バカとその後と恋愛模様!   作:八百六十三円の片道切符

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正直言おうか言うまいか迷った。なんせあの姉である。とはいえ、他に頼めるようなあてもないから、お願いするほかないのだろうが。





「姉さん、ちょっと買い物に付き合ってくれない?」




僕と買い物と…。

バカテスト

政治経済

 

経済指標の代表的例であるGDPとGNPの違いを答えなさい。

 

姫路瑞希の答え

GDPは、国内総生産の約で、国内で生産されるなら、外国人も含まれる。

 

GNPは、国民総生産の約で、日本人の生産であれば、外国にいても含まれる。

 

教師のコメント

問題ないですね。しっかり区別しましょう。

 

 

吉井明久の答え

 

GOGOドアからパンチラ

 

GO!脳内パンツ

 

教師のコメント

どこが経済指標なのでしょうか。ただただ慾望が溢れ出ています。

 

土屋康太の答え

 

GOGOドア…

 

教師のコメント

もういいです。わかりました。

 

 

 

 

よくわからないけど、

頭が痛かった一昨日の夜。

そして、

 

 

体が震えて、寒気に襲われて、久々に寝込んでしまった昨日が12月29日。

 

うなされて、うなされて仕方なかった。一昨日の夜の言葉と、自分の頭と、なにもかもがこんがらかって、収集のつけられなくなった結果、電気回路でもおかしくなってしまってショートした、とも言えるかもしれない。

それで、熱なんて情けないのもいいところだが。

 

 

 

とりあえずはポジティブにバカは風邪を引かないというから僕は頭が良くなった、とでも考えておく。

 

 

一日ぶりに、外に出たことになるが、外は相変わらず寒い。

 

とはいえ、家に引っ込んでるのよりは何倍も気持ちがいい。

 

 

 

 

「ところでアキくん、風邪は大丈夫ですか?」

「うん!任せといてよ!もうバッチリだよ。」

本当に大丈夫だ。バカは治るのも早いということだろうか。

 

「では、行きましょうか。」

「うん!えーっと…どこに?」

「ラブ…」

「そんなところに行ってはいけません!」

危ない。ぼーっとしてたら、すぐに変な方向に持って行かれる。

 

「アキくんが何を買いたいか言わないから悪いのです。」

あれ、そうだっけ。

 

 

 

「うん。リボンと、クリスマスプレゼントのお返し…かな。」

美波のリボンは、僕のカバンの紐にさせてしまったし、

姫路さんにはあのままじゃ申し訳わけがたたない。

 

「瑞希さんに渡すのですか?」

「そうだね。もらいっぱなしじゃ申し訳ないしね。」

「アキくんには、姉さんももらいっぱなしにしてもらえるとありがたいです。」

「さらっと意味をすり替えないで⁉︎」

 

「それは、そうと不純異性交遊は認めない…」

くぅ。

この件に関しては、そろそろなんとか姉さんを説得しないと…

「待って!よく考えてみてよ。」

「なんでしょうか?」

「不純異性交遊がダメということは、ぼくと姉さんの関係も許されないってことだよ?」

これを切り口にして!

 

「ついに姉さんと関係を持つ覚悟ができたのですね。」

なんで!そうなるんだ!

自分の発言を考え直してみよう。

 

……やばい。

 

「違うんだ!そういう意味じゃなくて!やめて!やめて…ひぇっ!うぎゃああああ。」

運転しながらキスを迫ってくるとは…

 

 

まさに命辛辛、難を逃れ、そしてやってきたのは街随一のショッピングモール。そこは、たいそうなにぎわいを見せていた。明日が大晦日なのだから、当たり前なのかもしれない。

街全体で、急ピッチで、新年を迎える準備が進んでいるのが分かる。

 

 

 

「アキくん。掃除はどうしますか?」

「そだね。明日やろうか!」

明日が大晦日。粗大ゴミもちゃんと出したことだし、気持ちよく新年を迎えるためにも、

しっかりと掃除もしよう。(聖書の隠し場所の整理も兼ねて)

 

 

「では、掃除道具の買い物もいたしましょう。」

姉さんはこういう時は、まじめだから助かる。

いや、これが普通なんだろうけど…

 

まずは、ホームセンターに入っていく。

大掃除の季節ということもあって、店頭あたりに、掃除道具がたくさん陳列されていた。

 

すると、すぐに姉さんが、

「これなんかどうでしょう?アキくん。」

「どれ…かな?」

姉さんの手元には、ひだのたくさんついたワイパーが握られていた。

 

 

ホコリやチリを逃さない!闇金の取り立てなみに取りまくる!

