「のう、明久。」
そう明久に声をかけてきたのは、明久にとって、今一番気まずい人。逆にいうなれば、明久にとってのみこの人はまさに時の人。
声を聞くだけで思い浮かぶ。夜の道。秀吉の家のすぐそこ。
昨日の夜聞いた告白。それを思い出して、気まずく思いつつ、
小さめの声で返す。
「…なにさ。」
そんな明久を見て、少しの無言のあとに、はぁ。とひとつため息をついてからおもむろに
「…。そう固くなるでない。気にするな、といったじゃろ?」
…。
とはいえ、とはいえ、なのである。
だからって、気にしない方が無茶なことなわけで。
人の気持ちを知った上で、それを気にしないなんてこと明久にはできない。
「とにかく!…今夜、少し話さぬかのう?」
「え…えと、うん。」
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“身の回りのこと、大抵のことはホテルマンが行わせていただきます。飲み物や食べ物等は無償で提供させていただきます。なにかあればいつでも電話一本で駆けつけます。お気軽にお電話ください。"
「すげーな、この部屋。」
「ほんと…怖くなっちゃうよ。」
雄二と明久は、自分たちのベッドの間にあった電話の横。そこにあったホテルの信条が書かれた板に、つらつらと金文字で彫られてあった文章を2人して、読み切ってから改めて驚く。
その驚きはホテルがどうこうというより、Aクラスに対する扱いというものに対しての方が大きかったりするのだが。
明久たちが泊まる部屋。これがまたすごいのである。
さすがにホテルはAクラスだとかに関係なく同じホテルなのであるが、部屋が違う。Aクラス扱いの明久たちの泊まる部屋は、いくらスイートをつけてもかなわないくらいの特大スイートルーム。4人一部屋とはいえ、十分な広さ。そして過剰とまでいえるサービス。
ここまでくると、逆に落ち着かないというものであるが。
「にしてもご飯ほんとに美味しかったね。」
「あぁ。ほんと…罪悪感がこう、ふつふつと湧くくらいの食事だったな。」
そうなのだ。食事はカニづくし。それもタラバ。そして他のものも海鮮づくし。焼きガニに茹でガニ、たっぷりのいくら、それに帆立…とまぁそんななかでも、明久が気に入ったのは塩ほっけだというのは秘密であるが。
そして今は、食事の後。部屋に再度上がってきて、まったりしている、といったところである。
「とりあえず、なんだ。大富豪でもするか?もちろん賭けありで。」
雄二が意地悪そうに、にっと口角を釣り上げながら言う。
しかし。
「…疲れたから今日はもう寝よう。」
「なんじゃ珍しいのう。」康太は、なにやら商売道具であるカメラをかちゃかちゃといじりながら、雄二の提案を秒で却下。
「どうしちゃったのさ、ムッツリーニ。」
いつもなら、こういった誘いを断ることなんか滅多にないはずなのであるが。
「…俺には秀吉の寝顔をとって、今回の試召戦争の報酬をまかなうという任務がある。」
「絶対に取らせぬからのう!?」
しかし康太はその言葉を華麗にスルー。そして続けて、
「…ついでに明久の寝顔もとる。」
「なんで!?」
秀吉ならわからないことはないのだが、女装もしてない、アキちゃんじゃなくてただの吉井明久の写真を誰が欲しがるというのか。
「…Dクラスのお得意様から444枚注文が入った。」
はっと頭にイメージがあがってくる。ろうそくの火だけが部屋を照らす薄暗い部屋。そんな中壁に鋲ではっつけた明久の写真に向かって、ダーツの矢を百発百中させていくドリルツインテール。 整った顔立ちを目いっぱい憎しみに崩して、その人は(もはや人かどうか危ういところであるが。)荒れ狂うのだ。そして最後にはろうそくの火でひとつひとつ燃やしてゆく。
あぁ。
あぁ…
「おい、しっかりしろ明久。あれだ…こう考えろ!実害がおよばないだけましなんだ、って。」
「あは、あはは…。」
慰めのひとつにもならない。
「ま、ここらで話を元に戻すが…たしかに今日は疲れたし、もう風呂に入って寝ることにするかの。」
秀吉がこれは長引くと判断したのか、ここで話を元に戻す。無論明久の心はぽっかりと穴をあけたまま、元になど戻らないのだが。
「ま、それもそうか。なら秀吉から入ってこいよ。」
「む。よいのかの?ならばお言葉に甘えて…。」
秀吉がベッドからぽーんとはねて立ちあがって、キャリーバッグから下着を取り出して向かう。
もちろん夢も希望もない男物である。
こんな光景を見ていると明久の荒んだ心も、だんだんと落ち着く。打ち止めというやつだろうか。
しかし当の秀吉はなぜか風呂場に入っていって、すぐにこちらにとんぼ返り。
そして残されていた野郎衆に向かってなんとも楽しそうに、
「風呂がすごいのじゃ!」と告げる。
「「「?」」」
その台詞を3人理解しきれず、ともに頭の上に疑問符を浮かべて聞く。
「とにかく来るのじゃ!」
するとその疑問符を消すまでもなく、秀吉は3人の腕やら手やら袖やらを引っ張って風呂場の前まで。
