弊シャーレにはミサキとヒヨリをお迎え出来ていないため作者は彼女達の絆ストーリー要素を全く知りません。ストーリー内会話からの推測で書いているためそこを頭に入れて読んでいただけると幸いです。
アリ夏が今から楽しみになってきたぜ…
歌が、聞こえる
茨の道を進まされ、全ては虚しいと教えられた無垢な羊たちを憐れむ歌が
あぁ、そうか
あなた達にも、心配される外界の仲間が出来たんだね
じゃあ私が出来ることをやろう
今まで眠って何も出来なかったツケくらいは、払わないと
「…っ、先生、逃げる…よ!」
“……?”
「あわわわわわ、ヤバいですよ!」
「撤退だ…!」
「……っ!」
十字架から降ろされ、失血状態で目覚めたばかりだというのに目を見開き取り乱した様子も見せるアツコ。サオリ、ミサキ、ヒヨリも同様の反応をし、こちらの手を引く。状況が掴めない。
異形と化したベアトリーチェと対峙し戦闘中、轟音と共に天井が崩落し、現れたのはレイだった。光と共に現れた彼女はベアトリーチェを吹き飛ばし、磔にされていたアツコを彼女の腕に抱えてこちらへ舞い降りた。
しかし夢の中で幾度と会った少女は机に伏した状態から動かず、常に夢現な状態であったが、今の彼女は完全に覚醒した…それこそそこいらの人々と同じようにしゃっきりと背筋を伸ばし、肩にかかっていただけの小さな羽は少女の身長と同じかそれよりも大きく光り輝く、蝶の翅と変化していた。
アツコの身体をこちらに渡した後、倒れた体制から起き上がりつつあるベアトリーチェにゆっくりと歩みを進め、こちらをかばうように翅を広げて膠着している。
ぺたぺたと裸足で歩み、白い服を纏った彼女は、雄叫びをあげる怪物に立ち向かう小さな勇者のよう…いや、逆だ。ベアトリーチェがレイに威嚇している…?
「先生!早く下がって!!」
“え…どういう?”
“レイは何をするつもりなの…?”
「あの格好をしたレイ姐さんは一回見たことがある。…その後に起こることが問題。」
「怖かったですよねぇ…。多分大丈夫だと思いますけど怖いですよねぇ…。」
「…私達はあれのことを月光蝶と呼んでいる。マダムは信じていなかったみたいだがな」
“月光蝶?”
「…あれは一種の災害と言っても過言じゃなかった。なにせ、姐さんが翅を羽ばたかせたと思ったら、銃を向けていた大人たちが文字通り『消えた』んだから。」
「小さいキラキラが大人たちに触れた瞬間文字通り塵になってましたからねぇ…。」
「その時私達は大丈夫だった…。姐さん曰く『消す対象はこっちでコントロールしてる』って言ってたからこの場にいる私達は大丈夫なはずだけど、今の姐さん、怒ってるから。」
先程の、みんな下がっていて。という優しくかけられた声色とは裏腹に、何人も有無を言わさせないオーラを纏っていた。いつも眠たそうにしていた彼女からは全く想像の付かない怒気を放つ様には心配を覚えるほどだった。
「…ねぇ、ベアトリーチェ。さっき来たばかりだし教えて欲しいんだけど、あの子達になんて言ったの?」
「…っっ!そうやって上から見下すのが気に入らない!たかが搾取される家畜程度の存在がっっ!子供など私達大人のための道具に過ぎないのです!!」
「……はぁ?」
「何を偉そうにっ…!その力は何だ!私が来た時には持っていなかっただろう!」
「あれ?言ったよね?アリウスの大人は私が消したって」
「それはお前が集めた兵団が成したことでしょう!お前が優れているのは統率力です!力では無いでしょう…!」
「……神秘の研究をしてるっていうのに気が付かなかったんだ。いや、気がつけなかったのかな?
箱庭にいる存在を『たかが子供』としか見ていなかったお前には」
「…なにを、いや、そんな筈はっ!いくらキヴォトスの神秘が強大だとしてもそれはたかが知れている筈だ!その翅で大量殺戮など出来るわけ
「無いって、断言しちゃう?だからあなたは『悪役程度』の枠にしか収まらなかったんだよ。それに大量殺戮?失礼だな、浄化って言ってよ。」
「あの娘達はね?産まれたときから争いの最中で産まれて、なんで苦しい思いをしなきゃいけないって疑問に思う暇もなく、日々を過ごしてきたの。」
「大人たちもなんで争っているかよく分かっていないまま戦いを続けて、本来守るべき未来すらも彼らの視野には映り込んでいなかった。カタコンベから運ばれた私は拾ってきた大人たちに聞いたよ?どうしてこんなことし続けるか。」
「その答えがさ、
敵を倒し続けなければならない
…ってさ。唖然としたよね。大人たちにとってはもう闘うことだけにしか意義を見出していなかったんだよ。子供は肉欲の副産物程度にしか考えていなかった。だから私は子どもたちを集めて、反旗を翻した。」
「お前の陳腐な反逆物語なんかどうでもいい…!なぜそんな力を!」
「はぁ、せっかちだなぁ。こういうのは過程が大事なんじゃん。結果とか成果しか見てないってあなた嫌われるよ?もう嫌われているかもしれないけど」
「まあ確かにお前の言う通り子ども対大人の勝負なんて無謀だったよ。心が腐っていても場数を踏んだ兵士だったからね。でも、彼女達はそのまま倒れることを認めなかった。祈ったんだよ。『生きたい』って。だから私はあの時初めてこの力を使ってその願いを叶えてあげた。」
「そんな…そんなお伽噺のような展開があってたまるものですか!夢を見るなど、願うなど、私が許しません!」
「今更じゃん、銃弾を弾く身体とか未来予知とかファンタジーのそれでしょ。ここの娘達はそれが当たり前だって思っているけど。」
「___うああああぁあああああ!」
「ありゃ、発狂しちゃった?それとも思い通りにならないことがそんなに嫌だった?
