流刑貴族の追放記-極獄と呼ばれた果ての地にて-   作:Anacletus

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第十五章【遠き胡蝶のカダス】編
第96話「遠き胡蝶のカダスⅠ」


 

―――辺境大陸外海船上。

 

 海は一面の緋色に染まっていた。

 

 遥か海底を侵食するように岩石しか本来存在しないはずの場所はルビーの如く染まりつつあり、その周囲では奇妙にキラキラしている魚が泳ぎ。

 

 海藻類や頭足類を筆頭にした海の海産物達が楽し気にも見える勢いで高速回遊し続けている。

 

「………なぁ、アネさん。本当に着いて来て良かったのか?」

 

「何だい今更。この計画に投資してやったアタシが来るのに文句でもあるのかい?」

 

「そうじゃねぇ。そうじゃねぇさ……でも、コイツは命掛けで済まねぇような―――」

 

「そんなのも分からない程に頭が悪いように見えると喧嘩を売ってるのかい? このボンクラ考古学者」

 

「う……」

 

 プカプカと浮かんでいる一隻の大型ヨット。

 

 彼らのいた大陸。

 

 魔王に封じられ、勇者によって開放され、神と魔蟲との最終戦争が終わって、ようやく復興が始まった大地には無いはずの船。

 

 それも黒曜石の如き煌めきを宿した素材からして、何処かの島のノクロシアの建材に似ているという怪しげなソレの後部デッキで二人の男女がビーチ・チェアに寝そべっていた。

 

「廃人同然だったアンタを世話してやったのは何処の誰だい? そろそろ結婚しなきゃマズイって年齢なのに家にアンタみたいなごく潰しを上げて、また男が寄り付かなくなっちまったのに金まで出してやったのは何処の誰だい?」

 

「アネさんはそんなの無くても結婚出来な―――」

 

「ほう? どうやら此処で海の藻屑にされたいようだねぇ……」

 

「く、口が滑った!? 悪かったから、そのオールで船から叩き出そうとしないでくれ!? 悪かったって!? 本当に!!?」

 

「チッ……ダメ男の世話はこれだから疲れるんだよ」

 

「ぅ……」

 

 ビーチ・チェアから転げ落ちるようにして待った待ったと女に両手を突き出して船の際に追い詰められた男が女のオールが下げられたのを見て、へたり込む。

 

「(この口さえなけりゃ、女ぶりのイイ人なんだがなぁ)」

 

 男はうだつの上がらなそうな30代の無精ひげの生えたナヨッとした金髪。

 

 女は二十代に見えたが、紅のビキニを着込んでサングラスを掛けた派手めな櫛で髪を結わえた銀髪。

 

 ただ、明らかに女の胸部は豊満でついでに活力に溢れた姿は白い肌も相まって妙齢の女主人という風格であった。

 

 その美貌は少なからず全うな男ならば、靡かない者は無いという風情である。

 

「はぁ、それで? いつまで此処でプカプカしてりゃいいんだい? もう二日だよ?」

 

「焦らなくても海流に乗ってるのは確認してる。方角も問題ない。此処でこの船の機関何か吹かそうものなら、一瞬で海の魔物の餌食だから、絶対止めてくれよ?」

 

「はぁぁ……これが世界の外を見る為に一番の近道とはねぇ……」

 

 女が男の言葉に再びビーチ・チェアに腰掛ける。。

 

「考古学ってのは忍耐と浪漫で出来てるから、アネさんには向いてないと思うよ。ホント……」

 

「ふ~ん? でも、アンタの読みが正しけりゃ、“カダス”にはあの蜘蛛共すら凌ぐ力が眠ってるんだろう?」

 

「ま、まぁ……蓋を開けてみなきゃ分からないけど、恐らく……」

 

「恐らくねぇ……」

 

 女がジト目で船の計器のある操船室でガチャガチャやり始めた男の背中を見やる。

 

「……本当に感謝してるよ。アネさんには……オレはさ。これでも結構……いや、かなりか。自分でも思う程度には善人だと思ってたけど、本当の善人を前にしたら自分が如何に薄っぺらいか分かっちまうし……」

 

「何でそこで卑屈が入るんだよ。やれやれ……まだまだ回復には程遠そうだね」

 

「ぅ……でも、本心だ……あの子達を地獄に送ったオレが長年の夢に手を掛けてる。何処かでくたばってたって誰からも文句が出ない身の上なのに……恵まれてる……嫌になるくらい……」

 

 男が操船の手を止めて俯く。

 

「ずっと聞かずにおこうと思ってたんだけど、良い機会だから、聞いておこうかね。あの子達って誰だい」

 

 そのアネさんの問いに男が僅かに沈黙した。

 

 そして、片手を顔に当てながら天井を仰ぐ。

 

「オレが救ったと思ってた亜人の子達だ……」

 

「ぁあ、そういう事かい」

 

「軽蔑しただろ? 悪い……」

 

「アンタ、考古学者なんだろ? どうして関係があるんだい?」

 

 男が息を吐いてから顔を俯ける。

 

「勇者の坊主とは少なからず関係があったんだ」

 

「勇者? まさか、アンタ勇者一向の協力者だったのかい?」

 

「ああ、そうだよ……古の遺跡を巡る旅には一緒に同行してたんだ。その後、遺跡の技術関連で教会とも繋がりが出来てた」

 

「それで?」

 

 男がまた沈黙を挟む。

 

「……亜人の難民の子達を何とかしてやりたかった。それだけだったんだ。潜ろうとしていた遺跡の表層に住み着いてた親を失ってた孤児が沢山いて……何とかしてやりたくて……オレは……」

 

「もう言わなくていい。辛い事を聞いちまったね……」

 

 その言葉に思わず男が女に振り向く。

 

 その顔に女はやはりまだ男は絶望しているのだろうと静かに相手を見やる。

 

「………オレは人でなしではないと自分を思いたかった。でも、ずっと遺跡にしか興味が無かったから……教会の噂とか。預ける相手の色々な情報を集めもしなかった。ただ……大丈夫だと……あの子達に……っ」

 

 そこまで言って、口元を抑えた男がヨットの際に駆け寄って大きく吐いた。

 

「あ~あ~朝食が勿体ないったら……」

 

 そう言いながらも、すぐ傍によった女がその背中を優しく摩る。

 

「っ……っ……わ、悪ぃ……」

 

「無理せず。ゆっくりしな。言いたくない事は言わなくていい。別に問い詰めてるわけじゃないんだ。アンタの事をちゃんと知っておきたいと思っただけさね」

 

「分かってる……でも、言わせてくれ……これから、何があるか分からないからこそ、アンタに聞いて欲しい……」

 

「分かった。椅子で横になりながらね」

 

「あ、あぁ……」

 

 男がチェアに横になり、遥か天を貫く緋色の陽炎を見る。

 

「………亜人との最終戦争だって言われて、オレの発掘した技術が必要だって……それで神殿所属の防衛隊に……民間協力者って形だった……」

 

「神殿徴用かい……」

 

「ああ、それで色々と亜人の子供を保護する機会が多くて……」

 

 女は男の独白を静かに聞いている。

 

「でも、戦争の勝利目前だって湧いていた。他の連中と同じように……いつか、あの子達に会いに行こうと思ってたんだ」

 

