バカテスト
日本において、GHQの三大改革のひとつ、財閥解体により戦後に解体された財閥を4つ答えなさい。
姫路瑞希の答え
三井、三菱、安田、住友
教師のコメント
問題ないですね。官民一体となって、経済を独占し、また軍国主義の一因となっていた企業を潰すことに主眼がありました。
土屋康太の答え
香川、高知、愛媛
教師のコメント
そこまできたら、徳島までせめて書きましょう。
姫路さんと2人で料理をした日、僕は数時間おじいちゃんと思い出話にふけったあと、なんとか意識を取り戻した。取り戻したころには、なぜか家に帰り着いていて、なぜか横で姉さんが寝ていた。
そして今日。ついに決戦の日が来たのだ。僕らはあの兵器(同級生)を止める。そう。なんとしても。
これは、戦いなのだ。
「あ、みなさん!もういらしていたんですか?」
姫路さんが、外の喧騒に気づいたのだろうか、出迎えてくれた。
「おい。明久、しっかりやりやがれよ。」
雄二が僕にそう呼びかける。今回ばかりはしくじれない。
「雄二こそ!」
「…手錠はある。」
「それが最終手段じゃな。」
「あんたら、ねぇ…。」
美波があきれたように呟く。
「美波。死にたくないんだ、僕は。協力してよ!」
「はぁ。仕方ないわね…。」
何回でも繰り返す。これは、戦いなのだ。生半可な気持ちでは死んでしまう。
家でお祈りもしてきた。
「ほえ?何の話をしてるんですか?」
「「「「いーえ!なにも!」」」」
「本当に、なにもないわよ。」
「そうですか…。で、今日はなにを作るんですか?」
そこもちゃんと考えてきてある。
前日にみんなで適当に決めただけだけど。
「ハンバーグにしようと思って、材料も買ってきたよ!」メインはハンバーグ。添えつけは、ほうれん草とコーン、ベーコンをバターで炒めるごくごくシンプルな内容だ。
「そうなんですか!得意料理です。」
なんだって⁉︎ということは、姫路さんは、手を加えてくる可能性がマックスだということだ。
少しまずい選択肢を引いてしまったかもしれないな…。
「明久。まずいぞ。」
雄二も同じことを思ったらしい。
「分かってる。だから僕らには、秘策があるじゃないか。」
そう。いざという時の最終手段が僕らにはある。
「島田、ちゃんと持ってきたか?」
雄二がおもむろに聞く。
「えぇ。一応ね。ほんとにやるの?」
「「当たり前だ!!」」
「さぁ、行きましょう?」
リビングに姫路さんに言われるままに通されて、中に入る。
キッチンが目に入った瞬間、この前、2人で料理をした時が蘇る。
あの兵器としか言いようがない液体の味と、それと
姫路さんの悩んでいた姿。
焦っていると言っていた姫路さん。なにを焦っているのか。あれから何度も考えたけど、理解するのはどうにも難しいことだった。
「じゃあ、早速やりますか?」
「まぁ、とりあえず一旦休憩させてもらっていいか?疲れた。」
「そうじゃのう。」
秀吉が、雄二に合わせる。少しでも寿命をのばしたいという魂胆なのだろうか。
「そうですか。ではお茶、お入れしますね。」
お、お茶は、さすがに大丈夫だよね?ちょっと怖くなってきた。
「瑞希!手伝うわよ?」
「そんな、別に気を使わなくてもいいですよ?」
違うんだ。自分の命に気を使ってるだけなんだ。それくらいは許してもらいたい。
お茶を飲んで、しばらく雑談しながらゆっくりしていると、
「まぁ、料理しかしないのもなんだし、な。少し勉強でもするか?」
雄二が唐突に提案する。
「…十分やってる。」
「保健体育のみだろ。」
一学期の時なんか、それだけで僕の合計点数と変わらないくらいの点数だったなぁ。
僕の点数が悪すぎた、というのもあるけれど。なんせ裏口入学系男子、と呼ばれていたくらいだ。
