ZOIDS―記憶をなくした男―   作:仁 尚

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今回も盛り盛りです!


決意と真実と

『さっきのゾイドは、一体何なのだ?!』

「殿下、ご心配には及びません。あのゾイドは我々の仲間です。この隙に、安全域へ離脱しますので、今しばらく辛抱を」

 ライガーゼロとの通信を「音声のみ」に切り替えていたエージェント4は、スピーカーから響く”殿下”の声に適当に返事をすると、そのまま通信を切った。

 

「さて、これで安心して戦域を離脱できますが、彼女(・・)の戦闘をじっくり観られないのは残念ですねぇ……」

 モニターに映る味方機(ストームソーダー)を見つめながら呟くと、エージェント4は待機させているホエールキングとの合流を急ぐべく、3Sを飛ばすのだった。

 

*************

 

「よりにもよって、FX(・・)か。厄介な相手が現れたな……このままだと、ライガーゼロを取り逃がしちまう」

 ストームソーダーステルスタイプ(3S)とライガーゼロの反応が遠ざかっていくのをレーダーで確認しながら、エスは行く手を阻んだ相手を見据え、苦虫を噛み潰したように顔を顰める。

 

【ストームソーダーFX(フューチャー・エクスプローラー)】…大戦中、共和国軍が次世代主力航空ゾイド開発のために、ストームソーダーをベースに開発を進めた試作ゾイドで、次世代機に相応しく数多くの先端技術が投入され、通常のストームソーダーと比較して速度・装甲・センサー・エネルギ供給など全ての性能が向上している。外見も大幅に変更され、通常機より鋭角的に形状が変わり、トップソード及びウイングソードが長大ものへと強化された。そして、最大の特徴は機体左右側面に装着された「ウェポンバインダー」で、右バインダーにはブラスターキャノンを、左バインダーにはレーザーキャノン二門と高速連射キャノン二門が搭載され、それぞれのバインダーはフレキシブルアームによって後肢付け根に接続されている。

 

 そんなFXだが、試作機が良好な結果を残したにも拘らず、開発当時の共和国軍の事情から生産は見送りとなり、代わりに量産の目処が立っていたレイノスやサラマンダーなどが再就役することとなったために、”幻のゾイド”となってしまった。

 

 まるで、歴史の中に埋もれてしまっていた自身の存在を証明するかのように、ロービジカラーに染め上げられたストームソーダーFXが悠然と旋回していたが、突然機首をフューラーへと向けたかと思うと、ウイングソードを展開して襲い掛かってきた。

 

「ちっ!」

 真っ直ぐ突っ込んでくる相手に、何故かエスは舌打ちしながらフリーラウンドシールドを前面に展開すると、タイミングを見計らってバーニアやスラスターを駆使して敵の攻撃を寸前でかわす。

 

 次の瞬間、レーザーを纏ったウイングソードとフリーラウンドシールドが接触し、感高い金切り音が響き渡った。

 

 衝撃でぐらつくフューラーをエスが立て直している中、必殺の攻撃をかわされたFXは、仕切りなおすかのようにフューラーとの距離を一気に離す。

 

「仲間を逃がす為の時間稼ぎだけしてくるかと思っていたが、こっちを堕とす気できたか……さすがに、分が悪いな」

 フューラーの体勢を立て直したエスは、敵が時間稼ぎのために遠距離からの攻撃を行わずに接近戦を挑んできたことに、当てが外れ顔を顰める。

 

 相手が遠距離からの攻撃だけに絞って仕掛けてくれば、空中であってもエスとフューラーなら付け入る隙もあったが、空中での格闘戦となれば話は別だった。

 空を自由に飛びまわれる飛行ゾイドのストームソーダーと違い、スラスターやバーニアの推力だけで空中に浮いている(・・・・・)状態のフューラーには、空の上で満足に格闘戦など出来はしない。

 そのことを相手がきちんと理解し、自分の得意とする戦闘に持ち込んでいることをエスは見抜き、即座に思考をフル回転させ、FX攻略を組み立てていく。

 

 すると、距離を取っていたFXが機体を反転させ、再び機首をフューラーへと向けると、推力を上げて攻撃に転じた。

 しかも今度は、左側ウェポンバインダーに搭載されたレーザーキャノン二門と高速連射キャノン二門を同時正射しながら距離を詰めてくる。

 

「そう来るかよっ」

 エスはコックピット内で毒づきながら、敵の攻撃をスラスターを使って避けるのではなく、もう一度フリーラウンドシールドを前面に展開して防御を固める。

 

 シールドにFXの攻撃が着弾した瞬間、爆発が起きフューラーの姿が爆煙の中へと消えた。

 

 しかし、FXは機体を反転させる事なくウイングソードを展開し、煙の中に消えたフューラーへと突っ込んでいく。

 

 これは、相手が爆発によってダメージを受けてないまでも、機体のバランスを崩していると判断して止めを刺すための行動だが、その判断はあまりにエスとフューラを過小評価し過ぎであった。

 

「いくぞ、フューラー!!」

 ギュワァ!!

