続いて行われたBブロック準決勝。
カズ対海道ジン。
正直に言うとカズがここまで勝ち上がってくるなんて思わなかった。
カズの特訓は基本俺がしていたが、確かに特訓を重ねることにハンターの狙いは良くなっていたし接近戦も対応できるようになっていた。
(だが相手は海道ジンお世辞にも今のカズでは勝てるとは言えない)
しばらくして試合が始まった。
ハンターはすぐに自分が有利な位置に陣取るとすぐにエンペラーに狙いをつけ攻撃を始める。
しかしエンペラーは微かに身を動かすことで回避する。
さらに銃弾を撃ち込むも、どれもエンペラーに当たることはなかった。
そしてエンペラーは銃弾を避けながらハンターにどんどん近づいていく。
ハンターは《スティンガーミサイル》をエンペラーに放つ。
ミサイルはエンペラーに向かっていき着弾、爆発によって周囲は黒煙に包まれる。
そしてゆっくりと黒煙は晴れるとそこにはエンペラーの姿はなかった。
ハンターは周囲を見渡したその時、突然ハンターのボディにエンペラーが手にしているハンマーが直撃。
ハンターはブレイクオーバー。
これにより決勝戦はバン対海道ジンとなった。
(バン対海道ジンか……)
実力は圧倒的に海道ジンの方が上だ、だがバンはこれまでの戦いで物凄く成長してきている。
「面白くなりそうだな……」
決勝戦の開始まで少し時間があるな、のんびりと待たせてもらうとしよう。
「君がゼロか」
そんなことを思っていると声を掛けられた。
「ああ、その通りだ秒殺の皇帝、海道ジン」
声がかけられた方向を向くとそこには海道ジンがいた。
「私にいったい何の用かな?」
「昨年度のアルテミス優勝者である君と話してみたかった」
「なるほど、だが次は決勝戦だ。準備をしなくていいのかね」
「問題ない」
「余裕だな、だが次の試合今までのようにはいかないだろう」
「どういう意味だ」
「山野バン、彼は大会に初出場にもかかわらず決勝戦まで勝ち上がってきた。それに彼は戦いの中で成長し強くなってきている。無論君のほうが実力は上だが一筋縄ではいかないだろう」
「随分と彼に肩入れをするんだな」
おっと
「そういうわけではないが、しかし彼のことに興味があるのも事実だ」
そんなことを話しているとアナウンスが流れる。決勝戦の開始時刻のようだ。
海道ジンは決勝のステージに移動し始める。
「アルテミスでバトルできることを楽しみにしている」
そう言って私も場所を移動する。
アングラビシダス決勝戦開始を告げるアナウンスが流れる。
「いよいよ決勝戦ね」
「相手は、海道 ジン」
「楽に勝たせてくれる相手じゃねぇな」
「小手先の小細工が通用する相手じゃない」
「分かった。なら、真正面からぶつかるだけだ!」
決勝戦に臨む直前、アミ達、更にはハンゾウ達の声援を受けて気合を入れ直すバン。
そして、決勝戦のステージである、中央に設置されたDキューブへと向かうバン。
そんなバンを見送っていたアミが、ふと、言葉を漏らした。
「ねぇ」
「どうした、アミ?」
「これまでの戦いの中で、イノベーターの刺客らしきプレイヤーはいなかったわ。という事は……」
「アイツが、海道 ジンが、刺客!?」
「……本当に?」
「確信はないけれど多分そう」
ガトーや仙道、怪しいプレイヤーは数多かったが、何れもイノベーターの刺客ではなかった。
つまり、最後に残った海道 ジンが、イノベーターの刺客である可能性が濃厚と言う事になる。
「失礼、隣いいかな?」
「あっ、はい」
「って、ゼロ!」
アミの隣に来たのはなんとゼロだった。
「決勝戦くらい最前列で見たいと思ってね。いいかな?」
「あ、はいどうぞ……」
「なあ、あんたから見てどっちが勝つと思う?」
カズが突然そんなことを聞く。
「実力だけで言うなら海道ジンだろう。だが山野バンはこれまでのバトルで急激な成長を見せてきた、どちらが勝つかは実際にバトルが始まらないと分からん」
バンは大会MCの指示に従い、指定されたジオラマへと向かう。
するとその時、ジンはバンに向かってあることを明かした。
「バン君、知りたいかい? 父親の居場所?」
「っ! まさか、お前がイノベーターの刺客!?」
レックスによる決勝戦の開始宣言。
更に司会進行役によるバンとジンの紹介により熱気が上昇する地下闘技場内。
ギャラリー達の声援が響き渡る中、ジンは淡々と言葉を続けた。
「僕の目的はアキレスを破壊し、プラチナカプセルを回収すること。だがもし、君が勝ったら……、君が求める情報を教えよう。」