 男の目が瞑られる。

 

「そこで魔王軍の登場かい?」

 

「あぁ……誰もが知る通り、勇者は敗北、国家連合の最大戦力は撃破された。そして、その報が届いている最中、魔王軍が襲来……」

 

「あの蜘蛛共と戦ったのかい?」

 

「ああ、戦った。強かったよ。オレらなんかまったく歯が立たないくらいさ。でも、そこでオレは知ったんだ。オレが……オレと同じようにしてた連中が、今まで何に加担してたのかを……っ」

 

 男が片腕で顔を隠す。

 

「きっと、あいつらは勇者一向に連なる連中を無力化する為の方策をやってただけなんだろう。でも、さ……そう分かってても……はは、何一つオレはあのやたらユーモラスな口調の看板に書かれてた事実に言い返せなかった。見せられた情報に何一つ反論出来なかった。事実を突き付けられて、それがあいつらの手練手管だって分かってても何も……」

 

 腕の下から幾つか雫が頬を伝う。

 

「辛かったね……」

 

 女が男の肩に手を置く。

 

「本当に辛いのは……オレじゃない。でも、本当にオレが絶望したのは……本当にオレが死にたくなったのは……全部終わった後なんだ……」

 

「どういう事だい?」

 

「オレ達が敗北して、武装解除してから少し経った頃。気になったんだ……あの子達の事が……せめて、謝りたかったんだ……」

 

「まさか、行ったのかい?」

 

 女が自分に鞭打つような行動に何処か不憫そうに成り掛けた顔を改めて尋ねる。

 

「……行った。行ったよ……怖かった……でもさ。あの子達……オレを罵倒してくれないんだ」

 

「え?」

 

「罵って欲しかった。消えろとクズ野郎と言って欲しかった。そうであったなら、オレは間違いなく死を選んでたし、そうしても何ら良かった……でも、でもな」

 

 男が腕を下げて、口元を抑える。

 

「あの子達は……オレにお礼を言ったんだ……それも過呼吸になってさ……苦しそうなのにお礼を言われたんだ……あの子達には事実だけを伝えてるって、施設の人達も言ってた……そこでようやくオレはオレが……蜘蛛達が言ってた通りの人間だと気付いちまった……」

 

 顎を伝う雫が流れ落ちる。

 

「オレは……あの子達に自分が楽になる為に会いに行った。でも、あの子達はオレに……自分の兄弟姉妹が死んでるってのに……もう会えないってのに……ありがとうって……怖いはずなのに……苦しいはずなのに……オレにお礼を言ったんだ!!」

 

 ブルブルと震え始めた男が砕けてしまいそうな表情で己の顔面を掴む。

 

「っっ……オレは偽善者だった……自分が気持ちよくなる為に“可哀そうな亜人の子供”を出汁に使ってた。あの蜘蛛達が言う通りの……偽善者だったんだ!! 勇者を助けた考古学者って肩書が心地良かっただけの若造だった!!」

 

 そこでようやく男が堪え切れないものを吐き出したようにグッタリと身体を弛緩させる。

 

「あの子達は……すぐに蜘蛛達の治療で良くなってたよ……施設の人はオレを殺人鬼を見るみたいな目になって……すぐに追い出された。当然だよな……子供にあんなことをさせて当然のように感謝なんかされる“教会の関係者”だもんな……ははは、オレは本当の意味でクズだったんだ……」

 

「………」

 

「それから何もかもどうでも良くなった。でも、あの子達にこれ以上負担何か掛けられないだろ? 自分達のせいで死人が出たなんて、そんな事には成って欲しくなった……」

 

「だから、酒浸りで館の前で寝てたのかい?」

 

「全部捨ててさ。何処か遠い場所で氏名不詳のまま……それでいいと思ったんだ」

 

「はは、そうかい。じゃあ、その子達に感謝しないとね」

 

「え?」

 

 思わず男が顔を上げる。

 

「アンタとアタシはそうでなきゃ出会わなかった。人の出会いは一期一会だ。アンタが最低のクズ野郎でなければ、此処にはいない。アタシが暇を持て余す金持ちじゃなかったら、此処にはいないのと同じようにね」

 

 女がウィンク一つ。

 

 似合わない罵倒までしてくれる女は正しく彼には女神か。

 

「アネさん……」

 

 男の顔がクシャクシャに歪んだ。

 

「さ、辛気臭い顔してないで仕事しな。過去は過去。変えられないもんだよ。全部飲み込んでまだ生きてるなら、生きないとならない。アンタが協力した勇者一向が敗北して尚、魔王軍の円卓の席に収まってるようにね」

 

「……ぁあ、そうかもしれない」

 

 男が腕でそのクシャクシャな顔を拭う。

 

「顔洗って来な」

 

「あ、あぁ、済まない」

 

 男が自分の顔面が酷い有様なのに気付いてヨットの水場へと向かおうとした時。

 

 ドンッと突き上げるような音と共に波がヨットの周囲に起き始めた。

 

「ランド!!?」

 

「アネさん!? く、潮流の最終加速に乗った?! こっちへ!!?」

 

 2人が同時に揺れるヨットの最中にも操舵室へと駆け込んで鍵を掛けた。

 

「大丈夫なのかい!? こ、こんな揺れ初めてだよ!?」

 

「この揺れは単なる潮流に捕まっただけのもので本流には後3分で乗る!! あの手記が本当だとすれば、此処から更に加速した潮流で1日で1000里近い距離を移動する速度に達す―――」

 

 ゴッと男が操舵輪に頭をブツけて思わず流血しながらもすぐに室内に掛けてあった手拭を額に巻いた。

 

「アンタ!? 手当を!!?」

 

「い、いいから、今此処から手を離したら、二人とも助からない。この潮流は他大陸の一部にある巨大な海底火山が生み出すものなんだ。上昇気流と大量の低気圧が渦巻く地域に巻き込まれながら、最終的に空間が歪んだ海域に到達する!!」

 

「えぇ!? 他大陸にそのまま行くんじゃないのかい!?」

 

「他の大陸への航路が殆ど難所なのと一緒だ!! 空間の歪んだ場所を突っ切って、一気に行けないはずの大陸に到達するんだ!! 神代の頃の船は今時の船とは違って波の衝撃で壊れない!! だから、この船が欲しかったんだ!! ベルトを!! 正反対の手すりの二か所にフックを付けて固定して!!」

 

「わ、分かったよ!?」

 

 言っている合間にも彼らにも体感出来る程に巨大な加速がヨットに掛かり、猛烈な慣性に従って船が加速し続ける。

 

「こ、こんな速いのかい!? 空飛んでる鳥より速いんじゃないかい!!?」

 

「はは、この船の最大船速よりは遅いさ。でも、この加速が無いと船が低気圧内部で波を突っ切れない。加速し続ける限りは船体強度が持つなら進める!!」

 

 彼らの乗った船が猛烈な勢いで遠方の暗雲立ち込める海域へと加速し続けていく。

 

 400ノットを超えた辺りから、その加速に耐えた二人の全身は汗びっしょりの有様で後ろにソレが流れ落ち、顔が変形し始めていた。

 

