透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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クロコ曇らせ概念は◯べ。

あ、すみません、私稔が出てしまいました……。

それでは本編へ……どうぞ!


マッシュ・バーンデッドと人外魔境体育館決戦・下

 

 

 

 

「…アハッ⭐︎……『僕の番』? それ、さっきまでボッコボコだった人の言うセリフ?」

 

「ほら、キヴォトスの漫画でもよくあるじゃないですか。ボロボロ状態の主人公が覚醒して、相手を倒す展開。僕もこれから本気出して戦います」

 

「主人公……か、先生が主人公(ヒーロー)なら、私は悪役(ヴィラン)かな?」

 

「少なくとも、悪役じゃないんじゃないですか?」

 

「…なんでそう言えるの? ここまで何を聞いてたの?」

 

 

 

 

 

 

 ボロボロながらも、互いに歩み寄って間合いに近づく2人。ミカは既に前腕と左下腿を骨折して左大腿骨にもヒビが走り始めており、対するマッシュは右第二肋骨を砕かれ、肋間筋と広背筋に重度の挫滅、左右の腓骨を損傷していた。

 

 

 

 

 

(右前腕…たぶん橈骨、左足は脛骨を骨折……か〜――まあ、一戦分の我慢くらいはできるんだけどね)

 

「大事な骨、折っちゃってごめんなさい」

 

「……先生だって重症のくせに―─私は右腕と右足だけ、先生は?」

 

「多分、右の第二肋骨が完全に折れてて、心臓か肺に刺さりそうかと。腕と足は、ヒビが入っている程度ですね」

 

「…こっちは折れてるのに、ずるくなーい?」

 

「そこはほら、頑丈なので」

 

「……ふーん…出血も止まってないくせに無理しちゃって」

 

「お互い様でしょ」

 

 

 

 

 

 

 

 骨折しているのに、ヒビが入っているのに、この2人は何故ここまで平然と立って、平然と話しているのか……ヒフミは、もはや理解と思考を諦めるしかなかった。何を考えたところで、彼女たちの運命は──トリニティの未来は、この人智を超えた神秘と筋力を秘める両者に、委ねるしかない。

 

 

 

 

 

「話を戻して……私が悪役じゃないってどういうこと?―─これだけのことやってるのに」

 

「その自覚がある時点で悪役じゃないと思いますよ。悪いことをしてる自覚がある悪役って、珍しいって聞きますし。そもそも、悪役っていうのは自称するものじゃないと思いますけど」

 

「…私が私の立てた計画に、罪悪感とか…自己嫌悪とか、心を痛めてるって思ってるの? もしそう思ってるなら、呆れるほど呑気だね⭐︎」

 

「呑気にやっていかないと、人生楽しくないですよ…それに、心が痛んでない?――ならなんで、セイアさんが死んだって聞いて、あんなに悲しそうな顔をしてたんですか

 

「っ」

 

「なんで、僕にどうすれば戻れるって聞いたんですか」

 

「…っ!」

 

「なんで――今こう話している間も、悲しそうな顔をしているんですか」

 

 

 

 

 

 

 マッシュがそう問いただした瞬間、ミカが前に飛び出し、言葉を強引に遮るために拳を放つ。それを、折れたはずの腕で、それも片手で止めたマッシュ。

 

 

 

 

 

 

「……うる……さいよ」

 

「…………」

 

「私は悪い子、魔女なの……だから、だから!」

 

 

 

 

 

 ミカはもう一本の手で拳を作り、マッシュを黙らせるために拳を振るう。

 マッシュは再び、折れたはずの腕でそれを防ぐ。ミカの拳を握るマッシュ、二人は手四つの状態のまま、正面から向き合った。

 

 

 

 

 

「先生は…マッシュ君は、私を退治しないとダメなの⭐︎!」

 

「………」

 

「そして私はそんなマッシュ君を倒さないといけない……だってそれが――悪役だもんね!」ピョン!

 

「―フッ」ピョン!