そこには…
「なんだ、これ。」
「…広い。」
「広いね、その…いたずらに。」
大浴場…かと見まごうほどの浴室内。
例のごとく風呂場の手前に掘りつけられた金文字の説明文には、
“ここはプライベートバスです。ご自由にご入浴ください。(シャンプー等完備)”
と、ある。
「なんだかすごいが、一人で入るならむしろさみしいくらいだな。」
「うむ。じゃから、みんなで入らぬかの?ワシもようやくお主らと入るチャンスがきたぞい。」
「「秀吉と風呂!?」」
まさに寝耳に水。そして藪から棒。そんな提案だった。
「で、でもねぇ…」そう言いつつ、視線を横にいる同志・ムッツリーニに目線をやる。
「…(こくり)。」
たしかにもうとっくに同じ男だと分かっていても、明久と康太には大きな抵抗、いやとくに康太の場合、理性との葛藤と言おうか…とにかくそんなものがある。
康太などは想像しただけで、もう鼻血が出そうというすぐそこまできているくらいだ。
一方で、明久は気まずさというのを忘れきれていなかったし、それに抵抗もある。あまり一緒に入りたい、なんて考えには至っていなかった。
しかし1人だけそんなもの全くお構いなしの男あり。
そしてその男たる坂本雄二は、
「いいじゃねーか、それ。お前らも入ろうぜ。」こう言う。
そう。前提が違うのだ、雄二は初めから木下秀吉は男だと思って、接してきた。同じボトルのお茶を飲むことや、一緒に着替えるくらい、そんなことは全く気にしてこなかった。それが彼にとって仇になることもあったが。(主に霧島翔子絡み。)だから別に同じ風呂に入るくらい、そう。なんともない話なのだ。
「雄二、本気!?」
「考えてもみろ、俺らが同じクラスになるのもこれで最後かもしれないぞ?もう旅行にくるなんて滅多にないだろーし。だから今のうちに一緒に風呂でも入って、でもって裸と裸の付き合いを…」
雄二の言葉を遮って、
ぶしゃああああっ!!とまさに一閃。いやいや鮮血一閃。
どうやら雄二の言った「裸」という言葉に、敏感に反応したらしい。
とりあえずいつものように蘇生を…
「そういえば、輸血パック持ってないね。」
「それなら大丈夫じゃ!今朝クール便の速達で送っておいたからのう。」
そう言いつつかばんを探っていた秀吉の手にはたしかに、見慣れた輸血パック。それにしてもまさか郵便とは、秀吉はどこまでも用意がいい。
これで康太は助かるだろうが、こうなってしまった以上…
「やっぱり一人で入ろうかの…」
「おう。俺も秀吉には悪いが、翔子にばれるとまぁ面倒だしな。」
雄二もここで、秀吉にわびをいれて保身に走る。
もしかしたら康太が倒れたことを知って、愛子が駆けつけてくるかもしれない。もし愛子が来るようなことがあるなら、まず間違いなく付属して翔子もやってくるだろう。「…雄二が心配だった。」とか言って。
そう考えると、まずは保身!雄二の頭は友人の願いと天秤にかけるまでもなく、自分の身を守ることを選んだらしい。
そこで改めて、雄二は周りを見渡してみて気づく。見慣れてしまったと言えるこの非現実的な現実の光景そのものだ、と。
「変わらねーものもある…ってことか。」
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高級なこのベッドは、明久がそこに横たわると、その体の形に合わせて沈み具合を一番寝やすい態勢に調整してくれるらしい。
そんなことを言われてもよくわからないから、もっと端的に言うと
とても寝やすい。その一言に尽きる。
枕も通販でよくやっているようないわゆる低反発枕、というやつだ。
明久の家にある使い古されて中から綿がはみ出したようなものとは格というものが違う。
それにホテルの部屋全体になんとなく漂うアロマのような香り、さらには電気も消し切ってしまって真っ暗な部屋。そんなこともあいまって、ベッドに入ってまだ間も無いというのにもう眠気が襲いかかってくる。
そうして、うとうととしていてどれくらい時間がたったろうか。その辺りで。
…
かすかに声が聞こえてくる。ささやくよりも、小さなその声。それと、小刻みに揺らされる身体。
「明久!」
「…みな…み…?」
「はぁ…。ワシじゃ!島田がここに来るわけなかろう?」
こう秀吉が少し大きな声で否定したあたりで、はたと完全に目覚める。
「…秀吉!」
「ワシも危うく寝るとこじゃった。少し話をせぬか?」
寝ぼけたままの頭で少し理解しきるのが遅れてしまったが、秀吉の言うところを5秒くらいのタイムラグのあとようやっと察す。
そうだった、話があるとか言われてたっけか。
「うん。」
「よい返事じゃ。…じゃあ、とりあえず場所を変えるとするかのう。ここではあやつらに迷惑じゃからのう。」
すっかりぐっすりと眠り込んでいるように写る雄二と康太を慈しむような目で見つつそう言って、秀吉は大きな窓を、起こさないようにと配慮しつつ、そろーっとあけてバルコニーに出ていく。明久もとりあえずはそれに従って、同じように外に…
ガシャン!!