「ぐぐ……600、700」

 

「これ本当に大丈夫なのぉおお!!?」

 

「右回りの海流に入った!! このまま渦の中心に突っ込む!! 衝撃に備えて!!」

 

「えぇええええええええええ!!?」

 

 彼らの乗った船体が猛烈な加速のままに巨大な渦の中心へと飲み込まれ三周程加速しながら中心に突っ込んだ。

 

 そして―――。

 

 *

 

 24の大陸。

 

 24以上の文明。

 

 神代の年代記には常に人間がいる大陸の最大個数だけは載っている。

 

 それ以外は無かった事にされているというのも多くの考古学者が知る俗説だ。

 

 神代の時代が終わり数百年。

 

 しかし、それよりも大昔から神代は続いて来た。

 

 人の時代を迎えて未だ正しく数百年しか経っていない。

 

 従って、歴史的に言えば、失われた大陸の名前や数は多いらしいとは各大陸の者達は知っているが、それなりに聞こえて来る外界の大陸の話からして、人類は文明を進めつつあるのだとも理解していた。

 

 科学技術が発展した大陸。

 

 魔力運用体系が発達した大陸。

 

 神の力が発達した大陸。

 

 独自の技術体系を生み出した大陸。

 

 しかし、多くの大陸には同じ伝説がある。

 

 ノクロシア。

 

 神代の時代にあった伝説の都。

 

 旧き者達の都。

 

 それだけはどの文明にも文献や遺跡に名前が残る。

 

 故に人々は旧き者達を始祖と崇める者もあれば、古代人と定義する者もいるし、その子孫であると自負する者もいる。

 

 だから、多くの人々は知らない。

 

 神代の頃。

 

 24の大陸なんて数ではない。

 

 それに倍以上の大陸がこの世界では人の世であった、なんて事実を知らない。

 

 その事実を探求する時、最後に行き付く多くの疑問を神々は黙殺し、神の使徒達は消し去ろうと関節直接を問わずに情報の削除を行っている。

 

 世界が巨大隕石で滅ばなかった昨今。

 

 人々は遥か伝説のノクロシアを思い出した。

 

 その天を貫く緋色の塔が何処の大陸からも蜃気楼のように観測出来たからだ。

 

『まさか、本当にあの大岩が消え去るとは……』

 

『他大陸の動向を調査しておりますが、大陸からの逃走者達の半数が戦力を一度、大陸に引き返した後、あの塔を目指して出航したようです』

 

『先進七大陸も今や混沌の坩堝。しかし、滅びが滅ぼされた。伝説の都が蘇ったとしか思えませんな。大臣』

 

『……魔の大陸。追放者達の大陸。あの大陸の者達ならば、我らよりもノクロシアに近いのかもしれません』

 

『あの蜘蛛達の動向は?』

 

『未だ活動実態を掴めておりません。ですが、幾つかの他大陸に派遣した者達が蜘蛛の集団が活動している状況を観測しました』

 

『つまり、奴らはあの大艦隊を沈めた後も?』

 

『他大陸へと密かに潜入。エム大陸にも巣くっているのやもしれません。あの不可解な程の中央部の混沌具合は……単なるゲリラが国を食う程に化けてしまった。本当にゲリラの力であるのか疑わしいと言わざるを得ません』

 

『エム大陸の首脳連合に伝えるべきかどうか迷いますな。首相』

 

『実を言えば、大不況に差し掛かった昨今。空売りしてましてね。国銀に命じてあるのですよ。国家予算の12年分程をね』

 

『おお、怖い怖い……先進大陸の一角が堕ちれば、我らにも新たな芽があると。そういうわけですな?』

 

『彼らは大きく成り過ぎた。戦力も資金力も……此処で一度グレートリセットが欲しいところだ』

 

『大不況、大破局、あるいは……大絶滅は回避したものの、というところか』

 

『左様。エルフの大陸は今や地獄と化し、他の大陸も似たり寄ったりだ。此処で全ての大陸を引き離す躍進が果たせれば、人の世の覇権は……ふふ』

 

『悪い顔だ。こんな顔はあの蟲共にも出来そうにありませんな。今、あの蟲共を殺せそうな薬剤の開発も進めさせています。如何に恐ろしき者だろうとも古今東西の毒という毒を試せば、何処かで駆除用の薬くらいは出来るでしょう』

 

『(・ω・)(人の世の覇権は誰にも握らせない聖剣として、永劫グダグダ人類が滅びるまでお預けになるのが蜘蛛の会議でこの間決まったんだよなーという顔)』

 

『(;^ω^)(ちちを早く見付けないといけないのに欲深人類の管理も片手間にしなきゃいけないとか……自分から転落人生マッハコースを所望するなんて奇特な権力者だなーという顔』

 

『(|ω|)人を呪わば穴二つ。蜘蛛を呪わば、穴無限という言葉を送っておこうという顔)』

 

 紅蓮の大河と朧なる緋色の月に伸びたる巨大な塔は噂ではなく現実。

 

 今まで隕石騒ぎで世間が荒れていた場所もようやく状況が落ち着いて来て、1か月後の現在……多くの人々は取り合えず世界が滅ばなかった理由だと思える巨大な蜃気楼を目指して遠征隊を送る者達が後を絶たなかった。

 

 ただ、一部の大陸では、そんな事をする必要は無いと“上”からお達しが出ていたりもした。

 

 神々の神殿がそれを制止したという理由ではない。

 

 その“上”の人が丸っと塔を生み出した勢力の人だったりする場合、別に騒ぐ程の事でもないとお触れを出したのだ。

 

『この人相書きは何だい? マスター』

 

『それがよぉ。魔王軍からのお達しなのさ。このビラをとにかく貼りまくれってな。何でも魔王様達の探し人なんだと』

 

『でもよぉ。生死問わずって書いてあるぞ?』

 

『あぁ~~これは中身造ったヤツが悪いわ。恐らく、勘違いしてんじぇねぇか? 探し人であって、罪人じゃねぇはずなんだが……もしかして、ハンター用の手配書刷ってる印刷所に仕事頼んだんじゃ?』

 

『オイオイ……これで死んで上の連中に引き渡されたりしたら……』

 

『一応、魔王軍の伝手に伝えとくぜ……はぁ、何かあの蜘蛛達って抜けてんだよなぁ。そこが憎めないという感じではあるんだが……』

 

『そういや、新しい演目も来たんだよな?』

 

『あ? ああ、アレか。何か話が吟遊詩人達の間で話題になって、演目になったらしいな。明日からだぜ? 太陽の女神と月貫く緋色の塔って題名らしい』

 

 絵物語のような伝説の都の上にある国の事を彼らの上は民間人に笑い話の如く語って聞かせた。

 

 月を掌握した蜘蛛の話。

 

 太陽の神を落とした英雄の話。

 

 あるいは神々を遂に打倒出来ずに時間を稼がれた蜘蛛の親玉達の話。

 

 ただ、そんな“上”は大慌てな様子でこうも語るのだ。

 

『つД`)(迷いご主人様を探しています。この顔を見たら、迷わず連絡してねと看板に張る探し人のポスターを輪転機数百台をフル回転で刷りまくる顔)』

 

 蜘蛛が蔓延るようになった幾つかの大陸。

 

