美波が雪の中で泣きながら、笑っていた。
なぜか頭から離れないその光景。
バカテスト
英語
( )に入るものを、選択肢を選んで、答えなさい。
I could be to speak English ( ) my studying abroad .
①while②between③among④during
姫路瑞希の答え
④
教師のコメント
正解です。かっこの後ろに注目するとすぐに分かりますね。
吉井明久の答え
⑥
教師のコメント
鉛筆には⑥まであっても、問題の選択肢は④までしかありません。
土屋康太の答え
選択肢の中にこたえはないというひっかけ
教師のコメント
単純な選択肢の問題で答えを選べないレベルとは思いませんでした。
色々な意味で衝撃的で、緊張した夜を終え、迎えた朝。
みんな良く勘違いしているが、今日がクリスマスなのだ。
もう今日から学校はないからもっと寝ていたかったのだが、姉さんがあんなんじゃ、おちおち寝てもいられない。
なんとなく、手持ち無沙汰に携帯を開けるとちょうど雄二からの着信があった。
「あーもしもし、アキちゃんか。」
「雄二…さらりとアキちゃんて言わないでっ!!」
「なんだ。明久か。お前、今もしかして女装してないのか?」
「それじゃあ僕が普段からしてるみたいじゃないか!別人格みたいに扱わないで⁉︎ちなみに今は、上半身はセーラー服だよ。」
セーラー服は、服をきているだけマシな部類に入る。
「変態だな。やっぱり。」
「姉さんがね…。そんなことより、雄二。」
「なんだ、セーラームーン。」
「やめろよ!!いや、…やめてください。」
「で、なんなんだ。」
「霧島さんと仲直りしたの?」
「…おう。お前は姫路に言ったのか?」
言った、というのは例の言葉であろうか。
「いや…。」
「そうかよ。そうだと思ってたけどな。」
「失礼な!僕にも色々あるんだよ。」
「…島田か?」
「…さぁね。ところで何の用事?」
あまり話したくない話題だ。これで、なんとかはぐらかせた、と思う。
「あぁ、それなんだが。今日、翔子の家で夕方6時からクリスマスパーティーしないか?」
「クリスマスパーティー…。」
「あぁ。いつものメンバーに誘いをかけてる。」
「うーん…行くよ!」
きのうあれだけのことがあって、色々整理もついていないが、折角誘われたのを断るわけにもいくまいし、美波と秀吉にはお礼も言いたいしね。
「そうか。じゃあ適当に準備しとけー。」
「おっけー。…あとでね。」
「おう。」
それだけ聞いて、電話を切ると、再び電話が鳴った。
まだなにか言い足りないことでもあったのだろうか、と思って画面も見ずに、電話に出ると、
「なにさ!雄二。僕とそんなに電話してたいの?」
なんて軽口を叩くと、
「…アキ。そんなに坂本と深い関係になってたのね…」
「み、美波⁉︎」
思わぬ声がして、変な声が出てしまった。
「そうよ。坂本じゃなくて悪かったわね。」
「…いや、僕は雄二と話したくなんかないんだけど…。ところで、どうかしたの?」
「…昨日のこと。どうだったのよ…?」
またまた言いにくいことを聞いてくる。
「えーっと…結論から言うと…言えなかった。」
「なにやってるのよ!バカ!」
いきなりきつすぎて、心が痛いんだけど⁉︎
「でも、美波。本当に助けてくれてありがとうね。」
「いいのよ。そんなことは…」
どうせFFF軍団が美波に、勝てるわけがないだろうから、
すぐに降参したことだろうけど。
「ごめんなさい…。なんか、こう、色々と…引っかかってね。」
雪の中で佇む美波がなぜか思い浮かんで、それで…言えなかった、なんて美波を言い訳にしたようにしか聞こえないだろうし、
そんなことを言うわけにもいかない。
ここは一応、誠心誠意謝っておこう。
「仕方ないわね…。ウチが手伝ってあげよっか?」
「へ?」
思わぬ提案だった。
「あんた1人じゃいつまでたっても、今と変わらなさそうだしね。」
失礼な!昨日だって少しは進展したはずだ。
「少しくらいは…」
