流刑貴族の追放記-極獄と呼ばれた果ての地にて- 作:Anacletus
間章「貴方の事Ⅱ」+第17話「フェクラールの探索Ⅰ」
―――イゼクス暦153年朝晴天。
近頃、野営地に仲間が増えたのは喜ぶべき事だと思う。
本来せねばならない事は変わったのは自分の意志。
しかし、それが為すべき本質は変わらない。
生き残る事。
その為に自らの手で道を切り開く事。
精霊達の力を借りて、ウリヤノフに戦いの基礎を習って、彼と共に島の内部にある多くの資源を開放し、自らの手で役立てる事。
レザリアさん、ガシンさん、エルミさん。
そして、人間だろうと人外だろうと呪霊だろうと気にしない彼。
アルティエ……いつの間にか誰よりも強くなっていた彼。
そんな彼に追い付けるように戦える自分になろうと思う。
それはきっと悪い事ではないと。
そう、近頃は思う。
嘗て、帝都で幸せに暮らしていた頃。
母上がまだいて下さった頃。
それを思って辛くなる事はあるかもしれない。
でも、今此処で彼の背中を追えなくなったら、後悔する気がする。
だから、心地良い今の居場所を、護り切れるように……戦う心だけは、並び立つ意志だけは失わないよう決意を何度でもする。
いつか、想い出として遠征隊の全員と笑い合えるよう。
*
―――2938764567日前。
『フィーゼ様ぁ!? この化け物がぁあ!!?』
―――9423223224日前。
『ごめん。じゃあね。ボク……もうダメみたい』
―――4778884353日前。
『泣くんじゃないよ。男の子だろ?』
少年が起きた時、何もかもが過ぎ去っていた。
「ふぅ……(*´Д`)」
イソイソと無駄な着替えをしつつ、いつもの鎧を纏った背中が本日に限っては少しだけ緊張していたかもしれない。
「到達完了」
少年はイソイソと野営地を後にし、少し周囲で必要な薬草を速足に集め始めた。
30分程の散歩は全力疾走しながらのものだ。
目的のものがあれば、ジグザグ走行で体を傾けた際の手のスイングで集め切り、背後のポーチ下に垂れ下がる袋に即座収納。
それを凡そ800回。
秒間3つ程の早さで回収する様子はもはや何をしているものか傍目には分からないが、朝番をしている水夫達の一部がご苦労様と言いたげに見ていた。
「出来てるよ。朝食」
「ありがとう」
家に帰るとアマンザが笑顔で魚と茸のソテーを出し、起き出して来たレザリアとナーズがイソイソと欠伸を噛み殺しながら、食卓を囲んでいる。
モソモソと薬草や果実の中でも香辛料になるものが塗されて焼かれたソレは香ばしくも爽やかで此処数日で一番の出来に作った本人もニッコリ。
逸早く朝食を終えた少年は再び出て来ると伝えて、海の方へと向かう。
今日に限っては遠征隊の仕事もお休みである。
理由は単純。
ウートを筆頭にして張り詰めていた水夫や船員達が住まう全ての家屋が出来た事を祝しての簡単な席があるのだ。
第一次西部遠征から戻って来て数日。
次の遠征までに肉体を万全にしつつ、足りなくなった野草やら薬やら諸々の物資の供給の為に時間が取られ、その合間に少年はフィーゼとガシンを鍛え込んでいた。
「おはよう」
「おはようございます。アルティエ」
「あーねみー」
「走り込み。野営地の壁際50周」
「はい!!」
「だりー」
フィーゼとガシンを只管に走らせながら、アマンザに朝一番に頼んでいた蜂蜜薬酒の第一弾を革袋で家の前の手すりに下げて置く。
その合間にもエルガムの診療所へと向かった。
「おぉ、来たかな」
「おはよう」
「ああ、おはよう。さ、入ってくれ」
内部の診療室。
そこにはズラリと幾つかの薬が並べられていた。