 今やあちこちで勢力として台頭したり、裏から人々を操り、勢力の拡大を推し進める“邪悪なる魔蟲達”が涙目でプルプルしながら毎日毎日仲間達と共にあちこちで超音速探査に明け暮れているという事実を人々は知らない。

 

 風より音も尚早き蜘蛛脚が、最新技術を有する超音速戦闘機よりも尚速き翅が大陸を毎日毎日見回り、自分の主を探している様子は彼らと仲の良いモノたちにしてみれば、初めて見る蜘蛛達の狼狽えた感情的姿であった。

 

『(。-`ω-)………』

 

 ゴライアス。

 

『(∴|ω|)………』

 

 フレイ。

 

『(≧ω≦)………』

 

 ルーエル。

 

『( ̄д ̄)………』

 

 オネイロス。

 

『(◎Д◎)………』

 

 イージス。

 

『(―ロ―)………』

 

 ヘリオス。

 

 六人の蜘蛛達。

 

 セブンス・ヤーンのほぼ全てが緋色の塔の中層階に自身の身代わりとなる糸蜘蛛を派遣して会議を行っていた。

 

『(。-`ω-)まず以て、真正神の撃滅が敵わなかった事を反省する以外無い。ほぼ6割の相手に対して勝ち切れなかった事は我らの実力不足だ』

 

 ゴライアスから溜息が吐かれる。

 

『(∴|`ω|)解析結果から言えば、決死の真正神相手に力が削れていても技能が上回っていても勝てなかったのは連携戦術を絶たれた事が大きい。つまり、今後は連携破断対策と個人の力の底上げが重要だ。この蟲畜が勝ち切れないという事は他の個体達も単独個人や少人数では命懸けの小神には勝てないだろう』

 

 フレイがしばらくの復興に時間を掛けている合間に蜘蛛達と作成した情報を資料として虚空に回しながら並べていく。

 

『(≧ω≦)ガシンは昨日起きたばっかりだから、同じ規模の襲撃が在ったら、さすがに耐え切れないよ。時間が必要だよー』

 

 ルーエルが情報にガシン・タラテントが病室でアルマーニアの内縁の妻(ほぼ確定)の巨乳に圧し潰されている映像を追加した。

 

『( ̄д ̄)……大神を次元下降させて、本体を露出させた影響が出ている。高次元領域からの干渉が増大中。空間の歪みの先から天使が一部排出される事案を複数確認。幽世との境が曖昧になったせいで呪霊の強度が上がり、全域で霊力防御用の呪紋結界の敷設を推進中』

 

 他の蜘蛛達が初めて喋ったオネイロスに『(・ω・)……お前、もう喋れたのかという顔』になったが、無視して当人は続ける。

 

『( ̄д ̄)……中央域からの王群の戦力移動を確認。緩衝地帯となった融解沼地帯を数の暴力で橋を掛けている最中。現在、幼女遊撃隊によって連日、王群の漸減と殲滅を実行中……橋の建造監視は継続』

 

 オネイロスが追加した情報内では最終防衛ラインとして地下でスタンバイしていて出番が無かった2人。

 

 たいちょーとへんきょーはくのガッチリタッグを組んだビーメを筆頭にした機甲戦力が次々に飛び立ち。

 

 中央域から沼地地帯を超えようと肉体を連結して橋を掛けようとしている蟲達を上空から魔力弾や爆撃用の通常兵装である機雷を投下して、沼地に落としまくり、根本付近にいた群れを粗方吹き飛ばして帰還する様子が映し出されていた。

 

『(◎Д◎)父の居場所について、現行で到達した全大陸及び周辺海域での探索と観測を実行中。監視網の構築率は4割で現在更に増加策を実行中』

 

 盾のような体のイージスが渉外担当者として監視網の構築を告げる。

 

『(◎Д◎)遠征戦力が逐次、増えた個体と共に捜索範囲を毎時0.001%以上拡大中。神を撃滅した個体とコンタクト後、勇者蜘蛛、仮個体名称シェナニガンの配下を随時各大陸に派遣。ニアステラとの国交樹立を実行中。同時展開されている新人類取り込み策はヘルメースに一任』

 

 現在、蜘蛛達が到達した大陸は合計で20程であったが、更に外界の神の力が及ばない大陸とやらにも戦力派遣する計画がお出しされた。

 

 勇者蜘蛛(仮)。

 

 シェナニガンと現地で呼ばれている個体が増やした天使蜘蛛と天使達が次々に巨大な樹木の船に乗り込み。

 

 大量の物資を積んでいるところが映し出される。

 

『(◎Д◎)大神達の言動から邪神と呼ばれる存在に滅ぼされた大陸への調査団派遣をシェナニガンに委託。天使からの情報に依れば、神世の頃から争ってきた邪神群の多くは既に破片から更なる小破片が分離し、独立個体、独立種族として知性のある者も無い者も多くが生態系化している模様。ただし、大神勢力から大陸を奪った後に自滅、もしくは互いに争い続けているとの事であり、遺伝資質、魔力、技能、能力、文化などの取り込める要素を調査する必要があると判断』

 

 イージスは七隻の樹木の巨大船が出航する映像を虚空に流す。

 

『(―ロ―)月の侵食率は現在74%。重力均衡を崩さずに惑星との相対位置を保持し、静止衛星軌道に無理やり載せた影響で本星との重力均衡に歪が発生。月の崩壊し始めていた内殻の再構成と固定化に半年を要する。更に全ての問題の是正まで凡そ4年。侵食終了するのは2か月後と判断』

 

 遅いと思わなくもない蜘蛛達であったが、それでも頑張っている方だろうと全力を尽くしているのは分かるので全員が黙って聴く。

 

『(―ロ―)周辺領域に拡散させている大気層化したデミ・ストレンジ・レッドによる周辺隕石群の取り込みと惑星周回軌道への調査派遣は42時間後に開始。分体派遣による威力偵察準備は完了。但し、一点の懸念を表明する』

 

 ヘリオスが出した映像が蜘蛛達全員の目の前に投影される。

 

『(―ロ―)本星は直径で凡そ400万km程と推計される。ただし、この異常に巨大な星のほぼ7割以上が積乱雲及び大量の空間の歪み、重力異常、光学観測不可能な電磁波及び光波による渦によって包まれており、通常惑星との差異も大き過ぎる為、事実上は観測不能領域と考えて欲しい。妖精瞳と第三神眼はどうやら神の力……恐らく邪神の力に阻まれて通らなかった』

 

 ヘリオスが月からの……文字通りの“衛星写真”の情報を開示する。

 

『(―ロ―)人が住まう大陸の殆どの地域はノクロシア内部の情報からしても旧き者達による様々な異常の是正が行われた後に入植されたのではないかと推測する。これらの異常は恐らく邪神の破片によるもの……邪神の破片の消去、もしくは完全な封じ込め。安全な利用方法が必要となる可能性が高い』

 

 ヘリオスが次々に惑星の上に観測出来る数個の巨大な渦の中心域に薄紫色の光が煌々と灯っているのを確認させる。

 

