透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ミカさんの強さがおかしくなっちゃいました。いやむしろこっちの方がいいのかな〜とも思っちゃったんですがね…。


先に言っておくと、以前戦ったツルギさんはまだ手加減をしていて、本気ではないツルギさんにマッシュ君は勝ったと覚えていてくだされば幸いです。


それでは本編へ……どうぞ!


マッシュ・バーンデッドと規格外vs規格外

 

 

 

「まあとりあえずさ?……ナギちゃんを何処に隠したか教えてくれるかな? 私も、時間が無くってさ~」

 

「答えるわけないじゃないですか」

 

 

 

 

 

補習授業部は固唾を呑んだ。

 

 何処までも飄々と、いつも通りに振る舞うミカ。その表情は余裕に満ち溢れている……それもそのはず、引き連れたアリウス生徒の総数は100人を超え、対して補習授業部は顧問のマッシュを含めてもたった5名しかいない。

 

 

 

 

 

「まぁ、此処に居る全員を消し飛ばしてから、ゆっくり探しても良いんだけれど…それは面倒でしょ? 無駄は省くに限るよね。だから、さっさと吐いてくれると嬉しいなぁって……まあ、そうさせてくれなさそうな人が目の前にいるんだけどね?」

 

「ミカさん、貴方を止める前に……一つ、聞いておきたいんです」

 

「なぁに、先生?」

 

「どうしてこんな事を?」

 

「ん~? 聞きたい? まぁ、先生に聞かれちゃったら仕方ないなぁ」

 

 

 

 

 

 仮面のように張り付いた不気味な笑顔を作り、ミカは頷いた。彼女にとっては、話すしかない。「もしかしたら、話せば、先生は自分の味方になってくれるんじゃないか?」、そう思って。

 

 

 

 

 

「理由はね、そんな難しい事じゃないんだよ? とっても簡単でシンプルなんだ、私はね、ゲヘナが――大っ嫌いだからだよ‼

 

「げ、ゲヘナが……?」

 

「……嫌い、か」

 

「うん、そう! 大っ嫌い!」

 

 

 

 

 

体育館中に響き渡るほど大きく、クーデターの主犯とは思えないほど快活な声で、ミカはあっけらかんと叫ぶ。ヒフミが目を瞬き、思わず呟いた。

 

 

 

 

「うん、そう、私は本当に、心から、心の底からゲヘナが嫌いなの」

 

「……だから、エデン条約を阻止しようと? そのために、ナギサさんを――」

 

「まぁその通りだよ、だってナギちゃんがエデン条約だなんて変な事しようとするからさぁ……ゲヘナと同盟? 和平?

 

あんな角が生えた奴らと平和条約だなんて、冗談にもほどがあると思わない?――考えるだけでゾッとしちゃうよ」

 

「……」

 

「――絶対裏切られるに決まってるじゃん? 背中を見せたら、直ぐに刺されるよ、きっと……まぁ、そんな事をさせないために、私はここまで来たんだけどさ」

 

 

 

 

 

ゲヘナ嫌い。 それはトリニティではさほど珍しくないことだが……ミカはその中でも、極度にゲヘナに対する反感(ヘイト)が強い生徒だった。角が生えた生徒とは、顔を合わせることも、口を利くことも毛嫌いしている。

 

 そんなゲヘナを信頼し、長きに渡る対立に終止符を打つための講和条約を締結する……ミカにとって、それはもはや反吐が出るほどの悪夢であり、連邦生徒会長とナギサが計画したエデン条約についても、ミカの目には「粗暴なゲヘナ生との馴れ合い」を目的とした条約にしか見えていなかった。

 

 

 

 

 

「ナギちゃんもほんと、優しいっていうか、甘すぎるっていうか……創作の中の明るい学園物語じゃないんだしさぁ~、そんな都合の良い話、現実には存在しないって……私たちはこういう、もっとドロドロした世界の住人だって事、そろそろ分かってくれても良い頃なのにね? そう思わない?」

 

 

 

 

 

 御伽話の夢の国の様に、或いは最後にハッピーエンドが約束されている、優しい物語の様に。

 

 必ずそうなる世界なら、どれほど良かったのだろうか……けれど、現実は違う。

 

 裏切り、裏切られ、騙し、騙され、悪意に満ちた、どうしようもない、理不尽で、不条理なそんな世界……だからこそ、大事な何かを失う前に、行動する。それが、ミカの持論。

 