「君の言った通りの調合で幾らか作ってみた。従来の外の薬では考えられないような効能ばかり……君の過去に疑問は尽きないが、今は正直有難い」
「精力剤は?」
「ああ、総員に配れる数で10日分は備蓄が完了した」
「頼んでたものは?」
「ああ、全部調合しておいたが、本当に使うのかね?」
「使う」
「即答か。新薬と言っていたが、君もまだ効能を確かめていない調合とやらを30種類……正直、あの材料で作っただけで摂取はお勧め出来ないんだがな」
「時々、当たりがある」
「当たり?」
「効果が飛躍的に伸びる」
「成程。次の遠征を長期計画にした以上は此処で今以上の力をという事か」
「そういう事」
「解った。一つずつ試してくれ。全て飲み終わったら呼んでくれればいい。呼ばれなくても朝食を食べたら来るよ」
「了解」
エルガムが出ていくのを見送ってから、少年は一包ずつ紙に包まれて並べられた番号付きの薬を手早く口に放り込み。
横手に置かれた樽から水をカップに汲んで呑み込む。
「番号1番。溶血作用確認。溶血率毎秒0.0031%。分析開始。内臓出血、肺胞破壊を確認。真菌共生による成分隔離処理開始。完了抗体生成まで32分」
ダラッと血が滴りそうな唇を拭って2番の薬が煽られる。
「強心作用を確認。強心作用増大。ガッ―――」
唇を抑えながら猛烈な勢いで早鐘を打つ心臓を強制的に薬効成分を真菌による分解で消し去りながらゼェゼェと少年が息を吐く。
こうして、次々に明らかに毒物というだけの強力な効果を及ぼす薬が試され、その度に少年は苦しみながらも効能をサラサラと書きながら、使い道に付いての案を書き殴っていく。
それが終わるまで約20分。
エルガムが朝食を終えて戻って来たのは30分後の事であった。
今日も新薬の結果だけを受け取って、本人がいない現場に彼は何処か暗い顔をしていた。
「………はぁ、まったく彼には頭が上がらないな」
もし、紙に書かれた薬の効能が本当ならば、それを煽った人間は死んでなければオカシイのだ。
だが、少年は何事も無かったかのように毎日毎日新しい調合の為に薬草や鉱石、蟲などの現物で持って来ては頼んで来る。
そして、実際に効能の高い薬が出揃い。
貯蔵と同時に野営地の疲れている者達に投与されていた。
殆どは疲労回復と睡眠の補助と肉体を強くするものだけだが、それの肉体を強化する薬は薬酒という形で振舞う事が既にウリヤノフやウート、カラコム達との話し合いで決まっていた。
全ては少年が呪紋の効果で死に難くなり、この地方の薬草や様々な物資を使えば、強い薬が造れると言い始めた事に始まる。
西部を攻略しようというタイミングでの事であり、蟲の怖ろしい敵との戦いを報告した娘からの情報もあって、ウートは未知のものでも効能が分かり、安全だと分かれば、何でも使って生き延びる事を選択したのだ。
「人体実験か。それを進んでやる本人が一番乗り気だって言うんだから、世の中は分からんもんだ。本当に……」
その献身を無駄にせぬ為に彼は今日も持ち込まれた殆どの紙を用いて、薬の調合記録を取り、新薬の為に危険物の調合を開始する。
その瞳は覚悟と狂気というには聊か熱い情熱と激情が宿っているのだった。
*
少年が戻って来ると予想以上の早さで遠征隊の2人は野営地の内部を走り切り、革袋から栄養補給していた。
その全身は汗に塗れていないところは無い。
「はぁはぁはぁ、お、終わりました。アルティエ」
「おぇ~~しぬぅ~~~」
フィーゼはまだ大丈夫そうであったが、ガシンはクタクタな様子。
その2人の違いは走り方にある事は少年にも解っていた。
