流刑貴族の追放記-極獄と呼ばれた果ての地にて- 作:Anacletus
―――???
「アルティエが返って来たよー!!?」
島に英雄が帰還した日。
少年はまったく多くの人間に歓待され、すぐに大規模な宴会が催された。
人々はお祭り騒ぎ。
蜘蛛達がしている屋台の前には人集りが出来て賑わっていた。
そんな最中の第一野営地の一角。
少年が座るベンチに少女達がやって来る。
艶やかな衣装に身を包んだ少女達は華やかな装いと言うに相応しく。
少年の横で屋台の料理をあーんと食べさせてまで暮れる。
ようやく帰って来た少年を労う誰もが笑顔だ。
『アルティエ。お前にフィーゼを任せたい』
『アルティエ。レザリアにちゃんと言ってあげなよ』
保護者達からのお墨付きだ。
そうして、祝福するのは蜘蛛達か。
おめでとうございますの横断幕まで掲げられる始末。
そうして、まったく少年はその安っぽい幸せとやらにジト目で横にいる少女達と全ての人物を無尽剣で斬殺……否、完全消滅させた。
生憎と少年には最初から一つだけは分かっていた。
どれだけ完璧な幸せだろうとも望んでいないものは本物ではない。
そして、少女達を自分で殺さねばならなかった“いつか”は確かに存在し、今もその感触も決意も全て胸の内にある。
キロリと少年が太陽を見上げて、無言で……自分にもう一度少女達に剣を向けさせた元凶を108分割して切って捨てた。
その時の顔を見ていた者がいないのは幸いだろう。
生憎と世界なんて滅ぼしても構わない少年の“本音”なんてものに触れてしまったら、その誰かは狂うしかないのだから。
世界を護るとは世界を知るという事。
そして、世界を知ってしまった少年の答えは明らかに残酷なのだ。
自分達以外の何を切り捨てるか。
誰もが人生で一度以上はやるだろう重大な取捨選択。
そこに自分が入っていないという事実。
その“お前も要らない”という意志を前にして今まで幾多の神が、蟲が、敵対者が滅んできたのだ。
剣が収められた時。
「……精神攻撃にしても雑」
曇り空の船の下。
40m下方にいた使徒。
邪神の下僕の1人。
そして、20名近い術者達が細切れの染みとして“自分の肉体の勘違い”で即死したのはあまりにも異様でありながら、当然の末路だった。
描写されるまでもなく血肉の汚泥と化した者達の着ていた衣服の残骸だけがその沼地に混ぜられ、船が動き出すと同時にその風圧で荒野に吹き散らされていく。
とある邪神大陸群の一角。
【久遠の聖跡カダス】
そう呼ばれる地域に少年とアーク・エルフ一向は辿り着いていた。
1日前に沿岸部の空間の歪みを通った船は同じような沿岸部に到着。
一次的に水源で大量の水を船の真菌に補給させた後。
食用になりそうな果実や果物が無いかを山林で探索。
その後、高高度へと浮上し、姿を消しながら沿岸部の港街を発見するべく移動。
そうして初めて見付けた街に少年が潜入して、適当に拉致って来た少し裕福層な4本腕の女性と男性3組から少年が真菌で侵食して呪紋を流し込み知識をペラペラと喋らせつつ、常識や諸々の情報を取得。
5時間後には元の場所に戻して、さっそく別大陸で探索や情報収集が可能な探索チームをアーク・エルフから選抜して出発。
近くの荒野の上空で姿を消したまま待機という事になって9時間後の出来事。
朝方という事もあり、朝の支度がある女達以外は眠っている早朝。
少年はノクロシアで戦った邪神の欠片よりは理不尽でも無かった相手の攻撃から復帰後、未だ術で眠りこけているウサミミ・エルフ達を扉の先から見て回った。
精神異常や精神への侵食、あるいは精神への魔力による潜入等が無いかを真菌で自分と繋げて確認後、甲板へと出る。
「おぉ、無事に戻ったかや?」
そこには先日に引き続き兎月が立っており、朝だからか。
多少解れた髪を櫛で溶かしていた。
「何で起こさなかった?」
「精神系の魔歌は途中で起こすと精神異常で廃人とか。そういうのが多いのでな。さすがに無理やり起こすのは危険が大き過ぎると判断した」
「……妥当」
少年が甲板の先。
船首から周囲を見渡す。
「何か新しい敵でも見えたかや?」
「此処から40km……10里程度先に50名くらいの練度の高い人員の集団がいる」
「ん~~分からん……本当にいるのか?」
目を細めて傍までやって来た兎月が微妙な顔になる。
「今、後退を開始してる。恐らく、あの雑な攻撃から見て先兵が消えて大部隊を用意してからまた来るはず。使徒階梯にも届かないようなのを幾ら送って来ても意味が無いのが分かってるなら、それなりに手練れかもしれない」
「ふぅむ。何かやたら強力な魔歌。いや、また別の大系のようにも見えたが……強い気配だった気がしたんじゃが……」
「魔力の密度と質が悪い。量が多少有っても有効活用出来てない相手を強いとは言わない」
「そんなものか?」
「そんなもの。島の陰謀系人材が使う術の方がよっぽどに洗練されてる」
「ほうほう? どんな風にじゃ?」
「さっきの夢にしても雑な設定に雑な偽物。精神探索しておきながら、造形がやたら美化されてたり、輝いてたり……現実に詳しいとは思えない」
「言いたい放題じゃな……」
「島の精神系呪紋の遣い手なら幻影で人が殺せる程度は当たり前。幻影で相手に傷を付ける事が出来て半人前。夢や幻想を見せる型なら、設定をもっと練ってる」
「案外、効いてるのか?」
少女の声も無視して少年が続ける。
「雑な導入どころか。人生一回分くらいの長期設定を細部までやって時間間隔の操作からしてミッチリ違和感なく調整を詰めてるヤツしかいない。つまり、今さっきのは雑」
「……何かお主の故郷も魔窟なんじゃな」
少年の“故郷”の話を聞いて、ちょっと同情気味になる兎月が肩を竦めた。
生憎と今は殆ど隠居老人になってしまったアルマーニアの参謀職の古参連中を相手にどれだけ辛酸を舐めたか分からない少年にしてみれば、島の日常が基本的なのであり、その水準的な感覚はかなり高い。
常に戦乱状態だった地域において人生を捧げて祖国の為に殺し殺されという状況を続けて来た叩き上げの精神干渉術の遣い手は一定以上の能力が開発出来て無ければ、要注意人物ばかりだったりする。
その“壁”はかなり高く。
いつも少年に皮肉げな顔をしていた六眼王もそのタイプであり、攻撃能力が殆ど無い扱いで事務仕事ばかりさせていたのは一定水準以上の能力があれば、幻影とか精神に干渉する型の術師は無力だからというだけに過ぎない。
現在、蜘蛛達によって陳腐化した島の戦力の大半にしてみれば、蜘蛛達が規格外なのであって、自分達は並みと思っているかもしれないが、生憎と彼らが住まうのは追放者達の極北。
鬼難島は魔窟であり、その煮詰められた殆どの種族と血統に由来する能力は極めて高水準だ。
呪紋を筆頭にする全ての技術体系は世界基準であれば、高度な部類。
子供一人が使える程度の代物ですら外大陸の軍人や技術者が使うものよりも洗練されている。
が、そんな事を少年が知るはずもなく。
「邪神の使徒があんなのしかいないなら、大神が負けるわけもない。恐らく、もっと強力なのが集められるはず……探索者を引き上げたら、すぐ移動する」
「了解じゃ。ん~それにしても夢か。見せるなら悪夢でも見せた方がよっぽどに効果が高かっただろうになぁ」
「……自力で起きた?」
「今は亡き父母に友人達の夢を見た。さっさと起きねば、お主にどやされるぞと怒られたわい。ははははは」
カラッと笑った兎月の背後に数名の影を見て、少年が余程に愛されているのだろうと守護られているウサミミ・エルフの長の資質を理解するのだった。
*