「…なんでそんなことを教えてくれるんだ?」
「それを言う必要はない……心配しなくていい、嘘はつかない。尤も負けるつもりもないが…」
自信満々に言うジンにバンは緊張感を高める。
『それでは、アングラビシダス決勝戦を開始します! Ready……』
「アキレス!」
「ジ・エンペラー!」
『─────GO!!』
両者のLBXがDキューブ内に投下する。
ジオラマは城砦、小高い草原の上から巨大な城が河を見下ろす。長い城壁が囲っている。
『決勝戦バトルスタート』
「いくぞ!」
開始と同時にアキレスはエンペラーとの距離を詰めランスによる突き攻撃を次々と繰り出す。
それをエンペラーはそれを俊敏な動きで躱し、エンペラーもハンマーによる反撃を試みる。
それをアキレスは躱し再度振るわれた攻撃をシールドで防ぎランスをエンペラーに突き出す。
ランスの穂先が、ジ・エンペラーの頭部をかすめた。
いままでエンペラーに一撃を与えた者はいなかったが、ここでアキレスの攻撃がジ・エンペラーに掠った。
ジ・エンペラーは態勢の立て直しを図るべく大きく跳躍する。
「ジャンプだ、アキレス!」
逃がすまいとアキレスも跳躍し両機は空中でぶつかり激しい攻防を繰り広げる。
城の中庭に降り立った両機は、激しい鍔競り合いを繰り広げた後、再び場外へと移動する。
「すげぇぜ、バン」
「今の所は互角ね」
「だが海道ジンはまだ本気ではない」
「…………」
アキレスはエンペラーにランスを振るうがそれらは全て躱わされてしまう。
「その程度かい?」
「なんて動きだ」
ハンマーによる攻撃を躱し受け距離をとる。
「全く隙が無い……。だったら! 必殺ファンクション!」
《アタックファンクション》
《ライトニングランス》
エンペラーはライトニングランスを命中する寸前で大きく跳躍し、回避する。
「それを待ってたんだ! Vモード、起動!」
《アドバンスドVモード》
バンのCCMが変形しアキレスが黄金に輝く。
Vモードとなったアキレスは、空中のエンペラー目掛けて素早く跳躍するとアキレスランスの一撃をジ・エンペラーにお見舞いする。
当たる寸前でハンマーにより防がれ、致命傷を与えられなかったものの、その威力によりエンペラーは地面に勢いよく叩き落とされる。
「やったわ!」
「狙ってたなバン」
「どういうこと?」
「どんなLBXだって空中での完璧な防御は難しい。ライトニングランスはジ・エンペラーを空中に誘導するための囮だったんだ」
「バン強くなってる」
「…………」
アキレスはVモードにより向上した機体性能でエンペラーに次々と攻撃を当てていく。
さっきまでの攻防が嘘のようにアキレスが一方的に攻め立てる。
ついにエンペラーが膝をついた。
「山野 バンとアキレス……。ここまでやるとはね」
だがそんな状況にジンは顔に笑みを浮かべる。
その様子に、バンが冷や汗を流す。
「なら、見せてあげよう。僕の本当の力!!」
「何?」
エンペラーが立ち上がる。
そしてジンが素早い動きでCCMを操作したかと思うと次の瞬間ものすごいスピードでアキレスの懐に飛び込みエンペラーはハンマーを振るいアキレスを弾き飛ばす。
「アキレス!」
先程の仕返しかのようにエンペラーは空中にいるアキレスを攻撃。
そのまま地面へと叩き落とす。
更に、起き上がろうとするアキレスに対してエンペラーは容赦なくティターニアを振るう。
エンペラーの超高速攻撃が始まったことにより観戦しているギャラリー達の熱気も更に上昇し、声援が一層熱を帯びる。
アキレスはその後もエンペラーによる連続攻撃を受けてしまう。
「っしまった!」
何とか立ち上がり反撃しようとしたとき、アキレスが纏っていた黄金の輝きが失われる。
だが、ジ・エンペラーはそんなことなどお構いなしに攻撃を続ける。
アキレスも、隙を見て何とか反撃に出るものの、全く掠る事無く躱されてしまう。
今度はエンペラーが一方的にアキレスを攻撃し、アキレスは手も足も出ず一方的に打ちのめされる。
「トドメだ。必殺ファンクション!」
エンペラーがハンマーを構える。
Dキューブが突如として小刻みに振動し始めた。
「何!?」
「これって……」
「揺れてる?」
「……くるぞ、エンペラー最大の一撃が」
《アタックファンクション》
《インパクトカイザー》
エンペラーはハンマーを高く掲げ、勢いよく地面に叩きつける。
そこから地面は亀裂が走り、そこから溶岩の様なエネルギーの塊が吹き出した後にアキレス目掛けて襲い掛かる。
