バカとその後と恋愛模様!   作:八百六十三円の片道切符

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僕と美波と料理教室っ

バカテスト

 

漢文

 

蛇固無足。子安能為之足。

 

を書き下してから、日本語で訳しなさい。

 

姫路瑞希の答え

 

蛇固より足無し。子安んぞ能く之が足をなさん。

 

蛇には足はないものです。あなたはどうやって蛇に足を描きいれようとゆうのですか。いや、描きいれられまい。

 

教師のコメント

有名な漢文ですね。

 

固は、もとより

安は、いずくんぞ〜

能は、よく

ですね。

 

蛇足という単語は、故事成語で、無駄なものという意味になります。

 

土屋康太の答え

蛇に固い足はない。しあんのうためのあし。

 

 

 

教師のコメント

無理矢理感がすごいですね。

それではいけません。柔軟に捉えましょう。

 

吉井明久の答え

 

蛇に固い足はない。シアンのための足しかないのだ!

 

教師のコメント

 

無理矢理通しましたか。シアンさんは蛇使いかなにかですか。

 

 

 

新年も明けて、3日ほどたった。

 

この3日間、雄二が僕の家に逃げてきた(母親の狂気)こともあったけど、僕にしては、なにごともなく平穏に送れたといえよう。

 

そして今日の今日も、姉さんが帰りが遅くなるらしく、

 

 

いつもの4人で、僕の家にたまっていた。

平和っていいね。

 

 

 

 

「「「料理教室?」」」

 

 

 

「そうだ。翔子が親から体験チケット貰ったらしくてな。明日、暇つぶしに行かないか?」

 

「タダなら大歓迎だね。」

「面白そうじゃの!」

 

「…明日は、きっとインフルエンザ。」

行きたくないのかな。そんな都合良くインフルになれたらいいのにね。

 

 

「ムッツリーニ、そのおしえてくれる講師の人なんだが、この人らしいぞ。」

雄二がおもむろに、チラシをぴらっとムッツリーニに見せる。

 

「…インフルエンザなんざ予防接種しなくても大丈夫。行こう。飽くなき探究心を胸に。」

エロの、ね。

 

ムッツリーニにどストライクの人だったらしい。

 

 

 

「あぁ。明日限定らしいからな。2人一組らしい。」

 

「…雄二と明久は決まり。」

なんで…

 

「そうじゃの。」

なんで…

 

「「こんなやつと!」」

うん。息ぴったり。

「…相変わらず仲がいい。」

なんたる屈辱なんだろう。

 

「冗談じゃ。そんなとことをすれば、霧島が黙っておらぬ。」

 

 

「黙って、スタンガンだね。」

「…甘い。びしょびしょにされてから、スタンガン。」

 

「俺の死に方について議論するんじゃねぇ!」

 

うーん。なんか引っかかるような…

 

あ。

 

「ねぇ、僕とんでもないことに気づいちゃったんだけどさ…」

「なんだ?」

「姫路さん来るのかな?」

 

 

…。

 

 

 

「実は、明日は演劇…」

「明日はまだ劇場開いてなかったはずだぞ。」

「…ぐぬぬぅ。」

ムッツリーニは、欲望と命を天秤にかけて、1人戦っていた。

 

「心配いらん。姫路は、明日は里帰りしてるらしいから来れない、と翔子が言っていた。」

 

 

ほっ。そんな効果音が聞こえそうなくらい僕ら3人は安堵した。

 

「明日、昼の2時に駅前のロータリー集合だ。」

 

 

 

 

 

昼。

正月の間妙にだらけてしまって、ようやく起きたのはなんと昼の1時ごろ。昨日夜まで遊んでいた、というのもあるけれど。

そして、恒例の…

 

 

「アキくん。遅くまで寝ていた罰に今日こそは、チュウ…」

「いやだ!」

 

バトルの始まりだ。

 

「嫌なら仕方ないですね…。ならばかわりに、セーラー服を…。」

 

「嫌だよ!僕を変態にするつもり⁉︎」

そんな格好で入学式は登校したのであるが。

「では、こうしましょう。吉井明久(SR ver)と呼ぶということで。これならアキく…」

 