 

 

 

 

「――で、そういう訳だから! ナギちゃんの事、返してくれる? 大丈夫、痛い事はしないよ、まぁ、残りの学園生活は、卒業まで全部檻の中かもしれないけれど!」

 

「…ミカさん、貴方は―先生を、騙したんですよね?」

 

「うん、あの時はごめんね…先生、あそこで語った内容は殆どが嘘。エデン条約は、本当の平和条約だよ。

 

そもそも素直で優しくておバカなナギちゃんに、エデン条約を武力同盟として活用するなんて事、出来っこないからね――でも、あの時話した事、全部が全部、嘘って訳じゃないんだよ?」

 

「…アリウスのことですか」

 

「うん…そう」

 

 

 

 

 

ミカは背後のアリウスを見せつける様にして回る。一歩一歩、歩みながら、彼女は続けた。

 

 

 

 

「――私がアリウスと和解したかったっていうのは、本当の事」

 

「……」

 

「だってさ、アリウスの皆も同じゲヘナを憎む仲間だもん。アリウスだって、元々トリニティの一員だったんだから。先生には前も言ったと思うけど、ゲヘナに対するこの子たちの憎しみは凄いよ? 私達に勝るとも劣らない……寧ろ、この子達こそ、私達よりもっと純粋な憎しみを持っているといえるかもしれない」

 

「だから、手を差し伸べた」

 

「そう! 『志を共にして、ゲヘナと平和条約を結ぼうとする悪党(裏切り者)たちをやっつけない?』 って具合にね!」

 

「………」

 

「ティーパーティーのホスト・桐藤ナギサに正義実現委員会がいるなら、次期ティーパーティーのホスト・聖園ミカにはアリウスが付く――これは、そういう取引なんだよ、先生」

 

「ま、待て……なら、アリウスは」

 

「………アズサちゃんをここに呼んだのは、平和のためなんかじゃなくて――クーデターの犯人にするためですか」

 

「うん? んー……確かにそうかな? これはクーデターなのかもね。最終的にナギちゃんを失脚させて、私がティーパーティーのホストになるんだから」

 

 

 

 

怒っている、少し重い声でミカに問いかける。それにミカはなんの躊躇もなく、答える。

 

 

 

 

「スケープゴートって呼んだ方が良いかなぁ? 罪を被る生贄としての存在がいてこそ、皆がぐっすり安心して眠れるの。世の中ってそう云うものじゃない? 

だからあなたには、とっても感謝しているよ」

 

「っ―最初から、そのつもりで――!

 

 

 

 

 アズサが怒りに染まり、銃を握る手に力が籠る。今にも飛び出しそうなアズサ──それを止めたのは、他でもないマッシュ。

 

 

 

 

「先生…」

 

「ミカさんはティーパーティーのホストになる為に、この計画を立てた――それで、合ってますか」

 

「……うん、そうだよ先生、あぁでも、先生には誤解して欲しくないかな? 別に私は権力が欲しい訳じゃないの、私はゲヘナをキヴォトスから消し去りたい――本当に、ただそれだけだから」

 

「…ゲヘナを…消す?」

 

「うん、文字通りね?――ゲヘナにいる子達…みーんな、消しちゃうの」

 

 

 

 

 

 

 

ゲヘナを消す、ゲヘナ生の皆───アルを、ヒナを、ゲヘコを、ゲヘミを、フウカを、自分が出会ってきた多くの生徒(友達)を消す――それを聞いた瞬間、マッシュの中で――─眠っていた何かが目覚めた。

 

 

 

硝煙のように血生臭く、闇のようにどす黒く濁った…何かが。

 

 

 

 

 

「トリニティの穏健派を追いやって、その空席をアリウスで埋める。多分ナギちゃんの所のフィリウス分派が一番反対しそうかなぁ?

 

なら、今度からはパテル、サンクトゥス、アリウスの三大分派にしてー……そうしたら新しい連合が出来て、必要なら新しい公議会も……うん、結構良いかもね? 

