中央歴1640年8月15日
ここ、神聖ミリシアル帝国の先進11ヶ国会議が行われる港町カルトアルパスでは、会議に参加する各国の代表を乗せた数ヶ国の船が停泊しており、後に続くように、次々と各国の船が入港してくる。
カルトアルパスにある港湾管理局の庁舎内では入港予定の船の情報を基に、責任者の『ブロンズ』が各部署に指示を伝達していた。
「第1文明圏のトルキア王国軍が到着しました」
「了解、第1文明圏エリアに誘導せよ」
港に到着する各国の船は港湾管理局の職員によって的確に誘導されていく。
「続いて、アガルタ法国も到着。魔法船団6と民間船2」
ブロンズ「了解…………相変わらず代わり映えしないな」
ブロンズは仕事柄、各国の軍艦については一通り知識に入っているが、毎年同じような船ばかり来るため、もう飽きがきていた。
ブロンズ「噂の日本聯合とグラ・バルカス帝国は、一体どんな船で来るんだ…?」
今回の会議で彼が楽しみにしているのは、今回からパーパルディアとレイフォルに代わって会議に参加する事となった日本聯合とグラ・バルカス帝国が使っている軍艦であった。
彼の基には事前に、両国は巨大な戦艦を寄越してくると連絡があったため、船マニアの彼の興奮は最高潮に達していた。
「来ました!グラ・バルカス帝国到着!」
ブロンズ「おぉ………あれは………」
最初に到着したグラ・バルカス帝国は、大型の弩級戦艦1と巡洋艦2、駆逐艦3を引き連れてやって来た。
だが港の規模の関係から、戦艦だけが入港し護衛の艦は湾外で待機する事となった。
「次、日本聯合が到着!凄い‼︎日本は戦艦3、超大型空母1、巡洋艦4、駆逐艦4です!」
グラ・バルカス帝国より遅れて入港してきたのは後世日本の戦艦日本武尊、海上自衛隊の護衛艦やまと・あかぎ・あさひ・しらぬい・あきづき・てるづき、扶桑海軍の大和と高雄型・妙高型からなる混成艦隊だった。
「くぅ~!!今年はいい年になりそうだな!」
どっちの戦艦にも見入ってしまったブロンズの尻目に、先に入港したグレードアトラスターの第1艦橋では、後から入港してきた日本武尊・やまと・大和を見ていた一人の人物が居た。
「あれが噂の日本艦か……」
そう呟くのは、このグレードアトラスターの艦長を努めるラクスタルであった。
ラクスタル「情報通りどの艦もグレード・アトラスター並みかそれ以上に大きいとは…」
「一番デカいヤツでも300mはあります。主砲も恐らく51cm砲です」
ラクスタル「部隊を増強させてよかったな。最初の部隊であったらどうなったか……」
グラ・バルカス帝国は、情報局の日本の情報からかなり危険と認識して、部隊を増強させていた。
グレード・アトラスター以外は、既にカルトアルパス湾外に展開しており、指示があれば直ぐに攻撃可能だ。
その頃、グレードアトラスターの隣に停泊していた日本武尊の艦橋でも、ラクスタルと同じように、グレードアトラスターを見ていた人影があった。
前原「本当に大和に似ていますな…」
大石「あぁ………前に軍令部で東機関の本郷少佐からもたらされた情報にあった、グラ・バルカス帝国のグレード・アトラスターと言う戦艦の写真を見て、俺は夢でも見てるんじゃないかと思ったよ」
大石も前世では戦艦大和に乗り込んでおり、大和と共に九州坊ノ岬で運命を共にしている。そのため大石には大和に対して特別な思いがある。
前原「もし、我々の知る大和と同性能なら主砲は46cm砲、速力も最大で27ノット…かと」
大石「主砲に関してはそれで確定だろうが…他はまだなんとも言えんな」
前原「ところで長官。日本国、防衛省からの情報は確かなのですか…?」
前原は大石にある質問をする。
それはグラ・バルカス帝国の参加艦艇に関する情報である。
大石「あぁ情報は確からしい。確から見える艦艇だけでも6隻だが、大部分の残り51隻は沖合で待機中らしい…」
前原「大機動部隊……ですな…」
大石「そうだな。だが、それに対抗しての貴様ら紺碧艦隊だ」
前原「恐縮です」
両雄は一抹の不安と信頼を抱きつつ、艦から降りて会議場に向かう大使らを見送った。
カルトアルパスに設けられた会議場にやって来た、日本国代表の近藤大使は、日本に強い関心を抱く他国の代表達と会話をしていた。
幾つかの国と交流を終えたおり、アナウンスが響き各国の代表達が議場へ入る。
この会議ではまずミリシアルとムーから日本聯合の列強加盟が伝えられるところから始まった。列強パーパルディアに優位に戦い、魔王撃退、エスペラント王国解放など、この世界で急速にその影響力を出し始めたのが原因だ。
これには強いて言えばグラ・バルカスの代表が「なぜ同じ列強を倒したのに我が国は列強入りできないのか」と不満をもらした程度でどの国も賛同を示し、各国代表者による多数決を経て決定となった。
次にエモール王国の代表――外務卿モーリアウルの口からとんでもない発表がされる事となった。エモール王国にて空間の占い(魔法を使ってるため的中率98%)を行った結果、古の魔法帝国――魔帝、ラヴァーナル帝国の近年中の復活が確実となったというのだ。