「なにちょっと格好良さげにしてるのさ!それでもやってることは、ただの女装だからね⁉︎」

 

ちょっと格好良い、と思ったのは絶対の秘密。

「では、チュウをします。」

 

「着ます!セーラー服着ます!」

仕方ない。ここは、一旦おとなしく着ておこう。

あとで脱げばいいし、ね。

 

「よろしい。」

なにか忘れてるような…

 

「あ!そういえば、僕、2時に駅前に行かないといけないんだった!姉さん、僕行ってくる!」

 

 

 

 

そして、僕は駅に来るたくさんの人々の白い目を集めることとなったのだった。

 

秀吉に、服をかしてくれるようメールでお願いして、しかたなく、そのままの格好で、雄二たちを待っていた。

 

「よう、明久。ちゃんと来たんだな。」

「…吉井。こんにちは。」

「はろー。吉井くん!元気してた?」

「あれ。他の連中はまだか?」

 

「ムッツリーニ君は、ボクが電話してみようか?」

「…お願い。」

 

…。

 

 

「ねぇ⁉︎僕の格好に疑問はないの⁉︎」

「なんだ。いつもそんなもんだろ。」

「…違うの?」

おかしい。みんなの僕への認識とってもおかしい!

 

早く来て!秀吉っ!

 

そんなやり取りをしていた時、

「ごめーん!ちょっと遅くなった。」

髪を風に揺らしながら、美波がかけてきた。

 

 

 

「あ、アキ。またそんな格好して…」

美波は、今の僕が変だと思うよね⁉︎違和感感じてるよね!

 

「美波…。」

 

「似合ってるわね。」

手首のあたりを、軽く刺して欲しい。

 

なによりも屈辱的な言葉だった。

「冗談よ。似合ってるとは思うけど、少し、いやとっても引いたわ。」

「僕を責めないで!これは、姉さんが…」

 

そんな僕の言葉を遮るように、横から…

 

「明久よ。ほれ、服じゃ。災難じゃったのう!」

秀吉たちが来たらしい。

 

「秀吉!来てくれたんだね!泣くほど嬉しいよ。そしてありがとう!」

 

本当に助かった。

「…明久。顔を傾けて。」

「ムッツリーニ⁉︎なにその要求!撮らないでよ!僕は売り物にはならなぁぁいっ!」

「…売り物じゃなくて、報酬。」

 

うん。それは似たようなもんじゃないかな。

「吉井君…やっぱりそういう趣味が…」

「へ?木下さん⁉︎あと僕はたまたまこんな格好なだけで…」

霧島さんが呼んだのは、木下さんだったんだ。

びっくりしたけど、姫路さんがいないだけで、命の危険はないだろうし、よかった。

 

「その格好がたまにあるだけで十分へんた…」

 

「言わないで!」

言わないで!それだけは…

 

 

 

「アキが変態なことなんて今さらすぎるくらいよ。」

 

「なんでいうのさ!」

ほんとに、傷ついた。

 

「ほら。しょうもないことしてないで、とっとと行くぞ。」

 

僕にとっては、かけがえのないことなんだけど。

「待ってよ!雄二!着替えさせて。」

「…生着替えっ!」

 

「ムッツリーニ⁉︎Fクラスの報酬のためとはいえ、男の着替えだよ⁉︎」

 

「…商売のためなら我慢。」

立派に現代社会で生きていけそうな我慢精神だ。

 

捕まらなければ。

 

「しゃあねーな。ほら、そこにトイレあるから着替えてこい。」

「今、自然と女子トイレの方さしたよね⁉︎」

 

 

 

なんとか普通の高校生の男子に戻った僕は、みんなと一緒にキッチンスタジオの目の前まで来ていた。

 

2時半からのレッスンだ。時間は、10分ほどは残っている。

「2人1組らしいから、ここで決めておこう。」

 

「…雄二と私は決定。」

 

それを打ち消すように、雄二が、

「くじを作ったんだ。女子用がこっち、男子用がこっちだ。」

 

「…雄二、スタンガンがある。」

 

 

 

「わ、わ、わかった!俺と翔子のペアは決まりだ。お前らだけでいいから引いてみてくれ。」

 