『(―ロ―)各大陸の破片の大本はともかく。ノクロシアの話を含めて考えた場合、大神よりも邪神を滅ぼす研究の方が必須と思われる。また、父がそういった大陸や場所に転移している事も考えられ、仮名称【邪神大陸群】への調査団派遣は極めて迅速に行い。その上で制圧可能か。可能だった場合の扱いなどの取り決めが重要と愚考する』

 

 蜘蛛達がこうしてガヤガヤと会議で審議をしている最中。

 

 1人だけ加わっていない蜘蛛。

 

 翡翠色なヘルメースは新人類の大陸で活動中であった。

 

 蜘蛛達が会議をしている最中も新人類アークの文明に潜入していた彼は“現地協力者”の力を借りて、アークの大陸首都の一角へと出向いていた。

 

 周囲には巨大なスクリーンが広がり、お昼時のワイドショーが虚空に展開されている。

 

『―――つまり、現在の遠征はもはや無用のものであるとお考えなのでしょうか? 教授は?』

 

『はい。軍発表から見てもほぼ間違いなく。軍事侵攻する意味がありません。大量の死者に物資弾薬、ゴーレムの代金だけでもう国家予算の2割程が借款で賄われており、これ以上の支出は本国の経済動向的に芳しくないのは他の経済専門家からも一致した意見として出されています』

 

『ですが、世界が滅びるというのは実際に起こり得ると我らは知ってしまいました。それを放置すると?』

 

『そうではありません。やり方が問題と言っているのです。神々は世界を見捨てるつもりなのではと学者達は考えています』

 

『え!? いや、これは、ちょ、シーエム入れ―――』

 

『お嬢さん。これは神官の方から聞いた話ですよ』

 

『な―――』

 

 映像が一瞬乱れたが、元に戻る。

 

『神々はこの星を逃げ出そうとしているという話です。私はさもありなんと思いましたよ。だって、そうでしょう? 神々が勝てるなら、そもそも我らを使う必要は無いのです。それにあの大岩は何の為に来たのか? 一部の神官達の間では滅びた大陸の大神が世界の滅びを防ぐ為に落としたという話です』

 

『そんな!? あんな規模の事を神々が?!』

 

『この星に住まう多くの者達の為に……彼らは犠牲を許容してでも破滅の源を破壊する方法を取ったという言質を一部の神官から頂きました』

 

『そ、そんな……』

 

『問答無用で襲って来る太古の邪神と言うのならば、いざ知らず。我らの大陸が今派遣している戦力がいるのはそれとは違う。亜人の国々だそうです。そこに対して大規模な攻勢を掛け、破滅の元凶を調査し、破壊する。その為に周辺国を攻撃していたわけです』

 

『………』

 

『ですが、軍の情報筋に依れば、現地の国家群はそもそも破滅に対して戦う準備をしていた可能性が高い。その為にこそ戦力を高めていた最中だったという話も出ています。つまり、我らは同じ目的を有していた。もしかしたら、共に戦えたかもしれない存在相手に喧嘩を売り、その上で被害を出してしまった』

 

『ですが、蜘蛛ですよ!? 蜘蛛!!? 蟲!? あんなのとどうやって共存しろって言うんですか!!?』

 

『お嬢さん。侮ってはいけない。軍の情報にもある通り、彼らは高度な知性を有し、強大な文明を築き上げ、巨大な塔を建築し、恐ろしき能力であらゆる兵を屠るツワモノです……いいですか? これが単なる害虫相手ならばまだしも……文明を有する敵を攻撃する事は互いに滅びる可能性が高い危険行為なのですよ』

 

『う……で、でも、アークの方が被害は大きいんですよ!!?』

 

『先に攻撃したからでしょう。そもそも、現在の逗留地は亜人の国家が戦乱で瓦解して以降、避難していた時に我らアークが勝手に占拠して陣地化したものだという話まで出ているんですが?』

 

『そんな―――』

 

『そりゃ誰だって怒るでしょう。いきなり現れて……避難していたら、国の首都を占領されてるわ。いきなり攻撃してくるわ。ついでに宣戦布告も無しに拠点に攻撃を仕掛けて制圧するわ。これが我らへの攻撃だったら、怒らない方がどうかしているのでは? 我らは彼らからすれば、野蛮で卑怯な攻撃を仕掛けて来た文明としか映らないでしょう』

 

『な、なら、どうしろと!?』

 

『普通の戦争のように講和すればいいのですよ。神々の事はこの際関係ありません。破滅に対して無策で突っ込んだ軍とそれを先導した神々には疑問しかない。賠償は後々の話でいいのです。問題は喫緊の課題として世界を滅ぼすものとやらの情報が殆ど入って来ない事態であり、これらを周知し、多くの大陸と共に対処する。その為にこそ、今やっている宇宙開発とやらに突っ込んだ資金を使うべきでは?』

 

 街頭の虚空に映し出された朝のニュース番組。

 

 誰もが立ち止まって見ていた番組はしばらくお待ち下さいという画像に切り替わっていたが、音声を切り忘れていたのか。

 

 ざわつく最中にも何やら警察が突入してきたらしく。

 

 怒号と悲鳴と乱暴は止めたまえ!!という教授の叫びが途中まで聞こえていた。

 

 こうして、高度文明を築き上げた新人類アークの大陸には暗い影が落ち始める。

 

 そう、今まで戦争だ何だと高揚していた全ての人々が戦争に疑問を持ち。

 

 同時に内部から現れた告発者や多くの有識者達の中でも学者として有名な者達が軍の派遣に疑義を呈し始めたのだ。

 

 芳しくない戦況。

 

 世界を滅ぼしそうな隕石が神々の仕業。

 

 だなんて、恥も外聞もなく神官達が顔を青褪めさせるには十分なインパクトのある告発映像であり、それが大陸中に一瞬で広まってしまった以上、国も軍も今までのように全てを隠して押し通す事は出来なくなっていた。

 

 何故か? 

 

 彼らは新人類。

 

 悪意よりも善意を求める者。

 

 それは同時に後ろ暗い事へ彼ら自身が脆弱である事を露呈する事実なのだ。

 

 今まではそれを自分達の優秀な遺伝資質や社会制度、個人の能力の高さが補っていたが、外部に自分達が悪さをしに行くという話になれば、これは正しく自縄自縛となっていくのは間違いない話であった。

 

「何だかなー。仕込みとはいえ、情報工作で世論を反戦に傾けようとかさぁ。これって偽英雄の仕事の範疇なのか? ヘルメース? ヘルメェェス……」

 

『ッ、(゜д゜)ねてたー!!』

 

「寝てたんかーい。はぁ~~滅茶苦茶大変だったのは聞いてたし、見てたが……そんなに疲れてたのか……」

 

 翡翠色の蜘蛛がアーク軍の偽英雄のおっさんの襟の中に糸蜘蛛のように体を小さくして、糸電話で直接に男の耳に声を届ける。

 

『(・ω・)れんぞくせんとーで魔力と霊力をしょーもーちゅー。今は蜘蛛達もおやすみちゅー』

 

「まぁ、まさかまさかの真正神に勝ったって言うんだから、そりゃそうもなるよな。大金星なわけだ。で? アークの大陸にもあの人相書きを回して大丈夫なのか? ご主人様とやらを他大陸の世紀の犯罪者とか言って」

 

