1枚、手札に加える!」

 

涼:手札7→6→7

 

「行くぜ! 俺はレベル4・風属性の《ジェネクス・ブラスト》に、レベル3の《ジェネクス・コントローラー》をチューニング! シンクロ召喚!」

 

「全てを吹き払え、《ウィンドファーム・ジェネクス》!!」

 

《ジェネクス・ブラスト》が先ほどの《ジェネクス・ガイア》と同じく、信号を受けて展開・変形し、完全な人型へと変貌する。

ジェネクス同士であるためか、かなりスムーズに手順が進んだ。

 

「《ウィンドファーム・ジェネクス》の攻撃力は、お互いの場のセットカード1枚につき、300上がる。だが俺は、手札を1枚捨てることでもう一つの効果を発動! 場にセットされたカードを破壊する! 当然そこの《魔製産卵床》だ!」

「ちっ! だが、このターンは《一時休戦》によりダメージはない!」

 

涼:手札7→8→7

 

「《ジオ・ジェネクス》を守備表示に変更。さらにカードを2枚セットし、ターンエンド!」

 

涼:手札7→5

 

「俺のターン!」

 

???:手札3→4

 

「このスタンバイフェイズ、《スカイオニヒトクイエイ》と《フライファング》が俺のフィールドに戻る! これは特殊召喚ではなく、除外効果の処理の続きとなる」

「戻すまでが一連の処理ってわけか」

「そういうことだ。俺は《海の寝床》の効果で墓地の《魔製産卵床》をセットする! ちなみに先ほどは言っていなかったが、この効果でセットした場合はそのターンで発動できる」

「なにぃ?」

「つまりさっきの除去は無駄だったわけだな。バトルだ! 俺は《スカイオニヒトクイエイ》でダイレクトアタック!」

 

再び人食いエイが空を走り、涼を噛み裂いていずこかへと消える。

 

涼:LP2200→1600

 

「ぐぅ……! トラップカード《白衣の天使》を発動! 1000回復する!」

「バトル終了時、《スカイオニヒトクイエイ》は除外される。トラップカード《魔製産卵床》! 今度は《引きガエル》でも手札に加えておくか」

 

涼:LP1600→2600

???:手札4→3→4

 

「《フライファング》を除外し、《貪欲なウツボ》を発動。2枚ドローし……モンスターとカードをセット。これでターンエンドだ」

 

???:手札4

 

「俺のターン!」

 

涼:手札5→6

 

盤面の攻撃力や手札では勝っている涼だが、その実彼は追い詰められていた。

ライフがじわじわと削られ、攻撃しても届かない。

 

(あの伏せカード、間違いなく攻撃を防ぐものだ。ならば)

「俺は手札を捨て、《ウィンドファーム・ジェネクス》の効果を発動! 伏せられているカードを破壊する!」

「そのカードを発動させてもらおう、《サンダー・ブレイク》! 手札を捨てることで、《ジオ・ジェネクス》を破壊する」

 

再び旋風が男の場を襲うが、一瞬早く放たれた電撃が《ジオ・ジェネクス》を爆砕した。

 

???:手札4→3

涼:手札6→5

 

「確かに《ウィンドファーム・ジェネクス》は除去効果を持っているが、単純に守備の高いそいつを残しておくのは面倒なのでな」

「くそっ、ならば俺は《ダブル・サイクロン》を発動! 《正統なる血統》と《海の寝床》を破壊する!」

「ふん、このカードは既に十分役目を果たした。実質損失はない」

 

涼:手札5→4

 

「俺は魔法カード《思い出のブランコ》を発動! 墓地から《ジェネクス・コントローラー》を特殊召喚する。さらにこいつがいることにより、《ジェネクス・ヒート》をリリースなしで召喚!」

 

三度現れた《ジェネクス・コントローラー》、その横に今度は溶鉱炉に手足がついたようなずんぐりむっくりのジェネクスが現れる。

炎をたぎらせるその姿が、チューニング信号を受けて戦闘形態へと変形を始めた。

 

「レベル5・炎属性の《ジェネクス・ヒート》に、レベル3の《ジェネクス・コントローラー》をチューニング!」

 

