ダンボール戦機白き翼   作:izuki

22 / 23

2026/08/12 全体的に大幅な加筆・修正を行い再投稿しました。



第十八話 ゼロ

 アングラビシダス開催、ちょうど一日前。

 ゲームセンターで郷田から出場選手の情報を手に入れてより一層気合を入れたバンたちが、アングラビシダス優勝のための訓練に追われているその時。

 ミソラタウンの隣町。

 そこではもう一つのアルテミス出場枠を賭けた大会の火蓋が切って落とされようとしていた。

 

「おい、見ろよアレ……」

「もしかして……」

「嘘、もしかして……」

「いや、だけど……まさかこんな地方の大会に?」

「でも、あの格好、絶対にそうだろ……!」

 

 熱気に膨れ上がる大規模な特設会場の群衆の中で不自然なほどぽっかりと空間を開け、周囲の視線を一身に集めているプレイヤーがいた。

 藍色の重厚なロングコートを纏いフードを深く被ったその人物は、首元に黒のチョーカー、そして顔には目元を覆う漆黒のバイザーを装着している。

 その佇まいは、この舞台において異様なまでの威圧感を放っていた。

 

「な、なぁ……あんた」

 

 好奇心と確信の入り混じった顔で、一人の目の少年が恐る恐る声をかけた。

 

「……なんだ?」

「もしかして……去年の世界大会アルテミス優勝者、ゼロか……?」

 

 その問いかけが会場の音を完全に消し去った。

 フードの奥から、少し低く、機械的に響く冷静な声が返る。

 

「……ああ、私がゼロだ」

「やっぱり本物だぁぁぁーーーっ!!」

「すげえ! 本物がなんでこんな所にいるんだよ!?」

「サイン! サインください!!」

 

 会場は爆発的な怒号のような歓声に包まれた。

 それもそのはず、今目の前にいるのは世界中の全LBXプレイヤーの憧れの頂点。第二回アルテミスを制しながらも、一切の素性を明かさずに消えた伝説の正体不明プレイヤーなのだから。

 

「な、なんであんたほどのトップランナーが、こんな大会にエントリーしてるんだよ!?」

「理由など、この場に集まった全員と同じさ。……アルテミスへの出場枠を勝ち取るため、それだけだよ」

「な、なるほど…」

「君も、出場するのかな?」

「あ、ああ」

「では、当たったときはよろしく頼むよ」

 

 そう言ってゼロは喧噪から逃れるようにその場から立ち去った。

 ゼロは人目の付かないところまで移動し、周りに人がいないことを確認して着けていた仮面を外す。

 

「……さすがに目立ちすぎだな。まぁ、ゼロの名義でエントリーした時点でこうなることは分かっていたけどさ」

 

 ゼロ──いや、シキは仮面を手に小さく息を吐く。

 ゼロとして参加するのだからこうなるだろうとは思ってはいたが、まさかここまでとは。

 自身が思っていたよりもゼロというのは周囲からの注目が高いようだ。

 

「まあ、こんな格好をしてるしな」

 

 今身に纏っている自身の服装を改めて客観的に分析する。

 ロングコートにチョーカー、漆黒の仮面。

 これだけ見れば不審者でしかないが、これは仕方のないことだ。

 前回の大会では知り合いが誰一人出ていなかったため、今着ているこのロングコートにフードをかぶることで押し通したが、今回のアルテミスにはバンたちも何らかの形で這い上がってくる可能性が極めて高い。

 俺は自身がゼロであるということを隠している以上、万が一にもバンたちに身バレするわけにはいかない。

 そのため今回新たに二つの自作デバイスで誤魔化している。

 顔を覆う黒い仮面。これは外からは完全な遮蔽板に見えるが、内部には小型の超広角内蔵カメラが仕込まれており内側の網膜ディスプレイへ外の景色を完璧な解像度で投影している。

 そして首元のチョーカーは、声帯の振動を感知して声を1オクターブほど低くする変声機だ。

 この二つを使い正体をさらに深く隠しつつ動きに支障がないようにしている。

 …………まあ、正体を明かしていればこんな苦労はしなくていいのだが。

 

「今更、言い出すのはなぁ……」

 

 会場のスピーカーからアナウンスが流れる。

 それを聞いて仮面を付けなおし改めてバトルフィールドへと向かう。

 

「まずは、ここで勝たないとな」

 

 トーナメント表が巨大モニターに表示される。

 今回の参加者は32人。

 