『(|_|)見つけるのがゆーせん。背にはらはかえられない』

 

「で、何だが……各種の反戦論者の有識者に色々と情報送ってみたわけだけど、コレでウチ止まると思うか?」

 

『(=_=)止まらなくてもいー。アークの技術力を一部使う為に社会のどーよーを誘ってるだけー』

 

「技術力を使う?」

 

『(-ω-)/あれー』

 

 ヘルメース。

 

 近頃はヘルメスとかヘルちゃんとか。

 

 知っている人々から人格が幼いので俗称で呼ばれたり、縮められて呼ばれたりする蜘蛛は片脚でチョンチョンと偽英雄の左手にある研究所らしき場所を指差した。

 

「何も言わずに此処まで来たが、あの研究所何なんだ? 寡聞にしてオレは知らないわけだが……」

 

「(^○^)かんそくそーちのけんきゅーじょー」

 

「ご主人様とやらを見付ける為の観測方法をアークからちょろまかす気か? だが、どうやって? さすがに軍人なだけのオレにポンとは貸してくれんだろう」

 

『(/・ω・)/おぜんだてーはおわってるー。ごーごー』

 

「はいはい……どうなる事やら……」

 

 こうして嵐の吹き始めた新人類のいる大陸はゆっくりと地獄の釜への道を歩み始めたのだった。

 

 *

 

「ぅ……アネさん?」

 

 ランドと女に呼ばれていた男。

 

 無精ひげの男が目覚めた時。

 

 まず何よりも先に突き刺さるような寒さに体が一瞬縮んだ。

 

 咄嗟にバネ仕掛けの人形のように起き上がった時。

 

 頭を打った彼は再び寝台へと沈み。

 

 そこが狭い二段ベッドの一段目だと気付いた。

 

 見慣れたヨットの船内。

 

 しかし、あまりの寒気に男が思わず凍えた体を震わせ、同時に自分の上に掛けてある非常用のブランケットを体に巻き付けるようにして悴む手で冷え切った手すりを掴んで、同じように冷えた扉のノブを回した。

 

 こうして彼が閉じられた狭いはずの船内の通路に出た時、甲板に上がる為の扉が〆られているのを見て叫ぶ。

 

「アネさん!! 何処だ!! アネさん!! メイジェーン・シェフィールド!!」

 

 初めて彼女の名前を呼んだ気がした彼が耳を澄ますも声は無く。

 

 また、自分が海水浴用の水着一枚なのをようやく理解した彼は部屋の中に戻って、着替えを着込んだ。

 

 幸いにも厚手のシャツと丈夫な革製の上着、厚手の労働者用の長ズボンに防水性のブーツまであったのは行幸だろう。

 

 全て遭難しても熱帯地域で活動出来るようにと揃えられた品だ。

 

 生憎と耐寒用のものは無かったが、長袖と上に着込む上着とズボンがあれば、何とか活動するのに支障は無いだろう。

 

 彼が緊急時用のサバイバルキットを入れた浮袋尽きの登山用リュックを耐水布で補強したものを背負い。

 

 温度調節用の肉体を防護する魔導を表皮に掛けて、跳ね上げ式の甲板への入り口の蓋を開いた。

 

 一瞬、吹雪を予想して身構えていた彼であったが、肩に掛けたロープの束を掴んでいた腕が僅かに弛緩する。

 

 外はあまりにも眩しく。

 

「っ……」

 

 ゆっくりと階段を上がった彼が見たのは一面の銀世界。

 

 白銀の氷に閉ざされた巨大な浜辺と垂直に切り立った氷の壁が遠方に見えるロケーション。ヨットは氷の最中に座礁する形で乗り上げていたが、氷床の段々畑のような一角に打ち上げられており、極寒ながらもまったく雲の見えない空は蒼く。

 

 照り返す日差しに彼の目は細まる。

 

「氷の大陸? あの日誌では南国の島だったはず……あの空間の歪みの先はもしかして繋がる先が時間や環境で変化しているのか? あるいは……」

 

 男が危険物取扱い用の厚手の手袋でロープを握り直し、慣れた手つきで大きなフックをヨットの端に掛け、降りられそうな場所を探した。

 

 船首の下が普通に下りられる様子だったので食料と水の事を念頭にして、5時間までの探索を己に化す。

 

 必要以上に知らない場所で動く事は死に直結する。

 

 遺跡探索者として勇者達を案内していた本職の研究者である彼はフィールドワークは手慣れたものだ。

 

 今はまだ見える範囲に雪は積もっていないし、氷の大地にも対応出来るスパイク付きの靴もある。

 

 本来は崖昇りで魔導を用いて踏破する為の専用品だったが、今は滑らない靴底というだけで十分であり、男が数歩歩いて氷に傷一つ付かないのを確認し、絶対肌を触れさせないようにせねばと気を引き締めた。

 

 氷の温度が低過ぎて万年氷床と呼ばれるような極低温の硬い氷だと分かったからである。

 

 適応していない生物が触れたり、身を打ち付ければ、汗で引っ付いた肌がべりべりと破れてしまうかもしれないし、あるいは骨折するだろう。

 

 そんな予想は彼に改めて白銀の世界を危険地帯だと思い起こさせる。

 

「アネさぁあああああああああん!!」

 

 叫んだ声が木霊のように戻って来ないのを彼が確認し、雪は積もっていないが音を吸収する何かがあるのを確認する。

 

 声が響かないとはつまり……助けを求められないという事だ。

 

 足跡や人の痕跡を探した彼はまず船の周囲をぐるりと回り、座礁した後に一人分の足跡が割れた氷の一部を撥ね飛ばして歩き出したような痕跡を発見。

 

 北の巨大な氷の岸壁へと向かうルートへと入った。

 

 氷ならば、クレパスのような裂け目がある事も加味して、リュックから木製の少し長めの細工棒を一本取り出して伸ばし、自分より数十cm前を叩きながらの行進が始まった。

 

「……それにしても此処は……これが極地ってヤツなのか?」

 

 コンコンと前の床を叩きながら進む彼は遺跡の探検家、研究者としての側面から様々な地域の情報を収集しているが、未だの殆どの大陸の人間が言った事の無い大陸外の外界の一つ。

 

 惑星の南極北極という南北の終点にある地域の話を思い出す。

 

 歩きながらも迅速に手掛かりを見付ける為、目を皿のようにして景色と足元を俯瞰していた男は数百m先の氷の壁に穴が開いているのを確認する。

 

 足跡というよりは痕跡もそちらに近付いている事を彼に示していた。

 

 焦らずに歩き続けて数分。

 

 ようやく辿り着いた氷床の洞穴は人が並んで通れる程度には大きく。

 

 10m程であって、トンネルのように奥に続いていた。

 

「………」

 

 途中で拾っていた氷の礫を思いっ切り滑らせるように奥へと投げてみる。

 

 しかし、音はカランカランと滑って奥に向かっていく。

 

 何粒が氷の破片を手にした彼は魔導による明かりを頭上と前方に二つ付けるスタイルに変更すると杖をしまって音響観測用の魔導も同時に立ち上げ、僅かな氷の軋みも見逃さないように慎重に奥へと進んだ。

 

 落盤やクレパスがある可能性。

 

