流刑貴族の追放記-極獄と呼ばれた果ての地にて-   作:Anacletus

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第46話「フェクラールの豪傑Ⅳ」

 

―――西部フェクラール北東域【転移の遺跡】。

 

 今現在、西部において最も混雑しているのは間違いなく山岳部の岩壁の上にある遺跡であった。

 

『降りるぞぉ!! 全員中央に集まれぇ!!』

 

『クモコワイクモコワイクモコワ―――』

 

『だ、大丈夫よ!? 蜘蛛に食べられる時も一緒よ!!』

 

 高さ120m程の断崖の内部にある遺跡からは巨大な呪紋式の浮遊する昇降機が10台以上設置されており、急遽掘られた出入り口付近には大量の移民達が200人くらいで一杯になる巨大昇降機の石板に乗って西部へと降り立っている。

 

『本日の分は終了だぁ!! 昼飯にするぞぉ!!』

 

『はーい。皆さん。こちらへどうぞ!!』

 

『その旗を持った蜘蛛さん達に付いて行って下さいねぇ』

 

『ちゃんと3日分の食糧は持ちましたかぁ!!』

 

『途中ではぐれないように子供達には悪いけれど、縄で腰を大人の人と繋いでねぇ!!』

 

 多種多様な種族達が第一陣の後に続けて毎日やって来ているフェクラールは現在、異様な程の速度で山岳部の岩肌が削られ、大量の石材が消費され、莫大な木材がすぐに消費され、燃料には竜骨の魔力による炎の呪紋が多用された。

 

 結果として西部に合計40基造られた黒蜘蛛の巣の下に造営された街では通常よりも竜骨の魔力の消費速度が速くなり、人口の増加に伴って消費される大量の食糧も含めて、各地で巨大な生産地帯が昼夜無く稼働している。

 

『(。-∀-)?』

 

『\\\( ´A`)』

 

『(;´∀`)///』

 

『\\\(´艸`*)』

 

 種まきから収穫までリケイが専門に組んだ呪紋による育成促進方法で、爆華に関しては安定して一つの畑でも安全に1000本単位で収穫が可能になっている。

 

 しかし、それとは違って通常の食料がそう簡単に作り出せるわけではない。

 

 幾ら育成を早くしても時間が掛かるのだ。

 

 基本的に蜘蛛達の居場所に必要なのは魔力を引き出せる竜骨である。

 

 爆華の液体で再生させる事でずっと使い続けられるわけだが、爆華とは違って食料用の産品の多くは自然由来のものが殆どであり、ニアステラにおいても巨大な生産地帯では爆華が呪紋や土地改良で大量生産されている以外は殆ど食料が住民の数に反比例して必要無かったのだ。

 

『フゥ。種をパラパラしてるだけで良かったのになぁ。前まで』

 

『愚痴るな。あの麦以外にも種を取ったらしい例の野菜類だが、どうやらヤバイ代物らしいぞ』

 

『そんなにか?』

 

『何でも植えると麦と一緒で畑を枯らすらしい。でも、それもすぐにあの黒いドロドロを使うと数日で回復するとか』

 

 大規模な食糧生産を迫られた事でニアステラもフェクラールも食糧事情はひっ迫していた。

 

 とにかく生産が通常の状況では間に合わない。

 

 爆華の畑を広げるついでに食料用の畑も広げたが、昼夜無く整備したとしても畑に使う肥料なども考えると、とてもではないが時間が足りない。

 

 餓死者がザックリ万単位で出る……と当初は思われていた。

 

 それが覆ったのは黒蜘蛛の巣が想像以上にヤバイ機能を備えていたからである。

 

 アルマーニア達に供給されている食料の大半は現在、ニアステラからではなく。

 

 近くにある黒蜘蛛の巣の下にある畑から供給されていた。

 

『それにしてもこの小麦もこの野菜もデカ過ぎ……畑も養分吸われ過ぎだな』

 

『育ち切ると畑に雑草一つ生えて無くなるもんな……』

 

