「あんた、忘れてないでしょーね。」
「なんで忘れるのさ。放課後、教室で、でしょ。」
「そっか。そーだよね。」
バカテスト
下のことわざを同じ言葉で空欄を埋めて完成させなさい。
可愛い子には( )をさせよ。
( )の恥はかきすて。
姫路瑞希の答え
旅
先生のコメント
正解です。やはり賢いですね。日常的にもよく使われていますね。
吉井明久の答え
(自主規制)
先生のコメント
さて、次の人の答えにきたいすることにいたします。
須川亮の答え
(放送禁止用語)
先生のコメント
もう島田さんぐらいしか頼れる人が…
島田美波の答え
/////////
先生のコメント
…(´・_・`)。
美波が帰ってきたことは、明久にとってほんとに嬉しいことだった。今なら誰かに10回まわって、わんと言え!なんて言われても笑顔でやってしまいかねないほど。
のだけれど。それは事実なのだけれど。一方で、吉井明久にはひとつ重要な問題が発生していた。といっても明久自身のみの問題であったのだが。
告白なんてものは、勢いがないと出来やしない、という問題だ。
つまりは、あの時、先延ばしにされた告白をしたいしたい、とは思うものの、そう簡単には言えるものではないということ。
明久にとっての憂鬱がそこには生まれていた。
それと、回りからの目線がまた痛いのだ。なんせ好きだと宣言して、走り出して追いかけた。
雄二たちは絶対に思っているだろうから。明久と美波が付き合っている、と。
今朝も、「島田はいいのか?」と4回は聞かれたし、「昼休みは、これから4人で弁当かぁ…」なんて意味深に呟いてもいた。
だからといって、明久と美波にはほとんど変化がないといっても過言ではなかった。夕方一緒に帰ろう、なんていうのもいつものことだ。これまで通り、付かず離れず。それをとくだん残念とも寂しいとも思わない。むしろ急にベタベタされようものなら、気持ち悪いぐらい。
授業間の休み時間。そんな考えごとともつかないことを頭に浮かべていると、
「明久、なんだ、珍しく考え込んで。島田のエロい妄想でもしてるのか?」
「…メイド服?ゴスロリ?チャイナ?ニーハイ?ハイレグ?肩ひも?パンティ…」
「貴様らぁ…!!」
これだから、バカの相手はことごとく疲れさせられる…なんて思う一方で考えてもしまうのだが。
メイド服の美波、ゴスロリの美波、チャイナ服の美波、肩ひも…
そこらで一気に顔が赤くなるのを感じて、そこで思考停止。
そうそうよからぬことなんて考えるものじゃない。横で鼻血を出して倒れこんだムッツリーニがまさに反面教師。教えてくれている気がした。
そんな風に思っていると後ろから、聞き慣れた声で
「明久くん、また悩みごとですか?」
思考停止状態になっていた自分を気遣ってくれたのだろうか、瑞希が声をかけてくれる。
「いや、そういうわけでもないよ!ただ考えごとを…。」本当のことなど言えるわけがない。もし、美波のあられもない姿を考えてました、なんて正直に言ったらあらゆる骨が複雑に折(ら)れてしまいかねない。
「そういえば…明久くん。美波ちゃんに言ったんですか?」明久も少し驚きはしたものの、瑞希がなにをさしてそれを言うか察して、
「ううん。まだ。」瑞希はその短い言葉を精一杯噛んでから、絞り出すように言い放つ。
「なら、頑張って下さいね。」渾身の笑顔で。
「うん!頑張る。」返ってきた力強い言葉に迷いはなかった。一点も。
だから自分の気持ちはしまっておこう。叶わないのだから。出てこないように鍵でもかけておこう。
「「修学旅行の班分け??」」
「あぁ、もう1ヶ月後は修学旅行だからな。その班分けをしてもらう。」
もうそんな時期であったことに驚く。色々なことがあったからそれも仕方ないことなのだが。
行き先は毎年、北海道。観光地を巡ってまわるという至って普通のものだ。無論、勉強もつきまとってくる。アイヌ文化についての報告なんてものや、その日その日の感想なんてものも書かなければならない。
「知っての通り、行き先は北海道なんだが…。お前らFクラスは、いつもと同じように現地…」
わーい北海道!的な雰囲気が流れていた教室が一転。
え?
現地?
北海道?