にしても、なんで雄二は勉強させようとするんだろう?そう考えると、すぐに答えが浮かんだ。
「雄二、よほど次の戦争に負けたくないんだね。」
次は、きっとAクラス戦。もちろん負けるわけにはいかない戦いだ。僕よりも、誰よりも雄二にとっては。
「なっ!ちげーよ!バカ!」
「雄二よ。そういうことは、素直に認めるのじゃな。」
「そう言ってくれたら、手伝うのに。」
秀吉や、美波が口々に雄二を茶化す。
「お前らなぁ…。勉強してる間に例の準備を進めらるだろ?」
言い訳にしか聞こえないんだけど、
雄二が言ってるのは、少しでも先延ばしにして、その間に着々と準備を進めればいい、ということかな。
確かにそれも一理ある。
「お勉強ですか?では、私もできる限りお手伝いします。」
姫路さんも雄二の言葉を聞いていたのだろうか。やる気がみなぎってるように感じられた。
ここまで応援されたら、雄二も早く決着をつけて欲しいところである。それは、僕にも言えることなんだろうけど。
そのあと、何時間か勉強を雄二と姫路さんに教えてもらう。
今日は、苦手な物理を教えてもらっている。
姫路さんと雄二の教え方はやっぱりうまくて、すんなりと基本的なことは理解できた気がする。
今は、雄二と姫路さんがなにやら話し込んでいて、自習という形になっている。
「美波、ここのところ、どうなってるの?」
「たしか…位置エネルギーが…」
パシャパシャ
「ムッツリーニよ。勉強してる島田を撮って、どうするつもりじゃ?」
「…塾の宣伝に使う。」
いや、たしかによくそんな宣伝あるけど!絶対に違うよね?
とにかく…あとで、買おうかな。
なんてやっていると、2人が戻ってきた。
「今日やったところのまとめテスト作ってみたんだが、やってくれ。」
「今、急遽作ったんですよ?」
それで話し込んでいたのか。雄二が姫路さんと不倫していたよ、とか霧島さんに報告してやろうと思ったけど、やめといてあげようかな。
「じゃあ、テスト始めるぞ。」
みんなに用紙が配られて、姫路さんが号令をかける。
「始めてください!」
ちょっとだけ本物のテストみたいな感じで緊張しつつ、テストが始まる。
とりあえず配られた問題に目を通す。問題を見てから、鉛筆転がしか否か、決めるためだ。
問題は、っと。
①明久はバカ。
…質問にすらなってないじゃないか!!
それどころか、思いっきり罵倒されたよ!
しかし、それ以降の問題は、ちゃんとした問題が出されていて、真剣に取り組む。
やはり教えてもらうだけではなく、やらなければ身につかないということが実際に取り掛かってみると、よくわかる。
問題自体は、そんなに難しくないはず。それでも頭を悩ませながら、一生懸命といていく。
始まりから、30分ぐらいたって雄二が、
「ほれ、テスト終了だ。」
そう声をかける。
まさにやっと終わった、という感じだった。珍しく、早めに終わって、見直しまでできたくらい時間が余ったのだ。
わりとできたような気がするんだけどなぁ。
「それじゃあ採点しますね。」と姫路さんが言い残して、採点にかかる。
「島田よ。できたかの?」
「そうね。基本的なことだったし、大丈夫だと思うけど…。」
「…自信ある。」
僕も今回は、自信あるんだけど…。
「結果発表だ。まずは、島田。」
「どうだったんだろ…。」
美波が不安そうな、期待してるような半分半分といった顔で、結果を待っている。
「満点だ。」
なんだって⁉︎早速プレッシャーをかけるような点数とらないでよ!
「次に秀吉とムッツリーニ。」
2人まとめて発表なことに驚くが、同じ点数だったのかな?
「満点だ。」
なっ!ということは、僕だけ、満点じゃなかったのか?