 

 

 

 

 

 四つ手の状態から2人は飛び上がり、体育館の天井を突き破って空中で蹴り合いを開始。相変わらず激しい音が響くが、これまでと異なる点を挙げれば…マッシュが優勢だと言うこと。

 

 

 

 

 

(なんで空中で蹴り合ってるのに、そっちの威力は下がってないのかなぁ!?)

 

(やっぱり、ミカさんは空中戦不慣れだったか……いや不慣れなのが普通か)

 

 

 

 

 

 空中という、地面との摩擦による制動が得られない状態──すなわち踏ん張りが効かない状況で、マッシュは普通に空中を蹴ってホバリングしながら、地上戦と同じ蹴りをミカに繰り出していた。

 やがてミカの方が限界になったのか、攻撃が止まる──それがチャンス。

 

 

 

 

 

 

「フッ」ブンブンブンブンッ

 

「わぁぁぁぁっっ!!?」

 

 

 

 

 マッシュは力一杯にミカを振り回し、地面へと投げつける。ミカはそのまま地面に落下し、ひび割れた体育館の中央に叩きつけられた。マッシュは酷使した筋肉のクールダウンのため、両足を羽のようにばたつかせて宙に浮きながら、緩やかに高度を落としていく。

 

 

 

 

「――おわっ」

 

「やってくれたね先生…!!」

 

 

 

 

 しかしミカはそれを許さんとばかりに、二人が戦って出来上がった瓦礫をマッシュに向けてぶん投げる。

 

 

 

「それそれそれそれ、―──よっと」

 

 

 

 クールダウンを終えたマッシュは、対空砲火と化した瓦礫の上を飛び移る形で疾駆しながら、ミカの前に飛び戻る。

 

 

 

 

「―おかえり〜〜!!」ギュオッ!!

 

「ただいま」ガンッ!

 

 

 

 

 地面にあるだけの瓦礫や、崩れゆく天井の破片を投げまくるミカ。マッシュはそれをシンプルなパンチで破壊しながら前に進む。

 

 

 

 

「ま、まずいっ……! 総員退避、退避っ!!!」

 

「もっと下がりましょう!」

 

うわぁ!?―も、もう! 規模が違いすぎるわよ!」

 

「体育館もそろそろ限界だ……先生、お願い…!」

 

 

 

 

 マッシュが破壊した瓦礫の破片がアリウス生や補習授業部へと流れ弾となって飛び散り、散弾のように彼女たちに二次被害を与えている。それにマッシュが意識を向けた瞬間──

 

 

 

 

「みんな―『よそ見してていいのかな?』!」

 

「ミカジャンプドロップキーーク!!」

 

 

 

 

 よそ見をしてしまったマッシュに向かって、ドロップキックを繰り出すミカ。マッシュはそのドロップキックを避ける───のではなく、あえて

 

 

 

 

「――フンッ」ガシッ!

 

(腹筋に力を入れて踏みとどまった!?―あーもう!普通そこは吹き飛ぶでしょ!?)

 

 

 

 

腹筋に力を入れた状態で受け止め、ミカの足を両手で掴む。そしてミカの両脚を自分の肩幅に開き、ミカのふくらはぎを掴んで足首を脇下に挟み込む。

 

 

 

 

「トライセップス魔法・ヒューマン…」グググッ

 

「うそ―でしょぉ!?」

 

「ハリケーン」ギュオォォッ!!

 

 

 

 

 マッシュはミカにジャイアントスイングを行い、タービンのように回り始めた。ミカは遠心力でめくれたスカートの裾を大慌てで押さえるが、次第に加速する回転によって台風に匹敵する暴風を顔に喰らい始めると、呼吸すらもままならなくなる。

 

 

 

 

「――ぬぁぁ!!」

 

(―腹筋に力を入れて、上体を上げた)

 

 

 

 

 それでもミカは、上体を起こしてスカートから手を離す。突き出した両手がマッシュの首に掴みかかり、

 

 

 

 

「同じ気持ち…味わってみる!?」

 

 

 

 

その首に爪を立てるように握り込む……のだが。

 

 

 

 

(―は…なに……この硬さ……―っ!ここまで硬いとか反則じゃん…!結構力入れないと締まらないとか……キッツイなぁ!!)