―――【久遠の聖跡カダス】南方港湾都市国家ソダシア港湾街政庁。
「馬鹿な馬鹿な馬鹿な!!? 聖跡最高の術者集団が破れただと!!? クソ!!? 精神干渉で奴ら以上の者は殆ど大陸にいないのだぞ!? 【使徒アスラ】の直系氏族の上澄みが全滅!!? 外大陸の使徒は化け物か!?」
久遠の聖跡は未だ巨大な国家を形成する者が殆ど無く。
しかし、都市国家が乱立するカダスの中でも地図が活発に変わる土地柄だ。
どうしても邪神の欠片同士の勢力や諸々の組織間の闘争で殲滅戦が起こりがちであり、文明レベルが一向に上がらない事と技術継承が難しい事を覗けば、カダスの中でも良い人材が揃っていると評される程度の実力がある。
そんな大陸の港湾都市は言わば、城塞と貿易によって大国化し易い下地のある主要都市国家であり、野心家も多い土地として知られている。
街の中心地にある政庁の一角。
その部屋では送り出した部隊が全滅したという報で街長が発狂していた。
「もう一度、連中に連絡を取れ!! 大欠片の気配が無い今ならば墜とせると言ったのは奴らだろう!! もう一度未来を予言させろ!!」
「そ、それが“千里眼”達からは既に連絡が無く」
「ま、まさか……見捨てられた!? ま、マズイぞ!? このままではこの都市が外大陸からの侵攻の目標に―――」
「街長……神殿の方々に援軍を要請する事は出来ないのでしょうか?」
「馬鹿が!!? 奴らが我らに何をしてくれた!! 税を取る以外に能があると思うのか!? 中央の平原国家【ラズマ】で分殿が大規模に傭兵を集めているそうだが、編成が終了するまで1か月は掛かる!! それまで此処が襲われないという確証は無い!!」
「ですが、大規模な揚陸が想定されるならば、今から何とか準備は出来ます。此処は先遣隊を分殿に要請してみては?」
「間抜けか!? 連中、こぞって略奪しに来るぞ!! どうせ、今すぐ動かせるのは傭兵だ!! 使徒連中がこんな辺境の港街一つの為に大破片が出て来るかもしれない戦闘に完全にただ消耗するだけになる覚悟で送られてくる事など在り得ない!!」
「つ、つまり、我らは……」
「孤立無援だ……う、ぅぅ……此処まで40年!? 40年だぞ!? 街を整備し、城塞を整え!!? 此処で全て潰えるのか!? 今更数千年前の再戦だと!? 闇市場に情報が流れていなければ、鼻で笑っていられたものを!? クソゥ!!? 考えろ考えろ考えろ!!? 攻撃を仕掛けた以上、もはや後戻りは出来ない!? 大破片が出て来る前にどうにかしなければ、此処はもう―――」
「か、海賊連合に頼っては如何でしょうか? 我らの港は彼らの根拠地の一つでもある。住民を一時避難させ、襲われる前に金品を消耗品にして逃げ出せば、命だけは……」
「……ダメなのだ」
僅かに沈黙した街長と呼ばれた70代の男がひゅーひゅーと過呼吸気味にアルカイック・スマイルで病的なまでに焦躁に駆られた様子で振り向く。
「へ?」
「連中と……連絡が、取れない」
「ど、どういう事でしょうか?」
「文字通りだ……永久の氷床に本隊が向かったという情報を最後に足取りが追えない」
「ま、まさか?」
「……壊滅している可能性がある」
「ッ、で、ですが、小破片である【焦波の祖隷】様の艦隊がそう簡単に破れるとは……」
生憎と永久の氷床の異変を未だ外のカダスの人々は知らない。
艦隊のエライ人の子供が海の藻屑にされて本隊がやって来たは良いものの、すぐにカダスが爆弾低気圧で数年間は続く氷河期みたいな状態になった後。
その場から何とか退いた海賊連合の艦隊が次は嵐によって大陸周囲で足止め。
最後に大破片の消滅によって噴火した大陸の巨大火山の噴石によって半壊。
墜落した洋上で今も幽霊船団みたいに遭難している、なんて事は誰も知らない。
「永久の氷床の情報はまだ入って来ない。だが、本殿の動きは一部の商人共から聞いている。どうやら最も近い大陸で大規模な受け入れ準備がされているらしい」
「ッ―――つ、つまりソレは……」
「大陸放棄……既に永久の氷床には外大陸から大神勢力が押し寄せているかもしれん。もし、そうだとしても、本殿がソレを民間に教えると思うか?」
「……あの邪眼神殿なら、それは……無い、でしょうな」
「ダメだぁ。もうお終いだぁ!? うあぁあああぁあああああぁ!!? 此処まで来て!!? 此処まで来て!!? 後、もう少しで発掘が終了すると言うのに!!? アレさえあれば!? アレさえ!!?」
発狂した男が頭を掻き毟りながらも、ハッと気付いた様子で虚空に焦点の合わない瞳を向ける。
「そうだ。全てお終いならば、我らに他の道は無い……ふ、ふふ、ふ、くく」
「街長?」
御付きの男が恐々と後ろから話し掛ける。
「遺跡だ……」
ポツリと呟きが零された。
「い、遺跡? しかし、鉱夫共からあの遺跡の発掘はまだ一月は掛かると……」
「ええい!? 黄金も宝飾も要らんわ!!? 一番奥にあるものだけでいい!! それだけでいいんだ!?」
「ですが、そうは言っても発掘を早められるわけではありません。そもそも何が有るのですか。あの遺跡には……」
「あるじゃないか。早める方法なら」
「え?」
街長はもう目の焦点が合っていなかった。
「遺跡上部構造に街にある全ての爆薬と魔力を込めたアーティファクトを集積しろ。私が直々に点火する……」
「街長!? 正気ですか!? あの遺跡は―――古代戦争の時のものなのですよ!? 何が起こるか!!?」
「それしかないのだよ……それに起こる事なら知っている」
「ど、どういう事ですか!? あの遺跡に一体何が有ると!? 相手は大神勢力の先兵かもしれぬのですよ!!?」
「ふ、ふふ、そんなもので止まるわけもないだろう」
「止まるわけもないとは?!」
「あの遺跡に眠っているのはな。神話に語られる古代大戦の末路。劫火の神を消耗させた大破片“達”の遺物だ」
「な―――」
「この街があの“忌地”と近いのはそのせいなのだよ。本殿も分殿も黙っているがな。私は調べたのだ。古文書でな……その書曰く。『幾千の年月の後、黒き都の末裔は現れん。幾多の戦を経て帰還せし者を遥か猛き破片達は黄泉の淵より蘇りて赤き星の下、盛大に歓待するであろう』」
「そ、それは予言なのですか?」
「そうだ。千里眼共の祖先が書き残した代物だ。ふふふ、帰還する大神を破片達は歓待するのだろうとも。盛大にな!!」
「そんな事になったら、この街……いえ、この大陸は!!?」
「はははは、知るか!? 今、此処で潰えるのだけは我慢ならん!! 我らが生き残れぬのならば、全て道連れだ!! 逃げるのならば追わんぞ!!」
「う、うぁああああああああああああああああああああ!!!?」
御付きの者があまりの恐怖にその場から逃げ出した。
だが、哄笑していた街長はピタリと笑いを治めるとニタリと嗤って、歩き出す。
「さぁ、宴会の始まりだ!! 盛大にやろう!! 盛大に!!!」
此処で恐怖に圧し潰された狂人が一人誕生し、数時間もせずにその思い付きを実行に移す事となる。
ソレがどのような結果となるのか。
まだ誰も知らない。
*
―――ソダシア港湾街より30km【破滅の荒野】。
「………」
『………』×40人。
「………」
『………』×245人。
「………」
『………』×1266人。
「………はぁ」
少年が溜息を一つ。
ついでに40人の探索者達をキロリと見つめた。
「で?」
仰々しい名前の着いた四方20km四方程度の小さな荒野は今や1個増強大隊程度の人員が犇めく場所となっていた。
理由は単純である。
ウサミミ……アーク・エルフの男女混合の探索チームが連れて来たのだ。
何故、連れて来たのか?
