バカとその後と恋愛模様!   作:八百六十三円の片道切符

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僕とみんなと修学旅行4

壮絶な夜を超えて、朝は訪れた。そう極々平穏に。

もうだめだ、とくじけかけた明久と雄二が最後に思いついた切り札。ホテルマンへの「助けて!」というヘルプ電話。これが大きかった。ダメもとで電話したところやってきたのは、身長2mはあろうかという大男。

 

その男がホテルの部屋の扉を開けて、それはそれは低い重低音で「どうされましたか?」と言った瞬間に全ては終わった。空気が変わった。

瑞希の目は完全に覚め、いつも恐ろしい清水美春すらもなにを感じたのか、美波の上から飛びのいた。

まぁ霧島翔子だけはなにも変わりがなかったのだが。

鉄人がこなかっのは、この部屋が完全防音らしかったからだろう。高いホテルというのはそこまで考えられているらしい。そこは本当によかった。もしそれで今日一日罰として、鉄人と一緒に回るなどということになったら、この世の終わりすら感じるからだ。

 

極々平穏のはずなのだが。目元を何度もこする。いるはずのない人が目の前にいるから。

 

ベッドの上で布団をしっかりかぶっている明久。そして…その横でなぜかぐっすりと眠り込む島田美波。

 

 

部屋を見渡すと雄二も秀吉も康太もいない。

 

「この状況…やばくね?」

やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい、やばい。

 

早口に呪文を唱えるかのようにそういいながら、ベッドから抜け出してあたふたする。

あたふたしてみたところで、なにも起こらないのだが。

焦りながら部屋の中をなにをするでもなく探し回っている時にふと、部屋の中央に置かれている机の上の一枚の紙に気づく。

よくみると、なにやら見慣れた文字でなにか書かれている。

手にとって、読んでみると…

 

“この部屋が完全防音でよかったな。頑張れよ、明久。おめでとう!"

 

 

…。

 

「こんな…こんなことって…。あのアホおおおぉ!!!」

だがそんな悲痛な叫びも部屋の外には聞こえないのだろうけれど。雄二のやつめ。なんてことをしてくれる。いつもの恩を仇で返されたくらいの気分だ。

 

「な、なに!?うるさいんだけど…」明久の心からの叫びでようやく目を覚ましたお姫様。

状況のひとつもまるで理解していないらしい。

「美波!やっと起きたの?」

「うんっ…そうだけど。…って、なんであんたがここにいるのよ?」

それは完全に明久の台詞なのだが。

 

「僕が聞きたいよ!朝起きたら、その…美波が僕のベッドの中にいて…それで…」

「…え?はぁ?もう一回言ってくれない?」たいそう驚いた、というような顔をしながら尋問に入る美波。

 

「だから朝起きたら、」

「起きたら?」

「美波が僕のベッドの中に…」

 

…。

 

「なっ、なっ、なっ…なんで!?は!?」

「僕が聞きたいよ!いつの間に美波…」焦る、テンパる美波は聞こうとする明久の言の葉を、踏切よろしく遮る。そして、

「ちょぉぉぉぉっと待ってぇぇぇぇ!?」

怒りなのか、照れなのかなんにせよ。端正に整ったその顔を真っ赤に染めて、待って!と叫ぶ。

「なにさ?」

 

 

「もしかして……い、一線こえた?」真っ赤な顔を真剣にこっちに向けて。

 

 

「なわけねぇぇぇぇぇーーーー!」

腹底からのシャウト。

寝起きだからなのか、元からこんなものなのか。とにかく美波の思考力というものが恐ろしい。

 

 

 

 

「…はぁ。」

2人は全く気づかなかった。少しだけ開けられていた部屋の扉の手前で、雄二たちが聞いていたことを。見ていたことを。

 

「まぁこうなるだろうとは思っていたがな。」

「じゃな。」

「あはは…。」

 

雄二の横で苦笑している瑞希。少し気になったから、まずいと思いつつも。

「羨ましいか?」

「いーえ、全く全然そんなことないですし、私は平気です…と言ったら嘘になります…。」

瑞希は最後、消えいるようにその言葉の端を閉じる。

「そうか。」

羨ましくないわけない、か。考えてみれば当たり前のことだよな、と思う。

雄二ですら、見てて羨ましくなるくらいなのだから。

 