そんな無言の空気感が教室中に漂ったあと、
「「「ふざけやがってぇぇー!!」」」
やはり爆発した。
一体どうしろというのか。普通の人間であっても、それは少し難しいことだと言うのに。
仮にもここにいる人間は最高レベルのバカだ。飛行機を自分で手配なんて出来ないだろう。もし飛行機なんか使おうものなら、「気づいたらなんか北極来てました★」、てなものである。それくらいバカなのだ。
自分ならどうするだろうか考えてみる。北海道に現地集合と言われても、飛行機、新幹線なんてブルジョワは家計状況を考えても許されない。
考えはじめて、5秒もたたないうちにはっきりとしたイメージが浮かぶ。
全力で自転車をこいでいるバカが4人。赤い髪と茶色い髪は全力で速さを競い合い、白髪は手元のカメラをどこかに女(綺麗でエロい人限定)がいないかと離さない。黒髪は後ろでため息ひとつ。それを見守る。
まさに、最悪。
「お、落ち着きなさいよ!」
美波が終戦後みたいな雰囲気漂うクラスメイトに指揮官、もとい美波が一喝。続けて、
「あ、あれよ!要は、北海道にいければいーんでしょ?なら遠泳で…。」
ダメだ。一番落ち着けていない。
「えぇ⁉︎そんなの寒いでしょうし、私泳ぐなんて無理です…。」
「いや、姫路さんも真剣にその状況を考えなくてもいいんだよ⁉︎」
まわりを見渡すと、
「…たしかに寒そう。」
「おい。須川!海パン一緒に買いにいこーぜ。」
「去年の奴は腐っちまったもんなぁ。」
…。もうなにも言うことはない。泳ぐなら泳げ、心からそう思った。
そんな状況を見兼ねて、
「おい、落ち着け。」とは鉄人の弁。この状況をもたらした張本人の言葉に、
「「「これが落ちついてられるかぁ!」」」
「ところで、海パンの話だが…」
海パンの話に戻ろうとする須川を牽制するように、
「いいからきけ!」と鉄人は一喝。続けて
「冗談なんだ。…設備と同じくEクラス並の待遇で処置されるから、バスで連れて行ってやる。」
その言葉にクラス中が凍りついたあと、安堵する。ほっ。なんていう音が聞こえそうなほどである。
そんな安堵とともに、Fクラス設備を押し付けられ、そして現地集合を強いられようとているEクラスの人に心の中で謝る。
にしても、鉄人がジョークなんて柄にもないこと、本当にしか聞こえないからやめてほしいものだ。
「先生。」
安堵して、少しまたざわざわしだしたクラス全体の空気をまっぷたつに切るかのように雄二が声を出す。
「なんだ?坂本。お前が俺のことを普通に先生というと、なぜだかとても気持ちが悪いんだが…。」
そう。雄二が鉄人を先生なんて呼ぶということはなにかこちらにとって有利なことを聞き出したい時。
そんな状況を何度も見てきたからさすがに分かる。
「そんなことねーっすよ。」
「はぁ…。んで、なんだ?」
「もし、この一ヶ月の間にAクラスと戦争して俺たちが勝ったら、Aクラス並の待遇、つまりは最高待遇の飛行機で北海道に行けるってことか?」
雄二がニヤっと悪い微笑みを浮かべて聞く。
そう言われて、驚いたのか鉄人は少し考え込んだのち、
「ほう…。まぁ、そういうことになるな。」
鉄人のその言葉を待って、雄二はもう一度ニッと笑って、クラス全員に向き直る。
「最高待遇の飛行機で行きたくねーか!?おめぇら!!キャビンアテンダントも最高級だぞ?」
「CA…きゅっとしまった制服に引き締まった体!」
「…ごくり。」
「「「行きたーい!!」」」
明久も思わず、行きたーい!なんて叫んでしまったのだが。
美波から向けられる冷ややかな視線に、その言葉を即撤回。危ないとこだった。こんなことで喧嘩してはいられないのだ。
なんて考えているうちにも雄二の演説は進む。
「だったら、やってやろうじゃねーか!!試召戦争を、さ。」
「「おおおおぉ!!」」
「なら、早速準備開始だ!」
雄二も本当に素直じゃない。素直に霧島翔子に告白するため、と言えばいいものを。
まぁそんなことをしたら、FFFが許さないのだろうけれど。
…ん?そういえば。なにかがおかしいような。
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おかしい。おかしい、とは思っていた。
おかしかったんだ。 なにがって?