 それを承知で彼が奥へと進む。

 

 氷床内部は気温が一定である為か。

 

 外よりは温かい。

 

 しかし、明らかに薄暗く奥に奥に進んでいくと数十m程で大きな空洞に出た。

 

 彼が生物の事を考慮して視認モードを赤外線に切り替えて明かりを消す。

 

 ぐるりと空洞内部を見渡すと巨大な領域は少なくとも30m四方程もあり、その壁と中央地帯には朽ちた木製らしき廃墟のようなものが見えた。

 

「これは……此処には人がいるのか? あの足跡は……アネさん?」

 

 彼が慎重に周囲を観察しながら廃墟へと入り、生物の気配が無いのを確認してから明かりを付ける。

 

 赤外線を視認していた瞳に映っていたのは氷とは違う温度となっていた腕輪。

 

 メイジェーンの頭文字である旧き者達の文字でMと刻印された白い腕輪。

 

 何か特別な石で造られていてお気に入りなのだと付けていた代物だった。

 

「此処に落として奥に?」

 

 彼が廃墟の先にも洞窟が続いているのを見て、更に廃墟を少しだけ探索する。

 

「……木製の食器? やはり、文明がある。椅子の廃材に燃えたような炭化した外壁の跡……炎も使う。人型の生物って事か……」

 

 彼がパッと見で分かる事を確認した後。

 

 腰に下げたナイフをいつでも抜けるように意識しながら、億に続く通路へと向かう。

 

 暗視用の赤外線視認モードで視界を切り替えた彼が更に数分歩くと奥から音が聞こえて来た。

 

 それもキィンキィンという金属音。

 

 一瞬で鍛えらえた鋼。

 

 つまり、金属と金属が高速でぶつかる音だと気付いた彼は走り出したい欲求をグッと抑えて、速足に隠形の為の透明化する魔導を用いて、足音を極力消しながら急いで現場に向かった。

 

 そうして彼が二つの大きな空洞に付いた時。

 

 そこには大量の人型の種族。

 

 少なからず亜人か人間と分かる者達が転がっていた。

 

 凡そ40人近い人数が倒れ伏しており、その殆どが厚い毛皮に顔へ赤い化粧のような魔力の籠った塗料で文様を描いており、そこから熱量が全身に伝わっているのが彼には分かった。

 

 まだ死んでいないのか。

 

 殆どが脚の骨を折られて昏倒しているのが戦いにそれなりに造形の深い彼にも理解出来た。

 

 倒れ伏している

 

 その奥では未だ数人が戦闘を行っていた。

 

 だが、最も目を引いたのは固まったままに震えて頭を抱えて伏せている女性。

 

(アネさん!?)

 

 防寒着らしいモフモフの毛皮を被った彼女が生きている姿に安堵しつつも戦闘の現場のすぐ後ろにいるという事実に唇を噛んだ彼は足音を可能な限り立てぬように壁沿いから速足で彼女の背後へと近付き。

 

 そのまま手に持っていた腕輪を彼女の頬に触れさせて、僅かに強張ったところで口を塞ぎつつ、振り返った彼女の手の甲に文字を書いた。

 

 助けに来たと短く。

 

 そして、速く逃げると書き込んで彼女を自分の魔導で消しながら立ち上がり、そのまま音を立てずに抱き上げた彼女を担ぐようにして現場からゆっくりと離れて、音の反響が届かないギリギリの場所から疾走を開始する。

 

 魔力は今までの隠密行動でかなり少なくなっていたが、それでも最後の疾走は肉体の脚力を強化しての全力。

 

 滑るように氷の大地を駆け抜け、船の真下まで戻って来て、彼女を降ろす。

 

「アネさん!! 無事か!?」

 

「ラ、ランド……ご、ごめんよ……何か食料が無いかと探し回ってたら……知らない毛皮の連中に見つかって。それで連れて行かれる前に戦いが始まったようで……」

 

「いや、今はいい。とにかく帰る準備だ!! 戦闘がある場所にいたら、いつ殺されてもおかしくない。船自体は壊れてないのは見れば分かる。海の方へと帰る為に動かすのはオレが全力でやれば、恐らく可能だ。時間は掛かるかもしれないが、30分くらいあれば、何とか……」

 

「あ、ちょ、ちょっと待っておくれよっ。あの戦っていた人はウチらの大陸に帰る手段があれば、教えて欲しいって言われて、連れて行かれるのに待ったを掛けてくれてたんだ!?」

 

「っ……今、此処を離れないと天候の事もあるし、帰れなくなる可能性が高い!! 周囲に空間の歪みのある場所が出来てるはずだ。戻れる内に戻らないとソレが消える可能性も……」

 

「分かってる!! 分かってるけど、助けてくれた恩人なんだ!? 出来る限りでいい!! もしも、あの人が此処に出航前に辿り着いたら、載せてやっておくれよ!!」

 

「分かった。まったく、お人よしだな。アネさんは……今から出港準備をする。船体が壊れてなくても色々と確認はしなきゃならないから、辿り着いた場合だけだ」

 

「あ、ああ、それで構わない」

 

 彼女を先にロープを登らせて、船に押し込んだ彼が船体に致命的な傷が無い事を一応更に確認してから魔導用の方陣を船底の左右に描き込んで船を浮かせる準備をしつつ、限界に近い魔力を更に振り絞って浮かせる準備をして、船内に戻る。

 

 魔導方陣を励起しようとした時、甲板に冗談のような速度で何かが虚空を吹き飛び、滑って着地する。

 

 剣が一本。

 

 甲板の床を切り裂いて無理やりに速度を殺していた。

 

(―――在り得ない!? 旧き時代の船だぞ!? この装甲は現代の魔導ですら一切の傷が付かないはず!?)

 

 大振りの巨大な黒い剣。

 

 ソレが一瞬泡立ったかと思うと掴んだ者を投げ飛ばすように弓なりに畝って一度使用者……外套を着込んだフードで顔の見えない相手を投げ飛ばすように投擲し、そのままの勢いで剣そのものと共に一瞬で消えた。

 

 彼が思わず船体の端の手すりに身を乗り出した。

 

 すると、氷壁の一部が瓦礫のように崩れながら、内部から爆発するように8m程の何かが現れて、雄叫びを上げる。

 

 禍々しい姿は人型の頭部を持っていたが、目も鼻もなく。

 

 しかし、黒い肌と避けたような巨大な喉元まであるような口と退紅色の内部から炎らしきものが火の粉と共にせり上がり、ソレが吐かれた。

 

 しかし、すっ飛んだ相手を狙ったと思われるソレが真正面からか。

 

 刃で斬られたらしく両断されて片方が船体の少し遠方に着弾。

 

 一瞬で水蒸気がその周囲から猛烈に霧のように広がり、同時に周囲に風が吹き始めて、吹き降ろすような白いものが混じる凍える突風が始まった。

 

「ッ―――」

 

 しかし、それもまるで無視したかのような斬撃。

 

 確かに彼は……ランド・ヨルマークは見た。

 

 黒い斬撃が跳んで―――その黒い怪物を両断し、その背後の氷壁すらも切り裂いて、内部から爆ぜるようにして炎を爆発的に吹き上げた怪物が倒れ伏す背後。

 