彼らが“悲しい程に善良”だからだ。
この数の人間がゾロゾロと移動しているのは正しく目立つ事この上ない。
しかし、街では少し騒ぎにはなったが、誰も止める者は無かった。
何故か?
その大半の人々が殆ど難民だからだ。
祖国や故郷、あらゆる理由から流浪と化した人々。
そして、10万人近くがいる港湾城塞都市であるソダシアに半ば寄生虫呼ばわりされながらも慣習として難民の通行を妨げないという邪眼神殿の教えから人々は何とか人夫として生計を立てていた。
ある時は盗みを働き。
ある時は物乞いをし。
何処の大きな城塞都市でもいるだろう人々。
浮浪者、浮浪児、貧困層を超えたどん底ライフを満喫する完全無欠の一文無し集団……世の中には生憎と詳しい少年が見ても、誰も彼もが助けしか求めてないし、今更助けは無いと言い出したら、暴動が起こりそうだ。
此処で一々虐殺事件を起こしている暇も無い少年にしてみれば、明らかに面倒事でしかない人々が何故高々40人の偽装したエルフに付いてきたのかの方が疑問だ。
だが、その答えは少年の前にいる。
「貴方が助けてくれそうな人?」
少年に訪ねたのは大剣を持った少女だった。
猫耳の亜人。
案外、多種多様な人種がいる大陸らしく。
少年が見た事のあるタイプの亜人が複数種類混じる混成貧者な者達の先頭に立つのはまだ十代前半程度の猫耳獣人少女。
黒錆びた何処か質感の悪いボサボサの長髪を一つ束ねて背後に垂らし、滅茶苦茶胡散臭そうな顔になった相手に少年はどうしたものかという顔になる。
「三つ訊きたい」
「何?」
ぶっきらぼうな少年に対してぶっきらぼうな少女が答える。
「対価は差し出せる?」
「差し出せない。差し出すモノが無い。体では払わない」
「金銭は持ってる?」
「持ってない。無い袖は振れない」
「働く気力はある?」
「ある。働けない人が6割くらいでもいいなら」
布に包まれた大剣を背負い。
外套の下には動き易い服装。
というか、古びれてボロボロの布地を巻いただけの少女がそう告げる。
「名前は?」
「それは四つ目の質問?」
「先頭に立つ相手がどんな相手かを知る必要がある」
「………」
その尤もな話を前にして少女が背中から紐で結わえた剣を引き抜いた。
剣だけはやたら磨かれているのか。
錆び一つ無く。
無骨というには装飾が施された草色の剣身には蔦が刻印されており、息づいた魔力が薄っすらと見える。
「結局、助けてくれる?」
「相手の事を知らない内に助ける事は出来ない」
「なら、どうすれば、分かってくれる?」
「話を聞く時間が惜しい。戦う者には戦う者の伝え方がある」
少年が通常の長剣に偽装した真菌の黒剣を引き抜く。
生憎と二人は少し似た者同士であった。
特に説明しなくても物騒な方法が似合うという点で。
少女の目は鋭くも少年の分かり合う方法に何処か納得した様子であった。
「勝ったら助けて」
「そちらが勝っても負けても助けるかどうかはそっち次第とだけ言っておく」
少年と少女が背後の者達に下がるように伝える。
誰も彼もがざわつきながらも自分達の代表者同士の決め事に文句を付けるでもない状況であり、人々に余波が飛ばないよう十分に彼らが下がったのを確認した後、400m四方に広大な結界が張られた。
「スゴイ……」
思わず驚いた少女が目を見張る。
少年の指一つの動作。
今の少年の張れる結界の距離限界で張られたソレは余波程度なら問題なく隔てられるものに違いなかった。
その頭上には200m級の帆船が一隻。
人々はまるで希望の船を見るかのように天地の有様を凝視し、二人の様子を固唾を呑んで見ていた。
「名前はユイ……忌地の言葉で結ぶを意味する」
「(ゼド語……旧き者達の音節文字……例の大陸の血統……殆ど変異が見られないのも恐らく未だに兎月達と同じだけの力をあの女神から……)」
少年が少しだけ思考してから、剣を構えずに構えた。
片手に剣を下げただけの様子は何ら無防備そうに見える。
それを分かっていてか。
僅かにどうしようかという顔になった少女ユイが薄っすらと剣身を輝かせた。
途端、走り出した少女が瞬時に編み上げた魔力が口内で呟かれる僅かな発音で顕現する。
「(スキル【千断華】)」
少年に向けて一瞬で距離を詰めた少女の剣に被せるようにして無数の剣身が魔力で編まれ、瞬時に一点に向けて花びらが閉じるが如く叩き込まれる。
ほぼ同時に飛び込んだ少女の剣が更に輝き。
【(スキル『万色万化』)】
少年のほぼ全方位に複数の魔力転化による炎、雷、更に物質化した水、氷の刃を連続で降り注がせた。
「ッ」
しかし、その刃が届くより先に少年は上空に跳躍。
追い掛ける魔力を生み出す円環。
呪紋で言うところの方陣が無数の文字を追加で多重に円環を太らせるようにして外部に次々と増やしていく。
内容は誘導、射角、起爆時間などだ。
少年も知らない文字列であるが、大体の位置と内容を大雑把に推測した少年が描き込まれた情報をチラ見しながら回避軌道を再計算していく。
【(スキル『派生追加』)】
「(スキル【精密予測】)」
無論、少年はソレを一目見て、大体の見当を付け、適当に直撃しそうな攻撃を見極めて切り伏せながら、虚空を駆ける。
「空をっ、そのスキル欲しい!!?」
「………(この大陸ではまだ【スキル】が生きてる? 旧き者達の時代に殆ど失われたはずの技があるという事は技能として生き残っているか。もしくは単純に固定化された現象を引き出せる定理管理圏が一部制限された状態で邪神側にあるのか。または定理干渉する力の類で維持されているか)」
少女の言葉に初めて少年が内心で反応しつつも、相手の攻撃を避けて適当に剣であしらいながら、片腕を落とす為に技を紡ぐ。
「(来る!! こんな回避出来る体術見た事無い!? 本当にスキルなの!? ねぇ、アダマシアス!!)」
少女が剣に語り掛けながら、相手の攻撃に被せて自分もまた大技の溜めを終えて、少年に向けて虚空を突撃。
魔力を背部から噴出させ、運動エネルギーへと転化。
瞬時に距離を詰める。
その間にも少年は剣で多数の攻撃を切り払い続けていたが、一つも命中する様子が無いのは回避と防御が完全な調和を保ち。
一切、乱れないという非常識のままに現状維持が出来ているからだ。
まるで重力なんて無いかのように虚空を舞うような回避運動には無駄が無い。
「「―――ッ」」
2人がほぼ虚空で激突した。
しかし、その一瞬で少女の剣が叩き折られ、同時に少年の剣が少女の体の幻影を突き抜ける。
