ダンボール戦機白き翼   作:izuki

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2026/08/12 全体的に大幅な加筆・修正を行い再投稿しました。



第七話 ハンター

 翌日の放課後。

 俺たちはいつものように学校を終え、キタジマに集まっていた。

 カズが「せっかくグラディエーターを借りたけど、新しいLBXを買ってみようかなぁ」と言い出したため、皆で店頭に並んでいるLBXを物色しているのだ。

 

「うーん」

「やっぱり、使い慣れたにナイトフレーム系がいいんじゃない?」

「うーん」

「いっそ変えてブロウラーフレームはどうだ。装甲が分厚いからある程度の攻撃とかにも耐えられるし」

「うーん」

「ストライダーフレーム、どう?軽くて、速いよ」

 

 カズは腕を組んで唸り声を上げ続けているが、どうにもピンとくる機体がないらしい。

 

「うーん……どれも悪くないんだけど。なんかこう、ビビッとくるものがねぇんだよな」

「ストライダーフレーム……」

「ミカ、ちょっと落ち着こうか」

 

 徐々に距離を詰めてストライダーフレームを推し進めるミカの肩を叩き、少し暴走気味な彼女を静止する。

 とりあえずキタジマに今あるモノだけじゃ埒が明かないということで、他のショップも巡ってみようと店を出た、その時だった。

 

「失礼。──君が山野バンくんだね?」

 

 不意に背後から、低く落ち着いた声が掛けられた。

 振り返ると、そこには端正な顔立ちに仕立てのいいスーツをスマートに着こなした一人の男の大人が立っていた。

 

「そうですけど……あの、どちら様ですか?」

「突然声をかけてすまない。俺は宇崎タクヤ。優秀なLBXプレイヤーである君たちに是非とも見てもらいたいものがあるんだ。少し、時間をくれないだろうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 宇崎と名乗った男の後に続いて歩きながら、俺はさりげなく周囲への警戒を強めていた。

 最初は新手の誘拐か何かかとも疑ったが、それとは違うようだ。

 警戒しておくに越したことはない。

 隣を歩くアミも同じ思考のようで、油断なく宇崎の背中を睨みつけている。

 案内されたのは、商店街の少し外れにある喫茶店『ブルーキャッツ』だった。

 内装はシックな木目調で統一されており、非常に落ち着いたいい雰囲気を醸し出している。

 どうやら最近できたようだ。内装がきれいでいい雰囲気の店だと思う。

 促されるまま、カウンター席に宇崎さん、バン、アミ、カズが並んで腰掛け、俺とミカは少し離れたテーブル席へと着いた。

 

「──奢りだ」

 

 カウンターの奥から静かにコーヒーカップを差し出してきたのは、長い髪を後ろで結わえた寡黙そうな男の人だった。

 

「あ、ありがとうございます……えっと」

「俺は檜山蓮。この店のマスターだ」

 

 檜山さんと呼ばれたマスターが淹れてくれたコーヒーに、俺はそっと口を付ける。

 ほんのりと心地よい苦味が舌の上に広がり、喉をすんなりと通っていく。

 豆の芳醇な香りが鼻腔をくすぐる素晴らしい一杯だ。

 ……ただ、猫舌の俺には少しばかり熱い。

 

「さっそくだが……君達のLBXを見せてもらえるかな?」

「え、はい」

 

 檜山さんの突然の申し出に一瞬戸惑ったが、すぐにカバンからそれぞれのLBXを取り出してカウンターとテーブルの上へと置いた。

 檜山さんの鋭い視線が、まずはカウンターの上のアキレスを捉える。

 

「白いLBX……触ってもいいかな?」

「うん」

 

 バンの許可を得て、檜山さんはアキレスを大きな手でそっと持ち上げ、マジマジと見つめる。

 

「アキレスって言うんだ」

「素晴らしいLBXだ」

「え、見ただけで分かるの?」

「あぁ、パーツは最新式。それにメンテナンスも十分にしてあるようだな」

「見ただけでそこまで分かるんですか?」

 

 アミが驚きを露わにする。

 檜山さんはフッと口元を緩め、アキレスを慎重にカウンターへ戻した。

 

「うん、こいつはすごいんだ。やっと手に入れた俺だけのアキレス。メンテは、普段は自分でしてるんだけど細かい調整はシキにもしてもらってるんだ」

 