 

 突如、立ち込める煙の中から推力を全開にしたフューラーが飛び出し、フリーラウンドシールドのエクスブレイカーを展開させながら、FXへと襲い掛かったのだ。 

 

「確かに、並みのゾイドならさっきの攻撃を防げたとしても、体勢を崩してただろうな……だが、ドクターとタダンファクトリーの技術者たちによって新生した、この【ドゥエルフューラー】を、甘く見すぎだ!!」

 エスの咆哮と共に、バーサークフューラー改め、ドゥエルフューラーのエクスブレイカーがFXを鋏もうと迫る。

 

 まさか相手から突っ込んでくるとは予想していなかったFXは、獲物に喰らいつこうとする竜の顎のようなエクスブレイカーから逃れようと、慌てて翼を打つ様にして強引に機体を方向転換させ、急上昇した。

 

「逃がすか!!」

 寸前のところで、エクスブレイカーを避けられたエスだが、間髪いれずバスタークローを上空へと向け、AZ185mmビームキャノンのトリガーを引いた。

 放たれた一条の光が急上昇するFXに向って伸びていくが、FXが機体をロールさせてビームを回避すると、そのまま捻るようにして水平飛行へと移る。

 

「っ!なら、これならどうだ!!」

 エスが手早くコンソールを操作すると、モニターに表示されたAZ185mmビームキャノンの表示がシングルモードからバースト(・・・・)モードへと切り替わり、トリガーを引いた瞬間、マシンガンのようにマズルからビームの弾が発射される。

 これは、アンジェリカがバスタークローに追加した機能で、バスタークローを一振り撤去しビームキャノンが一門に減ったことで低下した砲撃能力を少しでも補う為のものだ。

 

 今までと同じ強力なビームを発射する【シングルモード】と、一発の攻撃力を抑える代わりに連射によって面に対する攻撃を可能とする【バーストモード】の二つの機能があり、任意に切り替えることが可能である。

 

 迫り来るビームの嵐を、FXは大空を舞い踊るかように巧みに避け続けるが、エスの的確な狙いによってマニューバによる回避に限界を向かえる。

 避けきれず、とうとうフューラーの攻撃が直撃するかと思われた瞬間、FXが急に機体を翻し胴体をフューラー側へと晒しながら、左右のウェポンバインダーを操作して前面に展開すると、装甲面がスライド展開する。

 左右のバインダー装甲がスライドし終わると同時に強力な力場が発生し、命中するはずだったビームを悉く打ち消していった。

 

「っ、Eシールドジェネレーターか…本当に厄介だな!」

 ストームソーダーFXが「Eシールドジェネレーターを搭載している」ということを識っていたエスだったが、その防御力を目の当たりにして生半可な攻撃では倒せないと考え、ビームキャノンによって敵を釘付けにした今の状態のまま、荷電粒子砲を撃つためにコンソールを操作しようとしたその時だった。

 

「接近警報?っ、また新手か!?」

 再び、コックピット内に接近警報が鳴り響き、エスは即座にレーダーを確認した。

 

 すると、3Sが飛び去った方向から、複数の反応が迫っているのが映し出される。それも、一機や二機ではなく数十機にもおよぶ大編隊を示す反応に、エスはモニターに映り始めた小さな機影を拡大した。

 

「ブラックレドラー?……ざっと見ておよそ三十機。っ…しかも、ご丁寧に地上攻撃用の装備まで…」

 

 映し出された機体を見て、エスは表情を険しくする。

 

【ブラックレドラー】…大戦中に帝国で使用された機体で、旧式化していたレドラーの機動性、火力、装甲などの性能を大幅に強化し、夜間戦闘時のレーダー対策として黒色の特殊コーティングが施されている。カラーリングだけでなく、頭部の形状変更に機銃増設。翼下のミサイルポッドや尾部のブレードを三基に増設されるなど、通常機と比べて変更点が多く、その性能の高さからベテランパイロットによって運用され、大戦末期まで活躍した。

 

 現れたタイミングと搭載された地上爆撃用の大型爆弾に、編隊の進行方向から、向ってくるブラックレドラー部隊の目標が下に居るキャラバンだという事をすぐに気がついたエスは、一瞬FXとブラックレドラー部隊、どちらを先に対処するか判断を迷う。

 

 そのせいでFXに向けていた注意を疎かにするという致命的なミスを犯すことになった。

 

 エスの見せた一瞬の隙をFXは見逃すことなく、狙いの甘くなった攻撃を掻い潜ると、ブースターを起動させ3Sが飛んでいった方向とは別の方向へと弾道飛行を始める。

 

「しまっ!?……っ!!」

 猛スピードで逃げていくFXにエスが声を上げるが、その姿があっという間に雲の向こうへと消えてしまう。さらに、レーダーで追尾していた3Sの反応も消えてしまい、エスは自らの致命的な判断ミスと敵の用意周到さに、悔しさで顔を顰めた。

 

「……まだだ。これ以上、敵の思うようにさせるものかよ!」

 悔しさを滲ませていたエスだったが、敵がブラックレドラー部隊だけとなったことで取るべき行動が定まる。

 

 眼下に伸びている街道には、未だに身動きの取れない仲間たちが居る。幸い、ブラックレドラーの大部隊が攻撃態勢に入るにはまだ幾ばくかの余裕がある。

 

 仲間たちを逃がす時間はないが、荷電粒子をフルチャージするには十分な時間だった。

 

「最初の時と同じく、試射なしのぶっつけ本番か……やれるよな?フューラー!!」

 ギュワッ!!