 

なんていうわけのわからない謳い文句とともに。

「これで、アキくんが姉さんを…ゾクゾクしますね。」

「没収だ!」

ダメだ。闇金の取り立てなみに取りまくるワイパーは使えない。

胡散臭さ的にも。

 

僕の貞操のためにも。

 

 

なんて考えていると、すぐ後ろから陽気な声が聞こえてくる。

見ると、少しの人だかりができていた。その中心では、

 

「はーい。リック。今日はニューな商品が届いたよ!」

「なんだって⁉︎それは、ビッグなニュースだ。ジョニー、どんな奴だい?」

「エブリバディの人気者、めちゃ落ちくんXだ。」

 

 

商品の宣伝を生で実演していた。

 

 

日本人が。

 

 

なんだかわからないがすごく馬鹿らしい。

 

あとちょいちょい英語を入れてくるのが無性に腹立たしい。

 

 

「あれ、なんでしょうか?」

姉さんがそう問いかけてくる。

「どこぞの通販番組の真似じゃない…かな?」

 

 

 

「ここにたっぷりとダーティなシンクがあるね。」

「おおっと、これはウォッチしたくないね。」

「そうだろ?ところがどうだい。このめしゃ…めちゃ落ちくんXでイレイスしてやると…」

 

噛んだ⁉︎今噛んだよね!

 

「わーお。これは、リアルショータイムだね!」

 

 

「どうだい?完璧に消えるのさ!グレートだろ!高原…リック!」

「すごい!さすが営業ぶちょ…ジョニー!」

 

なんか…頑張れ。

 

高原さんと名無しの営業部長に心の中でエールを送った。

 

 

 

でも、この商品わりとありかもしれない。

シンクは綺麗にしておきたいし、他のものにも使えるだろう。

 

「アキくんが、姉さんのことをあれでゴシゴシと…」

 

「やっぱりなしだぁぁぁあ!!」

 

「では姉さんがアキくんをゴシゴシと(自主規制)」

 

それじゃあなにも変わってないからね…。

 

 

結局、便利グッズたる便利グッズは買わなかった。

気になるもの全部に難癖をつけられてしまったのだから仕方ない。

 

そんなことよりも、美波のリボンとプレゼントのお返しだ。

 

「とりあえず、リボンを買いに行きましょうか。」

「うん!」

「アキくんがリボンを自らつけてくれる日が来るなんて、姉さんは感激してます。」

なんで、そんな話になってるの!

 

 

「違うんだ!これは…その、美波のリボンを…」

「あら?美波さんの…」

「そうなんだ。この前一個ダメにしちゃったから、代わりになりそうなものを、ね。」

「そうですか。残念です。ですが、リボンならこの店にたくさんあります。」

「ほんと⁉︎」

 

山ほど積まれた少女雑誌。

 

 

「姉さん。そういうことじゃないんだなぁ…。」

姉さんなりのボケという奴なのかもしれない。

 

 

 

 

姉さんのボケをなんとかかんとか処理して、ちゃんとしたところに連れてきてもらった。

 

 

「ここなら、リボンがあるでしょう。」

 

「ありがとう!」

少し女の子女の子した店で入り難かったけど、ここならいいものがありそうだ。

「これなんかどうでしょう?」

後ろからすぐにそんな声がした。

 

姉さんが、自分のお勧めを持ってきたらしい。

 

 

見やると、

 

手元には、さっきの雑誌。

 

「なんで購入してるの⁉︎」

 

 

「姉さんの趣味です。」

意外すぎて、あたまがついていかない。

「もう決めたからいいよ!」

 