「とにかくそろそろ止めてやるぞい。明久が動転しすぎて、なぜか雄二の鞄を手にとって、ぺろっと…」

「なんだと!?」

「嘘じゃ。」

「お前なぁ…。」明久という人間のアホさ加減を考えるとやりかねないから本当に困る。それにプラスして秀吉の迫真味のある演技力。騙されるのも仕方ないというものだ。

 

「…早くしないと、島田も壊れる。」

「ま、これくらいで許してやるか。」

 

 

_________________________________

 

 

恥ずかしい、その一言がどれだけ明久の朝の時点での感情を占めていただろうか。昨日の夜、美波が明久のベッドの上でそのまま寝込んだらしく、明久はそれに配慮してベッドの横の部分に背を預けて座るように寝ていた。(記憶に無いが)

朝起きてそれを見た雄二がいたずら心に思いついて明久を美波の横に運んで、今朝の悪夢に繋がった…ということらしい。

 

思い出しながら、「はぁ」とひとつため息をつく。まだ真冬といった気温の中でその息は周りを白く曇らせた。

 

「はやくバスのれよー。」

雄二の気だるそうな声が前方から聞こえてくる。今日はバスでの観光地巡りがメインになるらしく、今はバスに乗り込もうというところだ。

どんどんとクラスメイトが乗り込んでいって最後、明久が乗ろうとしたとき不意に雄二の静止を食らう。両手で入口を塞がれるという強引味極まりない方法で。

 

「なにさ。」

「昨日はお楽しみだったか?」

 

「雄二ぃぃぃ!!!!」

どうやら反省のひとつもしていないらしい。まぁ雄二らしいといえば雄二らしいのかもしれないが。

 

 

「うるさいぞ、バカ。まぁなんだ、これは…あれだ、お前と島田の距離を近づけてやろうと思ってな。少しは縮まったろ?」

お節介野郎!とか、野次馬野郎!とか言ってやりたい衝動に駆られる。別にそんな接近を求めているわけではないのだ。

自分と美波のことを考えてくれていることはありがたいのだが。いわゆるありがた迷惑というやつだ。物理的な距離という方向性でいくと少しどころじゃなく限りなく縮まった。危うく、危ういところまでいったのだから。だがそんなものを求めているわけではない。

美波との距離を近づけてくれるという言葉だけを聞けば、ありがたいことこの上ないのだが、その実むしろ逆なくらいのもので。

 

 

美波に気持ちを伝える。

とやかく言っても結局はそれだけ、そう言われたらそうなのであるが。

でも伝える=一方的に押し付ける、というのになってはいけないから大変なのである。秀吉の気持ちも、美波の気持ちも、そして瑞希の気持ちも、色んな人の色んな気持ちを考えた上で。あとは出た答えを答案用紙に書くだけ。

 

「とにかく乗れ。」

「あ、うん。」

 

 

 

 

答えをあとは書くだけ。それだけ。今まで乗り越えてきたことを考えると本当に簡単なことである気もするのだが。なんせその答えを書こうとする紙が白くない。何度も消して、書いて、また消して。一度完全に出したと思った答えすらも消して。その上に書くのだ。どうしても躊躇してしまう。もし書けるとするなら、それは偏にタイミング。そこにかかってくる。

一度言うことができなかった、言わせてもらえなかった確かに変わることがないであろうこの気持ちを。

 

 

 

「あ…あ、アメイジング!」

「なにを言ってるんじゃ、島田。」

「ふふっ。お題は危険なことですよ?」

「じゃあ他だな、誰か思いつくか?」

移動するバスの中。各自適当に持ちこんできたお菓子などを食べながら、お題に沿って全員で指をあげて、最終的にあげられた指の本数を数えていって、お題に沿って早答えしていくというあの定番のゲームをしていた。

明久も一応参加をしてはいたのだが、頭の中で考えるのはそのタイミングがいつ来るのか、についてのみ。

だからまともに指もあげないし、答えることもできておらず、もうずっと連続で敗北してしまっている。

 