ミリシアルなどのこの世界の国の代表ならともかく、グラメウス開拓の際に鬼人族から最低限ながら魔帝の情報を少しは手にしていたとはいえ、別世界からやってきた日本聯合の代表は困惑するしかなかった。彼らからすれば「何で伝説の存在なんかを国際会議で話してるんだ?」くらいの認識である。
しかし会議参加者が驚愕してたり唖然としてたり、といった変な反応をしてることから、何か重大なことなのであろう程度には日本の代表にも察しはつく。だがやはり、国際会議でいきなりこんな事になられては今後の進展が不安でしかない。
そしてその不安は直後に訪れた。
なんとグラ・バルカス帝国代表の外交官シエリアが、突然笑い声を上げ、「この世界の国は列強ですら占いを信じるんだな、なんと野蛮な」とこの世界の列強や主要国を嘲笑した挙げ句全世界に宣戦布告したのである。どうやら端からこの会議で会議らしいことをする予定は全くなく、シエリアはただこう言いに来ただけだった。
「グラ・バルカス帝国、皇帝グラ・ルークスの名において宣言する。我らに従え!」
そう言い残したシエリアは現在、戦艦グレードアトラスターに乗り、グレードアトラスター率いる機動艦隊はカルトアルパスから立ち去った。
そして周辺を警戒していたイ701潜より行方が掴めずにいたグラ・バルカスの艦隊を発見し、艦隊はカルトアルパスを目指しており、おそらくこの先進11ヵ国会議を襲撃するものと見られている。
それを受けて残った10ヵ国は持ち寄った艦船を出して、迎撃しようと試みる。
しかし実際ミリシアル皇国の第零魔導艦隊が出撃するもグラ・バルカス艦隊の前には手も足も出ずコテンパンにされていたのであった。
大石「さて……他国の艦隊と足並を揃えると言っても、果たして即席の連合艦隊で本当に足並が揃うか?」
大石は他国の艦船を見て、不安を感じる。
即席で編成された連合艦隊はトルキア王国が7、アガルタ法国6、マギカライヒ共同体7、ニグラード連合8、パンドーラ大魔法公国8、ムー国16隻、旭日艦隊40を合わせた合計93隻にも及ぶ大艦隊であり、そこへミリシアルの巡洋艦8隻が加わって101隻となる。
戦力としては申し分無いが、やはり国による技術格差が開き過ぎているため、速度や戦闘能力の面では不安が大いに残る。
大石「この艦隊でグラ・バルカス艦隊の相手ができるのは、我が艦隊とムー、ミリシアルぐらいだな…………艦長、機関最大戦速、連合艦隊の前衛に出るぞ」
富森「了解。機関最大戦速!」
日本艦隊は鈍足の他国の艦隊を引き離し、連合艦隊の前衛に出る。
大石「原参謀長、カルトアルパスに接近する敵艦隊の状況は?」
原「はい。グラ・バルカス艦隊はグレードアトラスターを先頭にカルトアルパスに接近しつつあります。後方からは空母を中心とした機動艦隊も続いています。警戒機からの報告では、既に敵空母から艦載機が発艦しつつありとの事です」
大石「典型的な航空戦と艦隊戦を仕掛けてきたな。空母から飛び立った攻撃隊による航空攻撃で我が方に損害を与えてから、戦艦による艦砲射撃でトドメを刺す。しかも既に敵が先手を取っている…………」
原「長官、既にあかぎより航空隊の発艦準備が完了しています。直ちに迎撃に出しますか?」
大石「あぁ。向かってくるなら迎え撃つしかない。攻撃隊と直掩隊の発艦を下命せよ……」
「はっ!」
直ちに、日本武尊より命令を受けた『あかぎ』より攻撃隊が発艦するがその様相はいつもと異なっていた。
F35も無論いるが、カタパルトでは最新鋭機『XFA-27 新鳳』が発進を待っていた。
間も無く誘導員のハンドサインと通信で発艦許可が下りると主翼を展開した新鳳は勢いよく打ち出されていった。
一方、ここでも新たな翼が羽ばたこうとしていた。
それは即席連合艦隊よりはるか彼方、突如海面が盛り上がって水塊を破るようにして出てきたのは『紺碧艦隊旗艦:羅号』であった。
羅号
「対空警戒、周辺に敵影艦影今の所無し!」
前原「通信、天照に通達。直ちに浮上し艦載機を発進させよ!」
「はっ!」
果たして羅号の横に並走する形で『潜水空母:天照』が浮上する。
かの艦もまた紺碧艦隊に配備され、再び艦隊を潜水機動艦隊へと舞い戻らせていたのであった。
艦長は指揮能力ともに優れているとのことから入江大佐が乗り込んでいる。
天照
「浮上完了!」
入江「よぅし!格納庫ハッチ開け!『蒼莱改』発艦用意!」
セイルと一体型となっている格納庫のハッチが開くと、『蒼莱改』こと『ASF-X 震電II』が姿を現す。
後世日本での配備も決定した本機は、日本国での『震電Ⅱ』の名前の混同を避けるべく、蒼莱の新たなる姿として『蒼莱改』の名前が与えられた。
後世では防空用としてではなく、艦載機としての全面的な運用が計画されている。
尾翼が展開し、フラップを下げ発艦態勢に入る。
入江「発進!」
合図とともに電磁カタパルトより軽快に射出された蒼莱改は一気に上昇していく。そしてまた一機、一機と続けて発艦し合計8機が迎撃に上がるのであった。
入江艦長は発艦を見届けると安全を考慮して直ちに潜航する。
そして羅号も遅れて潜航していった。
〜次回へ続く〜