透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ミカ戦、ラストです!!

まさかここまで続くとは思ってなかったので、自分でもびっくりしています! 地獄の後半も頑張るぞー!!

それでは本編へ……どうぞ!


マッシュ・バーンデッドと長い夜の終わり

 

 

 

 

 ミカが落とし、マッシュが粉砕した隕石。その残骸が幾条にもなる光の筋を描きながら大気中で燃え尽き、僅かな小石や礫になった欠片が体育館の内外へと降り落ちる。

 

 

 

 

 

「隕石…素手…え?」

 

「わかります、その気持ち…よーくわかりますよ」

 

「普通はこうなるのよね」

 

「貴方達はなぜ平然と!?」

 

「慣れてしまったからな」

 

「あれがマッシュ・バーンデッドの実力…ですよ♡」

 

「私も鍛えれば、隕石くらい壊せるのかな…先生みたいに、強くなれるかな」

 

「流石にアレは無理だと思いますよ…」

 

「むぅ…」(ᓀ‸ᓂ)

 

 

 

 

 

 

 補習授業部とツルギは、マッシュが隕石を破壊した事に対しても、「先生ならやる」と平然と認識していた。いや、確かに少しは驚いた……

 ただしそれはマッシュが隕石を粉砕したことではなく、ミカが隕石を落とした事に対してだけだが。

 

 

 

 

「隊長」

 

「言うな」

 

「我々、あんなのと戦うんですか?」

 

「言うな」

 

「隕石を素手で破壊する…しかも、腕折れてるんですよね?そんな状態で……あの」

 

「言うんじゃない」

 

「超人とかそんな領域じゃない気が…する、あいつを……いえ、あの人を…どうやって抹殺なんてすれば???」

 

「言うな。今、私も諦めかけている」

 

 

 

 

 アリウスの生徒達はもうマッシュを倒すのは無理だと諦めかけていた、けれどミカが倒されてしまっては、今度は自分たち……帰ったとしても待っているのは彼女の"お仕置き"のみ―─つまり、既に八方塞がりの状態。

 

 

 

 

「…ハ……ハハ……ハハハッ…」

 

 

 

 

 そして隕石を降らせたミカは、絶望していた……自分の中にある力のほとんどを使い隕石を降らしたのにも関わらず――簡単に破壊された。

 

 

 敗北、認めたくなかった失敗。それが自分の体にひしひしと伝わり……笑い声も出てしまう。

 

 

 

 

 

「ミカさん……次は、なんですか?」

 

「っ!」

 

「なんでもいいですよ――どんな手を使っても、どんな手段を使っても――今みたいに止めます」

 

「っ…!!」

 

「それとも……もう、終わりにしますか?」

 

「――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 頭や骨折箇所から止めどもなく血が流れ、顔がやや青白くなっているにも関わらず、マッシュは平然と言ってのける。痛みを感じている様子も、我慢している様子も―─全く無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

――うあああああああっっ!!!

 

「先生!」

 

 

 

 

 

 

 

 焦り、恐怖、溜まりに溜まったその感情に身を任せて飛び出したミカは、マッシュの顔に向かって拳を放つ。マッシュはそれまで通り、その拳を防ぎ止め──

 

 

 

 

 

 

 

ゴッ!!

 

 

 

 

『!?』

 

 

 

 

 

 

否、止めなかった。マッシュは何もせずにミカの拳を喰らった、しかも真正面から受け止める形で。

 

 

 

 

 

「っ〜〜!!」ブンッ!ブンッ!ブンッ!

 

 

 

 

 

 ミカは、滲む視界の中でぼやけるマッシュに拳を振るう。依然として、マッシュは何もしない。

 ただただ、その身に降りかかる暴力を許す。ミカを押し潰す恐怖を、孤独を、拳を介して吐き出させている。他の生徒達、そして何よりミカを守るために、己が身を防壁として自制を促す役割を果たしていた。

 

 

 

 

 

 

「なんで……なんで!なんで、反撃しないの…!?」バシンッ!ドゴォ!

 

「………」バキッ!ゴシャッ!

 

「そんなに強いなら、私の攻撃なんていくらでも避けられるんでしょ!?ねぇっ!!」バキィ!