遅れてやって来た少女の拳が少年の懐。
腹部の上を打撃し―――。
「ッ!!?」
少女の方が驚きに固まったまま弾き飛ばされて地面に激突してバウンドしながら転がって距離が開く。
「(最初から幻影を見破られてた!? 特別な瞳なんて持った無さそうなのに!!?)」
同時に虚空から剣が猛烈な速度で少女の前へと向かって突き進むと当たる寸前で静止し、その少女の額にぶつかりそうだった10m前後の土塊。
少年が作ったクレーターから発生した余波で吹き飛ぶ岩と土の塊を全て薄緑色の結界で遮蔽した。
「……助けてもいい」
少年が剣を背中に戻して少女の元までやってくる。
「貴方、強いんだね。お腹に直撃させたのに……」
「弱い。圧倒的に……この程度で骨が軋んでる。随分と弱体化してるのが分かって、ある意味良かった」
「どういう事?」
少年が手を差し出す。
「説明は後にする。それと食料が絶対的に足りない。悠長に農業をしてる暇がない。あの街の食糧物資を2か月分略奪してくる。船に載ったら、兎月の言う事を訊く事。勝手な事をしたら、下船させる。それは助ける助けない以前の問題になる」
「わ、分かった。皆には勝手にさせない」
「乗船前に全ての人員から持ってる限りの食糧以外のアーティファクトの類や物資は取り上げる。危険物はこちらで保管させて貰う。火器は個人で持ち込み禁止。身体の検査の為に黒いので体を調べる」
少年がスライム化させた剣を少女に見せる。
「剣じゃ、無い?」
「コレで全ての人員の体を調べさせて貰う。伝染病や一部の呪の類。他にも諸々の生態として有害な物質を出したりしても困る」
「……え、えっと……危ない事はしない?」
「危なくない。もしも傷や病があるなら、逆に治せる」
「ほ、本当!?」
「本当……ただし、限度はある」
「わ、分かった。今、他の皆に伝えて来るね」
テテテッと大急ぎで走り出した少女は剣も持たず。
いや、置いていくが……少年はその剣をジッと見ていた。
そこで観念したかのように剣が虚空に浮かぶ。
【アンタ、強いんだな】
少年がジト目になった。
「その型の剣は見た事ある。魂が封入されてる。もしくは……」
【ああ、オレは元人間だ。まぁ、人間と言っても随分と昔の大陸で戦ってた兵隊の成れの果て、魂すら本人の模造品だけどな】
「あの剣技はどっちの?」
【お、そんな事まで分かるのか。スキル持ちってわけじゃなさそうだけど】
「スキル……ソレは何処のシステムに属してる?」
【……そんな事まで知ってんのかよ。アンタ、実は滅茶苦茶老けてても若作りとかなのか?】
「年齢は関係ない。あの複数使用してたスキルはどちらの?」
【オレのが半分。ユイのが半分だ】
「……名前は?」
【アダマシアス。正確にはアダマシア製ってところか。オレは元々、この大陸の外にある神々の大陸。忌地って呼ばれてる大陸で製造された剣の一本なのさ】
「なるほど……でも、文化圏が違うように見える」
【お? 本当に詳しいな。ああ、そうだよ。オレの元となった種族がいてな。オレはそいつらの力で死ぬ時に人間止めたんだ】
「それってミスリスって種族じゃない?」
【へ!? あ、アンタ知ってるのか!?】
「……この間、ウチに攻めてきた神格の下っ端にそんなのがいた」
【オイオイ。ミスリスは伝説の魔剣や聖剣ばかりなんだが……どうやって生き残ったんだよ。アンタ……】
「生憎と攻めて来た時に何人か捕虜にして、後は適当にあしらったとも聞いてる。殆ど雑魚って評価だとも」
【ざ、雑魚って……魔力の伝導と誘導、制御諸々だけで人間を遥かに超えてるはずなんだがな……】
若草色の剣と話し込んでいる間にも少女が後ろの老人達に何やら話してから戻って来る。
「長老のみんながよいって!! でも、あの船に全員乗れないんじゃないかって心配してる!!」
少年が指を弾く。
途端、今まで200m近かった船がゆっくりとその大きさを広げ始めた。
横幅が増えると同時に内部に溜め込まれていた真菌が薄く引き伸ばされて既存の部屋をそのままに通路や諸々の客室を増やし続けて4倍近い威容にまで膨れ上がる。
「―――す、すご……」
【言葉もないな……】
少年が更に船の底から大量の真菌を零させて柱の如く展開し、沼地内部に螺旋階段を生み出した。
「これを登って船に搭乗している間に検査は終わる。あの黒い沼にさっき言った諸々の物資は置いておくように。それと既存の区画とは分けて部屋を作っておいた。開けられてる部屋と区画以外には入らないように。厠は中央の下層付近に客室からすぐ行ける距離に40人用を3つ。水はあちこちの壁に捻れば出て来るように水道を引いてある。帰って来るまでに部屋割りを決める事。それとそこの200人以上いる戦闘用の部隊人員から武器は取り上げない。ただし、武器を船の中で不用意に抜いたら、空に捨てると言い聞かせておく事。以上」
必要な事を言い終えた少年がイソイソ現場から離れて街の方面へと向かっていく。
「……なぁ、どう思う。アレ?」
思わず、ずっと少年の行動を遠目に見ていたランドが横の兎月に訪ねる。
「ま、まぁ、我らの生活にあまり影響が出ねば、左程に問題視する事はあるまいよ。それはそれとして……」
ジロリと兎月が探索チームの部下達を見やる。
40名のエルフ達の顔が引き攣っていた。
今は現地の亜人の浮浪者に偽装していた彼らであるが、どうやら情が移った為に連れて来たらしいのだ。
じっくりと話を聞かねばならぬと兎月の瞳が細まる。
「この調子で知らぬ者を受け入れ続けられるわけではないのは言うまでもない。少しお灸を据えねばならんな」
「まぁ、人助けだと思って、程々にしなよ。姫さん」
「それで我らが破滅するのでは困るのだが……」
「全部、坊やの心一つだろ? あの子が決めたんだ。ここは一つ広い心で張り倒すくらいにしておくってのは?」
「……そうしておこう。我らが使徒様に見限られぬ程度に、な?」
メイジェーンが諌めた事で兎月はちょっとこっち来いと探索チームを連れて船に一足先に螺旋階段で戻っていく。
お説教は程々に厳しいものになるだろう。
現地では奇跡染みた黒い氷の船に登る為にか。
諸々の説明を少女が大勢に声を張り上げて注意事項として聞かせていたのだった。
*
―――ニアステラ【英雄の館】。
もはや、神すら退けたニアステラの英雄。
という事実を元にして今や英雄の館と完全に人々から言われている元酒場の二階。
