バカとその後と恋愛模様!   作:八百六十三円の片道切符

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「あははははっ」
「えへへへへ!」
「わっはははー!」



雄二と翔子は2人して目を疑う。目の前で友人たちが踊り狂っているなんていうわけのわからない状況なのだからそれもむりはないのだが。

「これは、あれだ…幻覚だ!こんなあほな…」
「…幻覚…。」
「そうこれは幻覚…じゃねえぇっ!!」


世も末である。




俺とボクと明日への扉

「で、なんだったんだよ…さっきのは。」

少し落ち着いた4人に問いかける。

「…少し怖かった。」そういって、すっと体を寄せてくる長い髪の悪魔。

「ほんとに怖いかどうかなんて知らんが、とにかく!くっつくな。」

いつもの通りそういって突き放す。とはいっても、ほとんど力なんていれず、極力優しくではあるが。

 

「…ちっ。」

そして、まさかの舌打ち。

「どこで覚えたんだよ…そんなこと。忘れろ、それ。とにかく!なんだったんだ?」

舌打ち悪魔から目を切って、4人に向き直る。

 

「なんだったっけ。たしか…えーと。」とは、明久。

「なんでしたっけ。美波ちゃんは覚えてますか?」とは、瑞希。

「あれよ、たしか。収穫の舞。」とは、美波。

 

だめだ。軽い宗教にかかったような状態になっている。すると、1人冷静な秀吉が、

「はぁ。」とひとつため息をついてから、

「すまぬのう。さっきの曲は、次の演劇の公演でやるミュージカルの曲なのじゃ。それで、ワシも全然釣れなかったから、どうせ釣りが出来んのなら練習を…と思って、付き合ってもらったらこんなことに…」

うつむき加減に秀吉がいう。

そんな秀吉を見て、問い詰める形になってしまった雄二は申し訳なく思って、つい。

「な、なんなら俺らもやるぞ?」

大変なことを口走ってしまう。

「…雄二が踊るなら、踊る。」横の雄二にとりつく悪魔はそれに迷うことなく賛同。

 

「明久たちは…」

 

「「「は!や!く〜♪」」」

もう踊りたくて踊りたくて頭がおかしくなっているらしい。

「なぁ秀吉。…さすがにおかしくないか?他に変わったことは無かったか?」

「はっ。そういえば、さっき明久たちが姫路の作ってきた弁当を…」

「それだな…。」

原因は、はっきりした。間違いない。瑞希がなにか混入したのだろう。常人では知りえないような危ないブツを。

 

「で、どうするのじゃ?」

「まぁ踊ってりゃなおるだろ。」もう考えるのも面倒だ。

「…そうかな。」

「じゃの!」

♪〜

秀吉が、持っていた小型録音機を取り出す。ムッツリーニから譲り受けでもしたのであろうか。ボタンをカチッと押すと流れ始めた音楽に身を乗り出して、雄二と翔子も感覚だけで踊りに加わる。

 

最初は、「なんなんだ。」と思っていたのだが、結論。

 

 

やはり音楽はいいものだ。

 

 

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「…な…んなんだ、こいつら…。」

「幻覚とか、じゃないカナ…。うん。」

「…そうか。…これは幻覚、幻覚、幻覚、幻覚、げんか…じゃないっ!」

 

以下省略。

 

 

 

_____________________________

 

 

「さぁ帰るぞ。もう4時だ。日暮れ前には帰るぞ。ま、やっぱり釣りはいーな。楽しかった。」

雄二が声を張る。楽しかった。それは明久にとっても、間違いない。途中の記憶が飛んでいるが、楽しかったという感触だけたしかに残っている。

 

「…雄二。貴様らほとんど踊っていただけじゃないか…」

ムッツリーニがなにか言っているがそんなことは関係ない。楽しかったのは事実だ。

 

「…釣り楽しい。」そう言って、ぽっと頬を染める霧島翔子。さっき見に行った時は、たしか雄二の膝で膝枕してて…思い出したらイライラがとまらないからここまでにしておく。