 

「…………」グチャァッ!──ビチャビチャッ……ポタ、ポタポタポタ……

 

「さっきから、ずっと…言ってるよね!??私は悪い子だって!!悪役だって!もう戻れないって!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 壮絶な音が体育館内に響く。ミカの拳が砕けて血に塗れ、マッシュの制服が擦り切れて血が吹き出し、両者の骨と肉が砕けて潰れるたび、傷に滲んだ血がグジュグジュと異音を立てる。

 見ている者たちも、あまりにも悲しく痛ましいその光景に目や口を覆い、シスターフッドとアリウス生の中には目を背けて耳を塞ぐ者もいた。

 

 

 

 

 

 

「先生は…なんで、なんで反撃しないの……!?あの傷じゃ──」

 

「おそらく先生は、ミカさんの気持ちを……全てここで、吐き出させるおつもりなのでしょう」

 

「溜まっているものを全て、自分自身で発散させている……言い方を変えれば──」

 

「人間サンドバッグ……か」

 

 

 

 

 

 

 顔、腹、へと攻撃を続けるミカから、マッシュは目を離さない。やがて拳を握り疲れたのか、あるいは傷だらけになった腕が動かないほど麻痺したのか、攻撃をやめたミカが膝をつき、その場で叫ぶ。

 

 

 

 

 

「それなのに……それなのにまだ、先生はまだ私が戻れるって、本当にそう思うの!?」

 

「……思ってますよ」

 

「……優しい…なぁ…ホントに……でも、先生がそうでも、周りはどう感じると思う!?」

 

「僕がどうにかします」

 

「……ナギちゃんは、きっと…私を許してくれないよ」

 

「そんな事はないと思います、ナギサさんは聡明で、強い人ですから……まあどうせ僕も謝らないといけないし」

 

「なら……騙された正義実現委員会は?そこのシスターフッドは?公会議は?フィリウス派やサンクトゥス派はそれで納得するの!!?」

 

「そのために、僕が他の派閥の皆さんと交渉します。靴を舐めようが、土下座しようが……なんとしてでも、ミカさんが今まで通りに学園生活を送れるように、全力を尽くします」

 

「……何で、そこまで私を気に掛けてくれるの?――なんで先生の体を傷つけた私にそこまで言ってくれるの?…なんで……なんで、なんで!!」ドンッ!

 

「わっと」

 

 

 

 

 

 ミカはマッシュを押し倒し、馬乗りの状態でマッシュの胸ぐらを掴む。咄嗟にシスターフッドの面々が、中でもマリーとヒナタが率先して動こうとするが、それをサクラコが止める。

 

 

 

 

 

「お待ちなさい。ここは、先生に」

 

「は、はい」

 

(……先生、何故そこまで──)

 

 

 

 

 

 サクラコ自身も困惑していた。ミカは、あまりにも大きな重罪を犯した。他学園でも決して許されないと断言できるような、生徒会を転覆させるような謀略を企てた……けれど、マッシュはそんなミカを見捨てず、手を差し出している――心身ともに傷つけられた、マッシュ自身が、だ。

 

 

 

 

 

「私は――マッシュ君を……年下の貴方を、ここまで傷つけたんだよ!?体だけじゃない……騙して、裏切って、いっぱい、いっぱい傷つけた!!」

 

「怪我だらけなのはお互い様ですよ…僕もいっぱい殴っちゃったし…ほら、それでチャラってことで」

 

「私はキヴォトス人だから、こんな傷でも直ぐに治る――けど、マッシュ君は違うでしょ!?―─一歩、一歩間違えたら……ほんとに……ほんとに死んじゃうんだよ!?」

 

「……これは、補習授業部のみんなにも言ったんですけど」

 

 

 

 

 

 マッシュは胸ぐらを掴まれている手を逆に掴み返し、真剣な眼差しでミカを引き寄せる。彼が語るのは、絶対的な自信を持って言えること。

 

 

 

 

 

 

「僕は死にませんよ、絶対に」

 

「絶対…なんて」

 

「ありますよ――絶対に死にません」

 

「…でも先生は、自己犠牲とか平気で、するじゃん」

 

「自己犠牲なんかじゃありません。僕が死んじゃったら………自分で言うのは、驕ってるって思いますけど――僕が死んだら、僕の大事な人たちが泣いちゃいますから

 

「…!」

 

「それはミカさんも同じです……もし、もしもミカさんがいなくなったら…僕は、本気で泣きます」

 

「――ど……う…して?」

 

 

 

 

 

マッシュは体を起こし、ミカの手を握りながら、優しい口調で語りかけた。

 

 

 

 

 

「ミカさんは僕の生徒で、年上の先輩で、友達で、大事な人ですから」

 

「…あはは、やめときなよ、先生……そんな事をする価値なんて、私には――」

 

「価値がないなんて誰が決めたんですか、今まで、誰かに価値がないって言われましたか?」

 

「それ…は」

 