ガシンは力み過ぎて無駄に体力を使う走り方をしているのだ。
少年がエルガムと共に作り上げつつある幾つもの秘薬。
それを毎日飲みながら、体力作りともしもの時の為の逃げ足を鍛えているわけだが、もはや常人には真似出来ないだろう。
全力疾走で50周。
そこまで大きくないとはいえ、それでも常人の疾走で1周1分掛かりそうな距離を20分弱で50周……それは殆ど超人と呼べる走りに違いない。
「水浴び。服を洗ったらアマンザに渡して休憩。その後は投擲訓練とウリヤノフの弓術訓練。それが終わったら休憩して昼食。昼食が終わったら回避訓練」
少年には無駄が無い。
教える順位は明確だ。
逃げる事。
攻撃を回避する事。
生存に特化する為に戦闘でも特に受ける事を意識させない2人への訓練は2人が未だ人間である事を理解させるものだ。
レザリアと違って耐久力に不安のある2人を徹底的に後方要員として鍛えつつ、前衛になる自分とレザリアの支援が出来る位置に置く。
ついでに逃げる際の逃げ方、支援の方法。
初めて出会う敵への対処法。
それらを教えて、盤上遊戯のコマでごっこ遊びだってする。
考えられる蟲という蟲への対処法が分かる限り、死に難くなる事は間違いないからだ。
「きょ、今日も一日疲れそうです。はふ……」
「ぁ゛~~こんな坊主に扱かれる日が来るなんてな。奴隷拳闘の名が泣くぜ」
王と呼ばれている蟲の強者達との戦いの際のセオリーなどが徹底的に仕込まれており、それらの情報は貴重な紙資源を使って野営地の守備隊の訓練にも応用されていた。
ここ数日で大型の弩が数機。
壁の上から撃つものに限って作られ、矢も少年が矢じりに関してウリヤノフに何やら吹き込んで新しいものが工作され、今は木箱で大量に備蓄されていた。
また、二段構えの壁の周囲には堀に水が流し込まれたのみならず。
少年が採取してきた沼地の泥が流し込まれて内部で色々増殖しており、定期的に薬を飲まない生物が落ちたら大変な事になると教えている。
偶然で落ちないように柵や看板を設置しているが蟲に危険の文字が読めるものではないし、読める相手が疑心暗鬼で本当に危ない掘りに入って来たら儲けものであるのは間違いない。
「行ってきます」
「服のまま入っちまおう……そうしよう」
「お、横着はダメですよ。ガシンさん……」
更に村の門内部は木製ながらも厚く造られ、城のように頭上から様々なものを流す為の穴まである。
野営地の共同トイレからは人糞や尿は採取されて、少し遠い場所に掘られた大穴に流し込まれて堀と同じように少年の黒い真菌のコロニーと化している。
真菌を体内で使って消費している状態である少年にとっては外部にそういったものを置いておけるのは便利極まりない話だった。
「着替えを持っていく事。ちゃんと洗ってくるように」
「はーい」
「へーい」
野営地内部。
木製の取水設備が川から水を引いていた。
今は木製で済ませているが、その内に川そのものを野営地の畑付近に移して灌漑を推し進めるという事になっている。
そのおかげで細い水を還流させる形で迂回させた野営地の一部では既に水道でこそ無いが、体を洗う水場は男女別で設けられている。
女性用は野営地の中心に近く。
男性用は野営地の壁に近い。
勿論、もしもの時に戦う男達の傷口を洗ったり、喉を潤す為に使われる事が決まっていた。
「アルティエ~~」
2人を見送った少年が振り向くとレザリアが食事と談笑を終えてやって来ていた。
「今日はどうするの? また薬草集め?」
「朝終わった」
「そ、そうなんだ。ボクに一言も無く……」
「今日は海……」
「海?」
「2人の訓練に付き合って来て、夜になったら、浜辺に来る事」
