流刑貴族の追放記-極獄と呼ばれた果ての地にて-   作:Anacletus

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第11話「流刑者達の上陸ⅩⅠ」

 

「反復、反復……」

 

 人形師を撃破して数日。

 

 少年に告げられた事実は残酷であった。

 

 ウリヤノフ曰く。

 

 済まないが、今は鉄製の道具は全て建築に当てたい。

 

 芸妓の御老人による娯楽はまたもう少し後でにして欲しい。

 

 もしも、どうしても道具が必要ならば、炉が完成するまで鉄鉱石が表出している付近で材料を集めておいてくれれば、真っ先に造った道具を渡そう。

 

「反復、反復(このパターンは最初期ルート七系統の上から三番目……ついてない……)」

 

 現在、少年は鉄鉱石が大量に表出する硫黄臭い場所で少し大きめな蟲を木製の籠に入れて、カナリヤのように使いつつ、ツルハシで周囲をザクザクしていた。

 

 ガンガンと響く音は空に高く。

 

 しかし、周囲には少年以外の者は殆どいない。

 

 全ての人力が住居の確保に当てられている弊害で現在、他に採掘者はいなかったのである。

 

 周辺の樹木の木陰には蒸し魚の葉包みが枝にぶら下げられており、掘り出した鉱石を集積しておく場所には大量の黒い宝石が山となって入れられている。

 

 少年が大量に掘り出せている理由は単純だ。

 

 普通よりも膂力が強く。

 

 同時に疲れ知らずなくらいには耐久力もある。

 

 その上でツルハシの先には黒い菌類がウヨウヨと集まっており、つるはしが当たった場所に侵食して、脆く崩していた。

 

 こうして炭鉱夫し続けている少年は誰もいない場所を全体的に2mは露天掘りするまでに掘り切っており、周囲に山となっているわけだ。

 

 一人で運べている理由もまた単純だ。

 

「生命付与」

 

 少年の言葉と共に鉱石が僅かに輝いてコロコロと一人手に転がって鉱石の山へと突入し止まる。

 

 人形師の呪紋は此処で初めて有効活用されていた。

 

『ツマラナイですわ~~これで本当にわたくし蘇れるのかしら?』

 

 数日、ずっと鉱夫をしている少年をジト目で見るのは亡霊少女エルミのみ。

 

 フィーゼもまた精霊による物を運ぶ仕事で忙しく。

 

 最近は話してもいなかった。

 

 カァン。

 

「?」

 

 そんな最中、少年がツルハシに今までとは違う感触を得て、掘っていた場所を手で払う。

 

 すると明らかに鉱石ではない。

 

 大きな金属の塊らしいものが出て来た。

 

「………」

 

 ツルハシで周囲がすぐに掘られて、全体像が露わになる。

 

「弓?」

 

 それは半月を思わせる薄く輝く金属製の弓らしきものであった。

 

 それも普通のものではなく。

 

 大弓の類と分かる。

 

 金属の種類は解らない。

 

 月光染みて淡く輝く蒼褪めたソレは弦が張られていなかったが、少年が手に持って引き抜くとすんなり持ち上がった。

 

「【月化粧の窮弓(ルナリアル)】を獲得。月齢に沿って夜の飛距離が伸びる(月齢補正最大1253%)。月明かりの下での命中補正が月齢に応じて最大245%上昇」

 

『キレイな弓ですわね~。わたくしに献上してもよくってよ?』

 

「……はい(・ω・)」

 

 少年が渡す素振りをすると弓そのものが少女と同じく半透明になってエルミの手に収まる。

 

 霊体に対して捧げものをする場合、存在の本質(クオリア)が霊的な世界に向けて放たれ、物質そのものが崩壊する為、元々の弓は残らないのだ。

 

『おぉ~~~コレですわ~~これこれ!! 月の光に愛されたわたくしのような子にこそ、こういう雅やかな物が似合うんですのよ?』

 