 

そして新しい武力集団を得て再編された、私率いる新生トリニティが、ゲヘナに全面戦争を仕掛ける――うん、そう、これが私の計画!」

 

 

 

 

 

 アリウスとパテルを率いてトリニティを手中に収め、ゲヘナに宣戦布告する。つまりは……戦争、この学園都市で最大の非道、禁忌ともいえる行為を、ミカは実行に移す算段だった。

 

 

 

 

 

「どうかな、この計画? とっても素敵でしょう、先――」

  

 

 

 

 

 

 

ゾワァッ‼‼‼

 

 

 

 

 

 

「ッ⁉(何、今の……)」

 

 

 

 

 

 突然、体に強烈な悪寒が走ったミカは、言葉を途切れさせながら後方へ飛び退く。それを見た全員が表情に疑問符を浮かべるが…程なくして、その意味がすぐにわかった。

 

 

 

 

 

「――ゲヘナにいる子を、皆、皆、…消す……それってつまり、ミカさん……僕の生徒(友達)を殺す、そういう意味ですよね?

 

「……? ……うん、そうだよ? そう言ってるじゃん、私は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふざけるなよ

 

『―────っ‼‼⁉??』

 

 

 

 

 

 

 

 

『ゲヘナを消す』……その発言に、マッシュ・バーンデッドはミカに対し…殺意を抱いてしまった。

 

 

その殺意は凄まじく、先ほどミカに襲いかかった悪寒の正体は―──他ならぬ、マッシュが放った殺気だ。

 

 

 その殺意はミカに向けられているものにも関わらず、体育館全体を満たすように広がり、その場にいる全員に強烈な悪寒が走る。

 

 

 

 

(こ…これ…って)

 

(は、肌が…痛い……)

 

(――先生が、先生が…)

 

(―本気で…怒っている)

 

 

 

 

 

マッシュはポーカーフェイス……否、殺意の籠った眼光と修羅の面をミカに向ける。

 

 

 

 

 

 

「ゲヘナにいる子達も僕の生徒なんです……たとえ同じ生徒でも、あの子達を消そうとするのは……僕が許さない」

 

「――へぇ〜先生、そんな顔できたんだね」

 

 

 

 

 

ゲヘナを消そうとしている、友達を傷つけようとしている――挙げ句、アズサをその全ての犯人に仕立て上げようとしている。

 

今も苦しんでいるアリウスを、ゲヘナとの戦争で、避けられない流血で、もっと苦しめようとしている。

 

多くの人を巻き込んで、不幸にしようとしている……その数多くのことに、マッシュは―本気で怒っていた。

 

 

 

 

 

「覚悟……してくださいね、僕は……僕は、貴方を―――

 

 

 

 

 

ガシッ‼‼

 

 

 

 

「……???」

 

「先生っ……、先生……それ以上は、ダメ…………」

 

「……コハルちゃん」

 

 

 

 

そんなマッシュを止める、一つの手と声。

 

 

 

 

「それ以上言っちゃったら……先生が、先生じゃ……無くなっちゃう」

 

「…………」

 

「お、怒るなとは言わない! け、けど……その…えっと―─と、とにかく、ミカ様にそんなことしたらダメ‼ 今の先生は、先生らしくない…から……」

 

「…!」

 

 

 

 

 

 コハルの言葉にハッとするマッシュ、ミカに対して怒っているのは本当……しかしそれと同時に何を覚えていた?─―そう、殺意だ。

 

 

それは、自分(先生)彼女(生徒)に抱いてはいけない感情……マッシュは今、本気で彼女を殴り殺そうとしていたのだった。

 

 

そんなことは…間違っている。コハルが、そう教えてくれた。マッシュは、目が覚めた。

 

 

 

 

 

「――ごめんねコハルちゃん、ごめん…そうだよね、こんなの、(先生)じゃないもんね」

 

「先生…!」

 

「いけないいけない……クールキャラな僕を忘れていたよ」

 

「クール…では、もともとなかったんじゃ」

 

「止めてくれてありがとう。――下がってて」

 

 

 

 

 

コハルを下がらせ、マッシュは自分の頬を叩きながら、深呼吸してミカとアリウス生を見つめる。

 

 

 

 

「…ミカさん」

 

「…なあに、先生」

 

「ゲヘナを消そうとする貴方の考えには賛同できませんし、許せません」

 

「まあそれはそうだよね! ならさぁ先生……私を止めたいのなら―私を殺『しませんよ』」

 

「殺すことなんてしません。絶対に……人殺しなんて、絶対に許されないですし……コハルちゃんも、止めてくれましたから」

 

