バカテスト
英語のことわざの意味を答えなさい。
Old soldiers never die.
姫路瑞希の答え
老兵は死なず
教師のコメント
そのままでしたね。
老兵は死なず、ただ消えゆくのみ、とはマッカーサーが日本を去る時、最後に残した言葉でもあります。
吉井明久の答え
老いたソルジャーは、決して死ぬ。
教師のコメント
しどろもどろですね。単語を繋いで訳そうとしたことは、いいことですが。
土屋康太の答え
俺だ!ソルジャーだ。ネバネバ死ぬ。
教師のコメント
本当に大丈夫でしょうか?
午前9時のFクラスのE教室にて。
「負けてるふり?」
「そうだ。点数、作戦の両面で押しやってる、というイメージを相手に植え付けるように戦う。そうなれば、相手はどうすると思う?」
うーん…
はっ!思いついた!
「喜ぶ。」
「実に小学生みたいな回答だな。」
一生懸命考えたのに、一瞬で否定しやがった。雄二のくせに!
「もう少し攻めれば、落ちるんじゃないか、って思うじゃろうな。」
「そうだ。人間、少しでもそのような状況になると、今度は欲が出てしまうも。それが、総統者の意思でなかろうが、な。」
「なるほど!それで、何の考えもなく入ってきたところを叩く、ってことか!」
「明久。残念ながら正解だ。」
残念ってなに!?
「そこで相手が警戒してくる明久、ムッツリーニ、姫路、をいかにも、追いやったように見せかける。だが本当のこっちの本命は…。」
「…島田じゃな。」
「ウチ…?」
「そうだ。さすがは秀吉だな。」
なんか僕と扱い違いすぎじゃない⁉︎
「袋小路に迷い込ませて、大勢で少数のBクラスを叩いていく。これで、形勢有利を作り出してから、根本を叩くんだが…。警戒されてる姫路、ムッツリーニではなく、警戒が薄い島田が出張ることがポイントだ。島田は、センター準拠にすると、ドイツ語で点数をえらく稼げる。最悪の場合、俺が出張って、倒すことになるがな。」
「英語教師はどうするの?」
「遠藤を連れてくる。もうすでにあるフィールドは、腕輪で干渉を起こして、消す。それで、島田の活路を作ることになる。」
なるほど…とりあえず、いかに負けてるかのように退却する…か。
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「雄二!」
「なんだ、明久。生きてたのか。残念だ。」
「僕を見捨てやがって!サモン!」
こうなったら、たおしてやるうっ!!
「上等だ。と言いたいが…自分のフィールドじゃ召喚獣は召喚出来ないんでな。やめておいてやる。」
ふっ。おじけづいたらしい。
「ちなみに今のフィールドは、現代国語なんだが…何点だ。」
現代国語なら…
「120点くらいはあったはず…。」
「ほう。成長したな、明久。」
バカでも少しくらい成績、伸びるんだ。
「俺の点数は…お前のおよそ3倍だ。」
どうしよう。もういっそ補習受けてこようかな…。
なんて話していたその時…
「坂本!!Bクラスの前衛がなだれ込んできた。科目は、日本史!」
「来たか…。明久。捨て駒にされたくなければ、存分に暴れて来い。」
「おう!」
日本史なら…任せろ!