 今までの不機嫌でつまらなそうな顔が一気にご機嫌となった亡霊少女が弓を持って打つ仕草をすると弦が光で構成されて、矢まで現れた。

 

『おぉぉ~~~♪ これで狙った獲物はしっかり撃ち殺しますわ!! 手が必要になったら、呼んでくれても良くてよ?』

 

 先日、人形師と戦っていた際には少年の背後からしっかり離れて観戦していたエルミである。

 

「ふぅ……」

 

 少年が溜息一つ。

 

 再びツルハシを握ろうとした時だった。

 

『おぉ~~い』

 

 遠方からの声に少年がツルハシを降ろして、先っぽの黒い真菌を体に引き戻す。

 

 その合間にも走って来ていた水夫がハァハァしながら少年の見える場所までやって来ていた。

 

「どうかした?」

 

「坊主ぅ!! ウリヤノフの旦那が呼んでるぞぉ!! 至急って事だぁ」

 

「はーい」

 

 少年がその言葉に速足に野営地へと向かった。

 

 昨日よりも更に数棟の家屋が出来ている野営地はとうとう村くらいの規模まで拡大している。

 

 その煙臭い村の奥。

 

 粘土が取れる場所の付近に少年がやってくる。

 

 というのも、ウリヤノフは近頃、そこに詰めていたからだ。

 

 金属を精錬する炉というのはかなり作るのが難しい。

 

 その為、様々な資材を集める必要があるのだが、知識のあるウリヤノフと精霊で家屋造りをしているフィーゼがそこを主に担当していた。

 

 砂、粘土、石。

 

 原始的なものを組み合わせながら作られる炉は本格的な帝都程のものが無くても精錬だけなら可能なものが多い。

 

 特にるつぼと呼ばれる精錬用の器の知識はウリヤノフにしかなく。

 

 少年が鉄鉱石を何種類か持って行ったら、さっそく小さいものを作っている云々と言っていた為、そこに向かうのは確定していた。

 

「来たな。坊主。いや、今後はアルティエと呼ぼうか」

 

「出来ましたか?」

 

「ああ、幾つかの鉱石を小規模に精錬して、高温に耐えられる器を作り、精錬を繰り返してようやくな……」

 

 ウリヤノフが鉄製の太い挟みのようなものを掴んでいた。

 

 その挟みに掴まれているのは金属が溶かされた赤々と熱された壺型の器。

 

 ソレがすぐに砂で出来た傍の型に注ぎ込まれる。

 

「これで最後だ。二日後には新しい鉄製の道具が出来る。磨き上げたら、お前に渡そう。ご苦労だった。鉱石掘りは今日で終了して構わない」

 

「ありがとうございます」

 

「そう畏まるな。敬語はもう要らん」

 

「……分かった」

 

 ウリヤノフはまだ作業が残っているからと少年と別れ、現場で竈やら鉱石を仕分ける作業に入って、鎧も無い作業用のズボンに上半身裸のままにニヤリと少年に手を振った。

 

「おっと、アルティエ」

 

「エルガムさん」

 

「少しいいかね。相談があるんだ」

 

「あ、はい」

 

 一端、幕屋に戻ろうとした少年がエルガムに捕まって診療所の方に連れて来られた。

 

 未だ蟲避けのせいで煙臭い室内。

 

 家具が搬入され、寝台が整備された場所では木製の寝台に干し草を敷いて、布地を被せ、木戸を全開にして風通しを良くしつつ臭いを逃がしている。

 

「済まないが西部で緊急に薬草を取って来て欲しい」

 

「薬草を?」

 

「ああ、クマの件で西部の探索は中断していたのだが、そうも言っていられなくなった。本来ならば、ウリヤノフ殿を筆頭に探索隊を再び行かせたかったのだが、水夫達が怖がってね。それで水夫達の一部に良くもう一度薬草の絵を見せたら、群生個所を遠巻きに確認していた事が解った」

 

 地図が見せられる。

 

「君は炎の呪紋を使えるという事だし、逃げる事は出来るはずだとウリヤノフ殿に進言されて、単独で採取に言って来て欲しいんだ」

 