「最後に、明久だが…」
思わず、息を飲んでしまう。満点くらいの出来だとは思うんだけど。
「一問、間違えだ。」
「くっ!くそー。なにを間違えてた?」
「①番だ。」
あれ、問題だったの⁉︎
というかみんな正解ってどういうこと⁉︎
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理不尽すぎるテストが終わって、今度こそみんなで料理に取り掛かる。
キッチンは3人ぐらいしか入れないから、姫路さんを除いて2人は交代交代ですることになった。まずは、僕とムッツリーニがフォローに回る。
ハンバーグ…考えれば考えるほど危険なメニューである。だからこそ、なんとしても姫路さんを抑えつつ、やらなければ命はない。
ここからは、おふざけ無用だ。
「ムッツリーニ、まずはしっかりボウルを洗ってもらっていい?ワセリンが塗ってあるみたいだから。」
「…この妙なテカリは、ワセリンだったのか。危なかった。」
「この機会に全部洗ってしまおうぜ。」
「そうね。そうすれば、少しの間は、大丈夫だものね。」
どうせまた一週間もすれば、べったりワセリンが塗られている気がするんだけど。にしても、どこで手に入れるんだろう。
なんて考えていると、
「どんなハンバーグにするのじゃ?」キッチンの外から秀吉が聞いてくる。
「和風ハンバーグかな。」
大根おろしをたっぷりかけて、食べるのだ。おいしいに決まっている。(なにごともなければ。)
「…玉ねぎ刻む。」
「じゃあ僕は、大葉刻んでおこうかな。姫路さんはハンバーグこねてもらっていい?」
なんとしても、なにも被害がないようにしなければならない。ならば、これが最良の選択のはずだ。
「はい!」
姫路さんが元気に返事をして、合挽き肉とムッツリーニが一瞬で刻んだ玉ねぎ、それに僕の刻んだ大葉を手で混ぜていく。
手つきは、悪くないんだけどなぁ。
「姫路さん、ここは混ぜるだけだからね?なにも入れなくてもいいんだよ?」
「そんなこと分かってます。まだ、ドッグフードの粉しかいれて…」
いつの間に⁉︎やられた…。くっ…こうなったら…
「美波!例のものを!」
「分かったわ!」
そういうと、美波がカバンから、なにか物体を取り出して、
「これが、その材料を混ぜたものよ。」
そう高らかに宣言する。
これが、僕らが考えた、名付けて
某テレビでやっている、○分クッキング作戦だ。
これを、姫路さんがわけのわからない殺人材料を入れた時に発動させる。これで、少なくとも死なずに済む、というわけだ。
あったま、いい!
「雄二と秀吉が今度はキッチンだね。」
「…といっても後は、形にして焼くだけ、だけど。」
ハンバーグを塩コショウや、醤油など少し味をつけてから、真ん中を凹ませて、形を整える。
作業をしている姫路さんを2人して、ものすごく凝視している態勢は、少し滑稽だった。
姫路さんが、ハンバーグを返して、少ししてから秀吉が水を入れて、蒸し焼きにしていきはじめる。
「美波。完成ハンバーグを出す準備を…」
「ちゃんと作ってきたわよ。なんか、これ…やってて馬鹿らしくなってくるわね。」
うん。
「…それでも命はひとつ。」
うん。
そうなんだ。大切なのは、そこなんだ。
「開けますね?」
姫路さんが、フライパンを開けて、いい音がなった瞬間、雄二が目にも止まらない早さで、ハンバーグを完成したものに、すり替える。
「あれ?もう完成ですか?」
「さすがは、姫路じゃの!素晴らしい早業じゃ!!」
「え…。これ私がやったんですか?」
困惑している姫路さんに少し罪悪感が湧いてくる。
ごめんね、姫路さん。こればっかりは、仕方ないんだ。
ひとまず、ハンバーグはこれで完成だ。後で、大根おろしをすって、上からポン酢でもかければいい。
ソースを手作りはあまりに危険すぎる。これなら、市販で済む、そう考えたのだ。
「島田、俺と変わってくれ。ちょっと翔子から電話が…」