『カラッカラだし……』

 

『ちげぇねぇちげぇねぇ。つーか、本当に大地を枯らして恵みを得るってもんだよなぁ……』

 

『なのに、2日で元に戻るからな……あの黒いドロドロ危ねぇよなぁ』

 

 原理はこうだ。

 

 超巨大作物の成る種が少年から各地に配布される。

 

 配布された種で即日収穫出来るデカ作物が実る。

 

 一部を種にして一部を収穫する。

 

 畑の養分が枯渇する。

 

 数日で黒い真菌による働きで養分が元に戻る。

 

 この繰り返しによって5000人ずつ増える北部勢力の移民達は養われていた。

 

 勿論、持ち込んだ牛馬のような家畜を喰うわけには行かないわけだが、肉が食いたいという要望にも応えるのが少年である。

 

『つーか、一番やべぇのはあの畑だろ?』

 

 黒蜘蛛の巣の中でも特に奥まった場所に儲けられた黒い沼地。

 

 そこには巨大な黒い繭が大量に生えており、蜘蛛達がその内部から切り出すものは明らかに正気が削れそうなものだ。

 

『何で肉が畑から取れるんだろうなぁ……』

 

 持ち込まれた牛馬豚鶏などの一部が少年に提供された後。

 

 すぐに出回るようになった肉類は完全にアウトな生産方法で畑から取れるのだ。

 

 真菌による細胞増殖能力、更に栄養を与えられて、少年が小麦に使っていた危ない薬で無限に再生する肉片となり、無限に収穫されている。

 

 骨から剥ぎ取った肉はすぐに不可糸で梱包されて新鮮な内に各地の移住者達の食卓へ送られるのである。

 

『いや、でも、本当の本当にやべぇのはあの便所じゃねぇか?』

 

 だが、最もニアステラの者達がやべぇと思ったのは便所だ。

 

 増えた大量の移住者達の糞尿は何故かまったく貯まらない便所と言う名の綺麗な“黒い便器”のある場所に集積されている。

 

 はずだが、臭いどころか一切の細菌やウィルスが感知されない綺麗好きには堪らないスポットになった。

 

 ソレが地下で真菌の巣を張っており、大量の糞尿を分解しながら吸収し、必要な栄養素を地下茎のような管を通して畑に直接還元し、同時に肉の畑への栄養として供給しているとは誰も思わないだろう。

 

 しかも、足りなくなりそうな栄養素そのものが最初に地下へ少年とガシンによる【飽殖神の礼賛】による“自身の肉体”という形で埋蔵されている。

 

 それが消費され切る前に糞尿の形で回収される栄養素もあり、現在のフェクラールは完全に需要に対して供給が過剰なレベルで食料の在庫は大幅にプラスへ転じていたのだった。

 

『あ~やめだやめだ。気が滅入るぜ。とにかく、肉と野菜とパンが食えりゃなんでもいい!! 考えるな!! 感じるな!! 美味いってだけで十分だ!!』

 

『その内、兵隊まで採れそうだな』

 

『ははは、違いねぇ……違いねぇが、もう何も言うな』

 

『う……ま、まぁ、無いと信じようや。呪紋なんぞ手を出すべきじゃねぇってのはアレ見た後だと身に染みるぜ』

 

 こうして西部への移民は破綻する事なく進んでいた。

 

 しかし、多くの者達がその事実に気付くのは少し後の事であり、彼らの正気は幾分か削れる事になる。

 

「昨日、見学を申し込んでいたクーラルと申します」

 

「(>_<)/」

 

「本日はよろしくお願いします。スピィリアさん」

 

「(/・ω・)/」

 

「よろしくねー」

 

「よろしくー」

 

 黒蜘蛛のの巣で見学しようとしたら、人出が足りなくて案内出来ないから、明日と言われた彼女達が翌日に黒蜘蛛の巣の内部に続く小さな検問所に入っていた。

 