「海に行って魚釣るの?」
「そんな感じ」
「本当かな~怪しい」
「ファルターレの貴霊」
『はへ!? ひ、人が気持ちよく朝の新鮮な空気で二度寝をしていましたのに!? いきなり、こっちに引っ張り出されたら驚くじゃない!?』
「訓練に付き合うように」
『唐突ですわね。まぁ、しょうがなく付き合いますけれども』
仕方なさげに亡霊少女がハァと溜息を吐いた。
「エルミって貴族だよね……」
『何を今更、当たり前の事を!! ちなみにちゃんと貴族の称号はお父様が買ってましたわ!!』
「うん。貴族だ……」
納得した様子でレザリアが近頃はよく呼び出されて訓練相手をしているエルミをズルズルと引き摺って訓練場へと向かう。
『どうして引き摺るんですの~~!!?』
それを見送った後。
少年が海辺へと向かい。
浜辺岸壁で一部の岩を動かして下に貯蔵してある土で埋めた柄を引き抜く。
ウェルキドの大剣を背中に背負い。
少年はイソイソと数日後には工事が開始される予定の岸壁付近から海に飛び込んでおもむろに潜り始めた。
周辺は桟橋にされる事が決められるだけあって深く。
底は12m程もあった。
しかし、少年の行く場所はそこではない。
海辺から少し離れた海底の一角。
洞穴のような場所が存在しており、砂に埋まっているソレには人工物。
石製の紋章があった。
少年が現在も装備しているイエアドの聖印と同じマークだ。
本来ならもっと海の生物が付着しても良さそうな穴の入り口を潜る。
内部は貝などが自生している様子もなければ、魚もいない。
ただ崩れかけた石製の通路だけがあった。
内部を進んで1分弱。
通路が途切れて水上に昇っていくと。
其処には薄らと光る苔らしきものが張り付いた遺跡とでも言うべきだろう石製の空間が置かれていた。
「ようやく……久しぶりに……」
本来は地表にあったものなのかどうか。
列柱があり、神殿のような場所は奥に続く階段が見えており、内部に向かうと階段の先に広い円形の舞台がある。
其処に入る前に少年が大剣を構えた。
そして、突入後、舞台の反対側に何かが現れる寸前には踏み込んだ少年の突撃で剣が振りかぶられ、一刀両断に相手を切り伏せ、同時に戦慄いた大剣の乱杭歯が猛烈な勢いで上空に伸び上がって下に急降下。
その人型の何かを喰らい尽すかのように乱杭歯を突き立て、バラバラにして喉を抉り出そうとした時にはソレが消えている。
それと同時にカランッと暗い舞台内部に小さな鈍い金色で一部が欠けた指輪のようなものが落ちた。
「鑑定。【ビシウスの畜輪】……装備時、装備者を装備させた者に従属させ、家畜として全ての者に認めさせる。ただし、装備者は装備し続ける事で人型に近付き。変異覚醒生物として進化、知能を高め、人型化の進行と共に装備者の利用可能な“有用部位”が増えていく。装備が外された場合、家畜は………はぁ(*´Д`)……別名は人魚の輪?」
少年がジト目になった。
「こういう……知らなかった……」
少年は何かを倒した後。
舞台に泥のように真菌を広げて何かないかを探る。
「………」
少年が舞台の中央。
石畳の上で大剣を一回突く。
すると、その場所が崩れ、内部のくぼみに何かあるのを確認する。
取り上げられたソレは薄らと発光する小さな多頭の甲虫が入った琥珀だった。
甲殻ではありそうであったが、もう死んでいるのだろうソレは今まで見たどんな甲虫とも違って、禍々しい頭部は蟲というよりは獣に近い骨格に乱杭歯を持っていて、瞳は無かったが、鼻などは獣のように見えた。
「鑑定。これも使用まで名前が分からない……」