 

 エスの問いかけに、フューラーは「まかせとけ!!」と言わんばかりに咆哮を上げ、地上から遥か上空でホバリング状態のまま、荷電粒子砲発射態勢に移行する。

 

「荷電粒子コンバータ、回路接続。荷電粒子強制吸入開始……バイパス解放!」

 新ユニット【ドゥエルユニット】に搭載された荷電粒子コンバータが起動し、バーサークユニットでは考えられない速度で機体内に荷電粒子がチャージされる。

 

「……フルチャージ完了!集束率調整……集束荷電粒子砲、いけぇーーーー!!」

 

 エスがトリガーを引いた瞬間、口腔内のバレルから、超高密度に圧縮されたエネルギーが解放され奔流となって一直線にブラックレドラー部隊へと伸びる。

 

 発射された荷電粒子砲は、チャージされたエネルギー量からエスが判断して集束率を高めに調整したにも拘らず、バーサークフューラーの通常発射時とは比べものにならないほど巨大なものになっており、ブラックレドラー部隊左翼を飲み込み、一瞬にして三分の一が消滅した。

 

 左翼に展開していた僚機が光の渦に飲み込まれ、蒸発するのを見た他の機体が蜘蛛の子を取らしたように逃げようとするが、時既に遅かった。

 

「逃がすかよ!!」

 

 逃げようとする敵を絶対逃がすまいと、エスはスラスターを駆使してフューラーを操作し、左から右へ荷電粒子砲で敵を薙ぎ払う。

 

 荷電粒子砲の直撃した機体は一瞬で蒸発し、直撃を免れた機体も強烈な余波を受け爆散するものや、コントロールを失い僚機と衝突した衝撃で抱えていた爆弾が暴発し自爆した。

 

 荷電粒子砲の通り過ぎた後に、生き残ったブラックレドラーは一機も居らず、攻撃部隊はその役目を果たすことなく一瞬で全滅した。

 

 だが、エスはブラックレドラー部隊を全滅させたにも拘らず、荷電粒子砲をそのままストームソーダーFXが逃げていった方向へと向けた。

 

 最高速度マッハ4.0を叩き出すストームソーダーFXに、エスも今更荷電粒子砲が当たるとは思っていなかったが、一種の宣戦布告の意味を込めて、エネルギーが尽きるまで荷電粒子砲を撃ち続ける。

 

 荷電粒子砲の放出限界時間を迎え、猛威を振るったエネルギーが消失すると同時に強制冷却が開始され、フューラーの全身から蒸気が噴出する。

 

 ギュワァアアアアアアアアアアアアア!!

 

 展開されていた装甲が閉じ、フューラーが天空に轟くほどの咆哮を上げる。

 

 だがその声には、どこか悔しさとやり切れなさが混じっているように聞こえた。

 

 

 

 エスがブラックレドラーの大部隊を全滅させてから少しして、エスの後を追いかけてきたアンジェリカやマーク、そしてクリューたちタダンファクトリーのスタッフたちがキャラバンの下へ到着していた。

 

 現場の惨状にアンジェリカたちは驚きを露にしていたが、「敵を追い払ったとは言え、まだ油断はできんね」というリョーコの判断に、負傷したキャラバンメンバーの代わりに、タダンファクトリーのスタッフたちが自分たちの乗ってきたグスタフの荷台に破損したゾイドを急いで回収を始める。

 

 ゾイドの積み込み作業を横目に見ながら、リョーコはクリューに頭を下げていた。

 

「ごめんね、三代目。こんな立て続けに、迷惑掛けてしまって」

「頭を上げてください、女将さん!私が勝手に判断してついて来ただけですから!それに、デザルト・チェルカトーレの皆さんが困っていると聞いて、見て見ぬ振りなどしては、親父とお袋に叱られてしまいます!こんな時こそ、頼ってください!」

 大恩人であるリョーコに頭を下げられ、クリューが慌てて頭を上げるように申し入れる。

 

「ありがとうね……」

 ヤンチャな少年だったクリューを知るリョーコは、彼が気遣いの出来る大人になったことを嬉しく思い、微笑を浮かべるが、彼女の視界にエスたちの姿が入ると、表情を険しくした。

 

 紅いライガーゼロとの戦闘で破壊されたジェドーのコマンドウルフの前に、エスにアンジェリカ、ホメオとマークが険しい表情を浮かべて立っていた。

 