「時間は待ってくれないわよ?」
ぐぅ…。たしかにその通りだ。
このままずっと、なんて言うわけにはいかないだろう。
「…じゃあお願いしようかな。」
「任せなさい!」
そうやって元気に言う美波が笑顔を浮かべているのが、電話越しでもはっきり思い浮かんだ。
「そんなことより!美波こそ秀吉とどうだったのさ?」
「!えーっと…楽しかったわよ?カフェとかめぐって!一緒にイルミネーション見て!」
ただの女友達にしか思えないデートなんだけど…。
まさか秀吉と美波が、そこまで仲が良くなってる、とは不意打ちだ。
なにごともうまく行くのはいいことだ。
「そっか!良かったね…。」
なぜかこう複雑な気分ではあるのだが。
「ところで、アキ。今日のクリスマスパーティー行くのよね?」
「うん。美波も行くよね?」
「うん。じゃあまたあとで!」
「はーい。」
それで、電話が切れる。
そして携帯を閉じ切った時、またまた着信があって、携帯が鳴る。
美波、なにか言い足りないことでもあったのかな、と思ってすぐに電話に出る。
「なにさ、美波?なんか秘密の話でもあるの?」
なんて軽口を叩くと、
「…明久。島田とそんな深い関係に…」
「ゆ、雄二⁉︎…あとそのやりとりはさっきもやったからもういい。」
「明久…。お前、そろそろシャキッと決めろよな。」
「なんのこと?」
少し語調が強くなってしまう。
今はこの話はしたくない。
「…まぁいい。少し早めに集まらないか?少しやりたいことがある。」
「「「ドッキリ⁉︎」」」
今の時間は、13時。いつもの男?4人でファストフードに集まっていた。
「そうだ。いつもの仕返しがてら、な。」
「…雄二が呼ぶからにはそういうことだと思った。」
「そうじゃのう。」
「そうだね。」
「お前らなぁ…」
改めて、みんなの雄二への認識のひどさが確認された。
「まぁ分かってるなら話は早い。」
「どんなことをするのじゃ?」
「それはだな…」
夕方5時半。定刻の30分前。僕たちは、色々な準備を買い込んで、霧島さんの家の前にたどり着いていた。
「霧島さんの家は相変わらず広いね。」
大豪邸もいいところだ。
「…うらやましい。」
「ではチャイムを押すぞい。」
「そうだね。」
「その必要はないぞ。ほれ。」
すると、雄二はポケットからおもむろに鍵を出してきて、
「翔子の家の鍵だ。」
あ、もう鍵すらも持ってるんだ。
「…部屋があるんだから当たり前。」
「部屋って、あの檻のこと?」
僕がそういうと、
ムッツリーニがコクンとうなずいた。
雄二は、さしずめ檻の中のオラウータンといったところだね。
「あぁ…。いつかあの檻を壊してやるっ!」
どうせ失敗に終わるのは目に見えてるんだけどね。
続々と霧島さんの家にメンバーが到着してくる。
メンバーは、僕らの他に、姫路さん、美波、工藤さん、木下さん、久保くんといったところだ。
メンバーだけみると、天才とバカの集まりに思える。
僕みたいな天才と、雄二やムッツリーニみたいな凡人…
「おい、バカ。ぼけっとしてないで、手伝え!」
さすがに今日ばかりは泣いてもいいだろうか。
6時にはみんなが、パーティー会場となる客間に集合していた。
客間には、もうたくさん料理やお菓子、デザートが運ばれてきていて、
七面鳥の丸ごと焼きだったり、クリスマス用のケーキにも、サンタクロースがたくさん載っていたり、デコレーションもすごい。
さすがは、霧島さんである。
まさに豪華絢爛といったところだ。
僕の1年前の食事と比べたら、涙が出そうだ。
なんて思っていると、ポニーテールをぴょんとはねさせて、元気そうな美波と笑顔が素敵な姫路さんが話しかけてくる。
「アキたち、珍しく早いわね。」
「そうですね。なにか張り切ることでもあったんですか?」
珍しく、とはどういうことだ!僕は遅刻だけはあんまりしたことがないんだ。(鉄人が怖いから)
にしても、2人とも中々に鋭い。
「たまたまだ。昼飯を一緒に食べたからな。」
雄二がごまかしにかかる。こういうテクニックだけは一流だ。
