しばらく何も書いていないのでリハビリ投稿(本当の理由は後述)
「ふーん、まぁいいわ。今更先の大戦の因縁どうこうもないし、あの紀伊さんが柄にもなく喜んでたなら、冷や水浴びせるみたいに真実をばらすのも寝覚めが悪いしねぇ」
「ありがとう。足柄!!」
足柄が話の分かる人で助かった。というのも、あのまま足柄を物陰まで引っ張って行って、私が一世一代の大ウソをついたのだ。『妖精の気まぐれで建造着任したけど、提督が金剛と勘違いをした』と……
良き隣人を騙すなんて、たぶん私は最後の審判で地獄に落とされるでしょう。
「金剛は史実じゃ大活躍だったから、知名度も高くてばれるのも時間の問題かもしれないけど……でもあなた、一体どんな改装をしたらそんなに金剛っぽい雰囲気が出るのかしら?」
「あはは……そんなに片言かな?」
正直、あまり嬉しくない。
誇り高い英国王立海軍(Royal Navy)としては、かつて敵性言語だったとはいえ、中途半端な日本語を話すのは恥であった。
「いいえ、口調じゃなくて雰囲気がね……でもきっと、金剛型姉妹には気付かれちゃうと思うわ。誰かはピンと来ないでしょうけど」
足柄の懸念に私は大きく同意する。
――金剛型姉妹に会ってはならない。
彼女は、母国の姉妹艦娘のことをとてもうれしそうに話していた。
私も、五人姉妹の長女であり、そのことも彼女と仲良くなる出来事の一つとなっていたのだ。
もし私が妹たちの立場であったのなら、どこの馬の骨ともわからない艦が姉を騙っている今の状況は、まったく度し難い事案となるであろう。
まだ見ぬ金剛型姉妹艦娘たちへの恐怖で身震いするが、私にだって譲れないものがある。
――ヴァルハラから見ている。
と最期に言った彼女のために、生き残った私は、『彼女』としてその名に恥じぬ武勲を立てねばならない。
「どうしたの? 顔色が悪いわよ」
「大丈夫、問題ない……それよりも、私の正体を知ってそうな艦娘は第四艦隊にはいるの?」
「うーん。史実で砲火を交えた程度じゃ、きっと貴女の正体なんてわかんないわ。安心なさい」
「……確かに、私もぶっちゃけ先の大戦で誰と戦ったとかあんまり覚えてない」
それはきっと、私の最盛期が一次でも二次大戦でも主に地元(欧州)でドンパチやっていたからだと思う。あの辺の艦艇なら覚えている。和解も済ませた。
ただしマイアーレ(人間魚雷)、てめーは駄目だ。
「そ、だから、貴女は金剛としての化けの皮がはがれないようにだけ気を使えばいいのよ……っともうこんな時間、急いで皆と合流しましょう」
その後、私は新たに編成された第四艦隊のメンバー(駆逐艦三隻と軽巡洋艦一隻)と合流し、当たり障りのない自己紹介をして、遠征に向かった。
…………………………
艦隊演習に推奨される旗艦練度(レベル30)に達しているだろう足柄に遠征の旗艦を任じ、日々の哨戒任務(デイリー出撃)を終えると、すでにとっぷりと日が暮れ、どこからか夕飯時特有の美味しそうなカレーの匂いが漂って来ていた。
その匂いのせいで、まるで思い出したかのように腹の虫がきゅうと鳴った。
秘書官の那智に暇をだし、士官食堂へ向かう。
「やあ、紀伊! 紀伊じゃないか!」
背後から呼び止められ振り向くと、そこに懐かしい顔がいた。
「そういう貴様は信濃! 久しぶりだなぁ、士官学校以来か?」
「あぁ、ここであったのも何かの縁。どうだ? これから一杯」
「あのなぁ……そういうセリフは三歩後ろの秘書を見てから言うもんだぞ」
信濃はギクリとして、後ろにいた浜風を見た。
「提督、期限が本日までとなっている書類達の事をお忘れですか? それとも不知火姉さんの折檻をお望みですか?」
「うぐっ……」
「それに、私は食堂に飯を食いに出て来ただけだぞ。食ったらまた仕事だ。残念だが、日を改めてもらおう」
「……食事を共にするぐらいは問題ないだろう。浜風、俺たちも本当は飯を食いに出てきたんだから」
信濃の秘書艦である浜風はしばしの黙考のあと、そうですね。と了承、自らも艦娘用の食堂へ向かった。
……
「それにしても、士官学校時代は大艦巨砲(主義)をやっていた貴様が、まさか水雷提督になるとはなぁ」
カレーをほおばりながら、私は信濃に問いかけた。
水雷提督とは、鎮守府を挙げての作戦行動の際して、主に水雷戦隊を率い、対戦警戒や掃海にあたるよう任ぜられた提督の事である。(水雷戦隊を構成する艦娘の種類上、『園長』や『紳士(ロリコン)提督』との蔑称もある)
