ダンボール戦機白き翼   作:izuki

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第二十四話 脱出

 勝負がついた所で大広間に姿を現した黒のスーツにサングラスという出で立ちの屈強な男達。

 海道義光のボディーガードに身柄を拘束されるシキ達。

 LBXは行動全員行動不能になり最早バン達に抗う術は残されていない。

 そこに海道義光のボディーガード達に連行される檜山さん達が入ってくる。

 

「レックス!そんな……」

「やはり……」

 

 なんとなくそんなような気はしていた。

 

「まさか、こんな形で再会するとはね、檜山君」

「どういうことだ! お前は、政府の会合に出席してるんじゃなかったのか!?」

「くそ、裏をかかれたという訳か。……だが、どうして俺達の計画を!?」

 

 拓也の質問に答える事無く、海道義光はボディーガードに誰かを連れてくるように指示する。

 程なく、ボディーガードに連行され、くたびれたワイシャツ姿の眼鏡をかけた男性が一人、大広間に姿を現した。

 バンは、その男性の姿を目にするや、目を大きく見開いた。

 

「山野博士!」

「え、山野博士!? という事は、あの人がバンのお父さん!?」

(あの人が……)

 

 その男性がバンの父親である山野博士であると知り、驚愕するシキ達。

 一方、山野博士はバンの存在に気がつくと、バンに声をかける。

 

「大きくなったな、バン」

「父さん……父さんなんだね!」

 

 感動の親子の再会。

 だが、状況は再会の喜びを噛みしめられるようなものではなかった。

 

「さて、感動の再会も終えた所で。……君達には、この世から"永遠"に消えてもらうとしようか?」

 

 海道義光の口から零れた言葉を聞き、バン達の間に緊張が走った。

 

「AX-00が手に入った今、もう君達は用済みなのだよ」

 

 刹那、ボディーガード達が険しい表情と共にバン達に迫る。

 それを見て、先ほどの海道義光の言葉が、言葉の綾なのではなく、本気である事を知るバン達。

 

「いやだぁぁぁっ! 俺まだ死にたくねぇよぉぉっ!!」

 

 刹那、余りの恐怖に耐えかね、リュウが大粒の涙を浮かべて泣き叫ぶ。

 そんなリュウにボディーガード達の意識が向けられた。

 その瞬間。

 隙を見た郷田と宇崎さんが近くのボディーガードにタックルを仕掛ける。

 更に、宇崎さんは一気に海道義光のもとへと駆け寄ると、靴底に隠していたナイフを海道義光の首に突きつけた。

 

「海道先生!」

「全員動くな! さぁ、ゆっくりと離れてもらおうか」

 

 海道義光を人質にした事で、ボディーガード達は拓也の言う通りバン達から距離を取る。

 だが、そんな中海道義光は不敵な笑みを浮かべていた。

 

「そのナイフを、下ろしなさい!」

 

 突如そんな言葉が聞こえたかと思えば。

 石森さんが宇崎さんの背後に立ち、手にした自動拳銃の銃口を拓也に向けていた。

 

「里奈! まさかお前が俺達の計画を海道に…… あの地図も、俺達をこの部屋に誘い込むためか」

「やっぱりか……」

「シキは気づいていたの?」

「気づいたのは海道義光を見た時、もしかしてとは思ってた……」

 

 宇崎さんは苦虫を噛み潰したような顔を浮かべナイフを捨てると、ゆっくりと海道義光から離れていく。

 今度はこっちが不利な状況になった。

 

「スパイを送り込むのは、君達だけかと思ったかね?」

 

 その時、宇崎さんの胸ポケットに入れていた携帯電話に電話が入る。

 

「おや、電話のようだが……出ないのかね?」

「……どうした?」

 

 海道義光に促され、宇崎さんは電話に出る。

 

「なんだと!?」

 

 よほど衝撃的な内容だったのか、宇崎さんが声を荒げる。

 しばらくして電話を切り、海道義光を睨みつける。

 

「どうしたんですか?」

 

 気になったバンが思わず尋ねる。

 

「……シーカー本部が先ほど何者かによって占拠された…」

「嘘!?」

「そんな!?」

 

 俺も口には出してはいないが少し驚いた。

 だが予想していたことでもあった。

 こちら側にスパイを忍び込ませていたんだ基地の場所が知られていて当然だ。

 

「里奈! どうしてだ!どうして裏切った!」

「私が代わりに答えよう。彼女には、君達を裏切ったとしても手に入れたいモノがあったのだよ。神谷重工の、いや、私達イノベーターの持つ"オプティマ"の技術だ」

 

 オプティマ。その単語が出た瞬間、宇崎さんは全てを理解したかの如く目を見開いた。

 

「そうか、妹さんの治療に必要だったのか、オプティマが」

 

 オプティマは神谷重工がアンドロイド用に開発した人工臓器技術。

 元々はアンドロイド用ながら人間にも応用する事が可能で、それは世界中で難病に苦しむ多くの人々の命を救う事につながる。

 だが、既にオプティマは完成しアンドロイド用に生産が行われているものの、現在までに、オプティマを医療機器として使用する認可は下りていない。

 宇崎さんが前に言っていたが、海道義光が関係機関に圧力をかけ、認可を止めているからだという。

 

「分かったかね? 彼女は君達ではなく、妹を選んだのだよ」

 

 つまり、妹の病気の治療の為にオプティマが必要である石森さんは、妹の命を救うべく海道義光の側についたという事だ。

 