「…あ、安全日ぃぃぃ!!!!」

「危険じゃねぇし、そんなことを叫ぶなムッツリーニ。アホどもの視線がこっちに集まる。」

 

雄二はそんな明久のことを横目に少し気にかけながら、とんでもないことを発言なさる土屋康太に鋭くかつ冷静な指摘をいれる。全くとんでもないことをいうものだ。きょとんとしている明久はどうもその言葉の意味を理解していないようだが。

 

一方で美波と瑞希、クラス唯一無二の女子勢はそんな言葉のあとに、クラスメイトの視線を浴びたものだからすっかり赤面してしまって、顔を下に向けている。

 

「…じゃあ危険日。」

「なんだ、お前もあっちにいくか?」

首襟の部分を掴んで、康太の顔をくいっと、相変わらずこちらを奇々とした目で見てくるFFF軍団の方に向ける。そうまでされた康太は、その状態のまま無言で首を振る。

 

考えてみれば今の答えは、もはやあ行ですらない。

 

「あ、思いついたのじゃ。雨上がりのぬかるみに携帯を見ながら全く気づくことなく向かっていって足元をとられる女子高生に近づく怪しい影!」

長ったらしい台詞を一口に、それも早口に言い切る秀吉。それにしても、いらないところで無駄にハイスペックな能力を発揮するものである。

もっと「あ」から始まる危険なことなんかいくらでもあるだろ、と思う。『あとでいざこざを巻き起こしそうなあいまいな返事!』、とか『アンパンマンに頼りすぎる人間たち』、とか。

 

…訂正しておく。なかなか思いつくものではない。

 

「たしかに危険ね。」

「はいっ。…長いわりに最後だけで十分ですけど。」

 

「…また秀吉の勝ち。」そう。実を言うとこれで秀吉の7連勝。破竹の勢い、いや他がどうしようもないとも言うが。

 

「おい明久、そろそろちゃんと参加しろよ。それともまたなにか考え事か?」まだなにやら様子が違ってみえる明久の様子の確認がてら、そう声をかける。すると、

「いや…まぁね。次はやるよ!」と、少し低いくらいのテンションで声が返ってきた。

 

「よし…じゃあ、次負けたやつは罰ゲームだ。ホテルに帰ったら、一発芸な。」

「「えぇ!?」」

まさに強攻策。瑞希と秀吉は嫌よ嫌よ、といった感じにしているが、康太と美波をみると…

「ふふっ。望むところよ!」

「…ネタは仕込んである。」

やる気満々、いや康太に至ってはなぜか一発芸をやる気満々。肝心の明久は顔をにぃっと釣り上げる含み笑いで宣言。

「雄二、絶対に一発芸させてやるっ!!」

「残念だがお前がすることになるぞ、アキちゃん。」

「それはどうかな?」

雄二にやらせることに目がいってしまって、アキちゃんと呼ばれることに抵抗を感じなくなってるらしい。

 

 

 

雄二に負けてなどいられない。だいたい負けたら一発芸だなんて、冗談じゃない。日頃から面白い僕には無用だ、とかなんとか明久は思ってみたりする。

 

「やらざるを得んようじゃな…。」

「ですね…。」秀吉と瑞希がやれやれといった感じ、諦めたように呟く。とにもかくにもこれでまぁ全員参加は決定した。

 

「いくぞ…せっさん、『さ』っ!!!!」

 

立てられた指は…

 

合計7本。

ということは…えーっと…と、指でさ行を数えていく。

さ、し、す、せ…

 

「新幹線のチケットが自由席の券なのに、堂々と指定席に乗っちゃう人!」これまた秀吉が、これまた長ったらしいシナリオを一口に言い切る。

「たしかに危険だな。」

「えー!危険じゃないじゃない!どのへんがよ?」

「認識能力的なところが。」

「それは…ったしかにそうね。」

「です。」

 

明久は呆然とする。答えがもはや意味不明なこともそうだが、答えるスピードのはやさに。いや、正確に言えば、指の本数を認識して、どの文字から始まるのかを理解するまでにかかる時間に。明久がまだなにから始まるのか分かり切らないうちにもう答えが出た。

