バカとその後と恋愛模様!   作:八百六十三円の片道切符

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バカと天才と召喚戦争3

「美波、一旦交代してきなよ。疲れたんじゃない?」

「アキこそ!」

戦況有利。その状況は続いていたのであるが、どうにも押し切れないでいた。

科目は、社会から国語へ。時間割の都合上この入れ替わりはおよそ目に見えていたのだが、なんせ国語というのが厳しい。美波はほぼ全くといってできなければ、明久もあまり得意ではない。

向こう反対にAクラスからは余裕すらでてきた。そんな時。

 

 

「明久くん!美波ちゃん!交代の時間ですよ!」

この声は…クラスで断トツトップの学力を誇る才女…

 

 

 

「!姫路さん…って秀吉!」

振り返ると、そこには瑞希ではなくいかにも木下秀吉。どうやら得意の声真似をしたらしい。本当にどうやって出しているのか、謎である。なんせ鉄人の声まで真似をできるのだ。瑞希の声とは真逆の声質であるというのに。

美波も、「ほんとに瑞希かと思ったわよ。」こう驚けば、

「さすがだね!」明久もそれに相槌うつ。

 

一方、当の本人は、

「ほんとに姫路と同じ点数なら良かったのじゃがな…。」なんて自虐をつぶやいていたのだが。

 

「とにかく交代じゃ、交代!」そういって、秀吉が手を挙げてハイタッチを求めてきたから、しっかり手を合わせて後ろに引く。美波も同じように、手を合わせている。

 

「美波、いくよ?」

「うん。あ。ありがと、木下。さすが大和男子ってやつね。」最後に美波がちゃめっ気たっぷりに秀吉に声かけ。

 

「それ、バカにしておるんじゃなかろうな…。」秀吉の呟きはなにかを悟ったようですらあった。

 

 

___________________________

 

 

 

 

「ここはもうすぐ破れそうだね。」

圧倒的な存在感。戦場は一気に蹴散らされた。均衡とは行かないまでも、守りの陣形を形成しつつ、教師準備室に向かう教師を取っ替え引っ替え、なんとか状況を悪くなく保っていたが今はどうだ。もうそうはいかない。

 

そして、

「久保さん、勘弁してください。」

「まじでお願いします。」

「おまえ!そういうお願いする時は、一礼二拍手二礼だろ!」

「うるせー、アーメンだろ!」

「ばかやろうっ!とりあえず南無阿弥陀仏だ。あー南無阿弥陀仏…!」

「南無妙法蓮華経だろ!昨日、日蓮覚えたし。」

「おまえ…日蓮って小学生でも知ってるぞ。」

「おぅふ…。」

Fクラス戦線。まさに信仰心0の宗教戦争が勃発しようとしていた。

 

「みんな!大丈夫?」

そんなところに表れる馬鹿。茶色の髪をなびかせて、颯爽と眼鏡の青年の前へ。みんなの目が全て、そこに集まる。

 

「吉井くん……!」

「吉井!!!!」

久保としても予想外であり、一方で待ち望んだ相手であった。手加減はいらないのだ。それはクラス代表に念を押されている。

 

いざ尋常に勝負…と久保は意気込んで身を乗り出す。ここからはとりあえず吉井明久と一対一で仕留めねばならない。…のであるが。

 

 

 

明久はといえば、

「うぅ…お腹が痛いよ。ごめん、久保くん、ちょっと待ってくれないかな。」

 

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「お疲れ様だな、2人とも。」

「どーいたしまして。」

帰ってきた明久と美波に雄二はねぎらいの言葉をかける。終わってみれば、本当に疲れた。

 

 

「坂本、戦況はどうなのよ?」

「まぁまぁだな。ま、今まさに序盤の佳境といったところだ。」

雄二は手元のメモにさっと目をやりながら、答える。

よく見てみると、始まった頃よりも紙の量が増えている。相変わらずすごいデータ量である。

 

「今そんな状況なの?」

明久と美波が向かった戦場は、そういった状況でもなかった。他の戦場では、劣勢の状況でも発生していたというのだろうか。

 