 そろそろ対戦相手の発表時間だ。

 俺…………いや、私は会場の広場に移動する。

 そしてトーナメント表が発表される。

 今回参加するのは32人の全30試合。

 そして、私の初戦は第一回戦第一試合。試合開始は10分後。

 今のうちに機体の再チェックをしておくとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ただいまより、第一回戦、第一試合を開始いたします!選手は──』

 

 大会MCの絶叫に煽られながら、ゼロは一切の足音を立てずに指定されたDキューブの前へと着いた。

 対戦相手の青年はゼロを前にして緊張を隠せない様子だったが、自分を鼓舞するように大声を張り上げた。

 

「ゼロ!この戦い、俺が勝たせてもらう!」

「ほう、言ってくれるじゃないか」

 

『Ready…─────』

 

「行け!ズール!!」

「──『ガンダムデスサイズ』!」

 

『─────…GO!!』

 

 《 バトルスタート 》

 

 相手のLBXは少し荒々しい鎧のデザインをアーマーフレームのLBX、『ズール』。

 右手には『ブロードソード』、左手には堅牢な小型盾『トライアンギュラー』を構えた、攻防一体のスタンダードな武装。

 ズールは開始と同時に凄まじい踏み込みで突進し、上段から剣を振り下ろしてきた。

 対するゼロの機体、黒を基調とした機体色に曲線が連なるような肩アーマー。

 左腕前腕に装備された十字の小型のシールドを装備した機体。

 

 《XXXG-01D》──『ガンダムデスサイズ』。

 

 最近完成した最新のガンダムタイプのLBX。

 デスサイズはその場から動かず、振り下ろされた剣を最小限の動きで回避。刃が空を切る風切り音だけが虚しく響く。

 

「くそっ!あたらねぇ!」

「その程度で、このガンダムデスサイズが倒せると思っていたのか?」

 

 振るわれる剣を避け続けること数度、攻撃が大ぶりになりズールが僅かに体勢を崩した刹那、デスサイズがリアスカートにマウントされていた主兵装『ビームサイズ』を瞬時に展開。

 緑色の光鎌刃が一閃した。

 

「なぁっ! 盾ごと、左腕が……っ!?」

 

 防御を試みたズールの盾が、装備しているその左腕ごと切断されて宙を舞った。

 斬り落とされた断面が小さく火花を散らす。

 これ以上地数いているのは危険だと感じた青年はデスサイズから間合いを離して距離を取り様子を覗う。

 しかし、そんなものこのデスサイズには意味はない。

 

「見るがいい、このガンダムデスサイズの真の力を」

 

 ぜろがCCMに特定のコマンドを静かに叩く。

 デスサイズのツインアイが輝き輪郭が一瞬歪んだかと思った瞬間、()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

 

「な、なに!」

 

 突然のことに動揺し、手当たり次第に周囲に剣を振るうズール。

 しかし、全て空を切るだけ。

 

「終わりだ」

 

 唐突にズールの背後に現れたしたデスサイズが、ビームサイズを振り下ろして右腕を切断。

 さらに、左腕に装備された『バスターシールド』を向ける。

 先端のクローが展開され、ビーム刃が展開。至近距離で射出された。

 バスターシールドはズールの胴体を容易く貫通、ポカリと穴の開いたズールは爆発を引き起こした。

 

『ズール。ブレイクオーバー。勝者、ゼロ』

 

「対戦、感謝する」

 

 ゼロは機械的なお辞儀を一つ残すと、唖然とする会場を後にした。

 

「……まずは1勝、この調子なら問題ないだろう」

 

 その後もゼロの快進撃は止まらなかった。

 2回戦、準々決勝と、並み居る強豪たちを次々と屠り、駒を進めた。

 そして、準決勝。

 今大会においては3機までLBXを登録でき準決勝と決勝のみ変更することが可能。

 そのため次の準決勝は機体を変更する。

 

『ただいまから、準決勝を開始いたします。選手は……』

 

 アナウンスを聞き、バトルステージに立つ。

 展開されているバトルフィールドは砂漠。

 そして、対面には凛とした佇まいの同い年くらいの女子。

 

「ゼロ、ここであなたと戦えること光栄に思うわ。だけど勝つのはこの私よ!」

「良い目だ。できるものなら、やってみるといい」

 

『Ready…─────』

 

「クイーン!」

「──『ガンダムサンドロック』!」

 