「……捕まっただけじゃ、私は絶対に止まらないよ? 例え一人でも、牢獄ぐらい抜け出してでも──」

 

「止まらせます」

 

「どうやって?」

 

「勿論――拳で」

 

 

 

 

 

 マッシュは、握り締めた右拳をミカに向ける。これから起こるのは子供同士の喧嘩ではなく――先生による、生徒の指導だ。

 

 

 

 

「っ……私を止める…? 先生が?……は…ハハハッ‼ 笑っちゃうね――この数を相手に先生1人、それから私も入るんだよ?……そんなの無理じゃんね」

 

「見ただけで分かる――彼女はかなり、強い」

 

「……ふふっ、そうだよ? 先生にはまだ言ってないけれど……私、結構強いんだから」

 

「それはわかってますよ……初めて会った時から、そんな気はしてましたから」

 

「……あはは、なんでも……そう、何でもいいよ、これ以上はちょっと、喋るのはやめよっか――だって、何だか、これ以上先生と言葉を交わしたら、私が辛くなるだけだもん」

 

「ミカさん………?」

 

「……先生への説明は、後で私がゆっくり、ちゃんとしてあげるから――だから今は、他の邪魔な連中を片付けちゃおう?」

 

 

 

 

 

 

そう言って補習授業部に愛銃――サブマシンガン『Quis ut Deus』を向ける彼女。応じる様に、周囲のアリウス生徒がアサルトライフルとグレネードランチャーを構えた。

 

 

 

 

 

「―みんな、一塊になって。動かないでね」

 

「せ、先生?」

 

「何する気が知らないけど……無駄だよ、……じゃあ補習授業部をやっつけちゃって、あ、先生は傷付けちゃ駄目だからね? もし傷付けたら――例え故意じゃなかったとしても、痛い思いをして貰うから」

 

「……了解」

 

 

 

 

 

 

周囲のアリウス生徒が返答し、その引き金に指を掛けた―――その時

 

 

 

 

 

 

「…」スッ

 

「…?」

 

「!」ブンッ!!

 

 

 

 

 

 

 マッシュが地面に向かって拳を放つ・拳が地面へとぶつかった瞬間、地面にヒビが入り、体育館全体が激震した直後、蜘蛛の巣のようにそのヒビが広がった。

 

 

 

 

 

「な、なに!?」

 

「体育館全体が、ゆ、ゆれて!」

 

「一撃……たった一撃で、体育館全体に……傷が」

 

「こんな……ことが―」

 

 

 

 

 

 

揺れがしばらく続き、土煙が晴れた頃にはもう

 

 

 

 

 

 

「……なるほどねぇ〜―あの噂本当だったんだ……ツルギちゃんに勝った、っていう噂」

 

「ツルギさん本人は手加減してくれてたみたいですけど」

 

「それでも、一度勝ったんでしょ?――キヴォトス人に、それもうち(トリニティ)の戦略兵器に」

 

「うす」

 

「……そっか―そっかぁぁ……」

 

 

 

 

 

 

ヒビが広がっている体育館の床…そこに立っているのは、マッシュとミカのみ。補習授業部とアリウス生は腰を抜かしてしまい、地面へと座り込んでいる。

 

ミカは残念そうに、頭を掻き銃を持ちながら下を向く。

 

 

 

 

 

「……無害だと思っていた先生が、滅茶苦茶有害だったなんて――ははっ、ついてないなー」

 

「なんか、がっかりさせちゃったみたいですみません……僕、結構人の邪魔(悪事の邪魔)をしちゃうので」

 

 

 

 

 

 

マッシュは指を鳴らしながら軽く準備運動、ミカはトンッ…トンッ…と軽くジャンプする。

 

 

 

 

 

 

 

「逃げ出すなら今のうちだよ?」

 

「笑止千万」

 

 

 

 

 

 

 

「……もう、私は止められないの」

 

「だったら僕が死ぬ気で止めます」

 

 

 

 

 

 

 

「――私を止めたければ…殺すしかないよ? それでも私たちを止めるなら……逆に先生が死んじゃっても、文句なんてないよね?