 バンが俺の名前を出す。

 すると、檜山さんの視線がカウンターを離れて俺の目の前のテーブルに置かれたトールギスへと移った。

 

「ほう……そういえば君のLBXは見たことがないな。ハンドメイドか?」

「はい、トールギスです」

 

 檜山さんはテーブルに歩み寄ると、俺に許可を取ってからトールギスを手に取り、その装甲の裏側やバーニアのノズルをじっくりと観察し始めた。

 その目が、一瞬だけ驚愕に大きく見開かれる。

 

「かなりよく作り込まれてるな。フレームの剛性、武装の噛み合わせ、どれをとっても学生の自作とは思えないほど精巧だ。それに発想も面白い、機体の機動性を背中のバーニアだけで補う……無茶苦茶な設計だが悪くない。ザインのセンスも素晴らしい」

「……ありがとうございます」

 

 ここまで核心を突かれ、褒められたのは初めてだった。俺は少し照れくささを覚えながら、小さく会釈する。

 トールギスを俺の元へと戻した檜山さんは、俺たちに訊ねてきた。

 

「好きか、LBX?」

「うん、大好きだよ!」

 

 檜山さんの質問にバンは迷いなく答える。

 この世界にLBXのプレイヤーは星の数ほどいるが、ここまで純粋に真っ直ぐに愛している奴は中々居ないだろう。

 そんな話をしていると、店の奥へと引っ込んでいた宇崎さんが一つの大きな長方形の箱を抱えて戻ってきた。

 

「君たちを呼んだのはこれを見せるためだ」

「LBX……」

 

 パッケージの絵柄をに書かれているのは、野生動物を思わせるワイルドフレームのLBX。

 そしてその両腕に携えられているのは、機体の全高をどの大型のスナイパーライフルだ。

 

「名前は『ハンター』最新のフレーム構造と安定した姿勢制御で、遠距離攻撃が得意なLBXだ」

 

 宇崎さんが箱を開けると、中には機能美あふれるパーツが整然と並んだランナーが収められていた。

 

「ハンター……」

 

 そのミリタリー感の強い無骨ながらも洗練されたフォルムに、カズの目が吸い寄せられるように釘付けになった。

 その視線に気づいたのか、宇崎さんがとある提案を持ちかけた。

 

「組み立ててみるか?」

「えっ、いいんですか!」

「ああ、構わないとも」

 

 カズは弾かれたように工具を手に取り、夢中になってハンターを組み立て始めた。

 組み立て始めて十分ほどが経過した頃、カウンターの上にパッケージ通りの『ハンター』が完成した。

 今までの従来のワイルドフレームを払拭する意匠。

 付属武器であるスナイパーライフルの圧倒的な存在感が、機体の魅力を何倍にも跳ね上げている。

 

「格好いいわね!」

「ああ、めちゃくちゃイカしてる!」

 

 アミとバンが感嘆の声を漏らす。カズはもう、ハンターから目が離せないといった様子だ。

 宇崎さんはそんな様子を優しく見守っていたが、やがてその表情から笑みを消した。

 

「君たちにここに来て貰ったのは単にこのLBXを見せるためではない」

「「「「「?」」」」」

「これから話すことは他言無用、絶対に秘密で頼む」

 

 その重々しい空気に俺たちは静かに深く頷いた。

 

「新しい総理大臣の就任記念パレードが明日、行われることは知っているか?」

「確か……財前宗助って言ったけ?」

「知らないのバン。常識でしょ」

 

 アミが呆れたように言う。

 財前総理、明日、パレード。

 一応、頭の片隅に記憶しておこう。

 

「シキも、知らなかったでしょ」

 

 不意に、隣に座るミカから至近距離でジト目を向けられた。……なぜバレたし。

 

「……ニュースくらい、ちゃんと見ないとだめだよ」

「ははは……」

 

 苦笑いしながら頭を掻く。

 そんな俺たちのやり取りを遮るように、宇崎さんが衝撃的な言葉を突きつけた。

 

「その財前総理の命が──明日のパレードで狙われる」

「「えええーー!」」

 