近頃は赤子の泣き声がするようになった場所では既に英雄には子供がいると噂になっており、一目見よう……なんて、不届き者は居らず。
しかし、館の主であるアマンザが教育係を求めているという話はヒソヒソと噂されていた。
「深呼吸よ。深呼吸……」
そうして幾らかの亜人達が出入りしている事が確認され、乳母でも雇っているのだろうかという事になったのだが、その一人は……二階の一室でゴクリと唾を呑み込んで結果を待っていた。
まだ年若いエルフの20代になったくらいの女である。
ニアステラにおいて唯一の種族。
エルフの彼女がこの鬼難島に漂着したのは2か月以上前。
嘗て、勇者をしていたという肩書の女は島の非常識な戦争形態を見てしまってからと言うもの……自分が如何に井の中の蛙であるかを理解したので傭兵業では食べられ無さそうと自信を喪失。
元々、祖国では勇者と称えられていたのだが、現在は無職で難民扱い。
蜘蛛達からの配給で質素に暮らしていた。
「すーはーすーはー……はぁぁ……(*´Д`)」
そんな彼女がこのままではダメだと一念発起して自分の大陸に帰ろうともせずに現地で生きていく事を決めたのはある意味では潔かったからだ。
自分を海に捨てた故郷の大陸の艦隊は既に鬼難島の守護者達に葬りさられた後であるという回答が島の者達からは帰って来た。
問い合わせた後、彼女は絶望的な心地ではあった。
だが、彼女には島を敵に回す理由が無かった。
理由になりそうな存在。
付き合っていた男は何か付き合ったは良いけれど、彼女の地位にしか興味が無いような輩で別れようと思っていたので左程の恨みも無かった。
「(……お父さん。お母さん……貴方達の一人娘は恐らくもう故郷には帰れそうもありません)」
そもそも保有する戦力が鬼難島は明らかに彼女の大陸が一丸となっても勝てるか怪しい……いや、勝てそうにないレベルなのだ。
そのゴーレム染みていても明らかに違う機甲兵器群は彼女が見る限り……10機もあれば、彼女の大陸の大都市圏を瓦礫に出来る力を有している。
その上、あまりにも戦争に対する技術も知識も大きな格差が開いていた。
彼女の故郷の戦力がどうにか出来る程に甘くないのは上陸して1日後には分かっていた事であり、大神の全力が降り注ぐ場所で生き残り、避難所で外のあまりにもあんまりな戦闘風景を見てしまった彼女にはもう口が裂けても元戦闘要員ですとは言えない悔しさだけが残った。
そして、エルフ達の艦隊は事実上の侵略者であったという事からして、彼女の心痛は限界を突破。
結局、自業自得であると全滅を納得するしかなく。
それどころか。
そのエルフと知ってもまるで問題無さそうに彼女を島への漂着者。
難民として受け入れてくれた事実上の支配者達である蜘蛛達からの手厚い生活支援やら就労支援も相まって、何とか現地で生きていく決意をしたのである。
「(神すら屠る遠征隊。無限の戦力を平らげる蜘蛛達。天の月に届く緋色の塔。御伽噺よりも御伽噺ね……此処は……)」
どの道、捨てられた彼女は故郷の大陸では裏切者扱いか。
もしくは生きていては困る人材なのだ。
彼女の祖国がそれに同意していなかったとしても、侵略戦力の大半は各国の合同の意思表示であり、そこから摘まみ出された彼女が祖国に戻れば、結果は火を見るより明らかであり、無用な混乱や戦争にもなりかねない。
こうして、島に移住を決意した元勇者は就職活動に勤しむ事になったのである。
だが、その道は苦行であった。
「(ねーさん達に言われた通り、少しは花嫁修業や染物くらいは習っておくんだったな……こんな事になるなら……)」
彼女には剣の才能以外が壊滅的に無かった。
手先は器用じゃないし、というか不器用だし。
知識職として働こうにも筆不精なせいで字が汚い。
それなりに高度な知性はあるし、勉学は出来たし、学問や世渡りの嗜みはあるが、それと彼女の文字が綺麗かどうかはまるで関連が無かった。
ついでに力仕事にそもそもエルフという種族は向いておらず。
土木作業用の作業機械が普及し始めた昨今、非力なエルフの出番は無かった。
というか、この数週間で復旧が半ば終わったニアステラとフェクラールはつい先日まで完全に黒焦げになっていたのが嘘のように樹木すらも再生している。
彼女だってエルフの端くれとして樹木を操る程度の技は使えるのだが、それにしても森を数週間で元に戻してみせるなんて出来るものではない。
「(此処は何もかもが規格外の島……古の旧き軍艦が空を飛び。伝説の都を踏破しつつある者達が英雄と共に外部からの侵略者達と戦う。無限の神々の兵力すらも押し返す魔蟲の子孫が蔓延り……怪物よりも怪物な怖ろしき亜人と人の身でありながら、天すら制する追放者達が政を行う……何もかもが違い過ぎる……)」
瞬発力がモノを言う軽装戦士だった彼女は魔力と素早い行動が求められる市街地戦や野外探索ならばお手の物である。
が、島の異常な戦力と人々を前にしては一般人だ。
結局、自分如きでは嘗て取った杵柄である戦う人としての就労先が無い。
という最終的な結論が出た後、死んだ魚の目になったのも無理は無い。
最後の希望……乳母というよりは教育係として英雄の館、英雄邸に応募したのは正しく神頼みに近い行動であった。
「合格だよ。これからよろしくね。ええと」
「ミーシア!! ミーシア・リンクスと申します!!」
ようやく就職出来たと涙目でアマンザに頭を下げる。
「な、泣くほど嬉しかったのかい?」
「あ、い、いえ、これは……あはは……」
彼女は知っている。
此処から去っていく背中は多かったのだ。
ついでに彼女は完全に此処の島の住人からしたら異邦人なのだ。
蜘蛛達に島の外の情報を聴取されたし、しばらくの後に見掛けない亜人だから、何かジロジロ見られたりもした。
だが、それでも彼女が左程に注目されなかったのは環境によるところが大きい。
このニアステラの地において、新しい種族が“出来る”のは案外よくある事らしいと聞いてスゴイ・ツッコミを入れたくなったのも今は昔である。
「じゃあ、これからよろしく頼むよ。ミーシアさん。仕事の内容は契約内容通り。あの子が立ち上がる頃からは教育係だけど、それまでは雑用を主にしてもらう事になる」
「は、はい。こちらこそよろしくお願いします。アマンザ様」
「はは、様は要らないよ。さん付けでいいよ」
「はっ、はい!!? 分かりました!?」
英雄の家を預かる女主人。
そして、亜人達の世間的な評価は英雄の愛人。
何で子供が出来たのか?