「あぁ。まぁ、明久にとってはの話だがな。」

「へ?なんで…」

疑問に思って、つい間抜けな声をあげてしまう。

 

「ごめんな。」

雄二が明久の肩に手をぽんと置いてくる。その肩に置いてくる手の重みに心からの謝罪を感じる。それとともに、なにかとてつもなく嫌な予感がした。

「ほらこれを見ろ。」そう言うと、雄二が教卓の上のモニターの電源をいれる。これもムッツリーニの所持品の一部なのだろうか。映像を写しているカメラは間違いなくムッツリーニのものであろうが。

「…坂本。これ…」

「あぁ、パンツだ。」

「(ごくり。)」

明久が息を飲んだ途端横から、

「「ごふぅっ。」」美波の鉄拳が雄二と明久の2人ともに飛ぶ。

 

「なにかいうことは?」

「「すいません。」」

一連の流れが終わってから、雄二が

「待て。今のは間違えで、こっちが本物だ。ムッツリーニの野郎、今日だけはちゃんとした所に仕掛けろ、って言ったのに…。」

そういうと、雄二はしっかりと戦場となっている廊下の様子が見える画面に切り替える。

たぶんいざカメラを仕掛けるとなったときに、頭にパンツがちらついたのだろう。愛子がたいそうに怒っている絵が思い浮かぶ。

 

「というか、これって…」

「アキじゃない!目の前には久保がいるけど…」そう、画面に写っていたのは、紛れもなく明久。でも明久はここにいる。

 

「なんで!?」分裂!?劣等生物の増殖方法をついにおぼえてしまったというのか。

 

「落ち着け、明久!これは、朝倉だ。秀吉が変装を施してくれてな。対久保用にお前そっくりに作り上げただけだ。明久2号ってわけだな。」

 

「ふんっ!朝倉くんみたいなバカに僕という歴史の偉人が演じられるとでも?」

 

「あいつも明久なんかと一緒にしないでくれ、とのうたれていたぞ。」

 

残念。両者ともただのバカということらしい。

 

「アキは久保対策にはぴったりだものね。」

「あぁ。久保に釣り合うのは明久だけだ。」

 

 

「言葉に裏があるよね!?それ!」

間違いなくある。正体の知れないかつ知りたくもないなにか。

いつものように背筋が凍りつくような感覚に襲われた。

 

「まぁ、というわけだ。およそうまいこと行ってるらしいな。」

明久をのぞいては。

 

 

 

「とりあえず点数回復いくわよ?それでいいのよね、坂本。」

「あぁ。昼休みまでは点数回復に費やしてくれてもいいぞ。」

昼休みまではあと1時間弱はある。ゆっくり全快の状態に仕上げろ、ということだろう。

 

「了解!」

 

 

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「…吉井が?」

おもむろに伝えられたその情報に、翔子も思わず身を乗り出す。吉井明久は学力だけで見れば、どうってことはない相手だ。しかしその実、観察処分の肩書きや操作術の卓越等々、色々とやっかいな相手であるのだ。しかしまた妙である。

 

 

「みたいだねー。教室警備も飽きちゃったし、行ってこよーか?」そばに暇そうに佇んでいた愛子が「はいはーい!」と元気よく挙手あんど起立。

そんな愛子を「…愛子、まって。」なんて声と手で制す。なんせ今、明久が現れたと報告があったところは、クラスのエースかつ学年次席、その点数の高さは、3年生のAクラスを蹴散らすほどである久保がいるのだ。

その久保がいる戦場だ。

たしかに久保は明久によくわからない不可思議な感情を持ってはいるが、それを逆手にとって、なんとか真剣勝負をするように仕向けている。だから真剣勝負をしてくれはするはずだから、問題はないと思うのだけれど。

 

それにしても、不可解だ。久保は、明久や瑞希がいないところを狙って、局地戦必勝と送り込んだわけであるのだから。雄二が気づいたという可能性もあるが、他の場所もAクラス劣勢とはいえ、それは明久や瑞希の力によるものが大きい。そう考えると、そんな簡単に吉井を戦場から次の戦場へなんてたらい回しは出来ないだろう。