 少年の手に薬草が数種類書かれた紙が渡される。

 

「危険は百も承知だ。だが、あまり時間が無い。出来れば、全ての種類を30本ずつ、採取を頼みたい」

 

「急患ですか?」

 

「ああ、フィーゼの父君の薬が後数回分しかない。だが、環境の変化で体調を崩したらしく。昨日の夜から症状が悪化してね。今は安定しているが、薬が無ければ、命が危ない。発作が起きる時に使用量を増やす必要もあって、どれだけ持つか分からなくなった」

 

「解りました」

 

「ああ、西部の群生地の場所もちゃんと書き込んである。この事はフィーゼ様には内密にとご本人からの頼みでまだ教えていない。どうか悟られないようにお願い出来るだろうか?」

 

「解りました」

 

 少年が頷くとエルガムが心苦しそうに唇を噛む。

 

「本来、このような事は我々大人がするべき事だ。だが、君達には魔の技がある。不甲斐ない大人を許してくれとは言わないが……どうか、無事に帰って来て欲しい」

 

「ガシンやカラコムさんは?」

 

「今、警備を行っている。クマが大量に出てきたら、彼らとウリヤノフ殿以外には対処出来ない。野営地を護る為にも三人は外せないという事になった。本当に済まない……」

 

 エルガムが深く頭を下げる。

 

 そもそも少年がそのクマを産み出していた相手を倒した事を報告していないので依頼はある意味で自業自得と言えた。

 

「すぐに採って来ます」

 

「……ああ、それでだが、お詫びというわけではないが、装備は整えておいた。横の部屋にある。衣服は修道女のヨハンナさんにあの船に積まれていた布地を使って設えて貰った。薄い鎖帷子と軽装の鎧もある。どちらも船に積まれていたものだ。簡易で動き易いように軽いものを選んでみた。後は頼む」

 

「解りました。必ず」

 

 少年が部屋を出て、横の薬が保管されている一室に入る。

 

 すると、テーブルの上に確かに帷子や軽装の鎧。

 

 更には新しい外套が用意されていた。

 

『あ!! これウチの家紋ですわよ。ファルターレの文様は香辛料の華のブーケなの。紺のマントに紅い刺繍。う~ん。これで貴方もわたくしの立派な騎士ですわよ~~』

 

 ニコニコしながら上機嫌のエルミが上空をスイスイと回る。

 

 そして、少年がイソイソと着替え始めたのを見て、ハッとしつつ、背中を向け……しかし、誘惑には抗えず。

 

 最後には顔を隠しながらバッチリ指の隙間から少年の着替えシーンをじっくりとゴクリ(;゜д゜)しながら覗くのだった。

 

「これでよし……」

 

 衣服は革を用いて少し厚く。

 

 しかし、関節部に付ける装甲部分は稼働域を確保しつつ防護するシンプルなものであり、胸元の鎧も逆三角状で肺と胸を覆う以外は脇腹は守らず。

 

 動きを重視しつつ、全体的に軽さが際立つ。

 

 そこは鎖帷子で代用するという事なのだろう。

 

 肩にはラウンドシールドを少し中央から湾曲させたような丸みのある装甲が薄く採用されており、背後の背中は背骨を護るようにして背筋から沿って尾てい骨辺りまで革製の布地に縫い込んだ鉄片が背骨と肋骨に沿って防御力を高めていた。

 

 だが、どれも薄い為、鉄のフルプレート。

 

 全身鎧よりは随分と軽いだろう。

 

 少年はこうして新しい衣服を手に入れ、その脚で西部へと向かうのだった。

 

「よし……」

 

 人形師を倒した洞窟を抜けて西部に出た少年は沿岸部から北上した先。

 

 見晴らしの良い丘を目指して速足にジグザグ走行を続けていた。

 

 ここ最近、ツルハシを振って筋力を高め、持久力も少しずつ上がっていた少年である為、多少重量のある装備を持っていてもランニング程度の疲労で移動は可能であった。

 