 抉り込むようにして剣が捻じ込まれると同時に3名の姿を消していたらしき大きなファー付きの外套を着込んだ何者かが同時に貫かれながら巻き込まれて落下。

 

 串刺しにした者以外も落下後の剣の骨すらまったく考慮しない月のような丸い軌道を描く斬撃によって両断。

 

 怪物が崩壊している間に恐ろしい風が吹き降ろしてくるのを確認した背中が数百mをまた一瞬で黒い剣を地面に伸ばして接着、ゴムのように柔軟にして自分を投げ飛ばさせた。

 

 相手が再び自分のいる船体に迫っている事でハッとした彼が思わず叫ぶ。

 

「船を傷付けないでくれ!! 帰れなくなる!!」

 

 その言葉を聞いたものかどうか。

 

 フードの相手が剣を再び柔軟にして甲板の端の手すりに絡めて勢いを殺し、船体の反対側へと飛び出してから、船体下から戻って来る。

 

 手すりを一瞬で超えて着地した相手が自分の倒した化け物の方を見てから、冷たい風に目を細めた。

 

「早めに出た方がいい。あの怪物が後40体前後、此処に迫ってる」

 

「えぇ!? というか!? アンタは一体……」

 

 言ってる傍から横の相手が指差した先。

 

 氷壁の大穴。

 

 化け物が開けたソレの奥から同じような手が出て来るのを確認した彼が顔を青褪めさせ、すぐに出航の準備に掛かった。

 

「すぐに出す!!」

 

 彼が甲板に手を付くと同時に魔導方陣が複数起動。

 

 船体が僅か浮かんで背後へと戻っていく。

 

 その下は5m程下に海が広がっていた。

 

「もっと早くならない?」

 

「無茶言うな!? これで精一杯だ!?」

 

 言ってる相手が指差す先からは正しく先程の怪物が這い出して来ており、巨大な口を開いて船体を狙っていた。

 

 血の気が引いた彼が出来る限りの速度で船を氷の下へと移動させて落とした途端にその上を火球が通り過ぎて遠方の海面に着弾。

 

「ッッ」

 

 爆裂した水蒸気と水柱も見ずにランドが操舵室へと直行。

 

 そのまま甲板に相手を置き去りに最大船速で現場を離脱した。

 

 揺れる船内であるが、遠方に的が見えるのはマズイと海岸線沿いを爆走しながら、とにかく化け物の視線から逃れる方向で舵が切られ、現場が遠のいていく。

 

「あの怪物は見えるか!!」

 

「もう見えない。ただ、外海に向かう航路は止めた方がいい」

 

「何!? どういう事だ!?」

 

 外套を被ったままの相手が指差した先。

 

 氷の破片が浮いている外海へのルート上に渦が巻き始めた。

 

 しかし、その渦が出来たと思った瞬間。

 

 ドンッという音と共に氷塊が一瞬で粉々になって吹き飛ぶ。

 

「な!?」

 

「空間の歪みで別の場所から色々なものが圧縮されて吹き出て来る。その衝撃で大抵のものは粉微塵」

 

「オイオイオイ!? 帰れないのか!!?」

 

「別の場所に続いてる一方通行で元来た場所へと流れていく渦を見付けるしかない。取り合えず、此処から東に向かって進めば、港町がある。そこまで」

 

「港!!? 港があるのか!!?」

 

 2人が開いた船室の窓越しに喋っていると船室から操舵室へと直行する梯子の下の床が開けられた。

 

「だ、大丈夫かい!? ランド!!」

 

「あ、ああ、アネさん。今、何とか船を出したところだ!! 助けてくれたって相手もいる!! 今はとにかく、あの海域から距離を取っておきたい。港があるそうだから、そこに付いたら出て来てくれ」

 

「あ、ああ、分かったよ。そうかい。あの人は助かったかい……ふぅ」

 

 それに安堵した様子の彼女が再び床のハッチを閉めた。

 

「……アネさんに感謝しろよ? アンタを待とうって言ってたんだ」

 

「後で感謝する。それよりもまずは港までの航路を指示する。しばらく氷や隠れた氷塊を避けながら向かう事になる」

 

「助かる。この船は頑丈だが、絶対じゃねぇ。一応、自己紹介しておくぜ。ランド。ランド・ヨルマークだ。アンタは?」

 

 フードが脱がれた。

 

「アルティエ・ソーシャ」

 

「……若いな」

 

「今は恐らく17歳相当」

 

「?」

 

「港に付いたら、停泊料や諸々の書類は書いておく。後で今在る装備や換金出来そうなものを一応自己申告して欲しい」

 

「……着いて早々に騙すのは無しだぜ? 若いの」

 

「この船が無くなったら困るのはそっちと同じ。それに此処の亜人は基本的にガメツイ……」

 

「そうかよ。はぁぁ……海賊に会わなきゃいいが……」

 

「ソレはもう沈んでる」

 

「は?」

 

「昨日、9隻沈めた。もう此処の海賊そのものが消えたから、安全に港が使える」

 

「……どうやら此処は思ってた以上に危険なようだ」

 

「食料は魚以外が高額で取引される。穀物は恐らく同じ金貨よりも高い。穀物類の加工食品辺りは良い値段になる。憶えておくといい」

 

「あいよ……アンタ、それにしてもクソ強ぇな」

 

「殆ど振り出し……技能以外で唯一、自分の能力じゃないから、剣は失わずに済んだ……取り合えず、ようこそ【カダス】へ」

 

「カダス―――此処が? (日誌にもカダスと……)」

 

「カダスの事を知ってる?」

 

「あ、ああ、とある日誌にな。書いてあったんだ。オレは探検家なんだよ。アネさんはその支援者だな。日誌にはスゴイ熱帯の場所とあったんだが……」

 

「……ソレは間違いじゃない。カダスは巨大な大陸群の名前」

 

「大陸群? 既存の大陸じゃないよな?」

 

「そう……此処に住まう者は自分達の済む大陸をこう呼んでる」

 

 ゴクリと彼が窓越しにその青年の瞳に唾を呑み込んだ。

 

「【邪神大陸】」

 

「―――邪神……」

 

「此処は【永久の氷床カダス】。たぶん、その日誌のは【永劫の緑塵カダス】……色々在る」

 

「………オレら帰れるかな……」

 

 思わずそうランドが愚痴った。

 

「後、数日でこの大陸は数年間は閉ざされる猛吹雪に見舞われる。それまでに帰らないと氷漬けになるか。この地域にしばらく住む嵌めになる」

 

「はは、冗談キツイぜ」

 

「それと……これから行く港には数日以内に4万の軍勢が攻めて来る。陸海空から海賊の連合本隊が到着予定」

 

 もう何も言わず。

 

 ズーンと暗い表情になったランドは片手を額に当てて、天を仰いだのだった。

 

 初めて少年は世界の外を見ていた。

 

 そう、それが神々の隠す秘密へと続く近道である。

 

 その手には小さな女性のレリーフが刻まれたペンダントが一つ握られていた。

 

 大陸標準言語……全ての大陸の統一言語にて裏にはこう刻まれている。

 

 我ら邪神の女神ウェラクリアに栄光を、と、

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