【完結】ダンジョンとかいう危険地帯のトイレ管理は大変です   作:烏何故なくの

6 / 7
第六話 禁止するからエロスというものは生まれるのかもしれませんね

 

 「キャロル、援護は任せた!」

 

 マルアト神殿迷宮、三十階層にて。

 テセスの言葉を聴き、私は木刀を構えます。

 目標は突っ込んできた一つ目の牛のモンスター。確か名前は……ストーンカとでも言いましたか。

 

 闘牛士のように、赤いマントを腕に巻き付けてストーンカを翻弄するテセス。

 彼が作った隙を逃さず、私は木刀を瞬時に伸ばし、ストーンカの喉を突いてやります。

 

 「ぶむぅっ?!」

 

 ストーンカが悶えた瞬間、銀の閃光が走りました。

 悲鳴もなく、ストーンカの首が床に転がります。

 ……テセスの一撃は、相変わらず目で追えませんね。

 

 ストーンカは二十八階層から出現するモンスターです。決して雑魚ではありません。

 その肌は生半可な剣士では傷一つつけられない剣士殺しとして有名です。

 同じ剣士として、いつかあの高みまで登ってみたいものです。

 

 「よし、そろそろ休憩を取ろう。今日のご飯も狩れたことだし」

 「え〜、またモンスターの肉なの?」

 「ご飯にコストはかけたくない、そう言ったのはノアじゃないか」

 「……そうだったっけなの」

 

 テセスはノアをあしらいながら、料理道具を取り出しています。

 私はテントの設置をしましょう。

 

 今のパーティメンバーには不満は少ししかありません。

 そもそも口が悪い私と行動してくれるだけ、他の粗野な冒険者よりだいぶマシです。

 

 いつもヘラヘラしてるけど、根っこは真面目な凄腕剣士のテセス。

 なのなのうるさいガキけど、優しくて幅広い魔法を操るノア。

 時々バイオレンスだけど、いつも私に優しい言葉を投げてくれるあらゆる武器を扱えるアル。

 

 みんなのことは大事に思っています。

 ……だからこそ、彼らの食事に混ざれないことが時折申し訳なくあります。

 

 全員で食事をすれば隙が生まれる。

 だから一人が見張りをし、モンスターの襲来があっても対処できるようにする。

 一人だけ食事をしないことによるメリットはあるのですが、他人と食事をしないのと出来ないのでは差があります。

 

 「そろそろいい焼け具合なんじゃないかな」

 

 ノアの一言で食事の時間が始まりました。

 テセスもアルも、顔がパァっと明るくなります。

 

 みんなが食事している時、私は見張りをします。

 しかし、見張りとは暇なもの。

 私は時折、彼らの様子を観察しています。

 

 食事をしている時、彼らは普段とは違った一面を見せます。

 昔は他人の食事を見るのも嫌だったので、私はとても進歩していますね。

 テセスは普段ちゃらんぽらんなくせに、お行儀よく丁寧に食べます。

 アルは豪快に、がっぷり肉に食らいつきますね。でもどこか堂々としていて、似合っています。

 

 ノアは……。なんていうか、下手くそですね。

 お行儀よくしようとしているのは分かりますが、服を汚してしまっています。

 唇にもいっぱい肉の油がついて……なんというか、いつも幼い印象のノアの、見てはいけない一面を見てしまったような気分になります。見てるとムズムズしてきます。

 

 む、ノアがこっちに気付きました。

 こっちに近づいてきましたね。何をする気でしょう?

 

 「にしし、キャロルってば、お腹すいちゃったの?」

 「は、いえ違いますけど」

 「隠さなくてもいいの。ほら、あげるの。大丈夫、キャロルが食べてるところは見ないから」

 

 そう言って差し出されたのは、食べかけの骨付き肉。

 ……これを、食べる?

 な、なんたる変態的な……! 

 だってこれ、これを食べたら私の口の中にノアの唾液が入ってきますよね!?

 なんでしょうこの感覚。ムズムズしてソワソワしてドキドキします。

 

 当然、こんなの突き返すに決まっています。

 私は森魔族(エルフ)。潔癖なのです。

 そのはず、だったのに。

 

 「いい、ですよ」

 

 あれ。

 私の口はどうしたのでしょうか。

 いつから私は嘘つきになったのでしょうか。

 正直なところが私の美徳だったのに。

 

 「食べるの、見ててください」

 「エッ!? 食べるの見られるの、大丈夫になったの??」

 

 ノアはびっくりした顔で私を見つめています。

 そして、ワクワクしたような顔で私の口を凝視し出しました。

 

 やめてください。

 見ないでください。

 私の汚いところ、見ないでください。

 そう言いたいのに、私の腕は勝手に動きます。

 

 「……ぁむっ」

 

 ノアの前で。

 無垢なノアの前で。

 ノアの唾液がついた肉を。

 歯で噛んで。

 歯で押し潰して。

 歯で千切って。

 嚥下する。

 

 その工程をしている間、私の体をムズムズの雷が貫きました。

 頭の奥がじんわり蕩けてきて、気持ちよくなってくる。

 

 ああ、愚姉。

 愚姉も、こんな気持ちで、他人と食事をしていたのですか?

 

 

 

 

 

◾️◾️

 

 

 

 

 「……最近、仲間と食事ができるようになりました」

 「エッ!!!」

 

 『フローの宿屋』に再び泊まりにきた主人公パーティをもてなして、妹にちょっと近況を聞いていた時のこと。

 妹からちょっと衝撃な発言が飛び出して、デカい声を出してしまった。

 

 「うるさいですね、信頼している相手とだけです」

 「いや、それでも凄いことよ!! ねね、今度一緒に食事しましょうよ」

 「一緒に食事!!!?」

 

 うぉ、今度は妹からデッカい声が出てしまった……。

 

 「食事って、え、ふ、二人っきりで……?」

 「う、うん」

 「同じ料理を!? 一緒に食べる!!?」

 

 うーん。

 なんか一緒に食事したくなくなってきたかな。

 ……妹がキモい!

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。