勿論、相手は英雄色を好むの言葉通りだろうと多くの者達は彼女が身籠った子の片親をそう噂している。
そんな恐らく権力というもので言うなら、ニアステラでも最初期の追放されていた者達の中でもかなり持っていると見なされる彼女に様を付けないというのもある意味怖いものがあったが、本人はまるで意に介さず。
「雑用関連を取り仕切ってるのはヒオネのとこの人達だから、話はそっちに聞いとくれ。それと夕飯はみんなで摂るのが此処の決まりだ。ウチは仕事だ遺跡だと忙しさのせいでロクに人が集まらないからね」
ニアステラの英雄を筆頭にした遠征隊はとにかく忙しく島のあちこちに出張し、蜘蛛達もまたセブンス・ヤーンと呼ばれる大化物達の多くがあちこちで自分達の仕事をしている。
その関係上、館には基本的に内政組とされる人材達が集まるのだが、その内政組こそが最も忙しい為、常に家を護っている者達の大半は英雄の妻としてアルマーニアから迎えられたヒオネの侍従達や御付きの女性陣。
後は呪霊の主と呼ばれる英雄の片腕と称された少女。
エルミレーゼ・ファルターレ以外、入れ替わりで寄合所のようにやってくる追放者達ばかりなのだ。
再建された館は前よりも更に大きく増設されており、少年が生み出した種族である特別な瞳を持つ幼児達ヘールやら少年が新しい体を与えた特殊な出自のマーカラやらが孤児院よろしくヒオネの御付き達によってお世話されているが、大人達の殆どはやはり忙しく。
大抵は護衛の蜘蛛達や女子供が食卓を囲んでいる。
「謹んで列席させて頂きます」
「ははは、大仰大仰。まぁ、自分の家だと思って、ゆっくりしていきな。アンタの部屋は一応、蜘蛛達に頼んであるから問題なく明日くらいには新築される奥の別棟に出来てるはずさ」
「へ!? そ、そんな!? へ、部屋を?!」
「ああ、気にするんじゃないよ。蜘蛛達があの子の養育には一緒に住まってる方が何かと便利だろうって勝手にやってるだけさね。給料はちゃんと払うから。食事は此処に住まう連中には当たり前に振舞うものだから、金も取らないよ」
「は、はい……本当に何から何まで……」
「そう気負う事はないよ。あたしなんてただ此処を預かってるってだけの普通の女だ。アンタとそう歳が違うわけでもない。アンタみたいに剣の嗜みも無けりゃ、魔力があるわけでもない。まだ気軽にとはいかないだろうが、友達だと思って色々話しておくれよ?」
「~~~うぅぅ、あ、ありがとうございます。アマンザさん」
彼女は知っている。
この急速に元に戻っている街並みのあるニアステラも最初は小さな野営地だったのだと……それをニアステラの英雄を筆頭にした遠征隊と蜘蛛達の力によって増設し、次々に規模を拡張。
今や一地方、国家規模を遥かに超える全ての領域が亜人と蜘蛛と幼女達の住処となり、黒蜘蛛の巣の下……あらゆる外敵から身を護る為の政策が執られている。
そのおかげで彼女も丸焦げになったり、隕石で蒸発したりしなかったのだ。
「(こ、此処の人達はみんな英雄に助けられた人達だって話だし、失礼が無いようにしないと……)」
ニアステラの英雄は敵を自分が討伐した大蜘蛛の力で蜘蛛にし、遠征で見つけた力や技能、更には島の希少な資源で造る秘薬で数多くの偉業を成したとされる。
少数の人員を転生させて肉体を与えているとの話は正しく御伽噺のような本当の事らしく。
その多くの救済された者達が島で虐げられていた悲しい過去を持っているとか。
訊けば訊くだけ彼女の顔は一体どうなってるんだというものになったのも過去の事であり、事前に知らされた多くの気を付ける事に関する情報はそれを裏付ける。
神の奇跡すらも使う遠征隊は正しくニアステラの統治者層の最上位意思決定者達であり、最大戦力なのだ。
そんな人々の後方要員を要する館に入れるだけで彼女はある種の庇護を受ける立場となり、その恩恵に浴するだけの働きを彼らそのものが要求せずとも周囲の環境に要求される事となるだろう。
「(……過去の事を訊くのは親しくなっていない相手には気を付ける。知られたい事ばかりじゃない。不用意に尋ねても困らせるから……特に注意……)」
両地域の人口の半分以上は蜘蛛、次に亜人、その下に蜘蛛達によって無力化された戦力の成れの果てである幼女と続く。
過去の彼ら、彼女ら、あるいは蜘蛛達の話は正しくするべきではない。
今は薄氷のようなバランスの上で両地域が何とか存続しているのであり、人の過去を不用意に詮索すると怒らせる以上に地域に危険な事が起こる可能性すらあるというのが蜘蛛達が彼女に手渡した注意事項であり、実際ソレは事実だった。
「(過剰に気を遣う必要は無くても常に留意して頭の片隅においておく。私だって過去を詮索されたら、困る事は多いんだから……)」
幼女達は元々男だったり、戦う人だったりしたらしいのだが、今やワクワクしながら幼女らしい娯楽に目を輝かせる配達人だし、それを仕切っている二大幼女は元々は偉いおっさんやじいさんだったのが変化して、美しい少女となっている。
だが、如何にコメディータッチな幼女達でも中身はおっさんや良い歳の大人であり、彼女以上に複雑な背景を持っている事は想像に難くない。
幼女にされなくても、この地域に住まう人間、亜人の殆どは過去何かしらの勢力や思想、国家に属していたり、今も属している。
その全てがたった一人の少年に敗北し、蜘蛛達の監視管理下で生かされている“お客さん”なのだ。
自分もその一人であるからこそ。
それに注意する事は間違いなく必要な気配りであった。
「あら? アマンザさん。その子が?」
そうして彼女がアマンザと話していると館の奥の扉から一人の少女がやってくるのが見えた。
申し訳程度の竜角を持つ無機質さも併せ持つ陶磁器のように滑らかな肉体の少女はあまり表立って出て来ない遠征隊の1人。
「ああ、エルミ。この子だよ。新しく雑用兼あの子の教育係として来たのは」
「エ、エルミレーゼ様、でしょうか?」
「ふふ、今はただのエルミよ。憶えておくといいわ。ふ~ん?」
「な、何でしょうか? あ、私はミーシア・リンクスと申します」
繁々と見られて、彼女が引き攣りそうな笑顔で応じる。
「頑張りなさいな。わたくしは基本的に館の護りに付いているから、不届き者が来た場合は遠慮なく呼びなさい。それと遠征隊の方には紹介しておくわ」
「は、はい……」
すっかり、影の館の主と化しているエルミは少年が行方不明になってからと言うもの、産まれた赤子やヘール、マーカラの子供達を護る為の庇護者として館に留まっている。
蜘蛛達と共に諸々の重要資材や重要物資の保管もやる管理人のような立場となっているが、あまり館を留守にしない以外は普通の生活を送っていると言っていい。。
「雑用って事なら、わたくしにちょっと付き合いなさいな。アマンザさん。いいかしら?」
「構わないよ。じゃ、頼んだからね」
「ええ、ウチの使用人達も今は館を回してくれているし、雑用の内容も色々あるから、魔力が有って戦える人材は歓迎ですわ~♪」
こうしてアマンザに見送られ、ミーシアがエルミに連れられて再建されたばかりの館の奥へと歩いていく。