 

「うげぇ」 

 

 

 

 

マッシュの首の硬さは鉄とほぼ変わらない。今のミカは、呼吸を圧迫する暴風、遠心力による加速度、そして回転によって血液が頭部に集中することによる低酸素状態に耐えながら、なおかつ鉄と同じ硬さの首を絞めなければならない。

 

 

 

 

「―必殺……ミカ…‼︎

 

「!」

 

「ヘッドバッド‼‼」

 

「いづ…」

 

 

 

 

 鈍る思考の中、ミカはマッシュから逃れるために頭突きを繰り出した。流石のマッシュも額にダメージを受け、掴んでいる手の力を緩めてしまった。その隙を狙い、ミカはマッシュの腕を蹴りで振りほどき脱出した。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……」

 

「イタタタっ……結構効いたな。すごいですねミカさん、僕がここまで―─『マジで……意味わかんないよ……』…?」

 

 

 

 

ミカは肩で息をしながら、消耗した体に鞭打ち、マッシュに呟く。

 

 

 

 

 

「腕と足の骨にヒビ入ってて……肋骨なんて折れてる…はずなのに……なんでそこまで動けるの?」

 

「それがまあ僕なんで」

 

「なんのために……痛いのを我慢してるの」

 

「いろんな人のためです」

 

「その中に私も入ってるんでしょ?」

 

「勿論」

 

「………――どうして!?」

 

 

 

 

 

 血液循環が正常に戻ったミカは、再びマッシュに殴りかかる。勢いは全く衰えていないパンチ、けれどマッシュはその速度と勢いに慣れつつあり、ミカの視線や呼吸、筋肉の緊張でその動きを見切る。先程まで低酸素状態に耐えていた結果、呼吸が荒くなった今のミカが相手なら、回避は一層容易だった。

 

 

 

 

「なんで、見捨てないの⁉」

 

「………」

 

「ほっといてよ、(なじ)ってよ、文句の一つくらい浴びせてよ!!」

 

「……嫌です」

 

「そうじゃないと私…私は…!!─―おかしく…なっちゃうよ…!」

 

 

 

 

 

 

 

 ミカは、罪の意識と孤独に耐えかね、押し潰されそうになっていた。友を殺し、裏切り、傷つけたことへの罪悪感と後悔が、彼女の心を縛って離さない。

 

 

 ここで、マッシュに見捨てられ、魔女として罵られ…自分が完全なる悪となり、ヒーローであるマッシュに倒される……それならきっと楽になれただろう。

 

 

けれど、マッシュはミカを倒すのではなく、ミカを止めるために戦っていた――皆のために、ミカ自身のために。

 

 

 

 

 

 

 

「もういっそのこと…私を――1人にしてよ! 

 

 

 

 

 

友達なんて……いらないから……1人でも平気だから!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 周りに何か大切なものがあると、それが傷つけられた時…苦しく、悲しくなる。勿論、何がなんでも大切な物は守りたい……けれど自分の知らぬ間に、何者かの謀りによってそれが傷つけられ、取り返しのつかないことになったら?

 

 

 ミカは、それを恐れ続けていた。だから、自分が嫌われることにした。何を失っても、誰が傷付いてもいいように。

 

 

 嫌いなゲヘナに、八つ当たりのような憎悪を語ったのも、逃避の一環としてそれらしい理由付けをしたに過ぎない。

 

 

 滅ぼすと宣言したのも、それが理由。

 

 

 

 

 

「お願い…だから」

 

 

 

 

 

生徒の決死の願い、それを受け入れることが、先生(マッシュ)の役目

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

 

 

 

 

 

「嫌です、断固として拒否します……それであなたが笑えるはずない」

 