 

ふっと空を見上げてみる。すっかり日は空の真ん中を通りすぎて、西の空の真ん中あたり。

まだ真冬、2月上旬。5時頃には日は沈む。

よくみると、空の一部はもう、少し夕焼けがかってきている。

今日は平年に比べて、とても寒いらしい。天気予報でよくいう「平年」というものも、もうなにが基準なのかわからないのだが。

 

「明久、荷物もて。」雄二の声に、「へいへい。」と適当な返事をして、荷物を受けとる。

 

持った途端にずしっと重みが体にのしかかる。釣りで(強調)疲れきった体には同じ荷物でも、行きに持っていたときよりも何倍も重く感じる。

下りなので、行きよりは多少は行程そのものは、楽であるとは思うのだが。

 

「で、雄二は結局魚は釣れたの?」

「まぁ少しくらいはな。ほれ。」

そういって、雄二がバケツの中の魚を見せつけてくる。たしかに、何匹か入っているように見える。

「すごいね!雄二!ちょっとかしてよ。」

「あぁ。いいぞ。」

そういうと、雄二はすこしの誇りとともに、バケツをこっちに渡してくる。中では、少し時間が経ってしまって苦しそうに酸素を求めて、上に上がってきては、空気中で息をしている魚たち。雄二に捕まるなんて、なんてマヌケでかわいそうな魚たちなんだろう。

だから、

「おりゃあ!!」そのまま川の中に向けてひっくり返してやる。

 

「やっぱり自然に返さないとね!」そういって、片目を閉じてスーパーアイドル顔負けのウインク。得意気な顔で雄二を見やる。

 

 

対する雄二は、はじめは驚いた顔をしていたが、すぐにすまし顔。これくらいは想定済みである。

「ま、逃がそうと思ってたからな。」

バカの相手も手慣れてこればこんなものなのかもしれない。

 

 

「忘れ物ねぇか?確認してくれー。」

もう帰る、という直前。雄二が声をかけると全員荷物の確認をしていく。明久も周りと同じように確認を開始する。

 

携帯もあるし、なぜか持ってきたお財布もある。うん。問題ない。横にいた美波も確認を終えて、

「アキは忘れ物とか多そうだけどね。」なんて茶化してくる。

 

そんな様子を雄二は少し微笑ましげに確認してから、

「よーし、じゃあ帰るぞー」

と号令をかけて、つかつかと歩きだす。彼の未来の、いや今のお嫁さんである霧島翔子とセットで。

 

 

康太も、同じように荷物の確認をしていた。簡易カメラ、一眼レフ、カメラの替えの部品、輸血パック、輸血に必要な道具、カメラのスタンド、ラミネート用の材料、今日撮影した写真、川辺で拾ってこっそり回収した肌色が多めの雑誌。もちろん見るためではない。資源ゴミとして、駅に捨てるのだ。(大嘘)

問題だらけだが、彼からしたら問題はなかった。

 

そんな時。

 

「………ない!ない!ない。」

突然、これまたいつの間にか隣にいた愛子が服のポッケの色んなところを探りながら、焦り気味にいう。

 

「…おい、工藤?」

様子がおかしいと感じた康太は愛子に聞く。

すると、いつも返ってくるような陽気な声のひとつも返ってこないで、ひたすら焦っている。

 

そんな異変に気づいたのか、前を行っていた雄二も立ち止まる。

 

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明久もその様子に驚いていた。普段は取り乱すような人ではないから余計にである。普段なんて、むしろこちらを誘惑してくるようなくらいで。こちらが取り乱すことが多かった。そして何度も件の2人に暴力をうけ、被害をこうむった。

今ならそのわけも少しは分かるのだが。

 