おかしい…必殺・高速指折り数え、でもしているというのだろうか。

とにかく次こそは…

 

 

 

 

 

 

 

 

人生というのはなんとも哀しきかな。明久が一発芸をさせられることになったのは言うまでもない。

_________________________________

 

 

 

 

 

 

「ぼーいずびーあむ…?」

「Boys be ambitious.です!」

「まぁ明久からすれば、『Boys be 』がよめただけ奇跡みたいなもんか。」

「さすがに読めるよ!!?」

 

バスを降りると、どーんと絶景の北の大地。空気も一段と澄んでいるように感じた。これはこれでホテルのアロマとはまた違って趣があるというものだ。

そしてそのど真ん中に佇むひげをたっぷり蓄えたおじん。歴史の教科書でも有名なあの人である。

 

その有名なあの人がどこに向かってかは知らないがとにか遠くに手を伸ばしている銅像の前で、有名なあの言葉を改めて見ている。英語で見ると全くもって読めない。

たしか日本語で…

 

「少年よ、大志を抱け。でしたよね。」

「そう、それ!」

「知らなかったと正直に言え。」

「知ってたんだって!ほんとに!」

「はいはい。」

 

世の中は不条理極まりないと思う。

 

 

「でもこの大志を抱け、ってどういう意味なんだろ。」そう素直に疑問に思って口に出してみる。

からっぽに近いと最近本人ですら薄々思い始めた明久の頭では考えてみてもわさっぱりだ。

 

「さぁ…?なんかこう…でっかいことする夢をもてー!…とかですかね。世界征服するーとか。」

瑞希が腕をいっぱいに広げて、大きく、というイメージを表す。うん、今日も天真爛漫、元気いっぱい。

とはいえ、瑞希がそれだけの女の子でないことももう分かってはいるが。今ここにある笑顔の前には涙があって。同じように、その元気さの裏にも実は色んなことを考えていて。

それの上での笑顔。

人というものはそう単純なものではないらしい。そんな人間が何重にも重なり合ってできるのが人間関係だとしたら、分かりきろうとするなんて馬鹿らしいことなのかもしれない。

 

「そんな感じだろーな…大きいこと、ねぇ。明久、お前はなんかしてみたいこととかねーのか?」

雄二は再び銅像を見上げながら、明久の方に目をやらずに聞いてくる。

 

「うーん…」考えてみる。なにか大きなこと…

「この腐った世界を変えることかな?」

「無理だな。むしろ腐りが早くなりそうだ。」秒でこの切り返し。あたかもはじめから明久が言うことがなにか分かっていたかのような。そうだ、たしかにこの言葉は先週の少年誌の受け売りだ。

瑞希も同じように、

「明久くんにできるのは、専業主婦が限界ですっ!」

「なんかあたり強くない!?」

明久の考える「大きいこと」は木っ端微塵にそれはもう「見えなくなるくらい」に砕かれた。

 

「もっと小さなことから始めろ、ってことです。…私、思うんですけど、この大志を抱けってのはそれこそ抱くだけなんか誰でもできることじゃないですか。この人が本当に言いたいのは、目の前にある小さなことを自分の力でどうにかしていけってことなんじゃないか、って。待つんじゃなくて、自分の力で。そしたらその先に大きなものが勝手に見えてくるっていうか。…昼間から恥ずかしいこと言ってしまいました…。」

瑞希はここまで一口に言い切ってから、急に口をつぐむ。まだ白昼。夜ならまだしも、この時間にそんなことを言ってしまったという急に恥ずかしさがこみ上げて来たらしい。

 

明久は瑞希の言葉の一つ一つを噛む。

目の前にある小さなことを自分の力で。…自分の…力で?待つんじゃなくて、自分の…。

 

「ふっ…そうだな。聞いてるこっちまで恥ずかしかった。だけどまぁ間違っちゃいねぇと思うぜ?なぁ明久。」同意を求めてくる雄二に、

「…うん。」とだけ、返しながら続けて考える。

 

 