「!」

 

 

 

 

 

 

それがその生徒自身を不幸にする願いなら、先生(マッシュ)は何がなんでも否定するし、聞き届けない。

 

 

 

 

 

「僕をここで倒して、全てアズサちゃんのせいにして……ナギサさんからホストの座を奪って、アリウスのみんなと一緒にゲヘナに戦争を仕掛けて……ゲヘナのみんなを消して――貴女は幸せなんですか?」

 

「それ…は」

 

「トリニティのみんなだって、戦争なんて望んでない……寧ろ、それを実行した貴女を恨む人だって出てくる。アリウスのみんなだって―これ以上苦しむのなんてごめんなはずだ。そうでしょ?」

 

「……マッシュ、バーンデッド……貴方は」

 

「ならどうなるかわかりますか?――貴女は一人ぼっちになるんですよ…ずっと」

 

「っっ!!!!」

 

 

 

 

 

 放った渾身の拳をマッシュに掴まれ、間近に引き寄せられるミカ。

 

 

 

 

 

「1人にしてくれ?友達なんていらない?1人でも平気?……それで貴女が、貴女自身がこの先、普通に生きられるとは──僕は思わない」

 

「くっ…!」

 

「1人で過ごすことが好きな人もいます…けれどそれは、『孤独』とは違う。1人でもいいのは、それでも十分幸せだって思える人生を生きられる人だけです。――少なくとも貴女は違う…違うはずだ」

 

「私のことを何も知らないくせに―─なんでそんなこと言えるの!?」

 

「確かに、まだ数回しか顔を合わせていませんよ……でも、一人きりでいることが好きな人が、セイアさんのことで悲しむわけがないでしょ――友達を大事に思ってない人が………そんな顔するわけないだろ」

 

 

 

 

 

 

強く、ミカの意見を強く否定する。ミカは一人(独り)になりたいのではなく…なろうとしている。

 

 

 それをマッシュは何がなんでも止める気でいた……それは、孤独の苦しみを、マッシュは知っているから。

 

 

孤独(ひとり)が嫌な人間が、孤独でいることの苦しみを、知っていたから言えること。

 

 

 

 

 

 

 

「僕は一人ぼっちなんて嫌なんです、みんなで賑やかに話をして、シュークリームを食べて……それが好きで好きでたまらない」

 

「先生…」

 

「周りに誰もいないと、僕は悲しい――そんな思いを、貴女には、して欲しく……ない!」ブンッ!

 

 

 

 

 

 

マッシュはミカを投げ、言葉を続ける。

 

 

 

 

 

「骨がバキバキに折れようと、死にかけようと、僕は絶対に貴方を止めます…僕は、貴女を一人きりになんてさせない」

 

「……………!」

 

 

 

 

 真っ直ぐすぎる目、嘘が全くないそんな意見……自分が止められないように、マッシュも止まるつもりはなかった…それが、今はっきりと分かった。

 

 

 

 

「……あーあ…マッシュ君と私が同い年だったらなぁ…きっと、何か違ったのかも」

 

「それは…ありますね」

 

「……もう先生は止まらない―──なら、私だって、もう止まらない」

 

 

 

 

 ミカは立ち上がり、アリウス部隊を見回した…そして、指示を下す。

 

 

 

 

「…補習授業部のみんなを制圧して」

 

「ミカさん…!」

 

「ごめんね先生…!色々言ってくれて嬉しいけど、もうこれしかないや!先生には、何が何でも……勝たないといけないから!!」

 

「…了解」

 

「し、正気!?ここで戦ったら、大怪我なんかじゃ済まないのに!?」

 

「……命令は、絶対なんだ。元より、世は虚しいものと教えられ、その現実を見せつけられてきた身だ。寧ろここで負けようとも死のうとも構わない…ここで、下手に生き残るくらいなら」

 

「くっ……」

 

「やるしか…ない」

 

「……」

 

 

 

 

 

 アリウスの部隊は補習授業部へと銃を構え、制圧準備に入る─――しかしその時、体育館外のどこからか、破壊音が鳴り響いた。その音の発生源は、響く轟音に交じる発砲音とマズルフラッシュとともに、次第に近づいている。

 

 

 

 

 

「何、爆発……?」

 

『こ、此方チームⅧ!包囲部隊が攻撃を受け――ガァッ!?