 彼女が繰り出したLBXは、ストライダーフレームの上半身とパンツァーフレームの下半身を持つ『クイーン』。

 パンツァーフレームにはホバー機構が内蔵されており、ウイングのバード形態程ではないが空中飛行が可能なLBX。

 対するゼロが繰り出した機体は、角ばった分厚い装甲に右腕にコブラの顔をモチーフにしたシールド、両手にはエチオピアの刀剣ショーテルをモデルとした二振りの大剣を持つ機体。

 

 《XXXG-01D》──『ガンダムサンドロック』。

 

 砂漠等の看板差の激しい本機は砂漠等の寒暖差の激しい環境や、不整地での運用を想定して設計された機体。

 そのためこのフィールドにはうってつけの機体。

 

『─────…GO!!』

 

 《 バトル スタート 》

 

 開始の合図と共に、クイーンはホバー機構を活かして後方へ大きく跳躍。

 間合いを完全に離すと、両手で構えた『キラーガトリング』から凄まじい弾幕をこちらへ掃射してきた。

 砂漠の遮蔽物の少ない地形で、遠距離からの引き撃ち。サンドロックの鈍重な重装甲では的にされかねない状況だ。

 これまでのゼロの機体を観察した結果の戦術だろう。

 バックパックスラスターを最大出力にして後ろへと不規則に動きながら回避し、空中に浮かぶクイーンにバルカンを放つ。

 相手もバカではない。引きながら撃つことでバルカンを回避する。

 

「……さて、どうするか」

 

 砂煙を上げながらジグザグ軌道で弾道を回避しながら考える。

 相手はこちらを間合いに入れないように遠距離からこちらを狙ってくる。

 あちらから近づいてくることはないだろう。であればこちらから接近するしかない。

 

「まずは……狙いをこちらから外すとしよう」

「このままハチの巣にしてあげる!」

 

 より一層濃くなる弾幕を回避しながら、サンドロックは両肩のホーミングミサイルをクイーンにロックオンして放つ。

 弾幕を掻い潜り飛来してきたミサイルにクイーンは狙いを変えて、打ち落とす。

 しかしそれが決定的な隙となった。

 各種スラスターを全開にして飛び上がったサンドロックが、文字通り眼の前に肉薄していた。

 

「な、いつの間に!?」

「捉えた」

 

 サンドロックの両手に握られた『ヒートショーテル』が凄まじい熱を放つ。

 クロスするように振り下ろされた灼熱の刃はクイーンを両断し、爆発へと変えた。

 

『クイーン。ブレイクオーバー。ゼロの勝利』

 

「いい戦術だった。対戦、感謝する」

「……完敗ね、こちらこそ対戦ありがとう」

 

 準決勝を終え、これで残りは決勝のみ。

 また、10分間のインターバルを挟み決勝戦が開始される。

 

「……最後はお前だ」

 

 この間にゼロは決勝戦のためにまた機体を変更し、最終調整をする。

 そして、決勝戦の開始合図を告げるアナウンスに促され、決勝戦ステージにゼロが立つ。

 相対するは、同じ歳くらいの少年。

 その手には、彼のLBXのウォーリアー。

 右手に『迅雷棍』、左手に小型の円形の盾『ライトバックラー』を装備したスタンダードな装備。

 だが、それ故に隙のないカスタマイズ。

 

「この決勝戦であなたと戦えること……本当に、本当に嬉しいです! だけど勝つのは僕と、このウォーリアーです!」

「良い覚悟だ。こちらも全力で行かせてもらおう」

 

『Ready…─────』

 

「行くぞ!ウォーリアー!」

「──『シェンロンガンダム』!」

 

 バトルフィールドに降り立つ5機目のガンダム。

 

 《XXXG-01S》──『シェンロンガンダム』。

 

 白を基調としたトリコロールカラーに、古代中国の戦士を髣髴とさせる意匠が取り入れられた機体。

 機動性、運動性など単体のLBXとしては高水準でバランスの良い基本性能を持ち敵陣に切り込む近接戦闘を得意とする。

 武装もそれに合わせて近接に特化したものとなっている。

 

『─────…GO!!』

 

《 バトル スタート 》

 

 試合開始の合図と同時に両機はフィールド中央で激しく激突した。

 シェンロンが繰り出す薙刀状の長槍『ビームグレイブ』の猛攻を、ウォーリアーは盾を滑り込ませて弾き返していく。

 どうやらあの盾には、対ビームコーティングが施してあるようだ。

 

(なかなかやるな。ここまで勝ち上がってきたことはあるということか)

 

 激しい白兵戦の末、埒が明かないと思ったのかウォーリアーが一度後方へ大きくジャンプしてリセットを図った。

 