「ジェドーさんのコマンドウルフが……」

 目の前のコマンドウルフの状態を見て、マークの目に涙が浮かぶ。

 

 戦闘からまだ時間が経っていないにも拘らず、ジェドーのコマンドウルフは完全に石化してしまっていた。通常、ゾイドコアなどに重大なダメージを受けたとしても、”即死”でない限り、ゾイドの装甲が急激に石化する事は稀なのだが、思い当たる節のあるアンジェリカは、ゆっくりとコマンドウルフへと近づいた。

 

「この子は、「妹を助けたい」という相棒(ジェドー)の願いを叶える為に、その命を燃やし尽くして叶えようとしたんだろうな……」

 戦闘状況をホメオから聞いたアンジェリカは、コマンドウルフが己の限界以上の力を発揮し、その命を燃やし尽くしたことと、ダメージが重なった事で一気に寿命を縮めてしまい石化したものと考え、石と化したコマンドウルフの装甲を撫でた。

 すると、ホメオが短く息を吐いて口を開いた。

 

「こいつは元々、ジェドーの親父さんが乗っていたゾイドなんだ。もしかしたら、こいつにとってもジェドーとナデアは”子供”だったのかもしれないな……」

 先に逝ってしまった相棒の代わりに、その子供たちの成長をゾイドが見届け、最後に子供たちのために身体を張って戦い、そして逝った。冗談とも取れる考えだが、その場にいる誰もがそう思い、コマンドウルフを見つめる。

 

「でも……もしそうだとしたら、やり切れないっすよ。ナデアは助かったのに、ジェドーさんが行方不明になるなんて」

 今にも泣きそうな顔をして、マークはジェドーが落ちていったと聞かされた渓谷を見つめる。

 

「…エス、本当にジェドーの姿は無かったのかい?」

「あぁ……ドクターたちが来る前に、フューラーで渓谷の底に降りてみたが、下はかなり流れの速い川が流れていた。おそらく、ジェドーは川に流されたんだと思う」

 

 アンジェリカの質問に、エスは目を細めて重々しく頷く。

 戦闘が終わってすぐ、エスはフューラーを使って渓谷へと降りていき、ホバリングしたままの状態でセンサーなどを駆使してジェドーの姿を探したが、谷底には流れの激しい川が流れ、結局彼の姿を見つけることが出来なかったのだ。

 

 見つからなかった=死んだとは、誰も思いたくはなかった。その考えがあったため、エスたちは「行方不明」という言葉を使っていた。

 

 再び険しい表情浮かべていた四人に、リョーコとクリューが近づいてきた。

 

「ジェドーの行方に関してはスチールギア・シティーに帰り次第、この渓谷に流れている川の下流にある街やコロニーに情報を出して、行方を探すつもりでおるけん、心配せんどき……それよりも!また敵が戻ってくるかもしれんけんね、早めにこの場を離れるよ!アンジェリカ。ジェドーのコマンドウルフは、この場から動かせるね?」

「……石化してしまっているから少しコツが必要だが、運び出せるよ」

 石化したとはいえ、ジェドーのコマンドウルフをこの場に放置していく事は憚られる。そんなリョーコの気持ちを汲み取ってか、アンジェリカは質問に対して肯定する。

 アンジェリカの答えを聞いて、リョーコがクリューに目配せした。

 

「では、アンジェリカさん。作業手順の指示をお願いできますか?」

「分かった…」

 

 クリューに促され、既に準備を整えて待機していたタダンファクトリーのスタッフに、アンジェリカが指示を出し始める。

 

 それを確認したリョーコは、次にエスたちへと顔を向けた。

 

「アンタ達も、出発の準備をせんね!……エス、今この場で戦えるのはアンタとフューラーしか居らんのやけ、頼りにしとうよ!」

 ホメオとマークが慌てて駆けていくのを横目で見ながら、リョーコがエスの肩を”ポン”と叩くと、娘たちの下へと歩き出そうとエスに背を向けたときだった。

 

「女将さんっ……」

 引き止めるようなエスの声に、リョーコは振り返って彼の顔を見ると、エスが何を言おうとしているか察し、「ふ~…」と息を吐いた。

 

「そげん顔せんでも、アンタの言いたいこつは分かっとうよ……けど、”たら・れば”なんて言い出したら、キリがないけんね」

「……」

 リョーコの言葉に、エスは目を伏せる。もちろん、行方不明のジェドーや怪我をしたメンバーに対する責任も感じている。

 

 自分がもっと速く駆けつけられれば、少なくともジェドーが渓谷の底へと落ちることを防げたかもしれない、と。

 

 しかし、そんな”もしも”の話をしても、過去が変わるわけでないことを、エスも重々理解している。

 

 エスがリョーコに言おうとしている事は、全く別のことだったのだが、そのことも折込づみだったのか、リョーコが言葉を続けた。

 