窓の淵に明久の履いていた寝巻きの裾が引っかかって、その時に、明久の携帯がポケットからぽろり。
それが、奇跡的に窓の入り口に置いてあった康太のカメラ用品に直撃。さらに奇跡的(不幸)なことに、最も飛び散るところに当たったのか辺り一体の床にガンガンあたって、飛び散った。
…
ふぅ…。なにもなかった。そうだ、なにもなかったよね?うん、なにもなかった…
「明久…お主、さすがじゃのう。」すっかり呆れ顔の秀吉が顔と同じく呆れたというのがものすごく伝わってくる声で呟く。
「と、とりあえず片付けるよ…。」
明久なりに静かにしてやろう、と思ってやった結果だったのだが完璧なまでに裏目にでた。
「手伝うぞい。」
見て見たところとりあえずは雄二と康太はまだ起きていないようだ。こればっかりは快適睡眠ベッドに感謝せざるを得ない。
片付けをぱぱっと終わらせて、今度こそなにごともなくバルコニーに出る。
いざ出てみると、そこはさすがは北の大地。季節に置いてなれたような、あたかも真冬に戻ったかのように感じる。そんな底冷えする空気を吹き荒ぶ風が肌に突き刺してくる。
今年の冬が帰ってきたような、そんな。
「寒いのう。」
バルコニーに備え付けてある椅子と机。その机の上に、ぴょんと座りながら、秀吉がこぼすように言う。
「そうだね、コートとってくる?」
「いや、少しじゃから別によいぞ。明久こそいらぬのか?」
「うん。取りに行ったら、またなんか起こしちゃうかもしんないしね。…で、話ってなんなのさ。」
そう言いながら、明久はバルコニーの柵の近くまで寄っていって、秀吉の方に向き直りつつ、その柵に背をあずける。
「話っていうのは、その…昨日の話のことじゃ。聞いておきたかったんでのう。その…えと、意外じゃったか?ワシが島田のことを…その…」
言いにくそうに秀吉が喋る。人には遠慮するな、とか言っておきながら好きという「言葉」すら遠慮するのだからどこまで心根が優しいのか証明しているようなものでもある。
矛盾してるともいえるが。
「…ううん、むしろ逆なくらい。ずっとそうかもって、クリスマスくらいから思ってた。というよりは…思い込もうとしてた。」
驚いたような顔をしている秀吉が喋り出す前に続けて、言葉を紡ぐ。
話しておかないといけないこと全て。間違えないようにゆっくりと。
「でも。でも…僕は自分の本当の気持ちに気づいて、それで今度は自分の気持ちしか見えなくなったんだ。最低…だよね、自分の気持ちばっかり。美波のため、秀吉のため…とか言っちゃってさ、人の悩みなんか結局なんにも見れてなかったんだ。」
気づけば、顔が俯く。
自分の身勝手さに嫌気がさして仕方が無い。
「…みんな、そんなもんじゃ。ワシだって同じじゃ。いや、ワシだけじゃない。誰だって。みんながなに考えてるかなんかわからぬ。」
秀吉は空を見上げながら、明久に、そして自分に諭すように言う。
「…だね。自分ですら自分の考えてることもわからないってのに、他人のことなんて分かるわけない…よね。」
ほんとに。ほんとにそうだ、と思う。
「…。…星が良く見えるのう、ここは。」
空を見上げたまま、秀吉がこぼす。
「…うん。」
「いつもは目には見えてなくても、見えてないものだってこうやって本当は存在してるんだ、っていうのを思い知らされる。」
瑞希がクリスマスに言っていた言葉が頭の中に想起される。
普段みえているものが本当とは限らない、だっけか。
本当にそうだ。みんな自分だけのなにかを抱えて、それでも周りの人と接していくんだ。
それを隠してしまうのは寂しいことなんだ、とか瑞希は言っていたっけ。
「ま、そんなもんだろ。」
「雄二!」
「ムッツリーニも、じゃな。」
いつのまにか、さっきまで寝ていたはずの2人がバルコニーに出てきていて、全く同じように空を見上げていた。
「寝ていたのではなかったのかのう?」
「…扉あいてて、寒かった。」
「あ。」
すっかり忘れていた。そういえば。なにごともなく外に出ることに必死になって、閉めるのを忘れていたらしい。