 

「絶対殺しませんし、僕も死にません。生徒たちも、絶対に守ります。不殺で、誰一人として殺さずに、必ず貴方を止めます

 

「……いっそのこと、殺してくれた方が、楽になれるのに」

 

「……?」

 

「ん?あーこっちの話だよ⭐︎」

 

「まあとりあえず……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「お説教、始めましょうか」

 

「ごめんね〜? 私、お説教大ッ嫌いなんだ〜」

 

 

 

 

 

 

規格外 vs 規格外、キヴォトスにおける最高峰の力を持つ二人の頂上決戦が……始まった。

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 戦闘が始まるとともに、先に動いたのはマッシュ。地面を蹴り上げ、まっすぐミカへと向かって走り出す。

 

 

 

 

(まずはあの武器を破壊、もしくは取り上げて)

 

「先生、言ってなかったんだけどね?」カチッ

 

 

 

 

ドォォォォォッ!!!

 

 

 

 

「!」

 

「私ってさ、普通じゃないんだ〜」

 

 

 

 

 そしてミカが引き金を絞った瞬間、ミカの愛銃から放たれた弾丸は煌びやかに光り輝き、マッシュの進路上に弾幕を張る。

 

 

 

 

「―!」

 

 

 

 マッシュは急停止するとともに、それを拳を使って破壊。感じたのは違和感……普通のホローポイント弾よりも何倍も硬く、1発1発が重く──いや、単なるフルメタルジャケット弾よりも硬い。サブマシンガンとは思えない威力に、マッシュは困惑した。

 

 

 

 

「―なんだ…これ」

 

「キヴォトス人ってさ、神秘…ってのがあるらしいんだよね……それで、私はその神秘がすごく濃いらしいの」

 

「じゃあ、この弾丸は──」

 

「うん、多分……神秘によって強化された弾丸…かな?」

 

「初めて見たな」

 

「ほらほら、続き行くよ!」

 

 

 

 

 

 ミカは引き金を引き続けてマッシュを攻撃する。破壊しながら進んでいくのは効率が悪いため、マッシュはそれらを避けながら近づいていく。

 

 

 

 

(はっや…!)

 

 

 

 

 マッシュの身体能力ですら逃れられない精密な照準が、滑るように動き回る彼を追って発砲し続ける。マッシュは飛び上がると、体育館の壁、天井の梁など、あらゆる場所を飛び移りながら、ミカの弾倉払底とリロードを狙う。

 

 

 

 

(今だ)バッ!

 

 

 

 ミカがリロードを行おうとした瞬間、マッシュは背後へと回り込み、そのままチョップを繰り出す。しかしミカはマッシュが背後に回った瞬間には、もうリロードが完了し───

 

 

 

 

 

「!」バッ!

 

「せ、先生!」

 

「まずい、あの距離からあんな弾丸を喰らうのは――」

 

 

 

 

 

マッシュのチョップとミカの弾丸がぶつかる………と、思っていたアリウス生と補習授業部だったが。

 

 

 

 

『――!』ピタッ!!

 

 

 

なんと、2人の動きが突然止まる。2人は少し離れ、ミカは銃を下ろしながらマッシュに問いかける。

 

 

 

 

 

「……明らかに何かを庇ってる動きだった…何か隠してるでしょ」

 

「……」ゴソゴソッ

 

 

 

 

 

マッシュが懐から取り出したのは――綺麗なシュークリーム

 

戦闘中とは思えない状況に、勿論周りは『何故⁉』とツッコむ。

 

 

 

 

 

 

「守るべきものがあると…お互い全力を尽くせないでしょ?─―それは置いて来てよ」

 

「まさかまさか…トリニティに古くから伝わる、騎士道精神……って奴ですか、これが」

 

「ううん……私が楽しみたいだけだもん⭐︎」

 

 

 

 

 

 

少しの沈黙……そして

 

 

 

 

 

「な、なんと言う…一進一退の攻防!」

 

「あれが、トリニティ屈指の神秘を持つ聖園ミカと、超人・人間兵器の異名を持つマッシュ・バーンデッドの実力か…!」

 

「我々では…到底届かない…っく」

 

 

 

 

 

 熾烈な格闘を前にして、何故かざわざわと騒ぐアリウス生徒、しかも両者の戦闘能力を真面目に考察しているものまで現れる。そんなアリウス生徒達とは裏腹に、また困惑するヒフミとコハル。

 

 

 

 

 

「なんですか…あの、今の時間…」

 

「時間返して欲しいんだけど…本当に」

 

 

 

 

それとはまた逆に、2人の様子をじっくりと見る。

 