 バンとアミが椅子から飛び上がりそうな勢いで大声を上げる。

 ミカとカズも驚愕に目を見開いているが、辛うじて声には出していない。

 かく言う俺も、内心では激しい衝撃を受けていた。

 一国の首相の暗殺予告など、普通に生きていればお目にかかるはずのないことだ。

 

「明日のパレード中、ある組織が財前総理を暗殺する、という情報を掴んだ」

「俺達はそれを阻止したい。その為には君たちの力を貸してほしいんだ」

 

 なるほどな、と俺は冷ややかに合図を理解した。

 最初からこれが目的だったわけだ。随分とやり口が巧妙でスマートだ。

 まず共通の関心事であるLBXの技術的な話題で引き込み。興味を持たせてから、拒絶しにくい本題を切り出す。

 大人の交渉術だ。

 

「……あの、俺たちみたいな子供に協力を仰ぐんじゃなくて、普通に警察に言えば済む話なんじゃないですか?」

 

 俺がテーブル席から静かに疑問を投げかけると、宇崎さんは苦渋に満ちた表情で首を横に振った。

 

「残念ながら、警察に話して安心できる状況じゃないんだ」

 

 なるほど、政府関係者や警察の内部にその暗殺計画を主導している犯人グループの手先か、主犯がいるようだ。

 下手に動けば情報が漏洩し、パレードそのものが中止になるか、あるいはより最悪の形で決行される。

 

「君たちでなければ、ダメなんだ」

「どうして、俺たちなんですか?」

 

 バンが真っ直ぐな目で宇崎さんを見つめる。

 

「総理暗殺の実行手段には、LBXが使われる。LBXを相手にするには同じLBXで対抗するしかない。その為には君達のようなLBXプレーヤーが必要なんだ」

 

 予想外の言葉に唖然とする。

 

「山野バン、川村アミ、青島カズヤ、三影ミカ、紅シキ。もちろん非常に危険が伴う。断られても仕方ないが是非とも君達の力を貸して欲しい」

 

 店内に、重苦しい沈黙が降りた。

 何せ状況が状況だ。

 一歩間違えれば国家規模の陰謀の渦中に身を投じ、命の危険に晒される。

 おいそれと首を縦に振れるはずがない。

 だが、その静寂を切り裂いたのはバンの声だった。

 

「……俺、やる!」

「バン!?」

「非常に危険な任務だぞ」

 

 バンは拳を強く握りしめ、カウンター越しに訴えかけた。

 

「俺、LBXを使って悪いことをする奴らが許せないんだ……だからやります」

 

 今は亡きバンの父親・山野淳一郎博士は、この世界にLBXを生み出した偉大な発明者だ。

 父親が世界中の子供たちの笑顔のために作った結晶が、暗殺という血生臭い犯罪の道具に使われることがバンには許せないのだろう。

 

「……私もやります。バンだけにやらせるわけにも行かないでしょ」

「だったら、俺も」

「シキ、アミ……」

「…………私も、やる」

 

 隣のミカが、静かに、だが一切のブレのない声でそう宣言した。

 俺は思わず眉をひそめる。できれば、ミカにはこの危険極まりない任務には参加してほしくなかった。

 とても危険だ。何が起こるか分からない。

 ミカに視線を送ると、彼女は「大丈夫」とでも言うように、いつもの無表情の中に確かな決意を宿した瞳でこちらを見つめ返してきた。

 

「君はどうする?」

 

 宇崎さんが、最後に残ったカズに視線を向ける。カズは気まずそうに頭を掻いた。

 

「俺はちょっと……LBXも今はメンテ中で使えないし……」

「もし、明日協力してくれるなら。このハンターを君にあげよう」

「え、本当?…………ならやってもいいかな」

 

 カズだけモノにつられた感じすごいな。

 

「そうか、ありがとう。明日の9時にここに集合してくれ。それからさっきも言った通りこれは誰にも話さないで欲しい。話せば危険に巻き込まれる可能性がある」

 

 宇崎さんのその警告を最後に、俺たちは店を後にした。

 その言葉を最後に、沈みゆく夕日の中俺たちはそれぞれ帰路に就いた。

ミカがガンダムを使うならどれがいい?(これからの物語に影響があるかもしれない)

  • ガンダムデスサイサズ
  • ガンダムヘビーアームズ
  • ガンダムサンドロック
  • シェンロンガンダム
  • アマゾネスのままでいい
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