バカテスト
理科
一年で最も太陽の位置が高い日と低い日を、その名称と日付答えなさい。
姫路瑞希の答え
夏至、6月21日
冬至、12月22日
教師のコメント
正解です。簡単でしたか。逆に、春分、秋分がその真ん中の日に当たりますね。
吉井明久の答え
世界滅亡の日、12月下旬
世界再興の日、8月上旬
教師のコメント
そろそろ滅亡の時ですね。預言者にならないでください。
島田美波の答え
太高日、9月
太低日、2月
教師のコメント
勝手に短縮しないで下さい。
寒さ、暑さを感じる感覚とは少しずれています。
店の外に出ると、まだ6時すぎなのに、空はもうすっかり暗くなっていた。
太陽が一番早く沈む時期であるとかいうから、それも仕方ないことだろう。
「明久くん、ちょっとついてきてもらえますか?」
「うん。今度はどこにいくの…?」
「ちょっと歩けば、すぐです。」
そういって、姫路さんが僕を導いた先は、なんでもない街路樹や、店がたちならんでいた。ここがどうしたというのだろうか。
「ここがどうかしたの?」
「ちょっと待ってれば、わかります。」
ニコッと姫路さんが笑顔になる。なにか移動店舗でも通りかかるのだろうか、なんて思っていると、
「…。」
言葉を失った。あたりの木々が一斉に光を纏って、輝きだしたのだ。
その景色の綺麗さといったら…言葉にならなかった。
いつも見ている血とか、骨が折れる光景とか、姉さんの唇とかのおかげで余計に綺麗に見える。
「綺麗ですね!明久くん。」
「そうだね。」
毎年ただの電気の無駄遣いだ、そんなことをするなら僕の家に電気を…
と思っていたけれど、こんなに綺麗に見えるものなのだ。
「あ…雪。」
手を前に出して、姫路さんが呟く。
空を見上げると、ちらほらと白い粉が降ってきた。
「雪…だね。」
景色が追い打ちをかけるように綺麗になっていく。
ホワイトクリスマスとはこういうことを言うのだろう。
雪…
脳裏にくっきりと蘇る光景。
そういえば…去年の今頃。
美波が雪の中で、公園に1人で座っていて、
泣いていて、
それから笑っている光景。
そんな光景がなぜか浮かんできた。
あの時の美波はなんというか…
「明久くん?」
姫路さんに呼びかけられて、はっとする。
ちょっと考え込んでしまっていたらしい。
「あ、うん。」
「どうかしたんですか?」
「ちょっと見とれていただけ、だよ。」
なぜか分からないけど、なんとなく言えなかった。
それで、こんなもっともらしい言い訳を口にしてしまったのだ。深い意味はないのだけど。
「本当に綺麗ですね。」
「う、うん。」
そういって笑う姫路さんを見てられなくなって、思わず目を逸らす。
なぜかどうしてもさっき思い出した光景が残って仕方がなかったから。
「寒くなってきましたね。」
「そうだね。」
もう日が落ちたのだからこれからもっと寒くなってくる。
「あーやってやってると、あったかそうですね。」
姫路さんが、前を見やっている。
なんとなしに、その目線の先を追うと、カップルが手をつないでいた。
え⁉︎それは、もしかして、もしかして、手を繋ぎたい、ってこと⁉︎
でも、そんなの恥ずかしすぎるし…もしそういうことじゃなかったら、勘違いも甚だしい。
「良かったら…この手袋使う?」そう言って、手袋をさしだす。
「…じゃあ、お借りします。」
ちょっと残念そうな顔をした姫路さん。
少し申し訳なかったけど、今の僕にはそんな、手をつなぐなんてことはできない。
「この手袋。明久くんの温もりが残ってて、とってもあったかいです。」
唐突に、そんなことを言われて、顔が熱くなってくることがはっきり分かった。
「…。」
「明久くん?顔が真っ赤ですよ?」
「ちょっと顔が熱くて…」
なんか今日一日言い訳ばっかりしている気がするなぁ。
「大丈夫ですか?」
姫路さんはそう言って、顔を覗き込んでくる。
そんなことをされると余計に顔が熱くなってくる。
「うん。大丈夫!気にしないでいいよ!」
「じゃあそこに座ってお話でもしましょうか?」
「うん!」
どれくらい話しただろうか。もう結構な時間になってきている。
そんな時、突然姫路さんが聞いてくる。
「明久くんは…まだ私といたいですか?」
「…姫路さんと話しているのは楽しいしね。」
そうきかれて、ちょっと答えづらくなって、直接の答えは回避してしまったが、
楽しいのは本当だ。
「そうですか!」
そう言うと、姫路さんはとびきりの笑顔で、カバンから、なにやら箱を取り出す。
「明久くん。これ、はいっ!」
「へ?」
「クリスマスプレゼントです。」
大事なことを忘れていた。そんなこと一つも考えてなかった。
やっぱり僕はバカで、ダメダメらしい。そんなのは買っておくのが、当たり前だろうことなのに。
「えーっと…その…」
「いいです!明久くんらしいですし…。」と姫路さんが笑って流してくれた。
「ごめんね。」
本当に僕はどうしようもない。
「かわりに、この手袋…もらっていいですか?」
なにを言っているのだろうか。その手袋は、僕が使いこんでるし、本当にそんなものでいいのだろうか。
「そんなものでいいの?いいんだったら、どうぞ!」
「ありがとうございます!十分嬉しいです。」
本当に申し訳がたたない。
「プレゼント、開けてもいい?」
「はいっ!」
綺麗に包装された小さな箱を開けていく。
妙に緊張して手が震えた。
やっとのことで開けると、
そこには、可愛らしい随分と手のこられたキーホルダーが入っていた。
「ありがとー!嬉しいよ!」
姫路さんからもらったものだし、見た限り値もはりそうだ。筆箱なんかにつけるのはもったいない。家の机の中にでも入れておこう。いまは、聖書が入っていないから机の中もすっきりしている。
「そろそろ帰りましょうか?」
「そうだね。」
もう夜も遅い。
なけなしのお金を使って、東京からいつもの駅まで戻ってくると、見慣れた景色は相変わらずのまま僕たちを迎えてくれた。
クリスマスイブとはいえ、東京と比べると、活気もそんなにない。
そして、いつもの帰り道、僕たちの家路が分かれるところにつく。
「明久くん!今日一日本当に楽しかったです。」
「うん。僕もだよ!本当にありがとう。その…送ろうか?」
深い意味はなく、女の子がこんな時間に一人なのは危ない。
「いいんですか?なら…お願いします。」
「うん!」
姫路さんの家はすぐそこだし、話していたらすぐに目の前までつく。
「またね!姫路さん。」
「はいっ!また冬休みも皆さんで遊べるといいですね!」
「うん。」
「そういえば…明久くん、今日も結局言ってくれませんでしたね。」
姫路さんがそんなことをいう。
大事なことを思い出した。言わないといけない。雄二たちが、美波が応援してくれている。
ただこの言葉を言うことを。
「えーっと…」
言葉が出てこない。恥ずかしい気持ちや、言えない気持ちが、絡まり合って、思うように口は動いてくれない。
「…いいんです。無理に言わなくても。それじゃあ、おやすみなさい。」
「うん。おやすみなさい!」
結局僕には言うことができなかった。
その日、家に帰ると姉さんになにをしていたのか詰問されて、さらには、クリスマスイブのパーティーとかいって、メイド服や、姉さんの服がどんどんはだけていくという地獄絵図をみせられて、
感傷的な気分に浸れもしなかったのは言うまでもなかったのだけど。