「美波!いくよ!」
「島田。お前は、待機だ。」
そういえば、美波が戦死したら、元も子もなかったんだっけ。
なんかちょっと残念だな。
「ムッツリーニ、須川くん、福村くん!」
「「おう!」」
「…委細承知。」
渡り廊下の手前までむかうと、
旧校舎と新校舎の間の渡り廊下の入り口両脇に張ったダンボールの山の両端に、Fクラスのみんなが控えていた。
「明久くん!」
「明久に、ムッツリーニ!」
秀吉と少し疲れたようにみえる姫路さんが、その中から出てくる。
「姫路さん!大丈夫?」
「とりあえずは、大丈夫じゃ!」
「…よかった。」
とかいいつつ、疲れて、髪が乱れたりしている姫路さんと相変わらず麗しい秀吉の写真を撮っているムッツリーニは、救いようがない。
「よかったよ!とりあえず少し休んどいてよ。」
「でも…大丈夫ですか?」
「うん。だって僕らは…」
「「「美術品(AV)のためなら!!」」」
「バカじゃのう…。」
最高級のバカだから。
なんて話をしていると、ダンボールの山の反対側から、
「なんだこれ⁉︎狭いな…。」
「暇だったんじゃねーの?やっぱFクラスは、バカだなー。」
「ま、とりあえず一人一人入ろう。」
なんてぬかしながら、そろりと入ってきたBクラスの人に、一声。
「「「ようこそ。バカの楽園に。」」」
「……え?」
「「「えへへ♡」」」
「え!?うわぁぁぁぁ!!」
「なにがあった!?と、とりあえず少しこのダンボールを壊して範囲を広げろ。」
そんな悲鳴を聞いて、野中くんがダンボール塔を壊しつつ、一気に10人ほど送り込んでくる。
「よし、やれええぇ!!」
ちょっと多すぎると、まずい…よね。
こうなったら…
「須川くん!」
「おう。…おっと!!足が滑ったァァァァ!!」
わざとらしいくらいにダンボールの根元を全力で蹴飛ばす。
と、同時に両脇のダンボールが上から下まで、一気に崩れこむ。
「きゃ⁉︎」
「いたっ!いたい!なにこのきもいDVD!」
「あなたたち卑怯よ!いたっ。なによ、このDVD。」
「フラレ大王、須川のDVDだよ。知らねーの?傑作だぜ?…いたい!!」
「だから…ちょっとは、傷ついてるからな?」
崩れゆくダンボールや、DVDに視界や身動きを奪われて、Bクラスの人たちが召喚獣を操作出来ないうちに、みんなで、木刀や、槍で急所を一瞬でついていく。
身動きが取れていない召喚獣の始末なんて、手慣れたものだ。
そして…
「野中を、討ちとったぞい!!」
「…鈴木もとった。」
「補習はいやだぁ…!!」
「くっそおぉー!!」
そんな声をあげながら、戦死者全員が鉄人に、ひきずられていく。
とりあえずこれで、敵の前線は完璧に破った、といえよう。
「なんていうか…すごいですね。」
「まぁ、あとでこってりおこられそうだけどね。」
「それは、それで明久くんたち らしいかもしれませんね。」
と言って、姫路さんが笑う。
まぁ、補習自体は、一切笑えないんだけど。
そんな時、遠くから、雄二と美波の声が聞こえてくる。
見ると、遠藤先生を連れて、こっちに走ってきている。
「島田!行くぞ。」
「うん!」
「明久、秀吉ついてこい!」
「「了解(じゃ)!」」
2人のBクラスまでの活路を開くために、姫路さんも含めて、その場にいた全員が少し奥にちらほらと、いるBクラスの人に対していく。
「雄二!」
「おう!起動(アウェイクン)!!」
雄二が合言葉を唱えると、腕輪からフィールドが展開される。
すると、今まであったフィールドと干渉を起こして、フィールドが割れて、消滅した。
これで、ひとまず、なんとかなったはず。
「「「いっけー!!」」」
みんなのそんな声に背中押され、Bクラス内に入り込む。
「なんだ⁉︎お前ら…なんで⁉︎」
根本くんが驚いたような顔を浮かべ、悲痛にさけぶ。
「遠藤先生、召喚許可を!」
「はい!承認します!」英語のフィールドがスーッと広がって展開される。
「近衛部隊!」
根本くんが声を引きつらせながらさけぶ。
「させるか!サモン!」
「サモンじゃ!」
「くそぉっ!」
自分の召喚獣を対峙させつつ、点数表示をみやると、
『Fクラス•島田
ドイツ語 708点
VS
Bクラス・根本
英語 290点』
なんて、見ている間に、美波の召喚獣が一瞬で根本くんの召喚獣を切り裂く。
その間は、ほんの一瞬。
しかし、全てが終わった瞬間だった。
そして、
「よし。これで、俺たちの勝ちだな!」
雄二が教室の扉を開けて、勝利をみんなに告げる。
すぐに、勝利の伝令が戦線を走る。
「「よっしゃあぁぁ!!!」」
勝てた。とりあえず、これでAクラスに挑戦できる状況は保てた、というわけだ。
「根本…本当にお前は、残念としか言いようがない。救いようがない。」
勝利の余裕か、雄二が、思いっきり渇いた目で、呟く。
「なっ…なんだよ!お前は!友香を…」
「なんだ?」
「たぶらかしてるだけだろ!この下衆野郎が!」
根本くんがそんな言葉を発するなんて、矛盾しすぎるのもいいとこだと思うんだけど、ね。
「…。とにかく俺は小山に話をつけるつもりだ。決して貴様のためではなく、小山のため…いや、俺のために、な。」
「…とっとと行け。」
「あぁ。あと、戦後交渉だが、例のごとく…なんだが…設備交換は無しで構わない。その代わり、条件が…」
「なんだ?」
「それは、な…。」
雄二が、根本くんに耳打ちをする。
「…分かった。写真集が出されないだけ、マシだと思っておく。」
まぁ、ファーストアルバム、
生まれ変わった僕を見て!