「…心配せんでも、このままにする気はなかよ。荒野に生きるキャラバンが”暴力”に屈したなんて知られれば、この先ずっとハイエナどもにたかられ続ける事になるけんね……やけん、こっちの足元見て喧嘩を吹っかけた馬鹿には、きっちり落とし前つけさせて、キャラバン【デザルト・チェルカトーレ】に手を出す事がどれほど危険か、教えてやらんといけんよ!!」

「…あぁ!!」

 清清しいまでのリョーコの宣言にエスは面食らうも、心強い彼女の言葉にエスは大きく頷き、愛機であるドゥエルフューラーへと足を向けるのだった。

 

 

 準備が終わり、キャラバンやタダンファクトリー所有するグスタフたちがスチールギア・シティーへと移動を開始する。

 そんなキャラバンのグスタフに連結してある居住コンテナの中に、ナデアとエリーの姿があった。

 

 未だ気を失ったまま、ベッドに横たわるナデアを、エリーが沈痛な面持ちで見つめていた。

 

「ナデア……」

 

――心配せんでいい、こいつは母親に似て頑丈だ。怪我は大した事ないし、すぐに気がつく……

 

 先ほどナデアを診察したステファンが出て行く際に言った言葉を思い出しながら、エリーは本当にナデアがすぐ目を覚ますのか心配で、彼女の手を握る。

 

「ナデアっ……」

 エリーがもう一度、親友の名を呼んだその時だった。

 

「ん…んっ……」

「?!ナデアっ!?」

 

 身体を微かに動かし薄目を開けるナデアに、エリーは慌てて立ち上がると彼女の顔をのぞきこんだ。

 

「エ…リー…?」

「ナデアっ!よかった……目、覚まして…ホントに、よかった…」

 

 目覚めたばかりで焦点が合わない目をしながらも、自分の名を呼んでくれたナデアに、エリーは感極まって泣き出してしまう。

 

 俯いて泣くエリーを見ながら、ナデアはゆっくりと上体を起こすと、ぼんやりとする思考で何故エリーが泣いているのかを考える。

 しかし、目が覚めたばかりのせいで頭の中が霞が掛かったように重く、動きの鈍い頭の回転を必死に回そうとすると、徐々に思考がクリアになっていく。

 そして、紅いライガーゼロとの戦闘やジェドーの事を思い出した瞬間、ナデアは勢いよく身体の向きを泣いているエリーの方へと向け、彼女の肩を掴んだ。

 

「エリー!アレからどうなったの?!紅いライガーは!?お兄ちゃんはどうなったの!!?」

「?!……お、落ち着いて…ナデアっ!あ、あの後…すぐに、エス様が駆けつけてくれて、紅いライガーゼロを…撃退してくれたよ。ジェドーさんは……エス様が、渓谷の底に降りて探したけど…見つからなくって……」

 突然、ナデアに肩をつかまれ、揺さぶられながらの矢継ぎ早の質問攻めに、嬉し泣きしていたエリーは驚きを露にしたが、ナデアの必死の形相に気圧され、必死に説明する。

 

「そ、そんな…お兄ちゃん……」

 エリーの説明を聞いて、ナデアは絶望したような表情を浮かべ、掴んでいたエリーの肩から手を落とすように離して身体を元に向きに戻すと、そのまま俯いてしまった。

 

「ナ、ナデア……」

 俯いたまま微動だにしなくなったナデアに、どう声を掛ければいいか分からず、エリーは悲痛な表情で親友を見つめる。

 そこから数分の間、二人の間に沈黙が流れる。

 

「……ねぇ、エリー。さっき、紅いライガーはエスが撃退したって言ったよね?」

「え?…う、うん、そうだよ。もう少しで倒せる、って所までいったんだけど……ライガーゼロの仲間が沢山現れて、邪魔されてそのまま……」

 

 沈黙を破ったナデアの問いに、エリーは違和感を覚えながらも答えたが、感じた違和感が何だったのか、彼女はすぐに思い知る事となる。

 

「そっか…逃げたんだ、アイツ……ふーん……」

「ナデア…?」

 俯いたままうわ言のように呟くナデアを見て、エリーが心配して名前を呼ぶ。

 

 すると、ナデアがスッと顔を上げた。

 

 その顔を見たエリーは、かつて幾度と(・・・)見てきた表情と重なってしまい、思わず息をつまらせる。

 

「なら、今度また襲ってきたら、アタシが殺してやる……お兄ちゃんの仇はアタシが取る、絶対に!!」

 

 エリーが見たのは、”殿下”への殺意を剥き出しにしたナデアの表情だった。

 

 ”復讐”という仄暗い炎を瞳に宿し狂気に染まるナデアに、エリーはそのまま声を掛ける事が出来ず、ただ見つめることしかできなかったのだった。

 

 

******************

 

 

 デザルト・チェルカトーレがスチールギア・シティーに到着すると時を同じくして、エージェント4専用のホエールキングの一室から廊下の外にまで、ガラスが割れる音と叫び声(・・・)が何度となく響いていた。

 

「くそっ!くそっ!くそぉおおお!!!」

 

