かつてのニュクスとの戦いの終結まで、数多くのペルソナとペルソナ使いが現れて、作られ、そして消えていった。
そして、数多くのペルソナによる戦闘の記録が収集される中、ペルソナそれぞれが持つ固有能力の存在が明らかとなった。
また、同じ名前を持つペルソナだが、異なる使い手のためなのか、もしくは結城理のような特異なペルソナ使いが使用した所以なのか、姿や能力が異なるものも確認されている。
ペルソナは本来、その使い手が自己を確立し、死などの困難に立ち向かうための力のイメージ。
そして、そのモデルとなった存在が異人や伝説上の生き物、神や悪魔であることが多い。
そこから考えると、同じ名前のペルソナが違う姿や固有能力を持って並び立つことは何ら不思議な話ではないだろう。
今回はとあるアニメ「ペルソナトリニティソウル」の要素があります。
そのネタバレが含まれる箇所があるかもなので、ご注意ください。
真夜中のとある都会のマンションの一室。
自室でノートパソコンを広げるパジャマ姿の青髪の青年が送付されたファイルの中の画像や記録を一つ一つ確認していく。
机にある写真立てには彼が高校時代の、最も輝いていたと同時に最も死に近づき、最も命に触れていた時期の思い出がある。
棚には修学旅行の土産屋や卒業アルバム、そして家族との思い出の品がいくつも置かれている。
「これが…リバース…」
一般人は当たり前で、どんなに場数を踏んでいるであろう警察官であっても、このようなものをまともに見たら嘔吐するであろう凄惨な写真。
だが、青年は既にそうした悲惨なものや恐ろしいものを10年前に経験している。
ちょうど、このファイルの送り主の仲間からスマホに着信が入る。
「はい、結城です」
「美鶴が送ったデータは見てくれたか?結城」
「真田先輩…。ペルソナに関係するもの、ですか?」
沈黙の時間がわずかに流れる。
10年前の仲間の一人である真田が電話している場所は彼の職場である警視庁の一室。
そして、警察官の制服に身を包んだ真田がスマホで彼に、結城理に電話をしている。
日本海に面した富山県の新興都市の綾凪市で起こる無気力症の人々や何人もの学生が死体となって発見されるというリバース事件。
テレビでたまに報じられ、その度に家族が嫌な顔をしているのを覚えている。
「10年前、同時多発無気力症による事故や災害によって、街の中心部は壊滅的ともいえる被害に見舞われている」
「10年前…まさかとは思いますけど…」
「ああ、美鶴が言うには、桐条グループの負の一面の置き土産、らしいぞ」
桐条鴻悦によって引き起こされた滅びの招来を目的とした研究。
成功の一歩手前で、とある人物の行動によって防がれたものの、いずれ滅びの招来たるニュクスが現れること、死が訪れることを危惧して桐条グループで行われた計画。
一つは、かつて今は亡き幾月の提案によって行われた、人工的に無理やり適性を持たせることでタルタロスや影時間に対応できるようにした人工ペルソナ使い計画だ。
そして、それ以外にもニュクスに対抗するために行われた計画があるという。
その一つがその町で行われた、ペルソナ化による生存計画だ。
研究の第一人者が小松原啓祐という医者で、彼曰く人間として死ぬ直前に自らをペルソナに喰らわせ、それによって生き延びている存在であるという。
端的に言うと、ペルソナ使い以外はあきらめて、ペルソナ使いは自分を自分のペルソナに食わせることで生き延びろというとんでもない計画だ。
桐条グループもそんな計画は論外だとして、生前の桐条武治によって反対されて支援を打ち切っている。
それからは桐条グループ抜きで研究を続け、その結果として10年前に事件が起こったものと思われる。
「お前の力を借りたい、お前の持つ力なら、今起こっている事件を解決できるだろう。これは、シャドウワーカーとしての任務だ」
あの戦いの後、美鶴の提案によって結成されたシャドウ案件を対処するための特殊部隊。
この舞台の結成には美鶴や桐条グループのバックアップだけでなく、警視庁に入った真田による表の権力の助けもあったことが大きい。
常勤メンバーは2人以外にもアイギスがいて、それ以外のメンバーは理も含めて非常勤メンバーとなっており、3人の手におえない事態になった場合に召集がかかるようになっている。
「でも、そこには神郷さんがいる。彼がいても手に負えない…ということですか?」
真田と同期で警視庁に入ったという神郷諒。
彼はペルソナ使いであり、10年前の事件と関係のある人物であることから、真田と美鶴の協力者となっていた。
彼のペルソナを思い出しながら、真田は口を開く。
「あいつのペルソナ…カインはお前のペルソナの一つ、タナトスに近しい存在…そう言ったら、意味は分かるか?」
「タナトスと…」
綾時と関わったことで目覚めた、オルフェウスとともにメサイアとなる片割れのペルソナであるタナトス。
切りつけた敵の生命エネルギーを減衰させる力、ニュクスに近い力を持つタナトスの危険性は理も戦いの中でタナトスを使いこなす中で感じていた。
そんな危険な力と近しい力を持つカインを操るとなると、尋常でないほどのメンタルが求められる。
「あいつの助けになってほしい。それは、近しい力を持つお前にしかできないことだ」
真田の脳裏に助けられなかった仲間、荒垣の姿が浮かぶ。
あの戦いの後で美鶴に見せられた書きかけの復学届。
今も真田はそれを自らへの戒め、かつての戦いと友の大事な記憶の結晶として手にしている。
あの男からは荒垣と似たものを感じてしまった。
「もう…仲間を失いたくない」
「…分かりました。どこまでやれるかはわかりませんが…」
「助かる…もし、あいつと戦うようなことになったら、弾丸にだけは絶対に当たるな」
「…覚えておきます」
電話が切れ、理はさっそく電車の時間を調べ始める。
職場への有給申請をオンラインで済ませ、最低限の荷物を持って部屋を出る。
玄関へ向かおうと体を向けかけたとき、何かを感じたのか真正面にある部屋に目を向ける。
ドアを開け、ベッドで眠っている自分の家族。
10年前に出会い、一緒に戦う中で絆を深めた彼女。
朝起きて、いなくなっていることに気づいたらきっと怒るだろう。
勘がいいから、きっと戦いのことも察するかもしれない。
「ゆかり…帰ったら、たくさん怒っていいから…」
「理、君…」
自分の名を呼ぶ寝言と、ふにゃりと柔らかくなる彼女の寝顔。
もっと見ていたいと思うが、あまり悠長としていられないのも確かだ。
「いってきます」
頬にキスをした後で部屋を出て、気づかれないようにゆっくりとドアを閉めた。
「タナトスに近しい存在のペルソナ、か…」
タナトスのような奇妙なペルソナは1体だけで十分なのに。
ペルソナというものが存在し、それを操るペルソナ使いが生まれ続ける限りは、これからもそうしたものが生まれるということなのか。
そのように考えながら、理は駅へ急いだ。
ペルソナ名:カイン
ペルソナ使い:神郷諒
固有能力:ペルソナに命中するとそれを操るペルソナ使いを死亡させる弾丸を放つ。
ペルソナ評価(A-Eの5段階評価、Aほど優秀)
物理破壊力:B
魔法破壊力:D
攻撃範囲(ペルソナの攻撃及び能力が届く範囲):B
遠隔操作性(ペルソナがペルソナ使いから離れることができる距離):C
精密動作性:B
防御:C
速度:C
状態異常耐性:D