雄二は、そういうと、キッチンから出て、電話に出た瞬間、その場で土下座をしはじめた。
しみじみと思う。雄二も大変だなぁ…。
と、まぁ思うことはこれだけなのだが。
「島田よ、ほうれん草切ってくれぬかの?」
「おっけ!」
「瑞希は、ベーコン切ってもらっていい?」
「はい!」
やっぱり女の子3人がキッチンにいるというのは、本当に華やかだなぁ。
なんて思いながら、
僕の目は笑いながら仲良さげに料理をしてるようにどうしても映る2人にばかり目がいってしまっていたのだが。
そんな光景を振り払うように、
なにも悪いことなんがない!いいことに決まっている。そうやって自分に言い聞かせる。
僕は知っている。2人は、きっと…
「…明久?」
「へ?」
「…できたみたい。」
なんて色々考えてるうちに、完成していたらしい。
はじめは、箸が震えながら、であったが、
ハンバーグはなんの問題もなく、
「うまい!」
その日、そこで食べたハンバーグはとても美味しく出来ていた。
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「普通に美味しかったな。」
雄二が帰り道そう呟く。
「まぁ。ほとんど島田の料理じゃからな。」
「そうね。」
「…当たり前。」
「褒めてくれてるの?ありがと。愛子にも報告しないと…」
「…なんであいつが出てくる。」
ムッツリーニも本当に正直じゃないなぁ。
まぁとにかく…
「結局、なんだか目的がわかんなくなっちゃったけど、生きて帰れてよかったよ。」
「…遺言書を書いてきた。」
ムッツリーニ、そこまで覚悟してたんだね。
「内容はどんなこと?」
「…写真と、聖書(エロ本)の処遇。」
やっぱりか。想像の範囲内どころか思ってたことに全くピッタリだった。
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「帰るか…。」
雄二が、そう告げる。
あれからどれくらい話したであろうか。
日もだいぶ沈んできていた。西の空には、もう一番星が輝いている。空に浮いていた白い月は、夜の空に輝くのを今か今かと待っているようだ。
実際季節も1月も真ん中。最も冷え込む時期といえるかもしれない。
ストーブやヒーターといった類は、普通の家なら欠かせないだろうが、かくいう明久の家では、出来るだけ着込むなどして寒さに抵抗してきたが、限界かもしれない。
そろそろ姉さんのバスローブを十二単並みに着込む姿も見飽きたところだ。
「木下、こっちよね?」
「そうじゃ。一緒に帰るかの?」
「うん。」
秀吉が、美波が自分のところに来るのを待って歩き出す。まさに慣れたさま、というところだろうか。
美波と秀吉はこちらに、ひとしきり手を振ると、振り返ることなく、歩いていく。楽しげな笑い声が徐々に遠ざかっていく。
その距離が僕にはあまりにも早く広がって、すごく遠くに行ってしまうような、遠くに…。
「明久。行くぞ。」
「あ…うん。って、ムッツリーニもこっち方向だっけ。」
そう問うと、
「…なんとなく気が引けた。なかなかおにあい。」
そうだ。なにも悩むことなんかない。僕は姫路さんが好きだ。あの笑顔が、努力が僕にどれほど勇気をくれただろうか。
それで、美波は秀吉が好き。秀吉もきっと美波のことが…。少なくとも悪くは思ってないはずだ。
だったら、それでいい。あとはなるようになる。
ただそれだけ。
それだけなんだ。
そんな僕に雄二が、
「悩んでられるのも今のうちだぞ。」
と、小さく。ほんとに小さく。それでもしっかりと、言い放った。
やけに響いたその言葉に
悩んでなんかない。今、目の前にあることに不満なんかまさかあるわけもない。目をそらしてるわけでもない。
そうやって心の中で、反論をする。
そうは思うものの、
「…。」
僕はその場に、立ち尽くすほかなかった。
「ほら、行くぞ。」
「…うん。」