 話を聞いていたスピィリアの一人が蜘蛛形態で頭を下げ、見学者という腕章を彼女達に渡し、付けたのを確認すると頷いて歩き出す。

 

 今日は社会見学という体でニアステラ側の拠点を見てみようという話しになっており、座学よりもそっちが良いという2人の生徒達も乗り気。

 

 こうして彼女達は現在住居が急ピッチで造営されている西部の中央の離れた場所まで遠足気分でやって来ていた。

 

 造営されているアルマーニアの街区は広がり続けているが、西部の自分達が住みたい場所に住めばいいという話を聞いて、やって来た種族達はあちこちにある黒蜘蛛の巣を見学し、入居予定まではアルマーニアのいる街区で暮らすという事になっている。

 

 その為、すぐに居住可能ではない場所はまだ無人の街ばかりだ。

 

「おぉ~~畑があるわ」

 

「ほんとだー」

 

 何も無い畑。

 

 そこにやってきたクーラ達が歩いていると何やら大きな種のようなものを体の上に載せてやってくる蜘蛛達を見付けた。

 

「あれって何?」

 

「なーに?」

 

「(/・ω・)/」

 

 おーいと手を振る案内役のスピィリアに手を振って返した蜘蛛達が畑を少し広い等間隔で整列し、畑の中央に向かって歩き、その種を植える。

 

 そして、何事か呪紋をキシャーっと詠唱すると土に接した場所から種が根を張って、瞬時に大きくなり始め、フワフワそうに見えた土がゆっくりと色を変えていくのが彼女達にも分かった。

 

 巨大なソレは根を瞬時に畑のあちこちに蔓延らせ、最後には根すら枯れた様子になると巨大な穂が垂れて実の集合体が頭を垂れる。

 

「「「―――」」」

 

 その穂が出来た時点でシャキンと前脚で根本を刈り取ったスピィリア達は巨大な数百kgでは利かなそうな小麦(巨大)、正式名称【ビシウスの麦】をすぐに手分けして解体し、次々に集まって来る他のスピィリア達と一緒に荷車に載せて、精霊がそれを倉庫へと運んで行った。

 

 残された明らかに荒れ果てたような畑。

 

 しかし、蜘蛛達が農地から畦道に出ると農業後の植物の残渣が残る場所が瞬時に地下から湧き上がって来る黒いドロドロによってヒタヒタになり、ゴポリと動いたソレが消えると根や刈り取った後に出たゴミは一欠けらも無く。

 

 また、土が少しずつ肥えたような色合いを取り戻し始めていた。

 

「……クーラ。呪紋でこんなに小麦って成長するものだっけ?」

 

「い、いえ、そんな事ありませんよ!? ふ、普通は……というか、あの小麦も大き過ぎますし、アレも呪紋の能力で肥大化させたものなのかすら分かりません」

 

「すごーい!!」

 

「(>_<)/」

 

 次に参りまーすと案内役のスピィリアが看板片手に彼女達を率いて今度は肉畑の方面へと向かっていく。

 

 そこでも彼女達は驚きに目を見張り、この場所がどういうところなのかが本能的に分かり始めていた。

 

 途中、彼女達も自分達が居住する街区で使われている黒い便器を見て、ようやく何か黒いものが彼女達の生活を支えているのだと気付いた後。

 

 酒場で昼食となった。

 

「「………」」

 

「うまーい♪」

 

 彼女達は料理が得意なスピィリア達による牛肉の香草焼きとパン、蒸し野菜、爆華ジュースを無料で振舞われ。

 

「美味しい。美味しいけどさぁ……」

 

「うまーい♪」

 

「ま、まぁ、アレを見た後だと。ええ、言いたい事は解りますよ。エネミネさん」

 

 純真なメル以外、エネミネとクーラは複雑な表情になっていた。

 

 巨人族らしい大食いを発揮したメルの居場所は外のテラス席だ。

 

 巨人用の椅子とテーブルが置かれており、スピィリアに聞いて見れば、不可糸を使って文字を書き起こす看板に何処に巨人族が来ても良いように少なからず用意してあるとの答えが返って来た。