 

「……は、なに…?包囲部隊に攻撃?何で?ティーパーティーの戒厳令に背く人たちなんて、もう――」

 

「それは少々、甘い考えですよ──ミカさん」

 

 

 

 

 

 唐突に、体育館の入り口から無数の弾列が飛来した。号令のもと、補習授業部を外した的確な射撃がアリウス生たちを直撃する。ミカは、銃声が聞こえた方角へと振り向いた。

 

 

 

 

「……歌住(うたずみ)、サクラコ」

 

「──夜分遅くに、随分と騒がしいではありませんか、ミカさん?」

 

 

 

 

 凛とした姿、修道服に身を包んだ幾人もの生徒達。十字架に酷似したヘイローを輝かせながら、彼女達はアリウスの前に立ちはだかる。

 

 

トリニティ総合学園、大聖堂に本部を置く一大派閥――シスターフッド。

 

 

彼女らが、増援にやってきた。

 

 

 

 

「なんか凄そうな人たちが来た……そういえば、シスターフッドって──」

 

「こうしてお会いするのは初めてですね、マッシュ・バーンデッド先生。シスターフッドを取り仕切っております、歌住サクラコと申します」

 

「どうも」

 

「そして……遅くなってしまい申し訳ありません、ここからは……我々が」

 

「今日も平和と安寧が、皆さんと共にありますように」

 

「すみません、お邪魔します……!」

 

 

 

 

 歌住サクラコ、若葉(わかば)ヒナタ、伊落マリー。シスターフッドを率いる三名が、自身の愛銃を構えて告げる。その宣言と同時に、百名余りの銃口がミカとアリウスを捉えた。

 

 

 

 

「せ、先生、そのお怪我は!?」

 

「若葉ヒナタと申します…先生、どうぞこちらへ」

 

 

 

 

 以前顔を見た生徒であるマリーに加え、特徴的なカバンを手にしたシスター・若葉ヒナタの二人が、マッシュに駆け寄る。

 

 

 

 

「ティーパーティー・ホスト、聖園ミカさん。他のティーパーティー・ホストへの傷害教唆及び傷害未遂で、貴女の身柄を拘束いたします……無論、連邦捜査部シャーレ顧問、マッシュ・バーンデッド先生への暴行及び傷害の容疑と併せて」

 

「……あはっ、流石にシスターフッドと戦うのは初めてだなぁ、今までずっと知らん振りを決め込んでいたのに、今更動くとか、どんな風の吹き回しかな?ホント、想定外だよ」

 

 

 

 

 

 

 ミカは苦笑を浮かべて、挑発するように呟く。本当に、こんな展開は考えてもいなかった。

 

──この後の展開も。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――ギャヒャヒャヒャ……ウヒャヒャヒャヒャ!!!!!!!!!」

 

「この声……まさか―嘘でしょ?―なんで!」

 

 

 

 

 

 

 

ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!

 

 

 

 

 

 

「せんせぇぇぇ!!!コハルゥゥゥ!!!!」

 

「ツルギ先輩っ!?や、やった…!!先輩が来てくれた!!」

 

「し、しかし何故…?正義実現委員会は、動けないはずでは──」

 

 

 

 

 

 ボロボロの体育館の壁を豪快に突き破り、現れた生徒……それは、正義実現委員会委員長・剣先ツルギだった。

 

 

 

待機命令、それを無視して…ツルギはやってきた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「せんせ………っ!?