 野営地から向かって3時間弱。

 

 広い西部の未探査な領域。

 

 北部海岸線沿いの丘は思っていたよりも何もない場所であった。

 

 エルガムに言われた野草はあっさり見付かって、30本ずつという要望にも応えられるだけの量が自生していて、すぐに刈り取って袋に詰め込んだ。

 

「………」

 

 未だ空には蜘蛛の巣のようなものとその上に聳える塔がある。

 

 今日は大人しく帰ろうとイソイソ少年が元来た道を戻ろうとすると急激に周囲が暗くなったかと思えば、蜘蛛の巣の一部の厚みが光を遮る程に周辺で増量され、空を消していた。

 

 いつもの黒いダガーを取り出しつつ、その場を抜けようと走り出した途端。

 

 蜘蛛の巣の部分より何かが降って来る。

 

 咄嗟に転がりながら避けた少年が立ち上がると落下して来たソレらが濛々と煙を上げながらも内部から巨体を露わにしていた。

 

 5m程もあるだろうか。

 

 巨人の人型と見える。

 

 石造りであちこち体内から罅割れを通して紅い光を溢れており、その周囲から高温の為か。

 

 火の粉が散ってベールのように巨人達を覆っていた。

 

 それが3体。

 

 明らかに敵と呼べる何かからの攻撃なのは間違いなく。

 

「呪霊召喚【ファルターレの貴霊】」

 

『へ? あ、ちょ、ま』

 

 スゥッといつもは我関せずなエルミが周囲に少年の背後に現れる。

 

「遠くから罅割れを撃つのが仕事」

 

「いや、そんな唐突に!? この弓、月が出てないとダメって自分で言ってたじゃないの!?」

 

「月は昼間にも出てる」

 

「そ、そうなの?」

 

 渋々と少女が空を見上てから飛んで少年の背後の森へと消えていく。

 

 鈍く動き出した巨人達の手には身の丈に近い斧が握られており、鈍重な割に大きい歩幅ですぐに少年へ近付いて来た。

 

 此処は逃げるべきかどうかで言えば、逃げても追われる可能性があり、あんなのを連れて来れば、洞窟の部分で崩落が起きてしまう可能性すらある。

 

 故に選択肢は一つだった。

 

 少年が駆け出すとその姿に合わせて先頭の巨人が斧を振り下ろす。

 

 それを懐に潜り込むように回避しながら、肌の上の真菌が焼ける程の熱量を巨人が纏っている事を理解し、少年が股下でダガーを大剣へと変貌させ、大振りに振り上げた。

 

 ズガンッと剣先が伸びて股関節の左に食い込ませて止まる。

 

 内部が高温の為にすぐにいつもならばスルリと抜ける刃が焼け落ちたが、体勢を崩した巨人の額ど真ん中の罅に青白い矢が突き刺さる。

 

 途端、内部から亀裂が猛烈に奔った巨人が上半身から爆発し始め、すぐに少年は自分に向けて振り下ろされる斧を避けながら擦り抜けた。

 

 斧の叩き付けで爆発した地面の威力を受けつつ、上空に跳躍、斧を振り下ろした手を駆け上がりながら、ダガー状態に戻した刃で二体目の巨人の額の罅を貫いた。

 

 ゴガンッと小爆発で体を吹き飛ばされた少年が転がりながら受け身を取りつつ、すぐに勢いのままに背後へ下がるように立ち上がり、腕が半ば拉げて焼け焦げているのを確認しながらもダガーの剣身がかなりボロボロになっているのを見て、しばらくは使えないだろうと腰に戻す。

 

 その合間にも2射目の弓矢が少年を追っていた巨人の額を貫いて爆発させ、体を崩壊させた。

 

 攻撃が終了して20秒程息を整えた少年の背後にスゥッと滲むようにしてエルミが現れ、胸を張る。

 

『これでも弓術には明かるいんですのよ? 狩りも得意だったし』

 