襲撃を受けていないということが。こんな甘々が許されるということが。
「吉井、許さない。」
「Never perdon!!!」
「判決をくだ…死刑!」
「せめて最後まで言い切れよ!!」そんなツッコミもこやつらの前では無用らしく、団長須川の脇から大量の黒装束が溢れ出てきて、
一人ずつ。
「よ」
「し」
「い」
「し」
「ね」
「♥︎」
最高に気持ちの悪いコンボが華麗に決まる。最後に♥︎というおまけまでついて。
ムッツリーニがなぜかその中に加わっているのはお決まりなのだが。
はっぱをかけたのは、当の本人であるというのに。
だいたいまだ付き合ってもいないし、なにもやましい事なんかしていないというのが余計に理不尽に明久には思えた。
とにかく、
「じゃあねーー!!!」
一旦退散しよう。
逃げながら頭に引っかかること一つ。
「にしても。…なんか忘れてるような…。」
「「「吉井まてやぁっ!!」」」
後ろからついてくる狂気に思考はストップ。
頭が逃げることだけを考えろ、と命令してきた。
もう放課後だ。どこへだって逃げられる。どこへ行こうか、スーパーに逃げたら雄二に見つかりそうだし、奴らの連携は強化されているから公園とかに隠れようものならすぐに見つかってしまうだろう。
「とにかく、走ってれば大丈夫かな。」なぜかそう考えると、妙にすっきりして走りだす。
飽きるまで逃げ切ってやる、なんて誓って。
_________________________________
日もすっかりと傾いて夕方。窓の外ではカラスがてんやわんやと大合唱。開け放たれた窓からはひんやりと冷たい風と見たことないほどの赤い日がさしこんで、地面のタイルを照らしあげている。それと対照的に、長く長く伸びる机の影。
その中にさらに長い影がひとつ。
1時間はたったろうか。誰もいない教室で待ち始めてから。少しだけ早い教室の時計はもう5時半をさしていた。
それでも来ない。
「忘れてるのかな…。」
頭に思い浮かんだそんなイメージを首をふるふる振って抹消。
来ないということだけはどうしても考えたくなかったから、
「アキのやつ来たら…絶対に叱ってやる!」
どうやって叱ってやろうかということに考えを移す。
キャラを変えて叱ってみる、なんていうのはどうかな、なんていうように。
1人で考えごとをしていると往々にしてよく分からない方向性に考えがいくものだ。
たとえば…と考えはじめた内容はどこまでも止まらない。
アキのバカ!だといつもと同じだから逆に、にっこりと笑顔を作って、「全然待ってないよ!さっき来たところ!」なんてどうだろうか。
…無理だ。十中八九顔が歪むだろう。なら…
女王様的な感じでいってみるのはどうだろうか…
「アキ?とってもき、綺麗かつ麗しい、胸だって大きくなってきてる美波様を待たせるなんて、いい度胸してるわね。反省してるならひざまずいて美波様の靴でも舐め…」
そんなことをしていた時、突然ガラリと扉があいて、
「み…美波?」
最悪だった。それは一番待ってるようで、今は絶対に来て欲しくなかった人。
「もしかして…聞いてた?」
「うん。」
顔が急激に赤くなって、焦り出す。
「と、と、とにかく!!忘れなさい!早く!早急に!尚早に!だいたいアキがこんなに待たせるからこんなことになって…」なんとか言い訳をしようとする美波に明久はつかつかと歩み寄って、美波の頭にぽんと手を置きながら、
「ごめんね。女王様。」
「…//」
かぁー とより一層赤くなっていく顔を手で隠し抑えつつ、つぶやく。
「ばか。」
「うん。」
「あほ!」
「そっか。」
たった頭を撫でられただけで、それだけで全てを許せてしまおうと思えた。思えてしまった。一時間の待ち時間も、わけのわからない台詞を聞かれたことさえも。
「待たせてごめんなさい。」
明久がそう言ったのを聞いてからちょっと考えて、
「おごり!今度クレープおごりなさい。」なんて言ってみる。ほんとは別にクレープなんかどうでもいいのだけれど。
「そ、それだけはご勘弁というか…」そんな台詞がかえってきたから小さく声になるかならないか程度につぶやく。
ほんとにぶい奴、と。
「え…今なんか…」
「なんでもない、なんでもない!仕方ないわね。」そんな返しも想定済みだ。
予想してなかったのはそこから後。
「…にしても美波…」
「ん?」
「さっき自分のこと、綺麗かつ麗しい胸…」
「きゃああああ!!!!それ以上!言わ!ないで!!!」
形容し難いほどの悲鳴が校舎内に響いた。