言われるままに、みんなが引く。

 

えーっと…

「僕は、1番だったよ。」

「あ、ウチも!」

 

ということは、美波とのペアか!良かった。

美波なら一番仲がいいし、料理もうまい。

でも、美波は……秀吉となりたかったかな…。

そう考えると申し訳ない気がしてきた。

 

「ワシが2番じゃのう。」

「…あ、ボクも2番だ。…よろしくね!弟くん。」

工藤さんが少し残念そうな顔をしていた。やっぱりムッツリーニとやりたかったのかな。

 

 

 

 

ということは、木下さんとムッツリーニか。

なんていうか、このコンビは珍しいなぁ。

 

 

「よろしくね、土屋君。愛子には悪いけど、秀吉じゃなくて良かったわ。とりあえず、頑張りましょう?」

 

「…ぐぬぬ。双子姉妹の写真が…撮れると思ったのに。」

 

「ムッツリーニ。ワシは…(以下略)」

 

かくして、雄二の不発に終わった逃走手段により、まさかのペアで、料理体験が始まった。

 

 

 

「今回、講師を務めさせてもらう片桐です。」パシャパシャッ

 

「山川です。」パシャパシャパシャッ。

など、といって、あいさつが進んでいく。

ムッツリーニのシャッター音のせいで、会見みたいになってるのだけど。

シャッター音の音から察するに、山川さんの方がお気に入りらしい。

 

そんな諸々の説明が終わって、レッスンが始まる。

 

 

今日作るのは、フルーツタルトだ。お菓子はよく知らないから頑張って覚えて、姉さんにもいつか作ってあげたいな。

 

それに…

「アキ。ウチ、あんまりお菓子はわからないわよ?」

 

美波が一緒だ。なんとかなるだろう。

「今日覚えて、葉月ちゃんにでも作ってあげたら?」

「そうね…。」

「そういえば、ごめんね。」

「なにがよ?」

「秀吉となりたかったかな、と思って。」

言っていて、なぜか少しイライラする。

「…そんなことないわよ。いいからやりましょう?」

「そだね!」

まずは、タルトの生地を練らないと、ね。

 

砂糖とバターと…

「ちょっと!アキ。」

「どうしたのさ、美波?」

「それ塩よ。」

なんてこった!危ない。バカほど塩っ辛くなるとこだった。

「ごめんね!危なかったよ。」

「ほんと、いつもいらないとこで、ミスするんだから…アレクサンドレス大王くん。」

 

やめて!それを掘り返さないで!僕泣いちゃうよ…。

 

「美波、これをゴムベラで混ぜるみたいだね。」

「そうね。一回丸めて、それで、一旦待機かしら。生地は、冷蔵庫で寝かすみたいだし。」

周りとスピードを合わせることも考えないといけないしね。

 

冷静になって、見渡すと、

 

「…雄二。どうやってやるの?」

「いいから、離れろ!そのあとで教えてやるから!」

「…手取り足取り教えて。」

「全力で断る。」

雄二が霧島さんに覆い被さられて、苦しんでいて、

「ちょっと⁉︎土屋君!手伝いなさいよ。」

「…あと少し。」

ムッツリーニがずっと木下さんの写真を撮っていて、

「工藤!お主、どうしたのじゃ?」

「…。」

工藤さんはなんかずっと、悶々してるように下を向いて、ぶつぶつ言っていた。

 

 

とにかく…

 

「ちゃんとやれよ!バカども!」

「「うるさい!変態野郎!」」

ノータイムでこの返しは、ちょっとつらいんだけど⁉︎

 

 

そして、ようやく、バカどもが作業にとりかかり始めた。

 

「全くなにやってるのかしらね…。」

「本当にね。」美波の言葉に、同調する。

「砂糖と塩間違えそうになったのは、どこのバカかしら?」

そうだった…。

「ごめんなさい。」

「そんな謝らなくてもいいわよ。そういえば…」

「どうしたの?」

「あんたこそ瑞希じゃなくて、良かったの?」

「姫路さんは勘弁してほしいかな。」

きっと死んでしまうから。

 

 

なんて言ってるうちに、

みんなが生地を作り終えて、ようやく次の行程だ。

 