「それは悪手だぞ!」

 

 そこへ、シェンロンの右腕に装備された龍の頭部を模したクロー『ドラゴンハング』が

 関節アームを爆発的に伸長させて猛烈な速度でウォーリアーへと襲いかかった。

 

「くっ――!」

 

 ウォーリアーは咄嗟にライトバックラーを掲げてクローを防ぐ。

 だが、シキの狙いは最初からそこだった。

 ドラゴンハングの強靭な爪が盾に突き刺さった瞬間、アームを巻き戻しウォーリアーをこちらに引き寄せる。

 しかし、その意図を感じ取ったのかすぐさま盾をパージすることで、何とか距離を取る。

 シェンロンは奪い取った盾をそのままフィールドの彼方へと投げ捨てた。

 結果として距離を取ることに成功したが、ウォーリアーは防御手段を失った。

 

「盾程度で!」

 

 ウォーリアーは捨て身の覚悟で迅雷棍を構え、直線的な突きで突っ込んでくる。

 

「直線的な攻撃──甘いな!」

 

 シェンロンは左腕の『シェンロンシールド』でその槍の軌道を綺麗にいなして跳ね飛ばし、完全にガラ空きとなったウォーリアーの胴体へ、ビームグレイブによる一閃で袈裟斬りにする。

 切り裂かれたウォーリアーは爆発した。

 

『ウォーリアーブレイクオーバー。ゼロの勝利』

 

『決まったーー!!今大会、優勝者は前年度アルテミス優勝者ゼロだぁぁぁーーーっ!!』

 

 会場が、割れんばかりの地鳴りのような大歓声で揺れる。

 

「良いバトルだった。対戦、感謝する」

「こちらこそ、ありがとうございました!本当に、強かったです……っ!」

 

 少年の健闘を称え、ゼロは握手を交わす。

 

『見事優勝いたしましたゼロ選手には、優勝賞金とLBX世界大会《アルテミス》の出場権が授与されます!』

 

 仮面の奥で、シキはそっと安堵の表情を浮かべた。これで、アルテミスへの切符は手に入った。

 さて、今年はどんな猛者たちが参加するかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 同日、キタジマ模型店。

 明日いよいよ開催されるアングラビシダスに向けて、カズ、アミと一緒に最後の特訓をおこなっていた。

 のだが……

 

「……………………はぁ」

 

 特訓をしている俺たちを横に作業机でアマゾネスを弄り、今日何度目か分からないため息をついていた。

 今朝からミカはずっとこの調子だ。

 何故か、機嫌が少し悪い……

 

「な、なぁミカ。なんかあったのか?」

「別に……」

「別にって、困り事なら何か力になれるかも知れないだろ?」

 

 そう聞くとミカはボソリと口を開いた。

 

「今日、シキいないから……」

「え?」

「たしか叔父さんのところに言ってるんだっけか?」

「うん……明日の夜まで帰ってこないって…」

「それで、少し落ち込んでたのね」

「じゃあアングラビジダスもシキ来れないのか」

「うん、申し訳ないって言ってた」

 

 そっか、少し残念だな。

 シキは俺の特訓にも付き合ってくれたし、大会も見に来てほしかったな……

 その時だった、CCMのネットニュースが流れてきたのた。

 CCMへと送られてきたニュースにはLBXと書いてあり、すぐにニュースサイトへと飛ぶ。

 

「バン、何を見てるの?」

「隣町のLBX大会のニュースが出たみたい」

「マジかよ、どんなニュースだ?」

 

 そう言いながらカズとアミ、ミカが俺のCCMを覗き込む。映し出された記事の見出しにはこう書かれていた。

 

「『LBX大会○○○○、優勝者は第二回アルテミス優勝者ゼロ』……」

「え、ゼロ!」

「マジかよ!あの大会に出てたのか!」

「……本当だ、写真乗ってる」

 

 そこにはゼロの姿と見たことのないガンダムが3機写っていた。

 

「てことは、バンがアングラビジダスで優勝すればアルテミスでゼロとバトルできるかもしれないな」

「ゼロと……」

 

 アルテミスで……

 

「そのためにはまずアングラビシダスで優勝しないとね」

「よし!こうしちゃいられない!カズバトルしよう!」

「おう!いいぜ!」




今回の話で出たデスサイズ サンドロック シェンロンは、持ってる人は、それぞれHGACのガンプラを思い浮かべてください。

ガンダムデスサイズ

【挿絵表示】
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。