 

 それだけでもスピィリア達の賢さが分かる。

 

 昼間は不可糸は遮光せず。

 

 同時に真菌が色素を落としているので大樹は竜骨が外部からの光を増幅しているせいもあって、極めて明るい。

 

 造営されている街区だけではなく。

 

 黒蜘蛛の巣の外延部では見えない精霊達が専用の道具を動かして土砂を掘り起こしていたり、巨大な岩を運んでいたりと忙しない為、街には活気があった。

 

 昼間に眠っている蜘蛛達が上空の見えない巣の天井や街の出来上がった建造物の軒先から不可糸でぶら下がって寝ている様子を見れば、此処が本格的に動くのは夜なのだろう事も理解しただろう。

 

「あの~今日はこれで終わりでしょうか?」

 

 そのクーラの問いに看板を持った誘導役のスピィリアがもう一か所回る場所があると文字に起こして、食事を終えた彼女達は共に黒蜘蛛の巣の中心に向かう。

 

 巨大な竜骨の塔は半透明な真菌の細胞に包まれていて、何処か幻想的だ。

 

 竜骨製の構造体、多数の空洞を繋ぐ空中回廊と螺旋階段で繋がれている内部は一番下の階層が最も広く。

 

 広大な場所には現在、大量のドラクが寝かされていた。

 

 その周囲では複数のスピィリア、ドラコ―ニアが二匹の蜘蛛達を中心に集まっており、その最中ではリケイが何やら蜘蛛達に不可糸で虚空に文字を書き連ねて講義している。

 

「つまるところですじゃ。このドラクは呪紋をやたらと連動させて、一つの事をする集合呪紋とでも言うべきもので成り立っており、その鍵となるのが個人を認証する呪紋。この呪紋の魔力の流れさえ理解出来れば、鍵と接続していない部分はすぐに動かせる。このように」

 

 言っている傍からリケイが片手を横に伸ばすとすぐ傍に置かれていたドラクの片腕が人間の腕のように関節を折り曲げる。

 

「まぁ、四肢の動きを真似る呪紋ですな。操り人形というよりは義肢を動かす呪紋のようなものを複数の呪紋の結合で可能にしている」

 

 魔力の糸らしきものがリケイの手から伸びて、切断された腕の内部の断面に触れると幾何学模様が奔った腕が更に指を折り曲げたり様々なジェスチャーをし始める。

 

「結果として霊力による物質変異で鍵の部分を破壊すれば、このまま運用するまで時間は掛からないが、これでは芸が無い」

 

 リケイが横のフレイとゴライアスを見やる。

 

「なのでもう一工夫し、我らだけのドラクというコレを造ってみようという事になったわけですじゃ」

 

 フレイとゴライアスが無傷のドラクの上に乗る。

 

 互いに自分の真下の機体に黄金と灰色の魔力らしきものを流し込みならがら、キシャーッと普通の蜘蛛達がするような声で詠唱した。

 

 すると、ドロリとドラクの全身が溶けて広がり、瞬時に彼らの肉体を覆うようにして復元されていく。

 

 だが、復元されていく装甲はキラキラと煌めいており、ついでに彼らを模倣するかのように蜘蛛型となっていた。

 

 基本的には二匹と同じ形で同じ色合いであるが、大きさが14mを超えていた。

 

「(/・ω・)/」

 

 おぉ~~と感心した蜘蛛達がパチパチと前脚や手で拍手する。

 

「これへ更に爆華を主体とした攻撃用の灼撃矢に類する装備を大量に積んで相手に遠距離から投射。ドラクに積まれていた呪紋を圧縮して、任意の形で機材から噴出する事で特定用途に使う。という理屈を真似て、呪紋の変形強化用の兵器を装着しまして」

 

 二匹が傍に置いてあった大型の箱を背負う。

 

 その内部からは何かを放射状に放つ為のものらしく。

 