……駄々をこねる子供かよ」
「黙れ黙れ黙れ黙レ默レダマレダマレェェェェ!」
怪物が頭を掻きむしるような仕草をし、咆哮を強める。まずい…!
「大丈夫だよ、先生。これは私なりの償い、私があの娘達にしてあげられなかった最初の贈り物をしてあげたいの。
それに、子どもたちを集めてこれからって時に横槍入れたあいつに対しての仕返しもしたいんだ。
だから、最初の我が儘聞いてくれる?」
“…いいよ、でも”
“彼女達のお願いも聞いてあげて?”
「…?サッちゃん?ミサちゃん?ヒヨちゃん?どうしてこっちに…」
始めは月明かりに照らされたレイを見て、逃げるよう焦っていたアリウススクワッド達が、レイとベアトリーチェの会話を聞き入っていた。彼女達も知らなかったのだろう。レイという少女が自分たちにどれだけ慈愛を向けていたのか、どんな心情を胸の内に秘めていたのか。彼女達はレイに歩み寄る。
「…私は取り返しのつかない罪を犯した。だがそれでも、償えると言うなら、また始められる資格があるなら、それを行いたい。また、一緒に戦ってくれるか?姐さん。」
「全ては虚しいって言って違うっていっつも反対してきたのは正直ウザかったけど、今はどうでもいい気持ちよりも、姫をこんなふうにしたマダムが許せないって思う。この気持ちは何なのか、また教えて?お姐。」
「へへ…あのクソッタレな日々の中、楽しめるものがあることをレイ姐は教えてくれました。痛いことも辛いこともいっぱい体験したけど、そうじゃないって心の何処かで思えたのもお姐のおかげです!だから私達にも恩返しさせてください!」
「みんな…」
レイは驚いた表情を見せたが徐々に柔らかい表情になっていく。自らの子どもの成長を喜ぶ母のような、慈愛に満ちた表情を。
「……へへっ、見ない間に成長したね、君達。」
たたたっとスクワッド達に駆け寄り
「ぎゅーっ!」
「「「ムギュぅ」」」
力強く抱きしめた。頭を撫で、頬に手を当てる。
“私もレイに、伝えたいことがある”
「なぁに?先生」
“彼女達のそばにいてくれてありがとう”
“これからもよろしくね?”
「ったり前じゃん。でも、まずは目下の問題の解決からしますか。」
抱き寄せられた状態からすぐさま陣形を形成し、レイが先頭に立つ。虚空から銃を取り出し、片手で構えたライフルの銃口を倒すべき敵へと向ける
「帰って安眠するためにも、ここで止まるわけには行かないんだよね。」
キッと異形の怪物に視線を向ける
「宵明レイ、行くよ!」
・宵明レイ
アリスクの保護者。アツコが指名手配されてしまったため代理生徒会長を務める予定。彼女がガンダム知識やブルアカ知識を持ち合わせたアリウス推しだった二周目の人間なのか、月光蝶の光を実際に見たことがある誰かなのかは定かではないが、石の繭で包まれていた彼女に真っ当な倫理観を持ち合わせていたのは何かしらの理由があるとされている。特に決めていないので各々のご想像にお任せします。
・その後のアリウス自治区
指名手配されている彼女らの帰る家として、レイが生徒会長代理として復興作業を取り仕切る。これまでの生活環境をティーパーティを通じてトリニティ全域に公開。情状酌量の余地あり派とそれはそうと罪に対する罰は受けるべきアリウス断罪派に世論は二分したが、結局アリウス自治区の正式加入のための復興作業を奉仕活動させることに着地した。最終編前後には失われたトリニティ開校時の景観が残っているということでその場での宿泊こそ出来ないものの観光地化される程に復興した。カイザーやモモグループなど様々な企業に新規リゾート地として付け狙われることになるのはまた別のお話。
しかし巡航ミサイル発射、生徒会長暗殺の首謀者であるアリウススクワッドの罪は消えることなく、原作通り彼女達の放浪の旅をすることになるが、前述のトリニティのアリウス情緒酌量派にこっそり匿ってもらったり路銀を恵んでもらったりとそこそこな生活水準を保てているそう。