「そういう貴様は初志貫徹で機動提督だったな。といっても旗艦は重巡洋艦のようだが」
「まだ本格的な機動部隊を率いるべき練度に達していないだけさ。貴様の水雷戦隊はどうだ?」
「何とか、播磨元帥に掃海任務だけでも任せてもらえるようにはなった。深海の奴らの機雷は電探音探には魚群にしか見えないからな……艦娘による目視警戒が必須なのさ」
「実際、敵艦艇群の幼生、という学説もあるようだぞ」
奴ら(深海棲艦)の研究のアプローチは、大きく分けて二種類ある。
一つは、人の形に近い『軍艦』という見方、駆逐イ級等のクラスネームはこのような考えから生まれ、深海棲艦はクラスごとに自然発生的に誕生するという説を唱えている。
もう一つは軍艦に近い『海洋生物』という見方であり、空母ヲ級と軽空母ヌ級の類似性や、高次の船になるに従い人の姿に近づくことから、深海棲艦は生物の系統樹のように練度によって進化していく、という説で前者と対立している。
ちなみに、前者(軍艦自然発生説)の方が、エリートやフラッグシップ艦艇群の存在により後者(生物進化説)よりも優勢である。
「幼生っつってもなぁ……爆発しちまうんだものなぁ……」
確かに、深海棲艦すべてを同種の生物とみなすなら、自身の子供を特攻兵器には載せまい
過去にそんな大それたことをしているのは我々(人間)だけだ。
などと難しいことを考えていると、信濃がそれを察したようだった。
「ま、難しいことは学者に任せようじゃないか。下手の考え休むに似たり、だろう?」
「はは、違いない」
「そういえば貴様、父君は元気か?」
「ああ、最近になって教官の仕事は引退したが、相変わらず厳しい人だ」
私の父は、艦娘が出現した最初期の頃の提督で、提督を引退後は士官学校の教官をやっていた。
「まぁ、母が言うには、父は血圧が高いと医者に言われて怒るのを控えているそうだが……最近帰ってないからな」
「俺もだ。家族の近況はいつも手紙で事後報告だ」
「時に、貴様の妹御はどうした? 確か海洋生物学を修めていたはずだが……」
漁船ですら奴らに攻撃されてしまうような状況である。海洋生物など満足に研究できまい。
「なったよ、学者に。今度鹵獲した駆逐イ級の剖検をするんだと手紙に書いてあった」
信濃はカレーを運ぶ匙を止め、深くため息をついた。
「信濃……?」
信濃の行動を訝しむ私に、彼は言葉を続けた。
「さっき、学者に任せようと言ったが、身内が学者になると、ほとほと『学者』というものの自身を殺しかねないほどの好奇心に辟易するよ」
……少し話しすぎたな。我が秘書艦が迎えに来ているようだ。
そういって、信濃は残っていたカレーを掻き込むと、足早に士官食堂を後にした。
時計を確認すると、そろそろ足柄達の第四艦隊が帰還する頃合いだったため、カレーを胃に流し込んで席を立ち、執務室へ戻った。
……
「ずいぶんと仲がよろしいのですね」
浜風は、信濃提督と共に執務室に戻る途中、ふと、先ほどの提督のことを尋ねた。
「ああ、士官学校の同期だからな」
「秋雲が聞いたら喜びそうな話ですね」
女っ気のない士官学校、溜まる欲求を持て余した二人はついに……薄い本が(ry
「……何言ってるんだ。あいつは女だぞ」
「えっ」
「えっ!? 気付かなかったのか」
「だって胸も……」
「さらしだ。奴は士官学校の時から男装していた」
「髪も……」
「長いのを適当に制帽の中に入れているんだ」
「って! 見たことあるんですか?!」
「ああ、あるぞ。なにせ相部屋だったんだからな」
浜風は卒倒しそうになるのを何とかこらえ、
「!?……不知火姉さんを呼んできます」
自分では対処しきれない事案の発生を何かと折檻癖のある姉に丸投げようとした。
「おい待て浜風! やましいことは何もないぞ!」
「それならなおさら問題です!! やっぱりロリ専だったんですね!?」
「やめろ不知火に打電するんじゃないこれには深い訳が……」
――言い争う両者――
――パシャリ
「……青葉、見ちゃいました」
憲兵の出動は近い。
…………………………
続編の本当の理由。
短編で済まそうと思ってたけど、ちょっとコンセプトを話しただけでリアル友人(私がSSを書いてることだけ知っててここの事は知らない)にここを特定されてしまったため、続きものにした。
じわ「友人に二話上げたこと言わなかったらばれないんじゃない? 定期的にチェックしてるわけでもなしに……」
そうだよ(確信)
じわ「というか早くE5終わらせて別作品の次話かけよあくしろよ」
……はい。申し訳ございません。