「さて、無駄なお喋りはここまでにしておこう。……山野博士、いかがかね? ご自身の希望が潰えたご感想は? では、貴方には、絶望を味わいながらゆっくりと死んでもらおう」

「……ふ、それはどうかな?」

「今更強がりかね?」

「そうではない。残念ながら、お前の欲しがっているエターナルサイクラーの設計図は、プラチナカプセルを手に入れただけでは手に入らない」

 

 山野博士の発言に、海道義光は眉を顰める。

 

「設計図を開くには、データを解読する為のコードが必要なのだ」

「解読コードだと?」

「そう。つまり、今のままでは鍵をなくした金庫と同じだ!」

 

 山野博士に出し抜かれたと知るや否や、海道義光は顔を歪ませる。

 だが、直ぐに表情を元に戻すと、平静を装いながら再び話を始める。

 

「成程、考えましたね。……それで? その解読コードは何処にある?」

「……」

「答えぬつもりか? では、息子がどうなっても構わないのかね?」

 

 ボディーガードがバンの肩に手を置き、今にも危害を加えそうな素振りを見せる。

 それを見て、山野博士は観念したように答え始めた。

 

「解読コードは、世界で最も安全な場所にある」

「何?」

「そう、”LBX世界大会アルテミス”にな!」

 

 まさかの名前に、海道義光のみならず、俺達も驚きを禁じ得ない。

 

「解読コードがアルテミスにあるだと。どういう事だ!?」

 海道義光の問いに山野博士は説明を始める。

 

「エターナルサイクラーのデータの解読コードは、クリスタ―イングラム社の超高性能CPU、"メタナスGX"の中に隠した」

「ふん、そんな話が信じられるか!そもそも、どうすれば解読コードをメタナスGXの中に入れられるというのだ」

「メタナスGXの製造過程で解読コードがメタナスGXの回路にプリントされるように仕込んだのだよ。クリスターイングラム社のネットワークに侵入してね」

 

 これには俺も驚きを隠せない。

 この人は解読コードを隠すためとはいえ、一会社のネットワークにハッキングを掛けたのだ。

 

(この人、下手すればサイバーテロとかを一人で起こせるんじゃ……)

「そして、そのメタナスGXは今年のアルテミスの優勝賞品だ。完成した後はオメガダインによって管理され大会当日まで秘密裏に保管される。いくらお前たちでも手を出すことはできんよ」

 

 やってることはあれだが、隠し場所としては最高だろう。

 いくら海道義光とはいえ、オメガダインには手は出せないだろう。

 

「ふざけた真似を! ……だが、解読コードの居場所が分かっただけでも十分だ。我々の力をもってすれば、アルテミスの優勝など容易い。やはり、君達にはここで死んでもらう。これ以上小細工が出来ぬようにな」

 

 自信満々に優勝を宣言した海道義光は一拍置くと、ドスのきいた声と共に、再び死刑宣告をする。

 それに対して、山野博士は余裕の表情で海道義光を見る。

 

「それはどうかな?」

「まだ何かあるのか」

 

 海道義光の問いに対して山野博士は白衣の内側からCCMを取り出す。

 ………………嫌な感じがする。

 

「これが、答えだ」

「「伏せろ!!」」

 

 俺と檜山さんが叫んだ瞬間、轟音が響いた。

 ドカンドカンと爆発が起こり、爆発の衝撃がこの広間を段々と崩していく。

 海道義光の問いに対して山野博士は白衣の内側からCCMを取り出す。

 

「……爆発だと!?山野博士!」

「私は科学者だ。この屋敷にある材料を拝借すれば、こんな芸当は朝飯前だ」

「海道先生!」

「危険です! 早く避難を!」

「……おのれぇッ!!」

 

 不敵な笑みを浮かべていた先程とは一変、悔しそうに顔を歪める海道義光はもはや紳士の皮を脱ぎ捨てていた。

 怒った顔で両の拳を握りしめながらも、海道義光や黒服の男たちは身の安全の為にその場を立ち去った。

 

「皆、今の内だ!」

 

 爆発によって俺達の包囲に穴が開いたので檜山さんの声で俺達は脱出するべく動き出す。

 それぞれ、爆発によってテーブルから吹き飛ばされたLBXを回収する。

 

「よし、回収終わったか?」

「ああ!」

「早く逃げましょ!」

「こっちだ!」

 

 俺、アミ、カズ、ミカは自身のLBXを回収し郷田が確保した脱出口へ向かうが、俺はバンがいないことに気付きバンを探す。

 バンは山野博士と対面で何かを話していた。

 恐らくバンは山野博士を連れ戻そうとしているのだろう。

 だが、二人の間には爆破によって崩れ落ちてきた瓦礫がありそれが二人を遮っていた。

 バンには悪いがそれでは無理だ。

 今は逃げることを最優先にしなければ。

 

「バン!行くぞ!」

 

 俺が声を掛けるとバンは渋りながらもこちらへ向かってくる。

 そのまま広間から脱出して檜山さんを先頭にレックスに先導されながら海道邸内の廊下を走っていた。

 幸いと言うべきか、邸内の警備に当たっていたボディーガード達の大半はあの広間にいたのだろう。

 おかげで特に妨害に遭う事もなく、事は順調に進み脱出に成功した。

 

「ここまで来ればもう安全だろう」

「し…死ぬかと思ったぜ…」

「………父さん」

「バン。山野博士なら、大丈夫だ」

「……はい!」

「…………取り合えずここで解散する。みんな、今日はありがとう」

 

 解散となりみんなそれぞれ帰路に就く。

 

「……帰るか」

「……うん」

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