ダンボール戦機白き翼   作:izuki

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第十七話 箱の中の魔術師

 あの後、約束を守らなかったことに機嫌が悪くなったバンを宥めながら、逃げていた郷田三人衆と合流し再び郷田の元へと向かう。

 

「ほら、ここだよ」

 

 案内され俺達が到着したのはゲームセンター。

 ここのゲームセンターはクレーンゲームやコインゲームなどの他にLBXのバトルスペースもある。

 俺もよくミカと来てたりする。

 

「わざわざここに呼び出すってことはバトルか?」

「だとしても、今のアキレスなら誰にも負けない!」

「とりあえず中に入りましょ」

 

 俺達はゲームセンターの中へと足を踏み入れた。

 だが、自動ドアをくぐった所で、先に入店したはずの郷田三人衆が立ち尽くしている事に気がつき、足を止める。

 そして、郷田三人衆が見つめる先に視線を向けた。

 そこで目にしたのはモニター画面に表示されたLBXバトルの様子。

 腕が切り落とされ、機体の各所にも痛々しい亀裂を作り、大地に倒れ込むハカイオーが映し出されていたのだ。

 

「リーダー!」

「嘘でごわす!」

「信じらんねぇ、一体何が!?」

 

 ハカイオーの無惨な姿。

 郷田が敗北したと言う事実を目の当たりにし驚愕する3人。

 俺たちもこれには驚きを隠せない。

 

「見ての通りだ」

 

 そんな俺たちを見て郷田と対戦していたであろう男が淡々と告げる。

 

「地獄の破壊神が地獄を見た。……だよな?」

「………ッ」

「そんな体たらくだからLBXを始めたばかりのド素人に負けちまうんだ」

 

 そいつの言葉に郷田は顔を歪ませる。

 

「仙道ダイキ!」

「カズ、知ってるの?」

「ミソラ一中を仕切ってるヤツさ。郷田とはずっと張り合ってるんだ。そして別名、"箱の中の魔術師"!!変幻自在なバトルを仕掛けることで有名なヤツさ!」

「あいつが…………」

 

 俺も噂は、知ってはいたがこうして会うのは初めてだ。

 箱の中の魔術師、カズの説明通り変幻自在なバトルを仕掛けてくることで有名だがその中でも最も有名なのは…………

 

「俺の負けだ…お前の言う通りにするぜ…ッ」

「そうだなぁ〜…このゲーセンは俺たちの縄張りだ。今後一切、ミソラ二中の出入りは禁止だ」

「ふざけんじゃないよ!!」

「口を出すな!!!」

「けどリーダー!!」

「俺は負けたんだ、どんな屈辱も…甘んじて受け入れる…ッ!」

 

 これには、リコをはじめとした郷田三人衆が黙ってはいなかったが、リーダーである郷田の言葉を聞き、仕方なく受け入れる。

 

「はぁ、嫌だ嫌だ。そう言う暑苦しいの、嫌いなんだよねぇ」

「あれぇ〜?な〜んか格好つけてるけど、ハカイオーを倒したのあんたが最初じゃないから」

 

 突然アミが仙道に向かってそんなことを言った。

 俺はその一言でなぜかすべて察してしまった。

 

「アミお前まさか……」

「その通りだ仙道!!ハカイオーを倒したのは奴だぜ!!」

「えっ!?いや、えぇ〜っと……」

 

 郷田はアミの言葉に乗りバンを指さす。

 バンは突然自分指をさされ一気に慌て始める。

 

「アミっていい性格してるよな」ヒソヒソ

「うん、バンかわいそう」ヒソヒソ

「聞こえてるわよ」

 

 聞こえてた。

 

「だってあの人、嫌な感じなんだもん」

「いや、少しは申し訳ないとかないの?」

 

 仙道は郷田を倒したというバンの方を見る。

 

「ふ〜ん…アイツがねぇ…」

「そうだ!最初じゃねぇ…てめぇは二番手ってこった!!」

「黙れよ敗者」

 

 仙道は郷田に対してそんな言葉を吐き捨てるとゆっくりとバンの元へと歩み寄る。

 その口元には笑みを浮かべている。

 

「お前、名前は?」

「山野…バン」

「お前が山野バンか、俺のジョーカーと戦え」

 

 仙道からのバトルの申し出に、バンはモニター画面に映るジョーカーに視線を向けた。

 ジョーカーは、タイニーオービット社から販売されているストライダーフレームのLBX。

 トランプのジョーカーを彷彿とさせる道化師の様な外見が特徴のLBX。

 ストライダーフレーム特有の高い機動力を持ち、かつトリッキーな動きで相手を翻弄する戦い方を得意とするが、操作に独特のクセがあるためプレイヤーを選ぶ機体となっている。

 そのためジョーカーを使っているプレイヤーはほとんどいない。

 

「いいよ、やってやる!」

「……見える」

「え?」

「見えるぞ。お前が俺にひれ伏す姿がな」

 

 そう言って仙道が取り出したのはタロットカードの死神の正位置だ。

 楽観的な言葉や行動から、非常に大きな問題を引き起こしてしまうことを意味する。

 

「……そのカード、何?」

 

 だが当のバン本人は、タロットカードを知らなかったため頭に?を浮かべていた。

 

「バン! お前タロットカードを知らないのかよ!」

「タロットカード?」

「バンって、LBX以外、無頓着」

「さすがの俺でも少しは知ってるぞ」

 

 俺はこういった類のものはあんまり信用していないけど。

 仙道は呆れ、タロットカードをしまいDキューブの前に立つ。

 

「始めようか…」

「あぁ!」

「気をつけろよ、ヤツは箱の中の魔術師と呼ばれている。信じられないバトルをする…」

「心配ないさ…行け、アキレス!!」

 