「アーモンドプードル…ってこれかな。」

「そうね。たぶん…」

なんて迷っていると、

 

「アーモンドプードルは、この白い方の粉です。それと、卵黄、砂糖など材料を力を入れずに、さっくり混ぜる感じです。」先生が教えてくれた。

 

「これが噂の幸せの白い粉…」

「なに言ってるのよ。」

言われた通りの材料を入れて、まぜはじめる。

 

「なかなか重いわね。」

「僕が混ぜるよ!結構固そうだしね。」

「ありがと。」

美波のいつもの(ちょっと前の)怪力なら、絶対に混ぜられると思うんだけどね。

 

「あとは、バニラビーンズを…」

「ウチが切るわよ。」

「ごめんね。ありがとう!」

ほんとなにも言わなくても、分かってくれるのは、助かる。

 

さて、バカどもは…

「ほら、翔子。お前の怪力で混ぜて…いたぁあぁいっ!!」

「…雄二。私、病弱。」

「それだけはありえない。」

 

 

「…お姉さん。何歳?」

「26です。」

「….ありぃっ!!」

「ちょっと、土屋君!助けて!あれ⁉︎あってる?」

「…違う。それは、重曹。」

 

 

「工藤よ!目が死んでるのじゃが…。」

「あはは…あはは。」

ダメだ。さっきとやってることが。まるで変わらない。変わったのは、工藤さんの壊れ度が上がったぐらい、だろうか。

 

 

「相変わらず、ね。」

「あはは…。」

 

「早くしなさいよ!あんたたち。」

 

「「「はい。」」」

 

なに、この僕との返事の差。もしかして、言い方の差!?

なら…

 

 

「早くしなさいよ!あんたたち。」

「「バカは黙ってろ!」」

 

駄目だ。もう黙っていよう。

 

 

えーっと次の行程は…

「生地を、型にはめるのね。」

「キッシュを作るときに、する感じかな。」

「そんなもんじゃないかしら。」

 

そして、僕が型にバターを塗りたくって、その間に生地を美波が伸ばす、ということになった。

ほんと手際というか要領がいいなぁ。

 

「よし!これで、あとは焼くだけね。」

「うん!ということは…バカどもが何をしてるかだね。」

 

 

見ると、

 

「明久。こっちも終わったぞ。」

「…最高のコンビネーションだった。」

 

「アタシたちもよ。」

「…少し本気だした。」

 

良かった。やっと正気になったみたいだ。

 

「ちょっと待つのじゃ。工藤が…」

約一名を除いては。

 

工藤さんは、あらぬ方向を向いてほうけていた。

狂気の山場はもはやこえたらしい。

 

 

「愛子ー。変わろうか?もう終わったも同然だし!秀吉とでもいいわよ?」

「ち、違うよ!そういうことじゃなくて…なんていうか…」

 

「とにかく変わるのじゃ。」

「…うん。」

渋々って感じで工藤さんが木下さんと入れ替わる。

顔は嬉しそうだったんだけど。

 

「…大丈夫か?」

「…っ。だ、大丈夫!な、なんだったら、スカートひらり。」

ぷしゃああああ!

 

そして、辺りはいつも通り鮮血へと染まったのだった。

タルトがすでにオーブンに入ってて、本当に良かった。

 

 

あとの作業は、フルーツを乗せて、ナパージュを施してやるくらい、というぐらいかな。

 

「アキ、フルーツはなにをのせよっか?」

 

「選べるの?」

「そうみたいね。」

「イチゴは絶対だよね!あとは、オレンジと…」

「ウチ的には、アキの肉塊かしら。」

なんてことを言うんだ!