 

 

 

「お互い…まだ本気を出していませんね」

 

「…ああ、様子見…といったところだな」

 

「まさか、ミカさんにあのような力があるとは…いえ、強いとは聞いていたのですが」

 

「先生が重いと言うほどの、光り輝く弾丸……先生、相手は―強敵すぎる」

 

「……所でアズサちゃん、そのシュークリームどこで?」

 

「さっき先生が持っていたものを預かった」

 

(………アズサちゃんも、そろそろあっち側(人外)ですかねぇ)

 

 

 

 

シュークリームをアズサに渡したマッシュはファイティングポーズを決め、ミカを見据える。

 

ミカも銃を構え、マッシュに銃口と眼光を向ける……すると、マッシュを見つめたミカが、微かに笑った。

 

 

 

 

「――ダメじゃん私、先生に……弾丸とか意味ないってさっきのでわかったんだから…さ!」ブン!

 

「銃を、投げた!?」

 

「そして距離を詰め出した…ま…まさか、まさか!」

 

 

 

 

 投げつけられた銃を払いのけ、間髪入れず右拳を放つマッシュ。ミカが走って来るとわかっていたため、格闘戦にもつれ込む形で迎撃する。

 

 

 

 

「――アハッ!」

 

「!」

 

 

 

 

 しかし、ミカはその拳を右に退け、下に潜り込むと…下からマッシュの腹へ向かって思いっきり拳を叩き込む。

 

 マッシュの右腕が伸び切った瞬間にミカが攻撃したため、マッシュは腹の攻撃を左手のみで受け止める形になる。

 

 

 

 

「え〜〜い!⭐︎」ゴッッ!!

 

(――おっっっっも)

 

 

 

 

 しかし、その攻撃を喰らったマッシュの体は宙に浮いた。それを逃さないとばかりにミカは飛び上がりハイヒールを履いている足で、突き刺すようにキックを放つ。

 

 

 

 

 

「危ね」

 

「からの…えい!えいえい!」

 

「おお、隙の逃さぬ二段構え……けれども、させぬ」

 

 

 

 

 

そのキックをなんとか空中で避けたマッシュだったが、避けたところを逃さず、ミカは空中で回し蹴りを放つ。その蹴りを、マッシュも同じく蹴りで迎撃した。

 

 

 

 

 

『よっこらしょ……』バッ!!

 

 

 

 

 

地面に着地した2人は同じ言葉を発した後、一気に距離を詰めて互いに拳を放つ。

 

 

 

 

 

 

「ミカパーーンチ!⭐︎」ブンッ!

 

「デルトイド魔法・バーバリアン…パンチ」ブンッ!

 

 

 

 

 

 

 

 2人の拳がぶつかり合うと、まるで船が激突したかのような金属的な轟音が鳴り響き、その時に生じた衝撃で両者が後方へと弾き飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

「―――アハハハ⭐︎、先生すごいね!―楽しくなって来ちゃった」

 

「……僕は驚きすぎて、楽しむ余裕とかありませんけどね」

 

 

 

 

 

 

ミカは、初めて自分と渡り合う強者との戦闘を少し楽しんでおり──

 

 

マッシュは、眼前の生徒が自分が想像したよりも何倍も強いことに驚かされていた。

 

 

後に、その場にいた者たちは口を揃えたように、一様にこう語る。この2人の戦闘を一言で表すのなら──

 

 

 

 

 

 

人外魔境体育館決戦 ……と。

 

 

 

 





体育館の寿命、あと、数分。

本編がえぐいので、ちょっとした家族の会話をここで書きます。
なんかこのコーナー?が好評なので続けることに決めました。




『お兄、ツルギちゃんと私、どっちが好き?』

『貴方』

『え?ほんと?私も〜大好き〜』

『ははは…何が目的だ?』

『今晩のお料理はお肉がいいです』

『昨日と一昨日もお肉だったでしょ、こんばんはお野菜です』

『やっ!!』

『や!じゃありません』





『兄者〜〜!リンちゃんと俺どっちが好きー?』

『リンさん』

『即決!?』

『後今晩の料理は野菜です』

『ヤァァァァ!!!』  
 
『男のヤァ!は需要ありません』





三日連続お肉料理とか胃が死にますや、本当に。2人とも野菜大っ嫌いなんですよね……いい年こいて。


励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。

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