 アキレスはフィールドへとに舞い降り、ジョーカーと向き合う。

 仙道は市販では売られていないレアLBXであるアキレスに興味を示した。

 

「初めて見るLBXだな…」

「アキレスさ!」

「アキレスねぇ…レギュレーションはアンリミテッド、バトル開始だ」

 

《 バトル スタート 》

 

「アキレスの力を見せてやる!」

 

 アキレスはジョーカー目掛けて突っ込むと、アキレスランスによる突き攻撃をくり出す。

 しかし、ジョーカーはその攻撃を軽々と躱す。

 

「へぇ、結構早く動くじゃない」

「確かにパワーアップしてやがる。俺と戦った時と段違いだ」

 

 ジョーカーは装備している大鎌、ジョーカーズソウルをアキレスに向けて振るう。

 アキレスはそれを躱す。

 

「思ったよりもやるねぇ」

 アキレスが距離をとった。

 

「行け!ライトニングランス!!」

「は」

「え、いきなり!?」

 

《アタックファンクション》

《ライトニングランス》

 

 ライトニングランスがジョーカーに向けて放たれる。

 だが、ジョーカーはそれを軽々と躱してみせると、ライトニングランスを放った反動で一時的に動きを止めたアキレスの懐に飛び込み、ジョーカーズソウルを振り下ろした。

 

「あぁ!」

「ライトニングランスねぇ……、どんなに強力な攻撃も、命中しなければ何の意味もないよねぇ!」

「バン!必殺ファンクションに頼り過ぎだ!」

 

 アキレスはジョーカーに向けて攻撃を繰り出すがジョーカーにはかすりもしない。

 

「動きが読めない…これじゃあライトニングランスは撃てない…ッ」

 

 必殺ファンクションを過信してしまったバンはジョーカーに翻弄され、ついにはアキレスの右脚関節部分にジョーカーズソウルが突き刺さった。

 

「大したことないねぇ…。郷田、こんなヤツに負けたのか?」

「お前こそ!逃げてばっかりいないでちゃんと戦え!!」

「逃げる?馬鹿言うなよ。これは戦略、戦いのスタイルだ。お前のスタイルはこんなものか。必殺ファンクション頼みの単調な力押し、まさに愚かしさの極み」

 

 仙道はさっきとは別のタロットカードを取り出して見せる。

 愚者の正位置、自由や無邪気さを表すカード。

 発想やひらめきによって物事が良い方向へ進むことを示すカード。

 

「箱の中の魔術師の本気を、少しだけ見せてやるよ。そしてお前のLBXは切り刻まれ、お前は俺にひれ伏す」

「バン! 油断するな、始まるぞ!!」

(くるのか……)

 

 郷田の声と共に、ジョーカーは先ほどよりも素早い動きを見せると、アキレスの周囲を回り始めどんどんスピードを上げていく。

 一瞬ジョーカーの姿が歪むと、一機だった筈のジョーカーが二機、そして三機と分身の如く分かれたのだ。

 

「あぁ!」

「分身!?」

「マジかよ!?」

「っ!?」

 

 ジョーカーの分身に、バンを始め郷田三人衆やカズ達も驚愕する。

 

「そんな馬鹿な、分身するなんて……」

 だが全員が驚愕するなか、シキは一人だけ冷静だった。

 

(……分身?あれが?あれは分身なんかじゃないぞ)

 

 箱の中の魔術師、その中でも有名なのはこの分身。

 バン達は分からなかったようだが俺には"この魔術の正体がわかった”。

 これは並のプレイヤーじゃ出来ない。

 まずしようとする奴はいてもできるやつがほとんどいないだろう。

 出来るやつは相当な腕前だ。

 ……俺もやってみようかな。

 3機に増えたジョーカーは次々とアキレスに襲い掛かる。

 攻撃を躱しても、次から次へと死角から攻撃をくり出すジョーカー達。

 それに対処しきれずアキレスは攻撃を受けて傷つき、やがて右脚関節のダメージが祟り膝をついてしまう。

 

「こんな筈じゃ!」

「さぁ……これで終わりだ!!」

 

 ジョーカーは分身と共に高く跳躍し、アキレスに向かってジョーカーズソウルを振り下ろす。

 追い詰められたアキレスはジョーカーの攻撃から逃れようと回避しようとするがダメージが大きくその場から動けない。

 

「アキレス!」

 

 もはやここで終わりかと思えたその時。

 小さな影がバトルフィールドに飛び込むと、その影は、アキレスのもとへと駆け4枚の刃を持つハンマーでジョーカー3機の攻撃を防いだ。

 深紫の禍々しい雰囲気を醸し出す皇帝のようなLBX、見間違えるはずがないこいつは地下闘技場の……。

 

「誰だ!?」

 

 仙道は店内を見渡す。

 すると、店の奥から、海道ジンが姿を現した。

 

「海道ジン…!」

 

 なぜバンを助けるのか、助けても何のメリットもないはず。

 

「仙道くん…だったな?君も…アングラビシダスに出るつもりなら、決着はそこでつけたらどうだ?」

「お前、アングラビシダス出るのか?」

「あぁ、出場する!」

「……お前は?」

「…………」

 

 仙道の問いに海道ジンは無言で答える。

 どうやら仙道もアングラビジダスに出場するらしい。

 先ほどまでの怒りはどこへやらバトルを邪魔された怒りを忘れ、不敵な笑みを浮かべた。

 

「いいねぇ、大勢のギャラリーの前で二人とも無残に潰される、それじゃ、アングラビシダスでまた会おう」

 

 仙道はジョーカーを回収するとそのままゲームセンターから去っていった。

 海道ジンも自分のLBXを回収した後すぐにゲームセンターから去った。

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