「やめて!僕なんか、タルトに乗ってたらまずいだけだよ!」

 

「あら?アキも甘いじゃない。脇腹とか。」

「刺すつもり⁉︎僕を刺すつもり⁉︎」

やっぱり、美波は侮れない。でも、こうやって近くにいると、やっぱりなんか落ち着くなぁ。

殺されちゃうかもしれない、というリスクもあるけれど。

 

 

結局、イチゴとオレンジ、それに、ぶどう、キウィなど柑橘系をメインに乗せることになって、僕は、刺されないで済んだ。

 

 

 

 

「…焼きあがった。」

「ほんと⁉︎」

ちゃんと焼けてるか少し心配なとこだけど…。

 

「ちゃんと焼けてるじゃねぇか。いい香りもするしな。」

 

 

 

型からもきれいに外れて、あとは盛り付けで完成だ。

「どうやって盛り付けようか…。」

「うーん…むずかしいわね。」

センスが問われるんだけど、そんなもの皆無なわけで。

 

「ここに、イチゴ?」

「そうね。それで…」

身を乗り出してくる美波の体が、水の入ったコップに当たりそうになっていた。

「美波!ちょっと下がって。」

「え?なによ?」

コップを安全なとこにどけて…

「もう大丈夫だよ!」

 

「あ、ごめん!ありがと。気づかなかったわ。」

「ほんと、美波は肝心なところで…」

 

「ごめんって言ってるでしょ。」

「気をつけなよ?」

「うん。」

 

そのあと、

先生にも助けてもらいながら、2人で試行錯誤して、ようやく…

 

「「できた!」」

完成した。

 

見渡すと、他のペアも完成したらしい。

「…ベリーいっぱい。ハートのチョコも。」

「くそっ!屈辱だ。」

 

 

「こんなもんかしら。」

「そうじゃの!これなら、とりあえずは家に持って帰れそうじゃの。」

 

「…ここはこうした方がエロさが出る。」

「違うよ!そこは、やっぱりバナナ…」

うん。保健体育コンビは、他所でお願いしていいかな。

まぁ、工藤さんが元気になったのは良かったけど。

 

でも、これ美波と分けないとダメなんだよね。

「美波!これどうやってわける?」

 

「そうね…。そんなに大きくないし、葉月呼んで、今から玲さんと4人で食べちゃう?」

「なるほど。それいいね!」

 

 

 

雄二は、霧島さんと同じ家(監獄)だし、木下姉妹も、同じ家だから問題ないだろう。工藤さんとムッツリーニは…まぁこちらも2人だけで食べるだろう。

 

 

 

 

 

料理教室から出てみると、もう空は綺麗な夕焼けに染まっていた。駅の時計をみてみると、4時半ごろをさしている。

 

 

 

「アキ、行くわよ?木下たちもまたね!」

「またね!」

 

みんなに挨拶して、それから、先々行ってしまう美波について行くように、僕も少し駆け足で美波に追いつけ、とそちらへむかう。

 

 

「待ってよ。美波!」

「置いてってやろうと思ったのに。」

僕の家に行くのに、置いて行くって、おかしいよね。

少し間をおいて、

 

 

「それはそうと、今日はありがとーね?」

 

「…ウチこそよ。さすがに手際良かったから助かったわ。」

 

「いいよ!それより…秀吉じゃなくて、ごめんね?」

 

ここは、やはりちゃんと謝っておこう、そう思った。

 

「そこは、ほっときなさい、って言ったでしょ。そんなことより、あんたはどうなのよ?」

「えーっと…僕は…」

姫路さんのことを言っているのだろうか。それなら、見当違いもいいとこだ。正月以来会ってもいない。あの時もまともに話せなかったし…。

色々と忙しいらしい。

情けないことに、もちろんなにも言えてない。

 

 

 

「まぁ…今日はいいわ。葉月も同じぐらいにはアキの家に着くみたいよ。」

「それなら、よかった!ちょっと時間も遅いから心配だけど。」

清水さんとかに誘拐されないか。

 

 

_________________________________

 

 

 

その時、2人は気づくことが出来なかった。瑞希が、そんな光景を、陰から見ていたことを。

 

 

 

なぜか声をかけられなかった。

なにか用事があって、2人なだけなのかもしれない。いや、きっとそうに違いない。だけど、そんなことよりも、どうしても、仲良さげに笑いあっている見知った2人がなぜかものすごく遠いものに瑞希には、見えた。

 

 

「…明久くん。」

届かないに決まっている虫のように小さな声が、冬の乾いた空気の中、自分のまわりにだけ、むなしく響いた。

 

 

 

 

そして、闇。

 

 

 

 

 

 

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