ただ一つのブルーアーカイブ   作:不透明な水滴

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違う世界で生きてる

「けほっ、けほっ…うわぁ、ここも砂だらけじゃ〜ん…」

 

「砂漠化も侵食するとこうなるんだな」

 

「ま、仕方ないんだけどね。掃除をしようにも、そもそも人数に対して建物が大きすぎて…」

 

「砂嵐が減ってくれればいいんだけど…」

 

「うへ〜、せっかくの高校生活が全部砂色だなんて、ちょっとやるせないと思わない?」

 

「でも、なんやかんや言って楽しんでるでしょ?」

 

「…まあ、そうかもね」

 

「…砂漠化が進む前、アビドスはかなり大きくて力のある学校だったって言われてるけど…そんな記憶も実感も、おじさんには全く無いんだよね〜」

 

「最初から全部めちゃくちゃで、ちゃんとした物なんて一つも無い学校だった」

 

「おじさんが入学した時のアビドス本館は、今はもう砂漠の中に埋もれちゃったし。当時の先輩達だって、もう皆居なくなった」

 

「今いるここは、砂漠化を避けて何回も引っ越した結果に辿り着いた、ただの別館」

 

「……ま、でもここに来てシロコちゃんやノノミちゃん、アヤネちゃんにセリカちゃんと会えたから…」

 

「…皆の事、好きなんでしょ?」

 

「…そうだね」

 

「……先生、正直に話すよ」

 

「…私は二年前こら、変な奴らから提案を受けてた」

 

「…カイザーコーポレーション」

 

「提案というかスカウトというか…アビドスに入学した直後からずっと、何回もね」

 

「そういえば、ついこの間もあったかな…」

 

「それは誰から見たって破格の条件だった。でも、当時は私が居なくなったらアビドス高校が崩壊するって思ってたからこそ、ずっと断ってたけど…」

 

「…アイツら、PMCで使える人材を集めてるみたい」

 

「…そいつって誰?」

 

「私も、アイツの正体は知らない…ただ、私は黒服って呼んでる」

 

「何となくゾッとする奴で…キヴォトス広しと言えども、ああいうタイプの奴は見た事無かったし…」

 

「怪しい奴だけど、特に特段問題を起こしたりはしなかった」

 

「何なんだろうね。あのカイザーの理事ですら、黒服の事は恐れてる様に見えたけど…」

 

「…じゃあこの退部届けは」

 

「…うへ、まあ一ミリも悩んでなかったって言ったら嘘だし。ちょっとした気の迷いっていうか」

 

「…うん、もう捨てちゃおっか」

 

そう言い、ホシノが退部届けに手をかけようとした時

 

「ちょっと待って」

 

俺はその手を止めた

 

「先生?どうし…先生?」

 

「……少し、話をしよう」

 

「え…?うん…」

 

そう言った後、近くの教室に入る

 

「…ホシノは、皆の事…好き?」

 

「皆って…」

 

「シロコやノノミ、アヤネにセリカ…それにアビドスに住んでる人達まで」

 

「そりゃ…好き…だけど…」

 

「なら…それを失った時って…ホシノ自身はどう感じると思う?」

 

「え………?」

 

「えっと……どうだろうなぁ…」

 

「俺はキヴォトスに来る前、大切な仲間がいた」

 

「そいつらは目的の為に集まった奴らで、本人達もお互いを仲間と思ってなかったらしい」

 

「……っていう、嘘のお話を聞いてな」

 

「…嘘って…」

 

「アイツらはお互いがこういう時どんな行動をするかまで覚えてしまう程仲が良かった…というか、それ程長い間を過ごしてきた」

 

俺はホシノの方を向き言う

 

「俺はホシノの事を何も知らない」

 

「昔どんな事があったのかとか、ホシノが俺にどんな想いを抱いているのかとか、好きな食べ物も嫌いな食べ物も、ホシノが退部届け持っている事自体分からなかった」

 

「そして、キヴォトスに来る前のアイツらの事も昔は何も知らなかった」

 

「…ホシノがその退部届けを出した時、俺は泣いてしまうかもしれない」

 

「俺ですら泣くんだ、対策委員会の皆はもっと泣いて、怒って、取り戻そうとしてくるだろう」

 

ホシノに近づき、頭に手を置く

 

「決してその退部届けを出すなとは言わない…まあ、俺として出さないで欲しいけど」

 

「もし自分の判断が正しいと思ったのなら、例えそれが未来を見据えていないとしても、自分の判断に身を委ねればいい」

 

「それって……」

 

「ホシノが本当に退部して、その判断が間違ってたとしても、先生は先生としてホシノを叱って、受け入れる」

 

「今大事なのは対策委員会でも、アビドスでも、委員会に所属し続ける事でもない…今一番大事なのは、ホシノの判断だ」

 

「だけど、もしその退部届けを出して、退部したとしても…俺も、対策委員会も全力でホシノを取り返しに来る…」

 

「………」

 

「…ホシノ、ホシノは大人を…先生を完全に信用し切れていない」

 

「……!」

 

「だから証明してやる。俺が、対策委員会が、ホシノをホシノが思っている以上に大切にし、大好きで、かけがえのない仲間という事を」

 

「……この言葉が、ほんの少しでも…ホシノの負担を背終えてたら、いいんだけど」

 

「……先生にしては、随分といっぱい喋ったね」

 

「……やっと先生らしい姿を見せられたんだ、少しカッコつけさせてもらったよ」

 

「……ありがとう、先生」

 

「……どういたしまして」

 

「…自分の判断…か」

 

「それが、今一番大切な事なんだよね、先生?」

 

「…ああ、何てったって、ホシノが退部する判断をしても、絶対に取り返すから」

 

「…絶対かぁ…大きく出たね先生」

 

「それぐらい本気って事だ」

 

「……うん、分かった…信じるよ、先生」

 

「…ああ、黒服やらカイザーやらに、一発言ってやれ」

 

「…うん」

 

「それじゃ、私は帰るよ」

 

「ああ、気を付けて帰れよ」

 

「うん…じゃあ、また明日ね…先生」

 

「うん…また明日、ホシノ」

 

そう言い放った後、ホシノが教室から居なくなった

 

「……きっと俺がどんないい言葉を連ねたって…ホシノは退部届けを出していた…それがホシノにとって、一番いい判断だと思ったから」

 

「……雷電、聞こえてるか」

 

『…なんじゃ』

 

「……少し、取り引きをしよう」

 

『……ほう?それはどんな?』

 

「……雷電にとって、プラスしかない事だ」

 

俺は、明日に備えて準備でもするか

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