大爆発を引き起こしアキレスは巨大な爆発の中へと消えた。
「アキレス!!」
爆煙が晴れ、そこに広がっていたのは巨大なクレーター。
そしてその中にぽつんと残っているアキレスシールドの光景であった。
「……消し飛んだか」
そんな光景に誰もがバンの敗北を確信しただろうだがそんななかゼロは不敵な笑みを浮かべていた。
「終わったようだね」
「まだだ」
そしてバンもあきらめてはいなかった。
「戦いはまだ終わっちゃいない!!」
バンが自身のCCMを操作した。
巨大なクレーターの中から、勢いよく何かが飛び出した。
赤いマントこそ擦り切れているものの、それは紛れもなくアキレスであった。
「「「アキレス!」」」
「……私は見た、インパクトカイザーがアキレスに直撃する瞬間咄嗟にシールドを構えたのを、何とか防げはしたが威力が大きすぎた故に地面に埋まってしまったのだろう」
「すげーぜ!」
再び戦線に復帰を果たしたアキレスの姿に、会場全体が沸き立つ。
「父さんを助け出すまで、俺は絶対に負けない!!」
「ふ……次こそトドメだ!」
今度こそトドメをさすべくアキレスに迫るエンペラー。
アキレスめがけてハンマーが振るわれる。
アキレスはその重く鋭い一撃を、アキレスランスを使って受け止めてみせた。
「何!?」
これにはジンも驚きの表情を浮かべる。
「この右腕は郷田に!」
「バカな!? 何処にそんな力が……」
エンペラーはアキレスの突き攻撃を避け、続く2撃目をハンマーで受け止める。
「Vモードはパンドラに!」
エンペラーが振るったハンマーをアキレスは避け攻撃する。
それをエンペラーはまたも受け止め、鍔迫り合いになる。
「シグマDX9は店長に!今のアキレスにはみんなの力が宿っているんだ!!」
押し合いに負けたアキレスは少し体勢を崩す。
そこにエンペラーの攻撃を受けて城壁に弾き飛ばされるも、すぐさま体勢を立て直し負けじと反撃を開始する。
再び激しい攻防を繰り広げ始める両機。
「何処まで耐えられるかな?」
そう言うジンの顔には笑みが見えとても楽しそうにしている。
「…………」
激しさを増すアキレスとジ・エンペラーの攻防。
それに比例するかのように会場の声援も大きくなっていく。
「やるな、山野 バン。……だが!」
エンペラーはアキレスから距離を取りハンマーを構えなおす。
するとDキューブが先ほどと同じように振動し始める。
「この一撃で終わらせる! 必殺ファンクション!」
「負けるか! 必殺ファンクション!」
ジ・エンペラーはハンマーを高く掲げ、アキレスはアキレスランスを回転させて穂先にエネルギーを集中させる。
お互いの必殺ファンクションが放たれる─────ことはなかった。
「何!? どうした、何故動かない!?」
不意に、エンペラーがハンマーを掲げたまま動かなくなる。
ジンが自身のCCMを操作するも、ジ・エンペラーは全く反応を示さない。
「……そうか、エンペラーの内部CPUが海道ジンの操作速度についていてなくなったか…」
(惜しいなそれさえなければまだ結果はわからなかったというのに)
『ジ・エンペラー、機能停止。バトル続行不能とみなします。よって、Winner、山野 バン!』
あまりに呆気ないバトルの幕切れに、地下闘技場内の喧騒が一変、静寂に包まれる。
「アングラビシダス優勝は山野バン!アルテミスの出場権は彼の手に!」
レックスがバンの勝利宣言を行った事で、地下闘技場内は我に返ったかの如く熱気が最高潮に達し、大きな歓声に包まれる。
「ポイント、579-934」
「え?」
「約束通り、君が欲しがっていた情報だ」
そんな中、Dキューブ内からエンペラーを回収したジンは、バンにそう告げるとステージを後にし、執事を引き連れ地下闘技場から去っていく。
途中、ふとジンはゼロの方に視線を向けるも、直ぐに視線を戻し会場から去っていった。
「やったわね、バン!」
「あの海道 ジンを倒すなんて、スゲーな!」
「おめでとう、バン」
「ヒヤヒヤさせやがって!スゲーバトルだったぜ!」
そんなジンの背中を見送るバンのもとに、アミ達や郷田達が勝利を祝うべく駆け寄る。
「見事だった、山野バン」
新たに、1つの影がバンのもとへと近づく。
「ゼロ…」
「アルテミスで君と戦える日を楽しみにしているよ」
そう言ってゼロもこの場から去っていった。
その後来た拓也とレックスの二人に感謝の言葉を述べたバンはジンから教えてもらった情報を二人に話すのであった。