とりあえず謝らなければ。
「えっと…ごめんねっ☆」
「許してもらうやつの態度ではないことだけは確かだな。」
だめだ、しばらくは許してもらえなさそうだ。
「にしてもなんだ、真夜中に。明久に告白でもしていたのか?秀吉。」
「…異端審問会ぃ…!」
FFFに、関わられるのは非常に面倒だ。最近はよっぽど理不尽なことは減ってはきたが、美波のこともあるというのに、秀吉と2人きりで真夜中にお話♡なんて聞いたら間違いなく終身刑程度は避けられないだろう。
とまぁ、ムッツリーニが洒落にならないワードを発したことはとりあえず聞き流しておいて、雄二に返り言をする。
そんな悠長なお話ではないのだ。
「ううん、もっと…こう真面目な話。」
「…そうか。」
雄二はそこでようやく察する。なるほど、どうにもややこしいことになっているらしい。
「…なんだか分からねーけど、前も言ったとおりだ。いくらでも協力してやる。…ただ、これだけは忘れるんじゃねぇ。最後に決めるのはお前ら自身だ。」
それを教えてくれたのは目の前にいるこいつらだ。だから今度は自分が。
雄二の言葉を聞ききって、明久は顔を上げたままこぼす。
「…雄二らしからぬ真面目な台詞だね。」
「…全く。」
「じゃな。」
そう口続けに言われると、少しいやかなり恥ずかしさというものがこみあげてきて、たまらず言い返す。
「なっ…お前の方が、らしからねーんだろ!」
「ふっ。僕は、いつだって知性的な…」
「「「嘘つけ。」」」
「なんでそこだけそんなに協調性あり!?」
厳かなほど静かな闇夜の中に、4人の騒ぐ音だけがわずかに、ほんとにわずかだけ、さざ波を立てた。
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真夜中も過ぎ去って、丑三つ時といった頃。
どこからか聞こえてくる声。
…ア…キ!
…アキ!
「アキー!!」
「な、な、なにごと!?」
この夜2度目の目覚め。それもまた無理矢理起こされて。
またしてもはっきりしない視界と思考をかきたてて、その上で目の前を見て驚く。
「みなっ…!?」
「しーっ!」
美波が明久の口元に手をやって口を塞ぐ。
明久からしたら、とても珍しいことに美波はいつもくくっているその艶に満ちた、赤茶の髪の毛を全部下ろしている。口を塞がれたまま、押し倒されて、その長い髪が明久の顔に垂れかかって、それのこそばゆいことといったら。
そういえばこんな光景、前にも見たことがあるような気がする。勉強合宿の時だっけか。
「なんでさ?」
「今、翔子が雄二に夜這いをかけてる。」
見やると無音かつ迅速、プロの犯罪者のレベルの侵入方法で雄二の布団に潜り込む霧島翔子がそこに。
雄二、ごめんね。またしても止めることができなかったよ。
とりあえず美波に覆いかぶられている状態をなんとか解除してから、
「どうしたのさ、こんな時間に…」と、寝ぼけ眼をこすりながらベッドから抜け出すことなく美波に話しかける。秀吉は来るわけない、とか言っていたが本当に来てしまった。
美波はといえば、明久のベッドの端にちょんと腰掛けているのだが。
「なんだか寝れなくて、退屈していたので行こうという話になりまして…。その途中で翔子ちゃんたちに会いましたっ。」
「姫路さん…!」
声の方向に視線をやると、まだぐっすり寝ている秀吉のベッドのほんと端に座って、こちらに笑顔を向けている瑞希。…全く気づかなかった。
「美波ちゃんに気を取られすぎて気づきませんでしたか?」
全くその通りだ…。美波があんなに衝撃的な現れ方をしてきた以上、仕方ないといえば仕方ないことなのかもしれないが。
「ごめん…。」
「謝ることないんですよ?」笑顔でそう言ってくれる瑞希ではあるが、さすがに美波に気を取られて存在にすら気づかないというのはいかがなものであろうか。
「とにかく少し話でもしない?暇だったから、さ。」
こっちは寝ていたというのに、とんでもない迷惑な話だことであるが、
美波と話をするにはいい機会だ。
