敵艦隊奇襲を退けた輸送船団と護衛船団は数日の後、後世世界へ抜ける。
到着したのは日本海軍根拠地であるトラック島泊地。
ここには万一に備えて紅玉艦隊、坂本艦隊、旭日艦隊残余そして建御雷二番艦建御名方が待機していた。
補給、給油と休養を取っていた。
陸奥「懐かしいわね…」
泊地内に停泊する後世連合艦隊を見て長門に言う。
長門「あぁ…この空気、この肌触り、何もかもあの時とそっくりだ」
艦だった頃もよくここに停泊しており、現在の姿になってからも度々訪れていたがやはり当時とは違う。
こうして目の前にあの頃に風景が広がっているのも何処か嬉しかった。
陸奥「みんなそれぞれ自分達を見に行くって行ったけど貴方は行かなくて?」
長門「いや、眺めるだけで十分だよ。ところで自衛隊は?」
陸奥「日本海軍司令の高杉司令官の所に大和や吹雪、一航戦に501と隊長さん達を連れて行ったわ。先の戦闘の御礼を」
日本海軍司令部 作戦室
机一面に広げられた二つの世界地図を目に、原参謀、大石蔵良、高杉英作が何事かを話していた。
原「敵の現勢力を表すとこのようになっております」
指示棒で欧州圏を指す。
原「赤の点線が以前の敵勢力範囲で赤く塗り潰されているのが現勢力範囲です」
大石「大分規模を縮小したな…」
原「はい。欧州圏は依然として変化はありませんが、阿弗利加大陸における勢力は北方に集中しウラル・印度戦線からは完全に撤退、英本土からも引き上げつつあります」
高杉「となると目的はやはり、未来世界の制圧か」
そう言って未来世界を示すも一方の地図に目をやる。
原「そう見て間違いないでしょう。あちらの世界における敵勢力は地中海沿岸部一帯を既に手中に納め、欧州の2/3を手にしようとしています」
高杉「やはり戦闘面では独軍に一日の長があるのか…」
大石「装備の質はともかく、技量面で見ればおそらく互角かそれ以上でしょう。ですがUボートに対してはかなり手を焼いてるようです」
高杉「そのようだな。現に敵潜水空母にあちらの米海軍の最新鋭空母が被害を受けたそうだ」
原「ジェラルド・R・フォード級でした。撃沈こそ免れたようですが飛行甲板前部射出機を破壊され、別動のUボートから雷撃を受けたとのこと。お陰でドック入りを余儀なくされたそうです」
そこへ従兵が訪れ面会人がいることを告げられた大石と高杉は離席、原はこれから来る各艦隊の参謀らとの打ち合わせがある為残る。
応接室
入室すると既に客人全員が居た。
高杉「遅くなりました。日本海軍第一連合航空機動艦隊司令の高杉英作です」
大石「同じく旭日艦隊司令の大石蔵良です」
初めに自衛隊員らが自己紹介をする。
涌井「日本国海上自衛隊第五護衛隊群司令の涌井継治です」
秋津「同じく第五護衛隊群所属、空母いぶき艦長の秋津竜太です」
海江田「原子力潜水艦やまと艦長の海江田四郎です」
次に艦娘が
吹雪「吹雪型駆逐艦一番艦の吹雪です。よろしくお願いします」
赤城「第一航空戦隊所属の空母赤城です」
加賀「同じく加賀です」
大和「大和型戦艦一番艦、大和です」
さらに501JFW
ミーナ「第501統合航空師団隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケです」
美緒「同じく、坂本美緒であります」
芳佳「み、宮藤芳佳です!」
最後にみほ達
みほ「大洗女子学園二年の西住みほです」
まほ「黒森峰女学園三年の西住まほです。よろしくお願いします」
それらを聞いた高杉は改めて涌井司令と握手を交わす。
高杉「よろしく頼みます」
涌井「こちらこそ」
席に座ると涌井がさっそく話し出す。
涌井「高杉司令官に大石司令官、先の脱出時の戦闘では有難う御座います。お陰で我々一同貴方方に命を救われました」
高杉「いえいえ、我々は当然の事をしたまでです」
大石「それよりも我々の到着まで持ち堪えた貴官らに敬服します」
それを聞いた大和や赤城らは少々照れくさそうに笑う。
秋津「ところで先の戦闘を見て思ったのですが、貴方方の装備はどうなっているのですか?」
大石「……」
高杉「と言いますと…?」
海江田「見たところ外観こそは我々の知る太平洋戦争時の日本海軍艦艇に間違いありません。しかし中身がまるで違う、我々の時代の艦より遥かにかつ隔絶した戦闘能力を有している」
ミーナ「それに関しては私たちも同感です」
美緒「まさか海の中を潜れる戦艦があるなんて聞いたことがありません」
高杉は大石の方を見る、大石は高杉と顔を合わせ黙って頷く。