「シンクロ召喚! 燃やし尽くせ、《サーマル・ジェネクス》!」

 

元のモンスターの面影があった《ジオ・ジェネクス》などと違い、現れた姿は巨大な両腕と細い両脚、全身が高熱で青白く輝くモンスターだ。

 

「こいつの攻撃力は2400だが、俺の墓地の炎属性モンスター1体につき200上がる。今墓地にいるのは、素材にした《ジェネクス・ヒート》と、ウィンドファームのコストで捨てた《レアル・ジェネクス・マグナ》、《UFOタートル》の3体! よって攻撃力3000となる!」

「3000か……!」

「カードを1枚伏せてバトルだ! 《サーマル・ジェネクス》で守備モンスターに攻撃! スチームブラスターキャノン!!」

 

高熱の蒸気を熱線に変えて放つ《サーマル・ジェネクス》。

その一撃は男の守備モンスターを貫き、ライフを焼く。

 

「《サーマル・ジェネクス》の効果発動! バトルでモンスターを破壊した時、墓地のジェネクス1体につき200ダメージを与える!」

「なに!?」

「墓地にいるのはコントローラー、サーチャー、ヒート、ブラスト、ガイア、ジオ、マグナの合計7体! よって1400の効果ダメージをくらえーっ!!」

 

???:LP3400→2000

 

「ぬおおおおお!? だが、俺は《引きガエル》の効果を発動! カードをドローする!」

 

???:手札3→4

 

「リバースカードは使い切っている! これで終わりだ、《ウィンドファーム・ジェネクス》でダイレクトアタック! サイクロンブロー!!」

「いいや、デュエルはまだ続いている! 俺はこの時、デッキから《黄泉ガエル》を墓地に送り、手札の《霧カエル》の効果発動!」

 

渦巻く突風が謎の男に向かうが、突然現れた霧の壁がそれを阻んだ。

攻撃が終わり風が止むと、そこに忍者の扮装をしたカエルが鎮座している。

 

「ダイレクトアタックの宣言時、デッキからガエル、またはカエルと名のつくモンスターを墓地に送ることで、このカードを特殊召喚! さらにトリガーとなった攻撃を無効化する!」

「今引いたな!? これも通らねえのか、くそ。俺はこのままターンを終了する!」

 

涼:手札3

 

「俺のターン!」

 

???:手札3→4

 

「俺の場には今、魔法・罠カードがない。このため、スタンバイフェイズに《黄泉ガエル》の効果発動! 俺の場に《黄泉ガエル》がいない時、墓地から復活する」

「げっ、出たな帝デッキのエース!」

「情報が古いぞ赤帽子! 俺は《霧カエル》のもう一つの効果を発動! 自分のターンに1度、デッキからレベル3以下の水族モンスターを墓地に送ることで、フィールドのモンスター全ての表示形式を、表裏問わず変更する! よってこのカードは攻撃表示、お前のモンスターは2体とも守備表示になる」

 

霧が再びフィールドを包み、警戒態勢に入った2体のジェネクスはそれぞれに身を固め、守りに入る。

 

「切り替えるってそういう意味かよ」

「さらに俺は、手札の《悪魂邪苦止》を捨て、《鬼ガエル》を特殊召喚! そして、特殊召喚成功時に効果を発動。デッキからレベル2以下の水族モンスター、《粋カエル》を墓地に送る」

 

???:手札4→2

 

「《鬼ガエル》のもう一つの効果を発動! このカードを手札に戻すことで、俺はこのターン、通常召喚とは別に、ガエルを召喚することができる」

 

???:手札2→3

 

「俺はこの追加された権利を消費し、《黄泉ガエル》をリリースして《デスガエル》をアドバンス召喚!」

 

男の場に現れたのは、巨大である以外は全く普通のカエルの姿をしたモンスター。

それが、一気に3体。

 

「《デスガエル》の効果発動! アドバンス召喚した時、墓地の《悪魂邪苦止》の数だけ、デッキの《デスガエル》を呼ぶことができる! 2体特殊召喚!」

「いつの間に墓地に!?」

「今捨てた1枚、もう1枚はさっきの《サンダー・ブレイク》のコストだ」

 

???:手札3→2

 