「明日ってなにするんでしたっけ?」
「たしか…朝9時にチェックアウトして、バスで移動して観光地に行くんだったっけ。」
「そうね。起きれるかしら…?」
「どうだろ…。まぁ起きなかったら、鉄人になにされるかわかったもんじゃないから起きるかな。」
修学旅行に来てまで、鉄人と一対一というのは勘弁したい。
「ですね…旅行に来て、先生におこられるのはしんどいですね…。」
「そういえば、美波。葉月ちゃんにもお土産買ってあげないとねっ。」
「そうねー、なにがいいかしら?やっぱり夕張メロン…のタバスコがけ。」
「もったいないよ!」
「MOTTAINAIってやつです…。」
さすがの美波である。相変わらずなんにでもタバスコをかけたがる。どこにそんなに美味しい要素があるのか…謎である。美波は料理がうまいだけに残念なとこだ。
「メロンにかけるべきは、やっぱり水酸化…」
「そのまま食べよう!?」
だめだ、まともな奴がいない。
「冗談です。」
「姫路さんが言うと、とても冗談に聞こえないんだ…。」
うちにある鍋がなんど瑞希にとかされてしまったことか。この目で目の当たりにしているだけに、なんとも。
「ぎゃあああああ!!!!待て…なんでお前が!ここにぃ!!」
突如、真横から悲鳴が聞こえてくる。どうやら悲劇の主人公、坂本雄二が翔子の襲撃に気づいたらしい。
「翔子も少しは加減してあげたらいーのに…。」
「あははは…。」
そんな美波の言葉を聞きながら、手加減なんてしないから霧島翔子なんじゃないか、なんてぼんやりと思う。
ちょうどそのとき、
ガチャン
忽然と扉があく。
うるさすぎてついに鉄人が襲来したかと思って身構える明久…だったのだが、
扉の奥から聞こえてきたのは、
「お姉さまぁァァっ!」
「げっ…美春!?」
「お姉さまっ!やっぱりここにいらっしゃったのですね!!」
しっかり明久をまさに射てもうたろか、とばかり睨みつけつつドリル娘は美波の胸に飛び込む。
「お姉さまのぺったんこは、私のものです!お姉さま、相変わらずいいお胸…」
だめだ、もう美波はしばらくは帰って来れない。
「ちょっと…アキ!?助けなさい…って…ふぁ!?//」
「明久くんにもあれしてあげましょうか?」
美波とドリル娘こと、清水美春を見ながら、それはそれは笑顔で瑞希は言う。
「な、な、なにいってるのさ姫路さんー!」
夜中だからテンションがおかしくなってしまいでもしたのだろうか。見ればたしかに、どこか目がとろんとして見える。なんて考えているすきにも、その三拍子そろった体を明久の方に寄せてくる。美波の前でそんな醜態を晒すわけにはいくまい。
なんにしても瑞希のためにも、そして自分のためにも、とにかく…緊急回避!!
「明久くん、どうして逃げるんれすか?そんな悪い子には、これを…」
眠さでろれつも回っていない状態ながら明久にせまりつつ、ポケットから取り出してくるはスタンガン。
「な、なんでそんなものを!?」
「さっき翔子ちゃんに借りたんです♡」
霧島さん、なんてことをするんだ!そう心の中で思いながら、怪獣から逃げる市民のような心持ちで、全力逃走。とはいっても、部屋の中であるが。
眠気でここまで豹変するとは…いやはやとんでもない女の子だことである。
「ちょっと!?美春、離しなさいっ!」
「押し倒したものがちですっ!」美波の悲鳴にも似た叫び。見ると、さっきまで明久が寝ていたベッドの上で美波は完全に組み伏せられている。
「隙ありです!」
「はうっ…!?」
美波に気を取られているうちに、明久はあえなく瑞希によって確保。
「ちょっとビリってするだけです!」そういって、無邪気に笑う少女の片手のスタンガン。もう逃れる術はない。
ちょっと話をしよう、がまさかこんなことになるとは。
「ぎゃあああああああ!!」
ーすっかり喧騒に包まれるホテルの最高級部屋。そんな中で、秀吉と康太だけ安らかな寝息を立てた。
時間かかってしまい、すいません!描写の細やかさ、むずかしいです。どこまでいっても。