 その手には例の大弓が握られていた。

 

「残存体力21%。帰還後、野営地で休息」

 

 次の敵が出て来ない内にといつの間にか元に戻っている蜘蛛の巣の下から少年はイソイソと南部に向かう。

 

「………」

 

 その様子を遠間の山岳部の一角から見ていた者が一人。

 

 外套に身を包んだ脚を南部に向けるのだった。

 

 *

 

「何? 襲撃を受けた?」

 

 帰還後、少年がそのままエルガムの治療を受けて臥せっているという事を聞いたウリヤノフが診療所を訪れた際にはもうフィーゼが眠っている少年の横で容体を見守っていた。

 

「フィーゼ様」

 

「ウリヤノフ。これはどういう事ですか?」

 

「……御身に隠し事をしていたのは謝ります。ですが、主の願いだった為」

 

「―――幸いにして全身打撲程度で済んでいるとエルガム様にお聞きしました」

 

「そうですか。では、話さないわけにも行きますまい。父君の薬の材料をアルティエに依頼しました」

 

「どうして、付いて行かなかったのですか!?」

 

 少女が思わず振り返って声を荒げた。

 

「野営地をクマに襲われたら全滅します」

 

「ッ」

 

「お解りでしょう。我々はあくまで流刑者。ロクな装備も訓練も受けていない者が大半の集団なのです。水夫達にしても、ようやく生活が何とか出来るかどうかの瀬戸際です。訓練はその後の話であり、今すぐにやってどうこうという話ではない。そして、その子には戦う才能があった。恐らくは騎士となってもやっていける程の……」

 

「だからって、一人で……解ってます。解っていますよ。父の為だった。でも……話を聞きましたか?」

 

「ええ」

 

「今度は巨人が出たそうです。それも数体。倒すと衝撃を撒き散らして倒した相手を吹き飛ばして殺すものだとか」

 

「彼の持ち帰ってくれた情報だと聞きました」

 

「大型のバリスタが必要になるとの言葉に野営地では急いで攻城兵器や大型の弩の生産をという話になりました」

 

「そうですか。堀も御身の力で出来上がりつつある今だからこそ、それは多くの者達に意識されたでしょうな」

 

「……ウリヤノフ」

 

「はい」

 

「お願いです。次は教えて……これは次期当主としての命令です」

 

「畏まりました。本日の事は我が主もまた少し後悔した事でしょう。致し方得ないとはいえ、子供を死なせるような場所に送るのは本意ではなかったし、我らがその子に頼むとも思っていなかった事は先に御教えしておきます」

 

「解っています……」

 

「敵の襲来に備え、野営地の防備を固め切ったら、西部海岸線の洞窟に砦を築く事を進言します。また、道の舗装と人の配置も合わせて各地を知らない敵から護る事は今後必須となるでしょう」

 

「設計と訓練は任せます。工事は出来る限り早く行いましょう」

 

「それが良いかと。幸いにして此処へ来るまでに確認した袋の内部の材料は数か月分は在り、しばらくは問題無いでしょう。父君も何とか安定しています」

 

「下がっていいです」

 

「は……今回の事、誠に申し訳なく」

 

「いえ、全て力の足りないわたくしの責任です。精霊が見えるだけ、使えるだけでは何も出来ない。一通りの仕事に区切りが付いたら、わたくしにも最低限以上に武術と逃げ方を教えて下さい」

 

「解りました。何れとは思っていましたが、それは今なのでしょうな。お父上もきっと反対なさらないでしょう」

 

 彼らは静かに眠る少年を見やる。

 

 横のサイドチェストに置かれた新しい衣服や外套は爆発のせいか。

 

 既に煤けるところもあれば、凹んでいる場所もあった。

 

(アルティエ。貴方の頑張り、無駄にはしません。絶対に……)

 

 本格的な防衛戦は、流刑者達の生き残る為の戦いは既に始まっている。

 

 それを彼らはようやく肌身を以て理解するに至ったのだった。

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