「これから何処へ?」
「ああ、通常の業務の方は後でヒオネの使用人達から聞いて頂戴な。それよりも先に少しやって貰いたい事があるのですわ」
「やって貰いたい事、ですか?」
「ええ、警備やら何やらは別に蜘蛛達がしてくれるから問題ないけど、他の魔力や戦闘技能がある人材にしか任せられない仕事が多くて困ってたのよ」
「どんなお仕事でしょうか?」
「見れば分かるわ」
そう言って、館の中央。
中庭となっている場所にある東屋までやってきた二人だったが、すぐにその下へと東屋が下がっていく。
東屋の下に続く長い立坑の壁面は全て金属製だと気付いてミーシアが驚く。
そうして辿り着くまで1分弱。
下に降りた彼女が明らかに上の石製の館とは違って金属製な通路の先に出ると。
「ッ―――武器?」
広大な体育館程もあるだろう横向きの円筒形の空間。
その壁面と虚空に連なる収納用らしい備え付けの棚にガッチリと嵌め込まれるようにして挿入されている武器の数々が見えた。
「館を再建する時に遠征隊用の武器や道具、資材の大半を地下に移したのよ。あの館自体を格納する領域はまた別にあるのだけれど、此処の管理人が足りなくて、困っていたというわけ」
「管理人、ですか? でも、蜘蛛の方達がいるのでは?」
「ああ、蜘蛛達はいるわ。でも、基本的にわたくしが管理する場所ではないのよ」
「管理する場所ではない?」
言っている間にも2人が広大な空間の渡り廊下を歩いて中程まで来た。
「わたくしの権限と能力は魂に限られているのですわ。でも、此処にいる者達はその類ではないの」
「?」
エルミが指を弾くと虚空にゆっくりと魔力の転化光の光が灯り始め、光源となったモノ達が周囲をウロウロし始めた。
「これは……精霊?」
「ええ、そうですわ。今、ニアステラとフェクラールの全土にいる精霊は現地の竜骨塊より魔力を得て活動する契約精霊。でも、大神との戦いの後、自然に生まれて来る精霊達の殆どは影響を低減させる為に地下へ退避させているの」
「退避、ですか?」
「ええ、先日の攻撃で地表が壊滅的な被害を受けた後の事よ。既存の精霊達は地域の地下へと逃げ込ませていたのだけれど、その後に生まれて来る精霊達は神の魔力の残渣やゴーレムの回収し切れていない金属粒子、他にもプラチナルや戦闘の際に削れたノクロシアの外壁、蜘蛛の魔力や代謝物……そういったものを取り込んだ事で大きな変化があったのですわ」
「変化?」
「優しく突いてみて?」
言われた通り、光の弾をミーシアが優しく突く。
すると、その光の玉はふよんという感触が有った。
「コレは……触れる?」
「ええ、そうよ。魂無き精霊は知能と実体を得たわ。この子達は“魂のようなもの”を発生させているけれど、この世界の定義では魂には該当しないの」
「つ、つまり、新しい生物なのでしょうか?」
「そんな感じですわ。でも……今は遠征隊で精霊の分野を扱うフィーゼがノクロシアに遠征中。通常の精霊達とは違う子の多くは昼間は地表の土壌や空気中から過剰な神の魔力やプラチナル、空間の歪み、ノクロシアの残渣を吸収して自身に取り込む。夜には地下で武器や防具、様々な道具から発され漏れ出す力を得て、成長しているの」
「つまり、昼間は外で、夜は地下で食事をしているという事ですか?」
「そういう事になるわね。でも、過剰過ぎると暴走するから夜間の退避をおこなっているの。最終的にどうなるかは不明よ。でも……」
「でも?」
「蜘蛛と道具や武器しかない場所で成長し続けるのは恐らく成長の方向性的に危険なものになる可能性が高いのですわ」
「そうなのですか?」
「ええ、ですから、蜘蛛達ではなく。もっと温厚に精霊達を見守る者が欲しかったの。もしもの時にもちゃんと自分で対処出来る相手が……」
「せ、精霊の事ならお任せ下さい!! エルミさん!! 一応、エルフは森の精霊と調和を育む事を産まれた頃から教え学んでいますので」
「そう。なら、朝3時間、夜3時間。夜は食事を終えた後、夜の9時頃まで見回りをお願いしますわ。この地下領域は此処と同じような場所が6つあるの。蜘蛛達も120名近く警備に付いているから、何かあれば報告して頂戴な」
「は、はい!!」
「ヒオネの使用人達のところに戻ったら、仕事の割り振りと時間を決めて、明日からお願いしますわ」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
こうして館に新たな住人が増える事となった。
だが、彼女は知らない。
エルミが他人に仕事を割り振るという事は……彼女が持て余しているからであるという事実を……。
次の初仕事の時、彼女はソレを思い知る事となる。
光る玉。
見えない者には見えないはずのソレは現在ならば誰にでも見えるようになっていたが、その魂無き意志。
ある種の魔力式の無機物知性とでも言うべき代物は彼女を見付けるとすっ飛んできて、遊べとばかりに体をあちこち引っ張り回した。
「あ、うん。はいはい。分かった。分かったから、あんまり圧さないで?」
次々に『内部を案内しよう!!』という勢いでほぼ彼女の意志に関係なく自動で肉体を移動させて連れ回し、ついでに今まで精霊達がやっていた仕事をそのまま勝手に始めた。
「か、勝手にお茶を入れてくれてる。これって……歓迎されてる、のかなぁ……」
要はお茶を入れるやらおかしを出すやら肩を揉むやらしてくれるのだが、その間は正しくお人形遊びよろしく肉体の動きを強制された。
「あ、ちょ、こ、こら、どうして、この形って、あいたた!? 分かった!? 分かったから、抵抗しないから!? う、うぅぅ……どういう事なの?」
彼女が目を白黒させている間に精霊に身を任せていると最もリラックス出来る形に固定化されて、所作一つすらも『やってあげる!! 補正してあげる!! 一緒に遊ぶのはこのポーズね!!』という一方的な遊戯を開始。
強制してくる“奉仕”という何とも困った状態となったのだった。
『(辞表……用意しとかなきゃ……(|д|)……)」
もはや蜘蛛達みたいな作り笑顔で精霊達に弄り回された彼女が、それすら不可能になっている事に気付くのは初めての仕事の翌日。
精霊達は正しく彼女に“付いて回るようになった”せいで仕事を止めようが一切意味が無いという事実だけが残った。
「え、えぇ……しょ、食事の時の所作すら自由に出来ないの? というか、トイレはさすがに怒るわよ!!?」
空気を読んだのかどうか。
精霊もさすがに排泄と風呂までは付いて来なかった。
しかし、そう……この精霊達の悪戯ですらない半機械的ながらも人の為に行う“強制する善意”は正しく常人には悪夢の類だろう。
フィーゼの如き精霊への強制力、干渉力、統率力が無い“精霊が見えてお願いするだけの人材”には正しく有難迷惑であった。
ただ、彼女がそこに気付きを得た事は得難い話だろう。
精霊達が人間に強制する動きや諸々の行動が全て“人間を強くして長持ちさせる為のもの”である事が彼女には半日もすれば分かったからだ。
何故か?