は、本当に酷いものだったしなぁ。需要もないだろう。
にしても、何を話してたんだろう…。
「帰るぞ。お前ら。」
雄二がおもむろに振り向いて、呟く。
「うん!」
「…そうじゃの。」
「はぁ…。とりあえず良かったわね!坂本。」
美波が、とりあえずの勝利に喜びながらも、雄二にある種の牽制をする。
そう。とりあえずは、良かったんだけど…
「とっとと小山さんのところ行ってきなよ!」
話をつける、と言ったことを忘れてもらったら困る。
こんなに面白いこと滅多にないしね。
「あれだけ口火を切っておいて、なにもせぬわけにもゆかぬじゃろうしの。」
「うるせー。バカ…。」
バカはお前もだろ、といつも通り心の中でつっこんでいると、
「ただ…今回は本当に助かった。ありがとう。」
な…なんだ?新手のツンデレか⁉︎気持ち悪すぎて、体全体からヘドロが出そうだ。
「雄二、きもいよ。」
「せっかく感謝してやってんのに…こういう時くらい素直に聞いとけ。」
新学期早々の試召戦争は、Fクラスの勝利で、こうして幕を閉じた。
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放課後。Cクラスにて。
雄二は、小山友香に、放課後待つように伝えていた。
なぜか少し緊張しつつ、戸をそろりと開けると、
鮮やかに、夕日が差し込む中、影を長く前にのばした小山が教室の中、ぽつんと座っていた。
「来たのね…。待たせるなんてひどいけど。」
「すまない。少し鉄人に叱られていてな。」
「ほんと相変わらず、ね。で…坂本くん、話って?」
「例の返事だ。」
そう、告げると、ハッとしたような顔になって、
「で、どうなのよ?」
「…すまない。俺は、お前の気持ちに答えられない。」
俺には…もう大切なものがいるから。そこは、どうしても声にならなかったが、
こんなことには、全く慣れていない雄二の中では、勇気を振り絞った一言だった。
「そう。」
とだけ、返した小山は、
いつもすら十分綺麗だろうに、いつもより数倍綺麗に雄二の目には、うつった。
それでこんなことを言いたくなってしまったのだ。
「…小山。策略家みたいな、男が好き、とか言っていたが…根本しかり俺しかり、それだけで選ぶのは、やめておけ。」
「な、なんで、そんなこと言われなきゃいけないのよ?」
相変わらずクールに言ったように、聞こえたが、その声には、確かに少し焦りのような感情がこもっていた、気がした。
「人はそれだけじゃねーってことだ。お前をちゃんと考えてくれる人を選びな、ってこと。小山、お前は、なんだかんだいい女だから…な。気をつけろ、ってことだ。」
言ったことに後悔のようなものは、なかったけど、恥ずかしさだけは、きえてくれなかった。
「…。」
それにくわえて、小山が黙り込んだおかげで、気まずくなった空間を裂くように、
「…じゃあな。わざわざ呼び出して、悪かったな。」
なんとか、振り返って、立ち去った。
そんな雄二には気づかれないようその後ろで、
小山は、背中を向けた雄二には、聞こえないくらいほんの少し笑って、呟いた。
本当に面白い人だな、と。
もちろん雄二は気づくこともなかったのだけれど。
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「…雄二。」
「はい。」
「…これは、どういうこと?」
翔子が手に握った録音機らしきものに手をかける。機械音痴のくせに、どうしてそんなものを…と思っていると、
「小山、お前はなんだかんだいい女だから…な。」
なんてセリフがそこから、響く。
「…どういうこと?」
ムッツリーニの野郎…いつのまに⁉︎
…やりやがったな!
「待て!違うんだ!これは「小山、いい女」だな、って思って…違う!待て、翔子!これは…違う、うぎゃああああ!」
校舎内に、勝利の断末魔が響き渡ったことはいうまでもなかった。