そうだ…タイミングがどうとかそういう話じゃない。それは待ってれば来るなんてものじゃないんだ。そんな受け身の姿勢じゃだめだ。

だったら、自分でその『タイミング』を作ればいい。なんでそんな簡単なことも思い至らなかったんだろうか。

 

 

「そういえば他の3人はどこにいったんですかね?」

「あぁ、秀吉と島田は向こうの芝のところにいるな。」少し離れたところにある芝の方を見ると、たしかにそこにぽつんと人影が2つ。他には誰もいないらしい。離れてるとはいっても、そんなに離れたところにいるわけではないからこの場にいても声が、途切れ途切れではあるが聞こえてくる。

「あしたのーーまーー」

「えーーあんたがーー」

「そうーーはなーーー」

何を喋っているか、そんなことは分からないけれど、思うことひとつ。ほんとに仲良くなったなぁ、と。いつの間にか自然に2人で話せるようになってまぁ。それも距離感なしに。

 

 

「…なんだ、お前も人が羨ましいか?」

 

秀吉は自分の気持ちに向き合った。僕も同じように…自分の気持ちにちゃんと向き合えばいいだけのこと。

羨ましいか?そんなことはない、そう言い切れる。

 

「どうだと思う?」

ようやくやることが決まった。だからかどうかはわからないが自然に少し笑みが浮かんでくる。そしてそのままその顔を雄二に向けて、こう返す。

 

「…どうだろな。」雄二は、その凶悪とまで言える目つきをすっと和らげて、質問を質問で返してくる。本当に分からないわけじゃ、ないだろうに。こういう顔をする時は、だいたいなにを意味するか理解している。それを人には言わないが。

 

「…ところで、姫路。あいつらをこっちに呼んできてくれないか?班で集合写真を撮らなきゃならんらしい。」

「あ、はーい。」

瑞希は雄二に言われるままに、2人のところへ。明久なら「なんで僕が。」とか言いそうなものだから、瑞希は本当に出来た人間であることだ。

 

「雄二、ムッツリーニは呼ばなくていいの?」お姉さんの写真を撮っているだろうとされる康太について聞いてみる。集合写真を取らねばならないのなら、もちろん康太も呼ばねばなるまい。「…俺は写らない、なんなら俺が写真を撮る。」とか言いそうなものであるが。

「あぁ、あいつには俺が手を叩いたら飛んでくるように言ってあるからな。」雄二が空気を囲んで弾けさせるように少し強めにぱんっと手を叩く。康太は忍者かなにかなのだろうか。手を叩いた音を聞きつけてやってくるなんて。…いや、手を叩いたらかけてくるって、もはや犬だ…。

 

そんな結論にたどりついた頃には瑞希が秀吉と美波を伴って、こちらに戻ってきていた。雄二が言っていることが本当なら、康太ももう戻ってくるであろう。そんなとき、

「明久よ。」

秀吉がちょいちょい、と指を動かして、明久を手招きする。なんだろうか、と思いながらもその指がままに秀吉の前に寄る。

 

「なにさ?」そう聞くと、秀吉は耳を貸せ、のジェスチャー。どうやら秘密の話というやつらしい。

これまた言われたとおり耳を貸す。すると、秀吉はおもむろに静かに、それでもはっきりと明久の耳元にこう告げる。

 

 

 

 

「……わしは明後日の夜、島田を呼び出したぞい。…お主は、お主はどうする?」

 

 

 

…!!正直に驚いた。

なるほど。2人で話していたのはそういうことだったらしい。

 

僕はどうするか。そんなの決まっている。無かった決心だってもうついた。

僕も…

いや。

僕は、

 

「秀吉、僕ももう決めたよ。ちゃんと美波に告白する。」

 

内緒の話だから、と秀吉の耳元に告げる。小さな声ではあるがはっきりと、しっかりと。美波に聞かれでもしたら大問題だ。当の美波は瑞希との話に花を咲かせているが、万が一ということもある。

「うむ。」

 

いわゆる恋のライバルっていう奴だというのに、秀吉は明久の言葉に「それでいい」と言わんばかりに力強く頷いた。

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