「そうなんだ。誘ってくれれば、良かったのにね、瑞希。」
「そうですね。クラスメイトなんですし…」
そんなことを言う2人にちょっと罪悪感が湧いた。
「悪かったな。」
雄二は悪びれた様子なしに、形だけの謝罪をしていた。
「久しぶりだね、吉井くん。」
不意にそんな声がして振り返る。
久保くんが後ろからよびかけてくれたようだ。
「うん。久しぶりだね!久保くんも来るとは思ってなかったよー。」
霧島さんが誘ったのだろうか。
「うん。吉井くんがいるところならどこへでも…」
なんで僕がいるところ限定⁉︎
それになぜだろう。体の震えが止まらない。
外が寒かったからだろうか。
そんな僕の後ろでは、
「秀吉。」
「なんじゃ?姉上。」
「もし、いらないこと言ったら腕はないわよ?」
「姉上!腕はそんなにポキポキ折るためのものではないのじゃ…。」
綺麗な姉妹の世にも綺麗なトークが交わされていた。
僕も混じりたいくらいだ。
「吉井クン。そういえば、あの後、どうなったの?瑞希と。」
唐突に話しかけられて、ビクッとした。
「く、く、工藤さん⁉︎」
「どうなったのかなー?」
「なにも無かったよ!ほんとに…。工藤さんこそ!ムッツリーニとどうなったのさ?」
昼間ムッツリーニに問いただしたのだが、ずっといつもの仕草(ブンブン)を繰り返されたから、ぜひとも聞いておきたい。
「へ⁉︎えーっと…なにもなかったよ!ね?ムッツリーニくん。」
「…なかった。」
「そ、そんなこと聞くなんで、ボクに興味でも湧いたのカナ?」
なんてことを!そんなこと言ったら、
「明久くん?」
姫路さん…
「な、なにかな?」
目に…
「今日は外が寒いですね。」
光が見えないんだけど⁉︎
「そ、そうだね。雪とかふってるよね。」
「ムチで打たれたらさぞかし痛いでしょうね。」
なに⁉︎なんでそんなものを持ってるの⁉︎やめて!僕にはそんな雄二じみた趣味はないんだ。
「いだぁぁぁぁいぃ!!!」
乾燥した空気の中では効果は抜群だった。
でも、これ…
気持ちいいかも?
「って、やっぱりいたぁぁぁぁい!!」
「…雄二もあれやる?」
「やるわけねーだろ!バカ。俺は明久と違ってMじゃねーんだ。」
「…夫婦なら当然やること。」
「お前は、街を幸せそうに歩いてる夫婦がそんなことをしてると思ってるのかよ。」
「…違うの?」
「断じて違う!」
「…ところで、みんな揃ったみたい。」
「あぁ…。だな。じゃあ元気に、クリスマスパーティー始めるとするか。」
僕はボロボロなんだけど、ね。
そういうとあらかじめ飲み物が入れられていた容器が全員に配られる。
そして雄二が、前に進み出て、
「じゃあクリスマスパーティー始めるか!!みんな飲み物を持ってくれ。…せーの!」
「「「乾杯!!」」」
クリスマスパーティーが始まった。
「やっぱり乾杯は、コーラに限るわね!」
「…おいしい。」
美波も霧島さんもコーラということは、みんなコーラなのだろう。
僕もちょうど喉が渇いてたんだ。一口もらうとしよう。
ごくん。
「うん!こう…苦いような、辛いような、舌が焼けるような、溶けるような……。」
なんだこの圧倒的な既視感。
「ごはっ。」
目の前が真っ暗になった。
「吉井くん!大丈夫かい?」
かすかに目を開けると、久保くんが心配してくれているらしい。
申し訳ないけど、もう少し寝かせてもら…
「うーむ…仕方ない。こうなったら僕が人工呼吸を…」
久保くん⁉︎なんてことを言うの!
「大丈夫!全然平気!」
「…危なかったね。心配したよ。」
久保くんが少し残念そうな顔をして見せた。
そうだね。危なかった。主に僕の貞操が。
「アキってば、やっぱりそっちの気が…」
「ないよ!断じてない!」
「吉井君。同性愛者を馬鹿にするのはどうかと思うよ。ただ少しだけ考え方が異なってるだけであって…」
とにかく、難しすぎて分からないし、聞きたくもない。
にしても、さっきのジュース…。
「明久くん。私の特製ジュースどうでしたか?」
やっぱりそうだったのか!