少し早いと思うかもしれないが、いいものが目に入った。

 

「そうですか。美波さんが喜んでくれるとよいですね。」

 

真っ赤なリボン。

 

美波が普段しているものとは、色が全然違うけど、たくさん陳列されたリボンの中で、最も目を引いたのがそれだった。

ぱっと見たときに、これにしようと思ったぐらい。

頭にこれをつけた美波がはっきり浮かぶ。目も当てられないくらい似あっていた。そこそこの値段だったけれど、そんなことは関係ない。

 

 

まともな店を姉さんが知っていてくれてよかった。

 

 

 

あとは、姫路さんへのお返しだ。

 

 

姉さんは、これに関しては、全部アキくんが自分で選びなさい、とか言い残して、ファンシーショップの手前の化粧品屋に入って行ってしまった。

 

自分が化粧品を物色したいだけだろうけど…。

 

「うーん…」

中に入って見たはいいが、なにを買ったらいいか全然分からない。

 

「アキ!」

 

「へ?美波!こんなとこでなにしてるのさ?」

「アキ…それはウチのセリフよ…。この店は、女物ばっかりなのよ?やっぱりアキはじょそ…」

 

「違うんだ!これは、その色々とあって…」

なんで僕のまわりのひとは、僕が女装癖のある変態だと思っている人しかいないんだろう…。

 

「あ。もしかして瑞希へのプレゼント?」

 

「うん。クリスマスのお返し、にね。そうだ!一緒に考えてくれない…かな?」

ちょうど悩んでいたところだった。

 

 

「いいわよ!」

そう言った後、美波がしばらく思案顔になって、ハッとしたように

 

「…そうだ。ね、今から買うプレゼントを、瑞希に思いを伝える時、一緒に渡したら、どうかしら?」

 

なんて恥ずかしい物言いをするんだろう。

でも、なるほど。そんな考え方もできるのか。それはありかもしれない。

 

「いいね!そう…しよう。ぐおぉ、にしても、そうなると、余計に悩ましいというか…」

 

「そうね…。ネックレスとかどうかしら?」

「僕の財布はそんなものを処理しきれないよ!」

「どれくらいあるのよ?」

財布を見る。うん。札束もあるにはある。(さっき姉さんに貰ったし。)

 

 

 

「40ドルぐらいかな…」

 

「なんで、ドル換算なのよ⁉︎」

「姉さんがさっき、この前の出張の時の残りをくれたんだ。」

 

 

うん。とりあえず換金に行こう。

 

そんなことを言われそうな気がした。

 

 

 

「それを除いても、普通に5千円くらいはあるよ!」

お札と小銭、足したらきっとそれくらいはあるだろう。

 

最近は、買い物が増えて、小銭が手元にたくさん残ってしまっているのだ。

 

 

「そ。だったら案外買えるわよ?」

そうなんだ…。ネックレスってもっと高いものだと思っていた。案外、ピンキリらしい。

 

 

見渡すと色々な種類のネックレスが所狭しと並んでいる。

 

 

そんな中から、あるものが目にとまった。

 

「なにこれ?草?なにかしらの草?雑草?」

 

 

「アキ…雑草のネックレスなんて誰が欲しがるのよ…。それは、四つ葉のクローバーよ。」

「そっか。なんか見たことあるなぁって思ってたんだよ。」

「よく言うじゃない。四つ葉のクローバーは幸せを呼ぶ、ってね。」

「幸せを…。」

これは、ありかも?

お値段は…

 

 

「おう…。」

1万円。無理!イッツ無理!これは、無理だ。

 

「…諦めなさい。きっとまだまだいいものあるわよ?」

それもそうだね。

わざわざものすごく高いものを無理して買っても仕方が無いし、高校生らしくもない。

 

 

 

「となると…これなんて、どう…かな?」

 

金色の細い紐。その先に、ハートのリングが連なっている。そしてその中心には小さな宝石の埋められている、可愛いらしいネックレスだ。

お値段も3500円となんとか手が出る領域だし。

 