 前方に向けてパカッと開いていた。

 

「例えば、このように爆華の爆発を相手に降らせるのではなく。相手に不可糸で狙いを定めて接着。箱内部のソレを相手に誘導して当てるという芸当も出来る」

 

 二匹が箱の内部から大きな円盤状の物体をラックから引き出した。

 

 フリスビーのようにも見えるソレには横手に糸を結んでおく為の丸い輪のような突起が付いていた。

 

「相手が近付いて来れば、糸が切れぬ限りは誘導して跳んでいくわけですからな。必ず当たる。他にも炎属性の呪紋の出入り口を絞って、火力を増す装備やら、ガシン殿にまた作った指輪の呪紋を用いて、霊力や魔力を回復させる装備もありますじゃ」

 

 蜘蛛達はもはや口を開きっぱなしで手を叩きっぱなしだ。

 

「というわけで、ゴライアス殿の基礎能力にフレイ殿の呪紋を用いて、相手のドラクを再利用出来そうな素質のある者達を纏めたわけです」

 

「(・ω・)?」

 

 そうなの?という顔の蜘蛛が多数。

 

「丁度、100名程。残りは直掩のドラコ―ニア達に回して、白霊石の備蓄も持っていく手筈」

 

 リケイがニコリとした。

 

「明日には北部へ出発し、まずは実戦で試しましょう。ちなみに冥領のアルヴィア達は現在、ゴライアス殿の特訓を受けて、小さくなれるまで強くなる途中……彼らが小さくなれたら、こちらに合流する手筈ですじゃ」

 

 二匹の灰色と黄金の巨大化した機械蜘蛛がバコッと脱皮でもするかのように手足を機械蜘蛛の内部から引き抜いて、下に落ちて来る。

 

「内部構造は全てドラクの流用である為、基礎的な部分は変わらず。そこに我らの性質と霊力による物質従属による威力が加わりますじゃ」

 

 虚空にドラクに自分を足して更に強くという文字が躍る。

 

「肉体を防護する装甲と機構を内部で編成し、呪紋で肉体に合うように変化させるのは難事でしょうが、一人で出来ぬならば全員ですれば良い。取り敢えず10人で試し、調整を。選抜した為、能力的には可能なはず」

 

「(>_<)/」

 

 ハーイと片手を上げた人型蜘蛛型の彼らが一緒になって灰色のムキムキな肉体を得ると次々にドラクに取り付いて部位毎に変質させて流動化する程に溶かした後、それを仲間の体に纏わせて再構成していく。

 

 これは正しくフレイとゴライアスが一人でやっている事を分担した形であった。

 

 次々に蜘蛛達が巨大化した機械蜘蛛として変化を終え、ババーンと大きな前脚を上げてアピールする程度には自在な動きを見せる。

 

「「「………(´・ω・`)」」」

 

 そうして20分もせずに蜘蛛達は全員が機械化装甲を身に纏い。

 

 全身に魔力の幾何学模様の光を奔らせて整列。

 

「やはり、呪紋と親和性の高い金属ならば、こうも簡単に……是非ともヴァルハイルの首都の技術と金属資源、頂きたいものだ」

 

 リケイの左右でフレイとゴライアスと満足した様子でウンウンと頷きながら、部下達の装甲に触れて、更に何か禍々しい感じに変質させているのを見ながら、三人の少女達はトボトボと帰途に着く事にした。

 

 彼女達は悟ったのだ。

 

 西部コワイトコ、と。

 

 何故に長年多種族が解明し切れないドラクの秘密が何か物凄く簡単な原理で動いてますみたいなザックリした説明で解明され、呪紋やら能力やらで変質して乗っ取られ、まったく新しい装甲になるのか。

 

「訳が分かりません!!?」

 

 そう最後の良心として遅れてツッコミを入れたクーラに対し、『いや、遅いわよ』という顔のエネミネが溜息を吐くのだった。

 

「それにしてもあの蜘蛛……特にあの二匹……とんでもない魔力量してたわね。あれ、ロクガンオー並でしょ」

 