高杉「それについては…少々長い話になりますが、その前に一つ。貴官ら、特に自衛隊の方々や艦娘に関してはこの世界に対して何か違和感にお気づきでは?」
涌井「?…いえ」
秋津「……海江田さん、この世界の西暦は?」
海江田「あぁ…確か1950…⁉︎」
赤城「時代が合わない…⁉︎」
まほ「一体どういう…」
間をおかずして高杉が口を開く。
高杉「1945年 8月15日日本側の無条件降伏により太平洋戦争は幕を降ろした。調印は戦艦ミズーリで行われた」
「「⁉︎」」
大石「また同年春頃には天号作戦が実施され、4月の天一号作戦実施の際に戦艦大和は坊ノ岬沖にて米艦載機との戦闘により大和は撃沈される」
大和「‼︎……何故それを⁈」
大石が大和に視線を向けるとこう言い放つ。
大石「俺はそこに居たからさ」
「「⁉︎」」
芳佳「あの……言ってることの意味が分からないんですけど…」
高杉「そう言うのも無理もない。実を言いますと私や大石らはその太平洋戦争時に死んだ将兵の生まれ変わりなのです」
大和「では…つまり……大石長官…貴方は」
大石「あぁ俺は戦艦大和に乗り、坊ノ岬で死んだ。かつての君とともにな」
大和「……御免なさい」
大石「は?」
大和「あの時、私が…私が不甲斐ないせいで…あ…貴方を……」
震える声と共に大和は涙を流す。
吹雪「大和さん……」
それを見た大石は歩み寄る。
大石「いいんだ。もう、あれは仕方のなかったことなんだ」
大和「え…」
大石「あの時俺は正直もう日本は駄目だと思っていた。そんな時世界の冠たる戦艦と共に死ねると分かったときは正直嬉しかったよ」
大和「でも…でも……‼︎」
大石はその先を言わせまいと人差し指で口を抑える。
大石「……それに今となっては感謝しているよ」
大和「…?」
大石「大和…君は上の真意に関係なく、日本を救いたいと思っていた筈だ。しかしそれは志半ばで叶わなかった、その想いを俺に託してこの世界に再び生を与えてくれたのだと思っているんだ。こうして形は違えど君にまた会えて、俺は嬉しいよ」
大和「っ……‼︎」
溢れ出す涙を抑えきれないまま大和は大石の胸に飛び込み声を上げて泣いた。
それから高杉も自身が赤城で最期を遂げたことを伝えると赤城も泣いたが「一航戦赤城、再びお供させて頂きます!」と涙ながらに応えた。
そして、現軍令部総長高野五十六と大高弥三郎首相によるクーデターから変わった後世第二次世界大戦の現在に至るまでの推移を語る。
みほ「はぁ……」
まほ「アメリカと…講和を……」
秋津「……成程、戦術的にはアメリカに勝ち、戦略的に負け」
涌井「より良い負けを得る戦い…か」
加賀「そしてドイツとの開戦……」
赤城「そこまでして大丈夫なんですか高杉長官…?」
高杉「まぁな…表の戦力だけではな」
ミーナ「表の…」
芳佳「…戦力?」
高杉が続けて話そうとしたときドアをノックする音が聞こえてくる。
大石が入るよう促し入ってきたのは、白色の第二種軍装に身を包み顔にはこの時代には似つかわしくない近未来的な一体型サングラスをかけた一人の男であった。
高杉「おぉやっと来たか」
涌井「?…高杉司令、彼は?」
高杉「紹介しましょう。彼は影の戦力として戦う我が海軍の幽霊です」
「「幽霊?」」
サングラスを外して彼は名前を名乗る。
みほ「えっ…」
「日本海軍紺碧艦隊司令の前原一征です」
その顔を見てみほは気づいた。
みほ「えぇぇ⁉︎」
まほ「みほ、どうかしたのか……⁈」
吹雪「みほさん…?」
みほはそのまま前原に近寄り話しかける。
みほ「あ…あの!」
前原「ん?あぁあの時の君か!」
みほ「やっぱり!顔が似ているのでもしかしたらって」
大石「なんだ?知っているのか?」
前原「えぇ…実を言いますとー……」
前原が一切を語り、それを聞いた大石と高杉が笑い周りも釣られ笑う。
会談はしばらく続き終わりを迎える。
会談後 応接室
大石「頼もしいですな…」
高杉「ん?何がだ?」
大石「いえ、前世を共に戦った艦…いえ仲間と再び相見え今再び戦おうとする。自分としては嬉しいです」
高杉「確かに」
前原「しかし驚きました。魔法を使って怪異と戦うと聞いた時もそうでしたが、艦が人の姿になるとあぁも変わるのですな」
高杉「全くだ。赤城も中々のべっぴんさんになっておったわい」
大石「ん?」
前原「おぉ?」
高杉「ん?あぁ!いや、今言ったのはその…何だ…忘れろ」
大石・前原「「あっはははw」」
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