ダンボール戦機白き翼   作:izuki

14 / 29

2026/08/12 全体的に大幅な加筆・修正を行い再投稿しました。



第十話 エンジェルスター(前)

「イノベーター…………」

 

 あの後、ミカを家まで送り届けて作業部屋で机に向かいながら、昼間に聞いたその組織の名を呟いた。

 ブルーキャッツで宇崎さんから語られたのは、バンの父親である山野淳一郎博士が生きているという衝撃の事実。

 そして山野博士を拉致している謎の組織の存在だった。

 その組織の名は『イノベーター』。

 闇の世界で急速に勢力を拡大し、今や国家の根幹にまで牙を剥くテロ組織。

 今回の総理大臣暗殺計画も、すべては彼らの仕業だったという。

 ヤツらの真の目的は、無限のエネルギーを生み出す永久機関『エターナルサイクラー』の開発。

 科学の世界において、第1種永久機関の可能性は熱力学第一法則によって完全に否定されている。

 しかし、この法則に反しない未知のエネルギー機関がもし完成すれば無尽蔵の熱源から無限のエネルギーが得られるそうだ。

 だが、それは表裏一体の悪魔の技術でもある。使い道を誤れば世界を容易に破滅へ導く大量破壊兵器へと変貌するのだという。

 イノベーターはその力を独占し、世界をその手中に収めようと画策していた。

 それに気づいた山野博士は研究データのすべてを収めた『プラチナカプセル』を試作型AX-00のコアスケルトン内部に秘匿し、助手に託した。

 そして巡り巡って、それがバンの手に渡った。

 

「プラチナカプセル、か……」

 

 檜山さんの話によれば、プラチナカプセルは『デスロックシステム』に保護されており、外部から無理やり物理的に取り出そうとすれば、防衛機構が作動して毒針が飛び出してきて即死らしい。

 安全に取り出すための唯一の方法はバトル中にブレイクオーバー、または破壊するしかないらしい。

 

「AX-00。だからあんなに高性能なのか」

 

 なんせ、LBXの生みの親である山野博士が直々に設計した世界に一機のLBXなのだから。

 

「……おそらく、アキレスはAX-00のために山野博士が設計したものだろう」

 

 独り言ちてから、俺はフゥと息を吐いて手元に意識を戻した。

 思考を巡らせるのもいいが、今はこっちに集中しないと手が鈍る。

 作業台の上で鈍い光を放っているのは、現在開発中の新型ガンダムであるガンダムデスサイズのアーマーフレームだ。

 今は、隠密ステルス機能『ハイパージャマー』の最終調整中。

 あとは実際に動かして、関節部やフレームの軋みがないかをテストする必要があるが……

 

「……さすがに、テストは今度にするか」

 

 時計に目をやると、時刻はすでに深夜11時を回っていた。

 明日の学校に響くし、何より今日は暗殺の件で少し疲れている。

 俺は工具を片付け、早めにベッドへと潜り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。登校した俺とミカは、始業前の教室の後方でバン、アミ、カズとと頭を突き合わせていた。

 アミが自身のCCMを操作し、小さな音量で音声を再生する。

 それは、昨日の作戦後にアミのクノイチがブルーキャッツ内に残してきたクノイチが録音してきた────平たく言えば「盗聴」によって記録された、宇崎さんと檜山さんの密談音声だった。

 というか、アミのクノイチ、デフォルトで高性能な盗聴機能なんて付いてるのか……確かサイバーランス社製だったよな。

 ていうか盗聴機能ついてるのかよ……確かサイバーランス社だったっよな。

 なんで犯罪に悪用できそうな機能を仕込んでるんだあの企業は……てか、よく販売を許したな。

 

《いいのか?あんなことを言って》

 

 スピーカーから、大人たちの声が流れる。

 

《あそこへの突入は、命がけになるからな。首相の暗殺阻止の為に彼らは予想以上の働きを見せてくれた。彼らの力が必要になる時が、きっと来る》

《やはり、博士はあの場所に?》

《解析した情報からして、間違いない。博士は天使の星にいる》

《やはりカミヤが絡んでいたか………》

 

 ここで音声は途切れている。

 

「天使の星?」

「……なんかの暗号か?」

「あと、カミヤについても何かわからないな」

「でも、手掛かりは手に入った。そこにきっと父さんがいる……俺、どうしても父さんを助けたいんだ」

 

 腕を組んで唸るカズとアミ。

 しかし、バンの瞳には確かな希望の炎が灯っていた。

 

「やっぱり、そう言うと思ったぜ」

「私たちも協力するわ、バン」

 

 アミとカズの言葉に、俺とミカも静かに頷く。

 ミカとは昨夜の帰路、万が一こういう展開になった場合の身の振り方についてある程度話し合っていたため、いまさら反対するつもりはない。

 ……本心を言えば、やはり彼女をこれ以上危険な目に遭わせたくはないのだが、ミカの決意の固さは俺が一番知っている。

 なにかあればその時は───────

 放課後、みんなで「天使の星」と「カミヤ」について調べることにして、朝のホームルームのチャイムが鳴るのと同時にそれぞれの席へと戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして放課後。俺たちは教室のパソコンで検索を開始していた。

 

「天使の星…っと……1万件!?うわ、いっぱいある!え〜っとなになに?占いの館・天使の星、喫茶・天使の星、店長さんのブログ、300万人が泣いた話題の恋愛小説『天使の星』、待望の新作登場……」

「…………どれも違うと思うぞ」

「ああ、そう思う」

「……天使の星…………エンジェルスターで調べてみて」

「やってみるわ。…エンジェルスター…っと……それでも多いわね」

「おっなになに、エンジェルスターを調べてんの?」

 

 俺たちが画面を睨みつけながら頭を悩ませていると、リュウがひょっこりと背後から画面を覗き込んできた。

 

「リュウ、知ってるの?『エンジェルスター』のこと?」

「何言ってんだよ、アミちゃん。エンジェルスターと言えば『神谷重工』の『エンジェルスター』に決まってんだろ?」

 

 なるほど、カミヤって言うのは、日本の最先端技術を牛耳る超巨大複合企業『神谷重工』のことだったのか!