 赤竜旗(ローオ・ドラグ・ファーネ)のVIPを迎えるために急遽作られた貴賓室には、それなりに値の張る調度品が置かれていたのだが、今やその煌びやかな内装は殆ど破壊し尽くされ、見る影もない。

 

 その破壊されガラクタと化した調度品や内装が散乱する部屋の真ん中で、”殿下”が肩で息をしながら悪鬼の様な形相で怒りを露にしていた。

 

「再興する帝国の皇帝となる余が、なぜあのような目に遭わねばならなかったのだ…?キャラバン風情が、絶対に許さぬぞ……この屈辱、万倍にして返してくれる…っ!!」

 

 エスたちへの恨みを呪詛のように吐き出し、”殿下”は残っていた花瓶を叩き割った。

 

 すると、”殿下”の背後にある扉が開き、一人の人物が入ってくる。

 

「誰だ、勝手に入ってきたのは!?部屋に入っていいと許可した覚えはないぞ!!」

 人払いをしていたにも拘らず、部屋に勝手に入ってこられた事に、”殿下”が怒りをぶちまけながら振り返り、入ってきた人物を睨みつけた。

 

 そこに立っていたのは、”殿下”の身の回りの世話をしていた侍女とは全く別の女性だった。

 

 年の頃は二十代前半。抜けるような青空を思わせる腰まで伸びる青く長い髪を毛先辺りで結び、前髪を右側に流して羽根をモチーフにした髪飾りで留めている。男では見分けがつかないほどの薄化粧をし、赤竜旗内でも重要な地位(・・・・・)に居る”殿下”に睨みつけられながらも、臆することなく見つめ返す瞳は、髪の色とは正反対に海の底を映したような深い蒼を湛えており、眼差しには芯の通った強さが宿っている。

 服装は、”漆黒”と言って差し支えない黒色のパンツスーツにヒールの高い黒のパンプス……そして、もっとも目を引くのが、竜と剣、盾をモチーフにした紋章の止め具があしらわれた左側を覆うように羽織られた肩マントだった。

 

「何だ、貴様は?余の部屋に勝手に入ってくるなど、無礼な…名を名乗れ!!」

 

 部屋の入り口付近で佇む女性に、”殿下”が睨みつけながら問いかけるが、女性は答えることなく、ただ静かに見つめ返すだけだった。

 

 勝手に部屋の中へ入ってきた理由を言わないどころか、名乗りもしない女性の態度が癪に障り、”殿下”の怒りに拍車を掛ける結果となってしまい、女性へと詰め寄った。

 

「貴様、聞こえなかったのか!?一体、何者かと聞いて居るのだ!!」

 

 怒りを露にし、”殿下”が女性へと掴みかかろうとするが、女性は掴み掛かってきた”殿下”の腕を苦もなく絡み取ると、そのまま”殿下”を突き飛ばした。

 

「なっ?!っ~~…無礼者め!余が誰か知っての狼藉か!?」

 掴みかかろうとした自分の行動を棚に上げ、”殿下”が突き飛ばした女性を殺さんばかりに睨みつける。

 

 ”殿下”の言葉を聞き、女性の眼差しに鋭さを増した。

「……私が何者か、ですか。”御前”に連なる方ならば、私の名など知らずとも、この服装を見ればどの様な存在か、分かるはずですがね…逆に問いますが、貴方こそ何処の誰です?」

「……貴様、余を馬鹿にしているのか?余は、”御前”に連なり、再興する帝国の皇帝となる男だぞ!赤竜旗(ロート・ドラグ・ファーネ)に属するものなら知っておろう!!」

 女性に対する”殿下”の怒りが、秒単位で蓄積していくのを感じながらも、女性は眉一つ動かすことなく質問を重ねた。

 

「…こちらの言葉を理解していないのですか?貴方の()を聞いているのです」

「はっ!余の名さえ知らんとは、愚か者めが!いいか、余の名は……」

 自分の名を口にしようとした”殿下”の表情が突如として固まり、目を大きく見開いた。

 

「よ…余の、名、名前…は…」

 震える唇で名前を紡ごうとする”殿下”だが、その口から名前が紡がれる事は無く、一向に名乗らない”殿下”に女性が首を傾げる。

「どうしました?自分の名前もいえないのですか?」

「な、何故だ…?何故、余は自分の名を……思い出せない、のだ?」

 冷や汗を大量に流し、顔面蒼白で信じられないといった表情を浮かべる”殿下”に、女性が哀れむような眼差しを向けた。

 

「どうしてか、教えて差し上げましょうか?……最初から、貴方に名前など無いからですよ」

「な、何を……言っている?どういう、意味だ?」

 女性の言葉が理解できず、”殿下”の顔から表情が消える。

 そんな”殿下”を見て、女性が盛大にため息を漏らした。

 

「分かりませんか?貴方は、”御前”の後継者などではない、ということですよ。貴方の正体は、赤竜旗(ロート・ドラグ・ファーネ)内で進められている【強兵創生計画】において研究されている【クローン・ソルダート】と呼ばれる特殊パイロット兵の性能検証用に製造(・・)された実験体の一体……」