 

これは……

 

「…オレンジの香り。それが本当の吉井。」

 

「代表?本当の、ってどういうこと?オレンジ?」

 

 

「…ほんのさっきの情報。吉井は、3階廊下の戦場にいた。そう簡単に移動できるかというと考えずらい。この吉井は、木下が作ったフェイクかも。」

これが前回負け(かけ)た直接の要因。

だから今回は一計を案じた。朝、明久に会ったのは偶然ではない。このための伏線である。

 

「ナ・ル・ホ・ド…だったら!久保くんに伝えないとねー。まさに善は急げだよ。」まさに行くぞ行くぞ、と扉を綺麗にすぱーん、と開け放ったところの愛子の肩をぱしっと手でとめる。

 

「…愛子、ステイ。それは、奥井に行ってもらう。愛子にはもっと大切なことがある。とりあえず、奥井。お願い。」

 

「了解!」奥井が愛子が開けた扉をすり抜けて教室から出て行く。

 

愛子には、もっと大事なことがあるのだ。

もっとも強敵となるであろう相手をなんとかして倒さなくてはならない。しかし、そう簡単に見つかる相手ではない、彼は。だがもしくは愛子なら。

 

「えー…なにさ?」不満そうに扉を閉めながら返してくる愛子に告げる。

「…土屋を見つけて、仕留めて欲しい。どんな手を使っても。…土屋が向こうの作戦の鍵を握ってると思う。」

そういうと、

「康太くんを?」どこかテンパったように愛子が天井の方、あらぬ方向に目をやりながら返してくる。

それにしても、

「…愛子、土屋のこと康太って呼んでた?」たしか男子と同じようにムッツリーニなんて呼んでいたような気がするのだが。

 

「え?あ…やばっ。えっーと、その…ね。今のは…そう!罰ゲーム!罰ゲームなの。かけっこに負けたら、一日限定で下の名前で呼ぶっていう感じのあれで…」

それにしては随分とナチュラルに康太くんと出てきたものだ。

これは、親友として聞かねばなるまい。

「…なにかあった?」

「な、な、なにもなーいっ!」

どうやらなにか進展があったらしい。

しかし愛子は顔を真っ赤にして、ふるふる首を振る。

そんな様がどうにもいとおしくなる。恋が女の子を可愛くするなんていうけれど、どうにも本当らしい。

 

なら、私は…。

 

 

「…愛子、私可愛い?」

ちょっと気になったから唐突にだけれど聞いてみる。すると、

「へ?なんか突然だね。…うん!可愛いよ、とーっても。」

 

うん。私は恋をしてる。

 

 

 

なんてやり取りをしていると、気づかなかったがついさっき帰ってきたらしい優子が、

「代表、愛子ー。手はず通り、一旦引いて、入れ替わってきたわよ。」

 

こちらに向かいつつ話しかけてくる。その揺れる髪は今日もつやつやと輝いている。

 

「…お疲れ様。」

「なんの話してたの?」

なんて聞いてくるから、正直に。

「…私が可愛い、っていう話。」

「…。え?」

 

伝え方を間違えたらしい。

 

ちょっと止まってしまった空気を再び動かすように今度は愛子にちゃんとお願いをする。

 

「…とにかく土屋のこと探してくれる?愛子にしかできないこと。」

 

すると、間髪入れずに「おっけー。絶対見つけるよ!」という返事をしてくれる。

ならお次は、

「…優子は護衛についておいて。…瑞希に全力でかかる必要はない。」

「なんか逃げてるみたいでいやだけどね。」

負けず嫌いな性格の優子には多少具合が悪いかもしれないが、これも真剣勝負のためだ。

本気で来い、そう坂本雄二に言われたのだから。手加減なんか無しだ。

 





『Fクラス 朝倉
数学 DEAD』



「君は吉井くんじゃないね。悪いけどそんなものにはひっかからないよ。」
「な…なんだと。」
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