「なにがないんですか?」慌てる愛子に、瑞希がそう聞く。

すると、

「えーっと、その…アクセなんだけど、星型の…。」いいにくそうに、ではあるが工藤さんが口をひらく。

「……っ!」

はっ、とムッツリーニが一瞬驚いたような顔を見せる。他の誰も気づかないくらい一瞬。

もっともそれにどういう意味があるか明久には全くわからなかったのだが。

にしても、アクセサリーなら大事なものに違いない。

 

「みんなで探さない?もう少しだけなら時間の余裕もあるし。」美波が全員に向けて、そう提案する。

 

「…大丈夫。」

「よし、探すぞ。」

こちらに向き直っていた雄二も探し出して、その場にいた全員が探し出す。その中でも工藤さんの必死さは、すごいものがあった。

 

 

くまなく自分たちがいた辺りを探っていく。石もひっくり返したし、近くの枯れ木の山もひっくり返してみた。それでも出てこない。

 

「あった?」そうやって、夢中になって探していて、気づけばたまたま真横にいた秀吉に聞いてみる。

すると、申し訳なさそうな顔でふるふると首を横に振る。

「そっか…。」

 

 

 

岩の裏、石の間、草原の中。

どれだけ探しても、結局。

 

その探し物は見つからなかった。

 

 

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「みんな!ありがとう。先に帰ってていーよ!探す…からさ。」なにを言い出すのだろう。

もう日は暮れる。そんなことを許すわけにはいかない。

「…おい、工藤。」同じことを思ったのか、ムッツリーニも工藤さんを諌める。

「だって!あれは、大切なものなんだ。」

 

「…あんなものくらい、またくれてやる。」

「やだ!あれじゃないといやなの。あれは、特別で…」

そして、なにやらムッツリーニと2人で話しこんでいる。こちらからは聞こえにくいレベルの小さな声での会話である。

 

 

「夜中にこんなとこにいさせるわけにはいかねぇ…。いーから帰るぞ。」雄二がまどろっこしい、と言わんばかりに、促す。

 

「愛子…。」

「愛子ちゃん。」

心配そうな目で見ていた美波や瑞希に答える形で、というよりも自分に言い聞かせるように、

 

うつむきつつ、

「…っそうだね。」と一言言ってから、

 

「…うん。いーよ!帰ろっ♪そんなに大したものじゃなかったし。探してくれてありがと!」と続ける。

全くいつものように。

 

 

「…。」

そんな様子を康太は、はっきりと見ていた。凝視してしまっていた。一挙手一投足も逃してやらないというような目で。

 

自分の耳元でささやきほどのかすかな声で放った言葉。いつも陽気な女の子の空元気としか思えないその様を。体のどこからか自分の中に湧き上がってくるどうしようもないような複雑な気分で。

 

 

「ま、じゃあ帰るぞ。」

 

 

_________________________________

 

 

「…じゃあ、また明日。」

「うん。明日、Fクラスいくよ。」

「…こなくてもいい。」

夜遅くなってしまったら、家の前まで送るのは最近では定番化してきていた。今日もこうしていつもと同じように送ってきたわけなのだが。

 

今日の先ほどの様子。いつもなら心配しないようなことも心配になって、

「…取りに行こうとか思うなよ。」

「分かってる…。うん。」

「…またくれてやる。」

「いいよ。もったいないし…。」

「…。」

 

愛子は、俯き半分になりながら、重く感じる扉をギギギと音を立てて開ける。そして扉の奥へ消えていった。同時に「ばいばい!」と元気に声を張って。

 

 

くるっと回れ右!して、愛子の家からの帰り道。もう見慣れた道といっても過言ではない。いつも切れかかって、ついたり消えたりしている蛍光灯の電球は、ついに完全に切れてしまったのだろう、光がともっていなかった。

 

愛子が小さくこぼした言葉。それから見せた笑顔。この何時間かの間に見た色んなものが頭の中にフラッシュバックする。その中にかすかに思い出す。ぽちゃんとなにかが落ちた音。

 

そして、それらは全て同じことを康太に教えてくれた。

 

 