 

 そう言って女性は殿下の足元に、数枚の写真を放り投げた。

 

 写真には、受精卵と思われる胚の入ったガラス管が並ぶ光景や、人一人が入れるほどの大きさの水槽に成長途中と思われる子供のたちの姿。そして、その水槽に浮かぶ、”殿下”の姿が収められていた。

 

「そんな、馬鹿な……そんなはずは無い……余は、”御前”に…お爺様に育てられ……」

 

 足元に散らばる写真を拾い上げ、そこに写る内容や女性の言葉が信じられず、拒絶するかのように”殿下”は何度も首を横に振る。

 

「実験体に課せられた役目は、【クローン・ソルダート】が人間社会の中で、「与えられた記憶」を元に違和感なく生活できるかを検証すること。貴方は、その一例として「”御前”の後継者」という偽りの記憶を刷り込まれ、無様に踊っていた道化に過ぎないのですよ」

「嘘だ、嘘だ、嘘だ!……取り消せ…今すぐ、取り消せ!!」

 

 突きつけられた現実が受け入れられず、精神に限界を迎えた”殿下”はとうとう錯乱し、常軌を逸した目をして女性へと襲い掛かった。

 

 迫り来る”殿下”を、鋭い眼差しで見つめていた女性の羽織る肩マントの下で、何かが動いた時だった。

 

 部屋に、乾いた銃声が三度鳴り響いた。

 

「な……」

 驚きの声を上げながら、”殿下”の身体が不意に力を失いその場に倒れこむと、豪華な絨毯に鮮血が染み込んでいく。

 床に倒れこんだ”殿下”を見て、顔色一つ変えずに女性が後ろを振り返ると、そこにはいつもの胡散臭い営業スマイルを浮かべ、銃を構えるエージェント4の姿があり、彼の持つ銃口からは煙が上がっていた。

 

「すみません。その方には、ワタシも色々思うところがありまして、いつか殺してやろうと考えていたのでつい……余計な手間を増やしてしまいましたか?」

 銃のセーフティーを掛け、脇のホルスターへと戻しながらエージェント4が女性へと近づいていくと、女性が肩マントで隠れていた左手を外へと出すと、その手には軍用のナイフが握られていた。

 

 エージェント4の問いに、女性はナイフをしまいながら首を横に振った。

「いいえ。彼以外にも、異なる条件で検証していた実験体が数多く居たのですが、全ての個体で情緒不安定、記憶混濁、凶暴性の発露などが報告され、検証は中止。検証に使用された実験体は、全て”廃棄処分”が決定されていましたので、問題ありません」

「そうでしたか、それは良かった」

 そう言ってエージェント4が肩を竦めると、血と硝煙の臭いが充満する室内で、二人が不意に笑みを浮かべた。

 

「お久しぶりです、エージェント4。半年ぶりですね」

「貴女が異動して、もうそんなにもなりますか…お久しぶりです、エージェント(アハト)……っといけない。今は騎士マリエルとお呼びしないといけませんでしたね」

「…今の、ワザとですね?あの時(・・・)はちゃんと「騎士マリエル」と呼んでいましたよ」

「おや?そうでしたか?」

 

 つい先ほどまでの緊迫した空気が嘘のように、久しぶりの再会を喜び、二人の間に穏やかな空気が流れる。

 

 エージェント4の前に立つ騎士マリエルと呼ばれた女性は、元エージェント8を拝命していた人物で、今は赤竜旗(ロート・ドラグ・ファーネ)の近衛騎士団【ドラグ・ナイツ】に所属する騎士である。

 【ドラグ・ナイツ】は、”御前”とそれに連なる者たちを守護する特別編成部隊で、赤竜旗(ロート・ドラグ・ファーネ)内でも特に優秀な人員だけが所属を許可されており、マリエルは数少ない女性団員にして名誉ある”騎士”を拝命している。

 

 そして、先の戦闘でエスの行く手を阻んだストームソーダーFXのパイロットでもある。

 

 二人は赤竜旗《ロート・ドラグ・ファーネ》内でも珍しい飛行ゾイド専門のゾイド乗りであるため、マリエルがエージェントナンバーに籍を置いていた頃から、何かと交流があったのだ。

 

 久しぶりに会うマリエルとの会話を楽しんでいたエージェント4だったが、不意にその視線が床に転がる”殿下”と呼ばれていた物体へと向けられた。

 

「しかし、噂になっていた【クローン・ソルダート】の情報を貴女から頂いて、その性能をこの目で見られると楽しみにしていたのですが、蓋を開けてみれば、正直がっかりでしたね」

 そう言って、エージェント4はため息を漏らす。彼がホエールキングの執務室で読んでいた書類は、マリエルから齎された”殿下”の正体に関する情報が書かれていた。そのため、エージェント4は”殿下”のパイロットとしての性能がどれほどのものか楽しみにしていたが、その期待は先の戦闘で分かるように、大きく裏切られたのだった。