 

「……ねえ、本気?命令無視とか……立場、まずいんじゃないの?」

 

「……我々は、基本的にティーパーティーの指揮下でトリニティの治安維持と警備を行っている…言い方を変えれば、貴様らの駒だ」

 

「なら」

 

「しかし今回は…違う――今回私がここにきたのは私のみ……つまり、命令を違反したのは正義実現委員会ではない。私個人の独断だ、他の部員は関係ない…!」

 

「………命令違反は正義?」

 

「―─先生が戦っている、そして後輩が頑張っている…そんな気配がした…だから私はここにいる――それにぃ……!!」

 

 

 

 

 

 

 ツルギは殺意の目をミカに向ける、命令を無視し、単独でここにきたのは確実に命令違反。

 たとえここでマッシュが勝ったとしても、後に査問会議に掛けられて委員長の座を失う可能性も否定できないことだった。しかし、今のツルギにそんなことは関係ない。

 

 

 

 

 

「よくも、先生とコハルに……こんな、傷を…傷をぉぉぉッ!!!!

 

 

 

 

 純粋なマッシュを傷つけ、コハルを謀略に巻き込んだミカの暴挙……後輩と恩師を苦しめたミカの行いに対し、ツルギは憤慨していた。散弾銃の黒い筒先をミカに向け、殺意のこもった目でミカを睨んだツルギは、迷わずそのトリガーに指をかける。

 

 

 

 

 

「先生と後輩達を守ること……それが、私にとっての正義だ!!!―今の私は…貴様らの下で状況を傍観するだけの駒ではないッッ!!!

 

「……まぁ、どうせホストになったら大聖堂も、その周りの五月蠅い連中も掃除しようと思っていた所だし───うん、一気にやれるチャンスだと思う事にしようかな」

 

 

 

 

 

そう告げ、ミカがパンパンっと自分の頬を叩き始め、その体に力を貯める。

 

 

 

 

 

「――よし!それじゃあ、やれる所までやってみよっか♪」

 

「……あくまで、戦うつもりですか?この状況、自分の劣勢が分からない貴女ではない筈です」

 

「うん、そうかもね……でもさ…だからって諦められる筈なんてないんだよ。『もう嫌だ』なんて投げ出すことは、最初から許されなかった。結局最初から全部、こうなるしかなかった。私は――行く所まで行くしか、ないんだから」

 

 

 

 

 

 ミカは羽を広げ、吹き抜けのごとくぶち抜かれた体育館の天井、大口を開けたその上に広がる空を仰ぐ。

 

 

 

 

「シスターフッドも、補習授業部も、先生も、全部薙ぎ倒して、私がティーパーティーのホストになる。そしてゲヘナを殲滅して、綺麗になったキヴォトスでアリウスと協力して、新しいトリニティを作るんだ……!」

 

「そんな事を、一体誰が望むと云うのですか……!?」

 

「私と、アリウスだよ。首長の私が発言すれば、パテル分派も味方になってくれるかもね?

 

けれど、そんな事は重要じゃない、誰が望むかなんて大切じゃないんだよ、浦和ハナコ――大丈夫、ゲヘナが居なくなれば、きっと全部上手くいくから……きっと、そうなる筈だから」

 

「貴女はまだそんなことを…!」

 

「悪いけど…こうしなきゃ、私は私じゃいられない。これ以外に何も思いつかない、私は弱いからこうしないと自分を保てないんだ……先生、浦和ハナコ……ごめんね?」

 

「ホストだろうと関係ない………貴様が過ちをこれ以上増やす前に…私が…我々がぁッ!!!!」

 

 

 

 

 

 臨戦態勢に入ったシスターフッドが銃口をミカに集中し、ツルギが怒りのままに飛び出そうとした瞬間

 

 

 

 

「待ってください」

 

 

 

 

 マッシュが彼女たちの間に割って入った。

 

 

 

 

 

「せ……先生…!?―まさか先生、まだ戦うつもりですか!?その、傷では───」

 

「ツルギさん、ありがとうございます…ここまできてくれて……でも、ダメです」

 

「し、しかし!」

 