「あれーイゼクスのけはいー」

 

「そ、そうですね。何故か、黄金色の蜘蛛さんからはイゼクス神の気配もしてましたし、そもそもあの呪紋……ほぼ失われた魂や霊力を扱う系統な気が……」

 

「そう言えば、冥領って言って無かった?」

 

 エネミネの言葉にクーラが額に汗を浮かべる。

 

「御伽噺の地獄というのは冥領エルシエラゴのはずですが、もしかしたら彼らは地獄すらも踏破しているのかもしれません。ニアステラの遠征隊……一体、どんな化け物なのか。疑問は付きませんね……」

 

 クーラが眉根を寄せて、本当に西部に移住して良かったのか?という顔にりはしたが、すぐに思い直して今日の授業を終える旨を告げる。

 

「いつもより早いけど、何かしにいくの?」

 

「いくのー?」

 

「ああ、実は昨日夕方にアルマーニアの街区でお店を見付けまして」

 

「お店?」

 

「おみせー?」

 

「ええ、物凄く面白いものを買う予定なんです」

 

「物凄く?」

 

「ものすごくー?」

 

「ふふ、行ってみますか?」

 

「いくー!!」

 

「そうね。そういうのは喜んで行くものよね。せっかくのお誘いなんだし」

 

 彼女達はイソイソとアルマーニアの街区へと向かっていく。

 

 ちなみにアルマーニアの街区にある店は繁盛していた。

 

 主に未婚の成人男性達で。

 

『な、何なんですかコレぇえええぇえ!?』

 

 クーラが見付けたのはスピィリア達がやっている店だったのだが、不可糸を編んだ布に魔力で色付けして様々な質感の光沢を再現し、様々な情景を騙されてしまう程に再現するというものであった。

 

『へ、へへ、まさか、こんなもんがか、買えるとはな!!?』

 

『う、いい……いいぜ。こいつぁ……震えて来やがった!?』

 

 蜘蛛達の中でも芸術に目覚めた数匹が始めた店はまだ殆どの者に知られておらず。

 

 基本的には絵画のような景色を写し取って額縁に飾ったり、壁に掛けて楽しむ事を想定していたのだが、一人の恋する男が想い人の女人を蜘蛛達に描かせた事で人気が爆発。

 

『おお、愛しき人の毛並みまで完全再現!?』

 

『乗るしかない!!? この波に!!?』

 

 再度クーラが行った時には肌色の健康的な女人達が水浴びしている絵が飛ぶように売れていた。

 

 ちなみに貨幣の無いニアステラとフェクラールでは通貨の代りに物々交換もしくは特定の仕事によって価値が交換されている。

 

『働くよ!!? 働くから!? だから、これを後1枚くれ!? 1枚でいい!?』

 

『うぉぉおぉぉお、我らのアラミヤの姿態が今此処にぃい!!?』

 

 だが、一部のアルマーニアの男性達はその“絵画店”からの依頼で自分達の就いている職種の技能をスピィリア達に教える先生として夜間などに働く事で商品を買う事になる。

 

 肌色な女性達が乱舞するアルマーニアの成人男性御用達のムフフな絵画ばかりが並ぶようになった店にクーラは明るい内に来られなくなり、後で時折時間を見付けてはこっそり通う事になるが、それはまた別の話。

 

「すごーい!! ほんとうにいるみたーい♪」

 

「……アルマーニアでも男って変わらないのね。ホント」

 

「どうしてこうなるのぉー!? 社会見学なのにぃ~~!?」

 

 社会の見学はしっかりと果された次の日。

 

 フェクラールに集結していた戦闘職向きのスピィリアとドラコ―ニア達は山岳部の遺跡の内部にある巨大な呪紋のある場所に大量のブニョブニョした金属流体の塊を連れて来訪。

 

 そのまま北部へと向かったのだった。

 

 彼らの主が来るまでに自分達の仕事を終えておく為に……。

 

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