「本来はここで《死の合唱》で吹き飛ばすつもりだったが……あいにく手札にはない。そして《融合》もないな」

「…………!」

 

ここでようやく、涼は謎の男の戦術の全貌を理解した。

攻撃後に一時除外されるモンスターでライフを削りつつ《魔製産卵床》でガエルモンスターを手札に呼び込み、それらをコストや素材として消費しながら墓地に送り、最後に《デスガエル》から本命のコンボを叩き込む。

それがあのデッキの戦い方なのだろう。

 

「ゆえに、次善の策で決めさせてもらう! 俺は《霧カエル》と《デスガエル》2体をリリースし、《両生類天使-ミ・ガエル》をアドバンス召喚!」

 

男が呼び出したのは、翼を広げ厳めしい面構えを見せるオレンジ色のガエルモンスター。

その姿を見た涼は、先ほどから覚える既視感の正体にやっと気が付いて叫んだ。

 

「思い出したーっ! 斎王の刺客のあれ、誰だ、プリンセス・ローズのエースじゃねえか!?」

「誰だそいつは!? 斎王琢磨なら俺も知っているが……とにかく行くぞ、ミ・ガエルの効果発動! アドバンス召喚時にリリースしたガエル、またはカエルモンスターの数に応じて効果を得る。3体リリースしているため、まず場の魔法・罠を全て破壊する!」

「!」

「これは2体以上リリースした時の効果だが、これにチェーンし、3体リリースした時の効果を発動! 手札・デッキ・墓地のガエル、またはカエルモンスターを可能な限り特殊召喚できる!俺の場には今はミ・ガエルのみ。よって墓地の《デスガエル》1体、デッキからは3体の《悪魔ガエル》だ!」

「ならば俺は―――」

 

男の場に、四体ものガエルモンスターが並ぶ。

さらに吹き付けた暴風が、涼の場のカードを吹き飛ばしていった。

 

「これで貴様の場には守備モンスターのみ。バトルだ! ミ・ガエルでサーマルを、《デスガエル》1体でウィンドファームを攻撃! さらに《悪魔ガエル》3体で貴様自身に攻撃して終わりだ!」

 

いかに戦闘形態と言えど、守備力は低い。

2体のジェネクスが力尽きてガッシャンと倒れ、《悪魔ガエル》たちの合唱が衝撃波となって涼へと向かう。

だが、それが届くことはなく、突然出現した光の壁に弾かれた。

 

「なに!?」

「さっき宣言したが、衝撃波の音でかき消されたからな。トラップカード《リサイクルバリア》! このターン、俺は戦闘ダメージを受けない」

「ミ・ガエルにチェーンされていたのか! ええい、宣言が聞こえんのはどうにかならんのか。俺はこれでターンを終わる」

「ソリッドビジョンあるあるだな。俺のターン!」

 

涼:手札3→4

 

「今のがお前のラストターンだ。見せてやるぜ、一撃必殺のコンボ! 俺は《A・ジェネクス・ボルキャノン》を召喚!」

 

涼が勝利のため呼んだのは、赤いボディに溶接工のようなフェイスガードをつけ、右肩に火炎砲を装着した戦闘用のジェネクス。

その背中に、墓地から飛び出した《ジェネクス・ヒート》が接続される。

 

「さらに《死者蘇生》を発動し、《ジェネクス・ヒート》を復活させる!」

「それで何になる! チューナーがいなければシンクロ召喚は……炎属性?」

 

涼の意図を数秒遅れて把握した男が、血相を変える。

 

「まさか!?」

「そのまさかだ! 俺は、炎属性のジェネクスである《ジェネクス・ヒート》を墓地に送り、ボルキャノンの効果を発動! 相手のモンスターを1体破壊し、そのレベル×400のダメージを与える! 目標はミ・ガエルだ!」

 

《ジェネクス・ヒート》が自身の溜め込んだ熱エネルギーを全てボルキャノンに供給し、それが右肩の火炎砲へと送られる。

 

「ミ・ガエルのレベルは5……つまり!?」

「レベル5×400で2000! こいつを喰らってくたばれーっ!!」

 

 

―――ボルカニック・シュート!!

 

 

「どああああああああーっ!!?」

 

???:LP2000→0

 

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