「シスターフッドの皆も、ここは僕に任せて下さい。サクラコさん、補習授業部の皆をお願いしてもいいですか?皆はこれから試験なのに、疲れちゃったら可哀想だ」

 

「な、何を言っているのですか!?そのような傷で……」

 

「こんなの、皆の大変さに比べたらどうってことないです。それにこの戦いは、僕が勝って、僕の手で終わらせなきゃダメなことなんです―─先生として、生徒を助けるために、僕が始末をつけなきゃいけないことなんです」

 

 

 

 

 

 

 マッシュはミカの前に立ち、ミカとアリウスに飛びかかろうとした彼女たちを止めた。制されたシスターフッドは皆、マッシュの言葉の意味が理解できない。

 当然だ。ヘイローを持たない人間、それも瀕死の傷を全身に受けて血染めにした青年が、どうやってミカを止めるのか。そのような方策が存在するはずがない、誰もがそう考えて然るべきだった。

 

 

 ツルギはマッシュの言葉に、しばし頭を冷やして彼を見つめ直す。しかし、心配や不安が収まることはなかった……マッシュの傷を見て、今にでも飛び出してやりたかった。

 

 

 

 

 

 

「――先生」

 

「はい」

 

「これが俗に言う、絶体絶命…かな?」

 

「ええ」

 

「……ならさ」スッ

 

 

 

 

 

 

 

 ミカが空に手を掲げる――直後、ミカが手を翳した先──月明かりを隠していた雲の中で、何かが光を放った。その雲が次第に晴れていく中で、"何か"がこちらへ降ってくるのが…分かった。

 

 

 

 

 その場にいる全員が、その光景に戦慄した……マッシュも流石に驚いた……なぜなら

 

 

 

 

 

隕石……マジか」

 

 

 

 

 

 

空から降ってきたのは、紛れもない隕石だった…着弾地点は、体育館だ。

 

 

 

 

 

「な、な、なんですかあれぇぇぇぇ!!?!??」

 

「そんな、まさか……ミカさんが、あの隕石を降らせたというのですか…!?」

 

「あんなの降ってきたら、みんな死んじゃう!!ど、どこかに逃げないと…!?」

 

「神秘の力なのか……!?だとしても、規格外がすぎる!!」

 

「我々も巻き込んで、自滅する気か!?聖園ミカ、貴様っ…!!」

 

「アッハハハハハ!!その通りだよ――もう、これしかない!!」

 

 

 

 

 その隕石の大きさは、約10m。ミカは、残った神秘のほとんどを使い……自らの能力(スキル)を発揮して、隕石を降らせていたのだ。

 

 

 

 

 

「これはどうするのかなぁ先生!?あれはもう止まらないよ?私の神秘を使い切ってまで顕現させたんだもん。当然、この状況じゃ誰一人、加害半径(ダメージレンジ)からは逃げられない……そして何より、私はここから動かない!!」

 

「!」

 

「まあ、先生1人でならみんなを逃がして、最低限生き永らえさせるかもね…けど私は絶対に無理!―さあ、どうするの先生!?先生は生徒の皆を守るんでしょ!?この状況で守りきれる!?私に勝てる!?アッハハハハハ!」

 

 

 

 

 

 

 ミカは自滅する気満々だった……隕石、それは太古より天体の環境に絶大な影響を及ぼしてきた天文現象にして、最も破滅的な影響を及ぼしうる災害。キヴォトス人であっても、直撃すればヘイローなど意味をなさない。それだけにとどまらず、体育館に落ちれば周りの被害は甚大ではない。

 最悪、ここまでマッシュたちが目指してきた試験の合格や、ナギサが尽力してきたエデン条約の締結以前に、トリニティの中枢そのものが壊滅する危険すら孕んでいた。
 そんな法外な力を持った神秘の顕現を破壊することなど、この場にいる者が取りうる手段では不可能だった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあぶっ壊すしかないですね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、この男の拳を除けば。

 

 

 

 

 

 

「…は?」

 