「…うん。なかなか、可愛いわね。まぁ考えてみれば、ウチが選んでも仕方ないし、アキがいいと思うならそれでいいんじゃない?」

 

「じゃあ、これにするよ。って…そういえば美波はなにも買わなくていいの?」

 

 

「いいのよ。今回は、ちょっと見に来ただけだったしね。」

 

 

 

 

 

「あら、美波さんと会ったのですか?」

店の外に出ると、姉さんがたくさんの買い物袋を手に持って待ってくれていた。

いつの間に、そんなに買い物をしたんだろう…。

「玲さん、こんばんは。お久しぶりです。」

 

「久しぶりですね。お元気でしたか?」

姉さんが柔和な笑顔を顔に浮かべた。

その笑顔は僕によく説教をしてくる時と全く同じだった。

それに加えて、逆光にさらされることで、僕にいつもの何倍も恐怖心をかきたてた。

 

「はい!」

対照的に、元気に笑顔で、答える美波が夕日に映えて眩しい。

 

「そうだ。美波さん帰るならお送りしましょうか?」

 

 

 

 

 

「アキくん。お夕飯の準備は大丈夫でしょうか?」

車の中に乗り込んでしばらくして、確かめるように聞いてくる。

「うん。昨日姉さんが買ってきてくれたやつで適当に作るよ。」

 

たしか牛肉を買ってきていたはずだから…

 

「そうですか。良かったら、美波さんもご一緒しませんか?」

え?

「へ?でも…」

 

「いつも2人というのも寂しいものですしね、アキくん。」

えぇ⁉︎

 

「えーと…じゃあお邪魔します。」

おかしい。

 

姉さんが、そんなことを自ら言い出すなんて。

「姉さん。近くにいい病院があるよ?」

 

「アキくんが送られる場所のことですか?」

いやだ。行きたくない。行きたくないよぉ…。

 

 

 

日が完全に沈み切った頃。

家に帰り着いた僕はすぐに準備にかかった。

 

あんまり時間をかけて、夜遅くなってはいけない。さっ、と簡単に美味しくできるものにしよう。

 

「美波、ゆっくりしててよ。すぐに作るよ。」

ポニーテールをさげた女の子に呼びかける。

「えぇ。手伝おうかしら?」

「いいよ。そんな大層な手間もかからないしね。」

「では姉さんが…」

「いいよ!ゆっくりしてて!…僕らの命のために。」

 

 

牛肉と玉ねぎのレモン塩ダレ炒めと、イワシのつみれ汁、それに保温ばっちりのご飯。

 

30分もかからぬうちに、完成させることができた。

 

「「「いただきます。」」」

 

「うん、美味しいわね!」

「そうですね。」

喜んでもらえて良かった。

 

美波とこうしてご飯を食べるのは、あの泊りの時以来…か。

 

そう思うと、美波がこうして近くにいることがどこか嬉しくなった。

 

 

いつもと同じ味付け、いつもと同じ量。だけれど、その日のご飯はいつもより美味しく感じられた。

 

 

 

 

「アキくん。姉さんが洗い物しておきますから、美波さんをお送りしてきてもらえますか?」

 

「ほんと?助かるよ。あ、ちなみに、これは、塩だれだからね?洗剤じゃないよ?スポンジは、この魚の形したやつだよ。じゃがいもを使わないでね。」

 

 

「アキ。そんな間違え誰がするのよ…」

 

 

 

姉さんだよ。

 

 

「じゃあ行ってくるよ!」

「今日はありがとうございました!」美波がペコっと頭を下げる。

 

「はい。あ、アキくん、ちゃんと渡すのですよ?」

すっかり忘れていた。ちゃんと渡そう。

「うん。」

 

 

 

「寒いわね…。」

 

美波が凍えるように、身を縮める。冬の夜は大層冷え込む。

元旦も近い。通って行くいつもの道にもあまり人影はなかった。

 

 

「あ、美波。」

 

カバンからさっき買った真っ赤なリボンを取り出す。

ちょっとタイミングは悪いかもしれないけど。

とにかく渡そう。

 

「えー…っと?」

「この前、美波のリボン貰っちゃったからね。その代わり、償い。」

なにか気恥ずかしくなって、目をあらぬ方向に向けながら美波に手渡すと、

 

「いい、って言ったのに…」とか言いながら受け取ってくれた。

 

「ほんと、助かったよ。」

僕がそう言うと、

「よかった。」とそれだけ呟いて、少し間があってから…

 

 

 

 

「はぁー。ウチはダメだね…。」

「…どうかしたの?」

美波がカバンにリボンをしまいつつ、話しかけてくる。

「変な話になるけどさ…あの空の星は、さ。動いてるように見える?」

 

 

何の話だろうか?

