『箭田』はなぜ『セト』を憎んでいるのか、恐れながらも殺そうとしたのかをちょこっと見せます。
まぁ、幕間なのでサラッと見るだけでも大丈夫です。
短めです、宜しくお願いします。
とっ…とっ…とん…と地面を裸足で叩いた際の独特な音が反響する。
白い髪、赤い瞳、浅黒い肌。
『セト』がワインを1口飲む、そして…
――丁寧に解体された
「うん、実に馴染むねぇ…。
余程の修羅場を何回も経験し、切り抜けて来た猛者の味がする。
――そう思わないかい?『地下生活者』?」
「黙れ!!
貴様のような人喰いに言う事は無いッ……!
何故…何故、お前のようなヤツが
「急にキレないでくれよ、僕としても反応に困るんだが」
カチャリ、と再び食事を再開するセト。
食事をしながら思考を始める。
――プチュ…と何がフォークとソレの隙間から汁が飛び出る。
赤い舌でザラリ…と汁ごと口に含む。
「(にしても、意外だった。
数多の時間軸で対立してきた…よりによって同一個体の『箭田 空澄』がこの時間軸に…面倒だ)」
「――それに」
チラリと視線を『地下生活者』に向ける。
何かに狂ったように、ガチャガチャと何かしている。
ぽわぽわと肉を口に運ぶ。
忌々しい我が怨敵、その軌跡を辿って見る事にした。
物思いに耽るその一時も、たまには良いものだろう……――
最初の邂逅は第27時間軸、82番目のBAD ENDを踏んだ世界だった――
「―っあ…」
バキン、と…まるで蛍光灯が割れた時のような音が響く。
今、たった一人の生徒がその命を散らした。
「また、守れなかったようだ。
――愚かな先生よ」
もぞもぞと地を這う1人の大人。
しかし、その命もそろそろ消えるだろう。
…思えば、この時の姿は薄いモヤのようなものだったか。
だからこそ、何かに囚われず好きに動けていたのだろうが。
「ん?」
遠くから何かが突っ込んでくる。
「ラアアアアアアッ!!!」
「―むっ!?」
スパッと斬られる。
痛みは無いが、行動時にラグが発生するようになった。
―初めての感覚だった。
「お前……ッお前が!」
「落ち着けよ、この世界は既に終わっているだろうに…何に対して足掻く必要がある?」
ギリギリと手に持つ
それは……怒りなのだろう。
人の子が持つ固有の感情というやつなのだろう。
しかし、時に諭してやるのが
「箭田 空澄よ。
この現状を見てどうにかできるとでも思っているのか?」
「……何をッ!」
「この世界は既に終わっている。
――諦めるのが最善と言えるだろう」
ズドン!と弾丸が身体を突き抜けた。
―プログラムエラー
―行動非推奨
―致命的なエラーを感知
「―――これは」
「もう1発ッ!!」
「おっと」
ズドン!と再び銃声が響く。
ひらりと躱す。
されど獣のように吐息を漏らす目の前の
どれ、少し手心を加えるとしよう。
―プログラム・サモンシステム起動
「君の行動は実に興味深い。
しかし、私には
――ここに留まる事は出来ないのだよ」
パチン、と指を鳴らすのと同時に、地面からキメラが生まれる。
四足歩行、二足歩行、飛行型…様々なケモノを考えた甲斐があった。
「……!?
獣が地面から…!」
「キメラ、私の失敗作とも言えようか。
まぁ、ゆっくり相手してあげると良い」
――時間軸を移動する瞬間、獣のような叫びが聞こえた。
今でもよく覚えているとも。
――次に会ったのは第32時間軸、31番目のBAD ENDを踏んだ世界だった。
「おや?」
「……」
「また会ったね」
この頃には『少年』は『青年』に変わっていた。
ほんわり…とこの成長を見守る親の気持ちになる。
しかし、その目はたしかに見覚えがあった。
「―まるでホルスが私を見ている時のような…
殺意に満ちた瞳をしている、懐かしいね」
「……ッ殺す!」
どうやら得物を変えたらしい、しかし…残念だ。
動きが直情的になっている。
だから、こうなる。
「――カハッ」
稲妻に撃たれて倒れるのだから。
「さて、今回も君は失敗した。
……また最初に戻って足掻き始めるのかい?