「は、破壊?」

 

「ツルギさん、ちょっと行ってきます」

 

「お、お待ちください先生!一体何を―─」

 

「自滅とか、そんなのさせません。みんなを犠牲にも…させません」

 

 

 

 

 

 

 マッシュは砂埃を払うとともに軽くかがむと、顔を上げて隕石を見つめたまま、大腿四頭筋と下腿三頭筋に力を込め始める。同時にマッシュは、たった1回のチャンスにすべてを賭けるつもりで、折れた骨が砕けて筋肉に揉まれることも気にせず、両拳と腕にも残される限りの力を溜める。

 張り詰めるように音を立てた筋肉と血管が、表に浮き出るほどに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「見捨てる選択も…助けられない選択も―僕にはない」

 

 

 

 

 

 

 

 

マッシュは力をしばらく力を入れ続けた後、断熱圧縮で赤熱する隕石の鼻面を睨んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フルマスクルズ魔法・ハイパー……ジャンプ!」

 
ドンッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 直後、全てを吹き飛ばすような爆裂音とともに、マッシュが立っていた地点を中心として体育館が同心円状に抉れ、蜘蛛の巣のようにヒビが広がった。体育館全体に衝撃が走るほどのソニックブームを伴いながら、マッシュは隕石に向かってロケットのように飛んでいったのである。

 

 神業と形容するにも余りある光景に、シスターフッドの一同は唖然としたまま硬直するが、彼の強さを信じるツルギや補習授業部は、ただひたすら、マッシュの無事を強く祈り続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「フルマスクルズ・バイセップス魔法」

 

 

 

 

 

 

 

 

 向かってくる隕石に向かって、マッシュは手加減・遠慮ともに一切なしのパンチを繰り出した。

 

 

 その一撃はまさに――─究極の一撃。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フルマスクルズ・アルティメット・アステロイド・パンチ!!!」
 
ガァァァァァァァンッッッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 そして隕石と拳がぶつかった瞬間……人間の腕が発したとは思えないほどの衝突音がトリニティの学区内一帯へ響き渡った後───

 

 

 

 

バァァァァァァァァァァァァァン!!!

 

 

 

 

 

 

隕石が、木っ端微塵に、完膚なきまでに粉砕されて四散した。

 

 

 

 

 

「―――――――――」

 

「サ、サクラコ様の目が完全に開いている…!?こんなに大きく開眼してるところ、初めて見た……!」

 

「驚きすぎて、何も言えなくなっている……!」

 

「……やっぱり…先生は、無敵だ」

 

 

 

 

 

 隕石を粉々に破壊したマッシュは、地面へと着地するとともに前方へ数回転して着地の衝撃を和らげ、立ち上がるとともにミカを見つめた。ミカは、「信じられない、ありえない」と言わんばかりの表情を見せ…そして、狂乱とともに叫ぶ。

 

 

 

 

 

「なんなの……先生は―──一体なんなの!!??」

 

 

 

 

 

そんなミカの問いに、マッシュは血に濡れた拳を握りながら答える。

 

 

 

 

 

「貴女の先生です、自慢していいですよ」

 

 





原作と違うって?ふふ、今更だよ❤️ 正義実現委員会のみんなにも、少しいいところを見せたかったのです。(1人だけしかいないけど)

もうちょっと戦闘は続きます、







『お兄、タイプの人は?』

『自分が愛して相手』

『その回答はずるい』

『なにがじゃ』





『弟お兄のタイプは?』

『低身長、ツルペタ、年上でも年下でも可』  
 
『わかりやす、このロラコンめ』

『じゃあオメェはなんなんだよ!』




『男の子の方は、優しくて、私と話が合う人でなおかつ、あったかい人』

『女の子方はヒナちゃん』

『キャラ名出し始めちゃったよ』




今日のうちの家庭でした。ロリコンなのは2人とも同じ…っと。


励みになりますのでコメント評価、ココ好きの方も、どうぞよろしくお願いします!!

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