精霊達の強制に身を委ねていると、とにかく楽なのだ。
何というか。
あまりにも自然に癒されていると感じると共に同時に肉体がやたら節制……強制的に今まで張り詰めていたあらゆる臓器と筋肉が最低限度動かすだけで生きていけるという状態になる。
自堕落と肉体を永続的に生かす為の行為を掛け合わせたような待機状態とは裏腹に必要な運動は全て肉体を鍛える為に幾らかの負荷が掛かる。
これが短時間でサイクルし、怖ろしい事に生きているだけで強くなる事が実感出来るという……あまりにも背筋が泡立つような生態を彼女は知ってしまったのだ。
「(こんな動き……最小限の“動”と最大源の“静”で最大効率で肉体を強化? 精霊達はこれが人間にとって良いものだと感じている?)」
精霊達はこの島で最も効率的な“誰か”を真似て、人々を“より良く生かそう”とする……そういった善意よりは方向性のようなものを得ていたのだ。
その誰かは生憎と邪神の大陸に行ってしまっているが、その当人ならば精霊に群がられても毎日やっている事を誰かから強制されているだけで違和感もなく日常を送れていた事だろう。
だが、それを強制された彼女は精神状態とストレスから来る疲労はともかく。
戦う人間だからこそ分かる動作、所作のあまりの精密さに顔を青褪めさせた。
「(これは型? 動作、所作……いえ、あらゆる活動の一つ一つが肉体強化と戦闘動作の為のものとして織り込まれてる。全身の細胞への負荷と急速な回復の繰り返し……こ、これって大丈夫なの? こんな鍛え方したら、細胞を急速に老化させるんじゃ……)」
彼女がそんな恐怖に取り付かれて、3日後に辞表を提出しようとしたのだが、その前に地下で蜘蛛達に引き留められたのは良かったのか悪かったのか
「こ、これは?」
「(●´ω`●)(寿命を3倍まで伸ばすお薬と仕様書ですという顔)」
「え?」
「(^◇^)(精霊達の面倒を見てくれてありがとう。と、感謝するついでに無限に肉体の細胞増殖時のエラーを限界低減しつつ、異常細胞を捕食する細胞を強化するお薬をおもむろに差し出す顔)
蜘蛛達は彼女の事が分かっていたらしく。
常人には限界のある強さの上限を取っ払う非常に怖ろしい薬をお茶にして差し出し、彼女は蜘蛛達から貰った薬でしばらく普通に生活出来るし、従来の寿命は保証するから、もう少し面倒見て欲しいとの要望に結局折れた。
理由は単純明快である。
もし、彼女が止めれば、また別の誰かがこの状況に陥る。
そして、その相手が彼女のような理解が出来ていなければ、精霊は更に過激な行動をするようになるかもしれない。
仮にも勇者と呼ばれていた彼女にとって、それは少なからず精霊とも親交のあるエルフの血筋として看過出来ない話に違いなかった。
その新たな精霊達を何とか諌め、正しい道に導く事。
それは半ばもう彼女が己でどうにかしたいという目標。
この島に来て初めて出来た生きる意味となっていたのだ。
「……分かりました。もうしばらく、頑張ってみます」
こうして赤子が少し大きく成るまで精霊達を養育する事となった勇者は……祖国において魔王討伐の一助を果たし……錬鉄、錬鋼、鍛えし者の称号にてエルフの中で唯一遥か常人を超えた鍛錬に耐え、人間や他の多くの肉体的に精強な種族達に混じって冒険者家業をしていた彼女は……新たな大地の上で己を鍛える事となるのだった。
「(それにしてもこのお茶……スゴイ好みの味がする……)」
エルフを超えたはずの彼女が今度は遥か神を超える生物達の下でどうなっていくのか……まだ誰も知らない。
ただ、勇者とは勇気ある者だとすれば、彼女にソレは当て嵌まらない事は事実だろうし、人の為に勇気を出すというよりは今回の事からも自分の為に仕事を頑張るというのが本音ではあっただろう。
彼女には勇気どころか蛮勇すら無いが、一つだけそう言われる所以がある。
最も非力なエルフ……魔力と魔力運用体系の技術に特化した一族の中で唯一……己の無智を受け入れた者。
勇者とは、祖国での皮肉が国外の公には事実として語られた誤謬なのだ。
『大陸の未来は暗いですな。あの艦隊を向かわせた後の天変地異でもはや見る影もなく沿岸部と中央地帯は壊滅……せめて、勇者殿が生きていてさえくれれば……』
『壊滅した艦隊からの最後の伝令では戦闘で命を落としたとの話だが、エルフはやはりエルフ……戦闘要員として向かわせるべきでは無かったのかもしれぬ』
『ですが、あの方以上に我が国の戦闘に秀でた者はいなかったでしょう』
『少し違うな。あの子は戦闘能力はそこまで高くない。だが、我らエルフには無い力を得ていたのだ』
『エルフには無い力?』
叡智の徒である一族にとって、彼女は正しく異端たる力の徒。
賢者しかいない群れの中に突如として現れた蛮族。
正しく異端。
一族からすれば、生きた生身のゴーレムとか。
あるいは単純に巨人の戦士とか。
そういうのと同列に扱われた故に……彼女は鍛える事しか知らない無謀なエルフ、勇者と呼ばれ、国で唯一の戦士として魔王との戦に加わっていたのである。
『諦めが悪い。そして、克己と克服の申し子……という事だ』
新たな精霊達はそれを知ってか知らずか。
その精神構造がエルフというよりは島で“最も己を鍛えて来た者”に近しいという事にも触れず、琴線に触るような接し方をしていたのである。
『我らでは届かぬ力と歴史の果てを見るのはきっと……あの子のような……平和を願い戦える者の事だと思っていたのだがな……』
こうして、蜘蛛達は案外伸び代がありそうな相手をニアステラの戦力として正式に迎え、新たな精霊達は遊び仲間を手に入れる事になったのだった。
ちなみに地下生活で遠征隊の武器や防具の保管庫をウロウロする彼女には特典として自分が使えそうな武器は鍛錬に使っても良いという許可が下りている。
思い直した彼女の仕事場へ感じた魅力は正しくソレであった辺り、彼女の祖国での評価はまったく正しいものだったに違いなかった。
「ま、まぁ……頑張ろう。うん……此処の武器も使っていいって言われたし、スゴイ武器も沢山あるものね……ちょっと、愉しみかも……」
つまり、間違いなく彼女は島の戦う者達と同じような思考が出来る戦闘狂。
平和主義者な思想以外はノウキンなエルフ族だったのである。