「いや…見えない…かな。」

実際に動いてるなんて確認したこともない。

 

突然なにを言うんだろう。

 

「でもさ、実際は動いてる。それはもう結構な速さで。夜空の星のほとんどが。けど、それをウチらは気づくことができない。気づけない。ずっと星を見て生きてるわけじゃないから。どれだけ動こうったって、気づいてくれない。気づけば、またいつもと同じ場所。同じ道をたどるんだ。それで、いつもと同じように佇んでる。現実には、ほんの少し動いたようにしか見えない。なにも変わらない。変えられてない。そんな気がするんだ。」

長い長い言葉を最後まで言い切って、僕の方に目をやってくる。

 

 

 

「よくわからないけど…さ。」

実際もう頭がパンクしそうだ。

 

「アンタには難しすぎたかしら。変な話よね….。ごめ…」

そんな美波の言葉をさえぎって、

 

「…動きたい、って思ってる時点で変わってるんじゃないかな。」

 

「?」

美波が不思議そうに顔を向けてくる。

 

「難しい話はわからない…けどね、動きたいって思ってるなら変われてると思うんだ。なにもしないより何倍も。少しに見えても、 それは大きな違い…だと思う。美波は、さ。北極星は動かない…って言ってたよね。」

とりあえず思ったこと。それだけ言っておこう。美波のために、なるなら。

 

「うん。そう…ね。」

 

「…もしかしたら北極星だって動きたいって思ってるかもしれない。急に動きだすかもしれない。その気さえあれば。 そうなるかもしれない。だから、僕は…そう、変わりたいって思った時点ですごく変わってる、変えられてる、って…思う。」

 

言ってから、少し間があって、

 

「…ふふ。星が動きたい、ってなによ。ばーか。」

 

横で美波が吹き出している。失礼な!励ましになればなぁと思って言ったのに…。

 

 

「…でも…ありがとう。ウチも変われるかな…。どうでもいいことで喜んだりしそうになる自分を。口ばっかり。ダメな自分を。」

 

なんの話だろうか。なんにしても、きっと変われる。変われるはず。

 

 

 

「うん。」

 

冬の風の中、僕の声だけが妙に辺りに、響いた。

 

気づけばもう美波の家の前だ。

 

「じゃあね。アキ。気をつけて帰りなさいよ?」

「うん!美波こそ…って、もうここが美波の家だったね。」

 

「そんなバカなこと言ってたら、軽トラに、交差点を飛び出した時にはねられて、左腕の上部を骨折するわよ?」

「なんでそんなにリアルなの⁉︎」

そんなのはいやだ。

 

 

扉が閉まるのを見届けて、くるっと身を翻して、家路につく。

 

 

 

美波が言っていた言葉。よくわからないけど、変わりたいってことだけ、分かった。

秀吉のこと…かな。もしかしたら、僕のこと…なんて考えると悲しくなってくるからやめよう。

 

 

 

それと、今日ずっと感じていた。

美波が遠くに行ってしまうような感覚。

あの夜感じたものと同じ感覚。どこにも行かない、って答えた美波が、たしかに遠くに行ってしまうような…

もう考えるのはやめておこう。詮無きことってやつだ。

 

 

そうだ。姫路さんへのプレゼントは、どうやって渡そう。

姫路さんになんとか届けないと…。はぁ。

 

それもちゃんと考えないとなぁ…

 

 

 

 

「頭が痛い…」

 

 

 

 

家に帰り着いた僕は、姉さんに会おうともせず、ベッドに倒れこんだ。

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