 

 そんな残念がっているエージェント4に、マリエルが愛想笑いを浮かべる。

 

「それは仕方ありません。彼はあくまでも、【クローン・ソルダート】が人間社会に適合できるかを検証する為の実験体。記憶や精神以外はほぼ無調整ですから、戦闘用ゾイドの操縦など殆ど出来ません」

「?その割には、ある程度はライガーゼロを動かしていたようですが?」

 マリエルの説明にエージェント4が首を傾げると、彼女は説明を続ける為、スーツの上着から小型タブレットを取り出し情報を呼び出すと、エージェント4に手渡した。

 

「それは、【クローン・ソルダート】が持つ能力である【マルチアジャストスキル】の恩恵のお陰です。【クローン・ソルダート】には、あらゆるゾイドとのマッチングを高めるために、過去に存在したゾイドに対する高い適応力を持ったパイロットたちの遺伝子情報が組み込まれています。つまり、先の戦闘では彼がライガーゼロを動かしたのではなく、ライガーゼロ自身がパイロットの”意思”を汲み取って動いたに過ぎないのです」

 マリエルの説明を聞きながら、タブレットの情報を素早く、そして隅々まで熟読したエージェント4が顔を上げると、その顔は嬉々としていた。

 

「それは、凄いですね!操縦訓練なしであれほどですから、訓練を施された【クローン・ソルダート】は、正しく一流のパイロットになるわけですね!」 

 赤竜旗《ロート・ドラグ・ファーネ》では、優秀なパイロットの確保がいつも悩みの種となっている。それが安定して生産・供給される事になれば、組織の悲願成就が一気に近くなる事になるのだった。

 

「本来であれば、ありとあらゆる状況に対応できる”兵士”の大量生産する事が計画の最終目標ですが、今回の検証中止を受けて、当面の間は、【クローン・ソルダート】はゾイド操縦用の生体ユニット(パイロット)として生産、供給されるようです」

 と、説明を終えたマリエルが顔を上げてエージェント4を見ると、先ほどまで嬉々としていた彼が、珍しく何ともいえない渋い表情を浮かべていた。

 

「…ここまで聞いておいてなんですが、いいのですか?いくら今の貴女が、ワタシよりも組織内の深度の深い情報を得られる立場にあるとは言え、そんな簡単に話してしまっても」

「構いません。今お話した情報は、後日エージェントナンバーにも開示される予定ですから。エージェント4なら、その時に初めて知ったというリアクションを取れますよね?」

 イタヅラっぽく笑みを浮かべるマリエルに、「これは、思った以上の対価になりましたね」とエージェント4は肩を竦めた。

 

「では、私はこれで失礼します。実験体はこちらで回収しますので、保管をお願いしますね」

「分かりました…そうそう、先の戦闘の感想を聞き忘れていました。どうでしたか?帝国の遺産と、それを駆るパイロットは」

 腕時計を確認してマリエルが部屋から出て行こうとすると、エージェント4が呼び止め、問いかけた。

 

 その問いかけに、マリエルが振り返ると、彼女の顔から笑みが消えていた。

 

「……貴方が、今まで手こずっていた理由が分かりました。アレは、本物の化け物(・・・)ですよ。愛機(FX)に乗ってどれだけ有利な状況に運べる確証があったとしても、二度と一対一で戦いたくない相手です」

「そうですか……ありがとうございます」

 

 エージェント4が礼を言うと、マリエルはそのまま部屋を出て行った。

 

「FXに乗る彼女にあそこまで言わせるとは、末恐ろしいですね……」

 

 マリエルの感想を聞き、ストームソーダーFXに空中戦を挑んで対等に渡り合ったエスとフューラーに、エージェント4は素直に脱帽する。

 

 今後の攻め手を考えていたエージェント4だったが、何かを思い出したように「あ」と声を上げた。

 

「しまった…もう一つ、マリエルさんに聞くのを忘れていました。彼女が仕える事になる主(・・・・・・・・)が誰なのかを」

 

 マリエルが”騎士”を拝命していたことを聞いた時から、聞こうと思っていたことを今頃思い出したことに、エージェント4はため息を漏らす。

 

 だが、マリエルが誰に仕えることになるのか、エージェント4はすぐに知ることとなるのだった。

 




 おう、ヴィンセントだ。
 仲間が行方不明となり、エスたちが意気消沈していた頃、俺様はエージェント4から相棒を受け取り、慣らし運転ついでに依頼を受けた…んだが、何故か奴の部下が一人、同行することになった。この嬢ちゃん、何故か俺様を目の仇にしてるんだよ。別に手を出したわけじゃないんだがなぁ~……まぁ、そんな事はどうでもいい!新しくなった相棒のお披露目をしてやるよ!!

 次回 ZOIDS-記憶をなくした男- 第十七話「魔装竜、復活」!

 次は俺様オンリーの話だ!手前ら、楽しみにしてろよ!!
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