―結局全て、無駄になるというのに」
「俺は…俺はァ!!」
「取り敢えず、この世界も終わらせよう。
――それが私の役目だからさ」
拳に雷を貯め、既に瀕死で地面に横たわっている『大人』へ近付く。
「待て、やめろ!
その人には手を出すなッ!!
『ヤメロォォォォォォオオオ!!!』
あの時からだろう、目的の時間軸に辿り着いて…最後のトドメ、という時に限って何処からともなく現れる。
…その度に何度も何度も戦う羽目になった。
その度に殺し合い、その度に強くなる。
学習、記録、習得…少しづつ追い込まれていった。
遺体を掻っ攫う時、もし『箭田 空澄』が万全の状態だったらと思うと――
「(うん、少し冷や汗をかかされた…というか、かいてしまった…というか…。
いやはや…『しいては事を仕損じる』とは、よく言ったものだ)」
カチャリ、とフォークとナイフを置く。
再びワインを手に取り、口に運ぶ。
一口食べる度に
軌跡を追体験しているような感覚だ。
――夢見心地だ。
「
―透居ネムリ
―都乃間アマツ
―玖寿ヒトミ
幾つもの偶然が重なり、この世界に誕生した過去の者。
死んでいるはずの人間が何故生きてそこに立っていたのか…
この3人は神秘をその身に取り込んだが故に、元々保有していた神秘と3人の神秘がパズルピースのようにつながり…一種の生存証明となったのだろう。
ダメ出しの一手として、交友関係も限定されたものではなくそれぞれ好きなように関わっていったのも証明の後押しになった…と推測する。
死者は《死んだ》という証明が成される、そうして時間と共にその者の記憶も、交友関係も、思い出も消えていく。
しかし、死者が生者と重なり…結果として《生きている》という判定が《死んだ》という結果に打ち勝った。
そして、肉体を神秘で再構築し魂を定着させた――。
3人を精神の世界に入れておくことが出来たのも、《死んだ》という判定が残り続けたおかげなのだろう。
…で、何故あの三人が自分にとって危険なモノとして認識するのか。
それは《絆》の力があるからだ。
あの三人と「箭田 空澄」
短いながらも確かに絆を深め合い、戦闘では確認できなかったが最高のコンディションを保っていたのは確かだ。
そして何よりあの言葉…
愛とは人を強くする。
友愛、親愛、恋慕、敬愛…
何れにせよ、決意を抱かせるのには持ってこいの言葉だ。
そして3人は《いなくなった人》を探す為に、それ以上に危険な先生と協力し様々な出会いを通してより強力な存在となっていくだろう。
しかし、しかしだ。
後ろでガチャガチャやっているコイツ次第だが――
しかし、愚かだとは思わないか?
正史とは幾分か違う道筋を辿っている世界。
自分を含め、イレギュラーな存在が幾人か入り込んでいる。
それも、数歩数手間違えれば《剪定事象》として隔離されてしまう程のレベルの異常。
―箭田 空澄
―《仮称》ソラスミ*テラー
―透居ネムリ
―都乃間アマツ
―玖寿ヒトミ
そして…
「亡草ツミ…シャーレの先生であり…
正史ではありえない存在……
ふむ、全くもって愚かだ。
様々なイレギュラーが存在している時点で、
この世界は
――個体名『セト』
██から派遣される『終わった世界』の処刑人。
剪定事象となった世界や、本来の正史とは大きくズレてしまった世界がBAD ENDを踏んでしまった際に先んじて現れる存在。
先生達が知っているあの『セトの憤怒』となるには準備が必要。
その為には『最も親和性の高い贄』が必要になる。
…ちなみに、知性や個性を持って生まれるのは稀である。
データが更に確認でき次第、また伝えます。
それではまた――