仕方なくソレを真菌で包んで袋に入れた少年がイソイソと現場を後にしようとした時だった。
「?」
振り返った頭にメイスが複数叩き込まれる。
地面に3つの猛烈なクレーターと亀裂が入り、砕けた舞台の最中に黒光する人型の肉体を持った何かが頭部付近に小瓶を見て―――起爆した。
爆風によって、二体がダメージを受けながらも後方に跳躍して倒れ込む。
少年は爆発物とクナイの二段投擲で一体の人型を仕留めながらも、残る二体に向けて跳躍した。
「黒跳斬」
一体の頭部より胸元より少し上を狙った一撃。
黒い斬撃がヌルリと虚空を滑って一体の体へ突き刺さり、浸食しながら二秒もせずに背後へと突き抜けて、全ての動脈と骨格と肺と心臓を破壊しながら侵食した。
最後の一体が起き上がり様に黒い頭巾を被った口元から何かを吐き出した。
ソレに突っ込むより先に背後の大剣が投げられて軌道が変更され、指先を掠るだけでその噴霧された液体を回避。
「ッ―――」
少年が指先をダガーで削ぎ落した。
途端、その指先が猛烈にブクブクと膨れ上がって、弾け飛ぶ―――より先に腕が振られた。
「ウィシダの炎瓶」
咄嗟の機転で相手の攻撃を避けた少年が風船のように増殖してスカスカな肉塊を全て焼き尽くす。
見て見れば、大剣もまた肉塊となって膨れており、そちらにも炎を向けて、液体を吐き出し続けているソレを焼いた。
それが苦悶しながらも酸素を奪われて倒れ伏し、炎に焼かれていく。
肉塊となった大剣もまた炎の内部で朽ちており、乱杭歯の刃部分と周辺の触手を跳び出させる部分が完全に炎の中で焼け落ちていた。
「危なかった……」
少年が零す。
(細胞増殖率2万%オーバー。超高速の細胞増殖による枯死……後ちょっとで腕を全部持って行かれた)
少年が黒い真菌の一部が灰色になってサラサラと肌の上から崩れ落ちるのを確認しつつ、今の能力では扱い切れないだろう相手の能力を鑑み。
周囲を警戒しながら、残った死体を真菌で包んで舞台の端に持って来る。
そして、肌から出した真菌の黒い腕でもしもの時の為に持って来た普通のダガーで敵の死体を開いて行く。
「頭蓋構造は犬? 蟲? この乱杭歯、さっきの琥珀の―――」
少年が嫌な予感にさっき見付けたばかりの“人魚の輪”とやらを見やる。
「有用部位? 細胞の増殖。でも、内部から出した液体は頭蓋を増殖させない。という事は……」
少年が死んだばかりの相手の喉の内側の粘膜。
つまり、増殖しない粘膜を首筋から入れた刃で内側から削ぐように剥ぎ取って、ダガーの先を手術用の鉗子のように引き上げる。
空中で繁々と見やり、溜息を吐いて嫌々口に入れた。
「ビシウスの粘膜(寄食)。壊喰性細胞? 遺伝導入開始……経口毒性蛋白とウィルス、自然毒を9割以上選択して破壊しつつ摂取可能……つまり、寄食で死ななくなる?」
少年が驚きながら、目をキラキラさせる。
「神!!」
その合間にも食われた粘膜の効能が少年にも現れる。
「……こういう」
少年が脳裏で知識を調べるもさすがに皮膚吸収、体内への直接投与には無力という情報が出て来た。
「頭部周囲は全て粘膜……」
少年が解体した頭部を見やる。
「他には……」
少年のダガーが振るわれ、人型に近い化け物の内臓やらが次々に腑分けされて、少し味見されてから、必要無いものは全て舞台の上で焼かれた。
残されたのは袋が4つと怖ろしい程に敵細胞に侵入して、過剰増殖を促す遺伝子と蛋白質の混合液の入った袋が一つ。
それらを真菌で造った袋に入れて、舞台を振り返った少年は静かに両手を合わせて一礼した後、イソイソと野営地に戻るのだった。
剣身の半分しか残っていない焼け焦げた大剣を背負いながら。