「独特な味が風味を引き立ててるよね!好きな人は好きな味じゃないかな。命のある無しを置いておけば。」
もう誤魔化しのコメントがプロのコメントと化してきた。
「明久。いいコメントだ。特に最後のところ。」
「なんだ。雄二も飲んだの?」
僕だけじゃなかったことに素晴らしく、安堵感を感じた。
「あぁ。何本か混じっていたらしいな。」
よく見渡すと、ムッツリーニと秀吉が倒れていた。
「僕たちってなんでこうことごとく運が悪いんだろうね…。」
そう言ってるうちに、2人とも起き上がってきた。
「…もう大丈夫。」
「あれしき、大丈夫じゃ。」
なにが入っているかわからない真っ黒な液体を飲み干してなおこの元気さ。僕たちは、ある意味人類最強かもしれない。
「こっちのご飯は普通においしそうじゃのう。」
「霧島さん!」
「…なに。」
「この料理って、誰が作ったの?」
「…家のシェフたち。」
それを聞いて一安心だ。
「…雄二には私の特製料理がある。」
「はぁ⁉︎待て。翔子。なんでこんなにピンク色なんだ?」
「…愛。」
「そうか。それを俺は受け入れられない。ぎゃあああっ!!」
雄二が顔をつかまれて、壁に押し付けられた。いい気味でしかない。
そんないつも通りのやり取りをみていると、
「アキ!」
うしろから、美波が話しかけてきたらしい。
「あ、美波!これ、本当にすごいね!」
料理を見ながらしみじみいう。
「そうね。」
「もう塩水じゃ、生きていけないよ。」
「そういえば、去年の今頃なんかずーっと塩水が砂糖水かだったわよね。」
「油水もあったよ?」
「聞くだけで、汚いわ。でも、あんた…食い意地ばっか張ってないで、瑞希に話しかけてきたら?」
そう言われると、なぜか少しムッとなって、
「…美波こそ、秀吉のとこ行ってきたらどうなのさ?」
売り言葉に買い言葉。そんなことを言ってしまった。
「…そうね。じゃあアキ!シャキッとね?」
これも応援してくれる、とか言ってた一環なのかな…。
言われるがままに、美波のところを離れて、姫路さんに声をかけにいく。
「姫路さん、なにしてるの?」
「あ!明久くん。探しましたよ?」
探してくれていたらしい。なにか用事でもあったのだろうか。
「なにか用事でもあったの?」
「いえ!ただ一緒にお話をしたいなぁ…と。」
顔を赤に染めている姫路さん。どうしたんだろう?
まさかお酒でも飲んだのだろうか。
ダウトの時のことが記憶に、蘇る。
だとしたら、危険すぎる。
「じゃあ、僕はあっちに行くから!!」
「あ!明久くん…行っちゃいました。ケーキに塩酸をかけて食べると美味しい、っていうプチ情報をお教えしようとおもってたのに…」
小さくなっていく声がはっきりと聞こえた。本当に、逃げてよかった。プチという言葉が全く可愛くない。
一旦、落ち着いて、周りを見渡すと、美波が秀吉と楽しげに、話しているのが見えた。
本当にうまく行っているらしい。
なにごともうまく行くのはいいことだ。
そのあと、しばらくてんやわんやの中で、みんなとの話を楽しみながら、本当に美味しいご飯を食べていると、
雄二がようやく床から蘇ってきた。
「お前ら、計画を始めるぞ。もう我慢ならねぇ。」
「そうだね。もう少し食べたら。」
「そうじゃのう。デザート食べたらのう。」
「…了解。写真を撮ったら。」
食べないと勿体無い!撮らないと勿体無い!
「なっ!…お前らなぁ…。」
そして、1時間後。
「お前ら、そろそろ…」
「そだね。ちょっと寝てから…」
「そうじゃのう。ちょっと飲み物飲んでから…」
「…まだベストショットがない。」
「お前ら。姫路がタルト焼いたらしいぞ。」
「「「はやくやろう!!」」」
こうして僕たちの悪巧みが始まった。