「…行くか。」

やるべきことはなにを考えるよりもひとつだ。そうと決まれば、話は早い。足取りは何となく軽くなる。昼間よりもよりいっそうに寒々しく吹きつけてくる風さえもどこか後押しをしてくれているような気がした。

 

 

_________________________________

 

 

冬の寒空。今夜には、0℃近くにもなるという。きっと水の中はもっともっと冷たいだろう。

だけれど、川の目の前まで来ても少しも躊躇うようなことはなかった。

そしてついに足を踏み入れる。

「…冷たいな。」

予想していた通り。いや、それ以上に冷たい川の水。早めに探さねばなるまい。

 

それに暗闇だ。透き通った水とはいえ、奥の方なんか全く見えないし、流されている可能性だってある。

「…くそっ。」

 

 

数十分探したあたりで康太の限界が見え始めてきた。

「…寒すぎる。」なんて独り言すらも口が震えて、満足に呟けない。

 

そんな時、遠くから小さな声が聞こえてきた。最初は限界を迎えて、幻聴でも聞こえてきたものかと思ったが。

 

その言い争ってるような声は、それはたしかにこちらに向かってきて、そしてその声は近づいてくればくるほど聞き慣れた声に聞こえてくる。

 

 

 

そして。

 

「ムッツリーニぃ!」

「やっぱりいたか。水臭いじゃねぇかよ、全く。」

「全くじゃな。」

 

「臭すぎて、ボウフラでも湧いてきそうだよ!」

「明久よ、ちょっと気持ち悪い想像をしてしまったのじゃが…。」

 

見慣れたバカが3人。川辺に勢ぞろい。

「…お前ら。」驚いた。なんでこんなところにこいつらは来てくれたのだろうか。

 

「遠慮はなしだぜ。ムッツリーニ。お前が行くことも何となく分かってたぜ。むしろ探しに来てないようなら幻滅したところだ。」

「…雄二。」本当にバカだ。こいつらは。

 

「しゃあ!探すかっ!」

「「おうっ!」」

同じように川の中に入ってくる。躊躇もなく。

そして冷たい真冬の川の中で、

 

「先に見つけた奴の勝ちというゲームでもするか?勝ったやつには、中村屋のステーキ丼おごりだ。」

「上等じゃあ!」

「それはよい案じゃの。」

「寒さなんか吹き飛ばせぇっ!!」

がぜんやる気になっていく3バカ。いや自分も入れて4バカ。

これだからバカは救えない。

 

「雄二ぃっ!貴様にだけは負けねえ!」

「明久ぁっ!邪魔をするようならここでお前を沈めても…」

水を掛け合い、頭をひっつかみ合い。

 

全くこいつらはなにをしにきたんだろうか。

でも。

 

それでもこいつらはここまで来てくれた。こんな真冬の川にも飛び込んでくれた。

 

「明日は間違いなく風邪っぴきじゃの…。」

「「学校休めるじゃねぇかっ!!」」

なんて言いつつ、

全員で探していた、その時。

 

「…あの光。」川底の岩に引っかかてるのか、ゆらゆらと見えた光のかけらがちらちらっと目に入った。それはほんとにかすかなものだったけれど。

もしかしたら。

「どうした?ムッツリーニ。あったのか!?」

そんな言葉をながしきいて、潜り込んで手に取る。その感触、形。星。間違いない。

 

「…あった!!」

「ほんと!?」明久が泳いでこちらにかけつけてくる。

「…間違いなくこれだ。」

たしかに手にしたアクセサリー。今度は落とさないように確かに両の手で包みこむ。

星の光は消えていなかった。まだ残っていた。凍りそうなほど冷たい川の中でも。

 

「「「「しゃあぁっ!!!」」」」全員して叫ぶ。

 

それから恒例の雄二の総括。にっと意地の悪そうな笑みを浮かべながら、

「俺たちは、」

 

「「「最強だぁ!」」」

 

ほんとにそうかもしれない。そう思わされた。もちろん根拠なんてひとつもないけれど。

少なくとも、康太にとっては。

 

 

 

 

_________________________________

 