  点と点が、一気に繋がった。

 

「リュウ、もっと詳しく教えてくれないか?」

「お願い、リュウ」

「いいぜ、神谷重工っていうのは国内最王手の重工メーカーでエンジェル・スターはそこのアームロボット専門のブランドなんだ」

 

 バンに迫られ、さらに大好きなアミに手を合わせて頼まれたリュウは、一瞬で鼻の下を伸ばして得意げに胸を張った。

 相変わらず分かりやすい奴だ。

 

「エンジェル・スターマックスっていう名前は聞いたことあるだろ?」

「ない」

「ないの?仕方ねぇな。エンジェル・スターマックスは最新のアームロボットでエンジンは最新の神谷DDを搭載。ダイレクトHDS、駆動部の出力は従来型の2.8倍はあるんだぜ」

 

 情報を教えてもらっている身なので口には出さないが……めっちゃどうでもいい。

 チラリと横を見ると、アミはもう完全に興味を失って目が泳いでいるし、ミカにいたっては「どうにかして止めて」と言わんばかりの目をこちらに送ってきている。

 

「港湾用アームロードを流用していてブルドーザー積み上げの定格基準はなんと55トン。どうだ凄いだろう、アミちゃん聞いてる?」

「聞いてる、聞いてるー」

 

 アミの完全に心のこもっていないおざなりな相槌。

 おいアミ、もうちょっと興味あるフリをして隠せ。

 バンに関してはしっかりと頷いて聞いていた。

 

「それを扱ってる。工場兼格納庫がブランドマークの天使の羽をイメージして作られているんだ。そらがまたすっげぇ格好いいんだ、きっと地下に何百台もマックスが並んでるんだろうな。見たいなぁ」 

「見たことないの、そんなに詳しいのに?」

「それが去年、うちの学校が工場見学の申し込みをしたんだけど。あっさり断られちゃったんだってさ。一時期は兵器密造の疑いもあっけど…」

 

 リュウはなおも楽しそうに語り続けようとしていたが、俺たちの目的のための情報はすでに十分に出揃っていた。

 

「神谷重工とエンジェルスター、か」

「兵器製造のある大企業、セキュリティの厳しい工場……」

「明らかに怪しいわね」

「……行ってみよう。なにか手がかりが。を掴めるかも」

「だったら、少し急ぐか。町の外にあるみたいだし」

 

 熱弁の途中で本当に申し訳ないが、俺たちはエンジェルスターへ急ぐためリュウを置いて教室を飛び出すことにした。

 

「わるいリュウ、用事ができたからまたな」

「え、あぁ」

 

 ポカンと開いた口が塞がらない様子のリュウを教室に残し、俺たち4人は足早に駅へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここが、エンジェルスター……」

 

 学校から電車と徒歩を乗り継ぎ目的地にたどり着いた頃には、周囲はすっかり夜の闇に包まれていた。

 見上げるほど巨大な敷地を囲む高い塀に無数の監視カメラ、正面ゲートには民間警備員が目を光らせている。

 正面突破など文字通り自殺行為だ。

 

「で、どうすんだよ。正門から行くって訳にはいかないだろ?」

「こういう時は、裏口の搬入口から侵入するのが常識だろ」

「そんな常識、ない」

 

 ミカが容赦のない正論のナイフを突き立てる。相変わらず手厳しい。

 建物の外周の死角を巡ると、茂みの奥にひっそりと佇む金属製の避難用通路の扉を見つけた。

 

「どうだバン、開きそうか?」

「開かない」

「くっ……ダメか!」

 

 何か別のルートはないかと俺が周囲の壁を見上げると、少し高い位置に格子状の金属カバーがついた長方形の構造物を見つけた。

 

「みんな、あそこを見てくれ。ダクトがある。……ちょうど、LBXが入る大きさだ。」

「なるほど、その手があったか。」

 

 俺たちはそれぞれCCMを取り出し、LBXをダクトの内部へと侵入させる。

 ちなみに今回は万が一を想定し、普段の基本装備に加えて特製の『ミサイルポッド』を一応オプションとして携行させている。

 

「中がどうなってるのかわからないんだから、注意して進みましょう」

「……油断大敵」

 

 神経を尖らせながらダクト内を前進する。

 数十メートルほど進み、角を曲がった、その瞬間だった。

 前方の暗闇から紅いモノアイが妖しく浮かび上がった。

 行く手を完全に塞ぐようにして立ちはだかったのは、合計5機の鋭利なフォルムを持つLBXの集団。

 俺は、その機体に見覚えがあった。

ミカがガンダムを使うならどれがいい?(これからの物語に影響があるかもしれない)

  • ガンダムデスサイサズ
  • ガンダムヘビーアームズ
  • ガンダムサンドロック
  • シェンロンガンダム
  • アマゾネスのままでいい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。