月曜日。放課後。工藤愛子はFクラスの前に来ていた。もちろん理由はひとつ。

しかし。

 

「へ?ムッツリーニくん休みなの?」思わぬことだった。愛子は、その事実を学校に行って、初めてしらせられる。

昨日の夜、今日はFクラスに行く、って言ったのに。あ。でも、ムッツリーニくんは「来なくていい。」なんて言ってたっけ。と、心の中でかんがえてしまうと少し暗い気持ちになってしまう。

 

「そうなのよ。アキも木下も坂本もいないのよ。昨日風邪でも引いたのかしら?」

「心配です…。」

 

「え…。そうなんだ、それは心配ただね…。わかったよ!ゴメンね。ありがと。」

それだけ言い残して、新校舎の奥にあるA教室に歩いて戻っていく。授業がおしたことで、康太が早くに帰ってしまうのではないかと、少し急いでいて、荷物を置きっ放しで来てしまったのだ。

 

たどりついて、ガラリと扉を開ける。もう教室には誰の影もなく、ただ夕日が差し込むのみ。

 

「休むなら、休むって言ってくれればいいのに…。」そう呟いて、恨みつらみ書いて康太に送ってやろうと、携帯電話を開く。

すると予想外にメールが一通。

 

「誰…だろ?」

開けると、そこには見慣れた名前で

 

From 土屋康太

To 工藤愛子

 

下駄箱の中。

 

と、ただそれだけの本文。件名ももちろんない。

 

「全くなんなのさ…」そうやって、ぶつくさ言いながらも、下駄箱に向かう。なんだというのだろうか。

下駄箱なら今朝も開けた。もちろんなにも入っていなかったし、異常はなかったはずだ。

 

なんだかんだ思いながらも、たどりついた下駄箱の扉をあけてみる。すると。

 

朝はなかったと思う見慣れない封筒がひとつ。そこには康太の文字で、

 

今日は休む。すまない。

 

と書かれていた。

「こんなところで言うなら、休むってメールくらいしてくれたらいーのに…。」

 

なんて思いながらも、少しの微笑みが上がってきたので、それを堪えつつ、封筒のご丁寧にのり付けまでされたところをピリリっと破って、封筒をひっくり返して、中身を取り出す。

 

そこには。

 

「!!」

昨日なくしたはずのアクセサリーが入っていた。星の形をしたアクセサリー。なくしたはずの。

でも、だけど、今ここにある愛子の宝物。

 

それと風邪。

 

色んなものが繋がった。

 

 

ぶわっと止まらないくらい溢れ出してくる気持ち。気づけば走り出していた。この気持ちを伝えたい。伝えなきゃ。

 

_________________________________

 

 

息を盛大に切らして、たどりつく。目的のところ。土屋康太の家の前。多少息を整えてから、インターホンを押す。

すると、インターホンから聞き慣れた声。

「…どちらさまで。」落ち着き払ったよーなその声は、たしかに多少風邪気味でこもって聞こえた。

 

「ボクだよ!」

「…工藤!なにしにきた…。俺は風邪をひいて…」全く本当に素直じゃない。いつだってこんな反応。だけど。だったら愛子から動いてやればいい。

もう待ってなんかいられないんだ。動き出したら止まらない。

「いいから開けてよ。」そう強く一押ししてみると、

「…わかった。」

そういうと、インターホンの通信が切れる。

 

 

来る。来るんだ。もうすぐこの気持ちに決着をつけられる。考えてみればいつだって待ちわびていた。この男の子のことを。

 

「…工藤?」思いのほか軽く感じるように玄関の扉がすーっと開けられて、そこから康太が出てくる。

 

もう。

 

ひと思いに言ってしまおう。

 

 

「あのね、ムッツリーニくん。ううん。康太くん!!」

 

「…!! なんでなまえっ…」

 

 

 

「好きだよ!」

 

 

やっと言えた。素直な気持ち。

いつからか動きだしたこの初恋。

もう迷わない。

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