「僕は悪人が許せません……けど、罪を犯した人が、本当に…心の底から、本気で反省しているのなら、チャンスを与えてしまう。チャンスが有るべきだと、僕はそう思っています。僕はそんな人間なんです。――だからミカさん」

 

 

 

 

 

 マッシュは指が曲がった手で、それでも離れないようにミカの手を握り……力強く宣言する。

 

 

 

 

 

「ミカさんが罪を償い切るまで……僕にも、その罪を背負わせてください」

 

「は…は、え!?」

 

「よく言うじゃないですか。赤信号、みんなで渡れば怖くないって」

 

「い、意味わかんないよ!?」

 

「ミカさんを止められなかった、ミカさんの計画を見抜けなかった。ミカさんの苦しみをわかっていなかった、先生(ぼく)の責任でもあるんです」

 

「違う!これは、私が勝手にやったことだよ!!補習授業部の顧問だって、ナギちゃんが試験で先生を邪魔したり、指定場所を爆発させたりしたことだって、エデン条約だってそう!先生は巻き込まれ続けただけの被害者じゃん…!!先生は…先生は、何も関係ないよ!!」

 

「先生だから、関係あるんです……だから大丈夫ですよ、ミカさん」

 

 

 

 

 

 赤くなったマッシュの手がミカの顔に触れ、目を合わせて言う。その手は先ほどまで殴り合った拳と同じものとは思えないほどに温かく、強く、そして優しい手触りで頬を撫でた。

 

 

 

 

 

「僕は絶対にミカさんを見捨てません、途中で諦めません――何があっても、僕はミカさんの先生(貴女を支える人)で居続けますから」

 

「!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

ミカの目が見開かれる。……そして、途端に、さまざまな思いがミカの中に溢れて来る。

 

 

やがてミカは……涙を流し始める。

 

 

この時点で──―勝敗は、決した。

 

 

 

 

 

「……は、ぁぅ、ぁ、ぅああ……あああぁッ……!

 

「前に僕、ミカさんに言いましたよね。辛い事があれば、僕のこの胸筋を貸しますって……えーと、だから……どうぞ」

 

 

 

 

 

 マッシュは自身の手を広げて、胸を張った。『そら、飛び込んで来い』と言わんばかりに……我慢の限界だったミカは泣き叫びながら、マッシュの胸筋に飛び込んだ。

 滲んだ血に顔や服が汚れることも厭わず、未だ力強く在り続けるその体を抱きしめたミカは、堰を切ったように、これまで逃れられなかった苦痛を吐き出すように、体育館に響き渡る声で泣いた。

 

 

 

 

「ぅ……ぅぅぅっ!!ゔぁ…ぁぁ…ぁぁぁ!!!」

 

「泣いていいんです……今は、いくらでも泣いてください」

 

「ごめ…ん…ごめんね…!!ぐすっ、ぐすっ……こん…な、にぃ…しちゃ……ってぇ…ひぐっ」

 

「全然気にしてませんよ」

 

「こんなはず…じゃ…えぐっ…なかっ…たの…!」

 

「……セイアさんのことも、ですよね」

 

「ゔん…本当に、殺すつもりなんてなかったの…!」

 

 

 

 

 

 

 自身の罪を認め、彼女はマッシュに体を委ねたまま、震える声で嗚咽の合間に言葉を紡いだ。

 

 

 

 

 

「今の…私が……何を言っても…言い訳にしか、ならないけど……ぐすっ……ほんの少し、脅かすつもりだったの……!─―多分、事故だった……セイアちゃん…先生や、私と違って…元々、体が弱かった…し」

 

「……なるほど」

 

「これも…言い訳…だよね………ごめん―ごめん…ね……セイアちゃん……私―私…!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セイアちゃんは、生きています」

 

「――え?

 

「なんですと?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ハナコが放った言葉。それは、本当に予想外の一言。少なくとも、ミカにとっては天変地異が起きるほどの衝撃……もちろんマッシュも驚いていた。

 

 

 

 

 

 

「ミカさんの行動の源、そこにセイアさんの死がある事は理解していました、しかし……彼女は生きています、ずっと偽装していたんです、襲撃犯が見つからなかった為、今は安全を確保する為にトリニティ外部で身を隠しています」

 

「……セイアちゃんが、無事?」

 

「えぇ、傷はまだ治り切っておらず、目も覚ましてはいませんが……それでも命に別状はなく、救護騎士団のミネ団長が今も直ぐ傍で、救護と警護を続けています。ずっと、付きっ切りで」

 

「………」

 

「……て事は……そっか、ミカさんは―誰も殺したりなんてしていない」

 

「―その通りです」

 

 

 

 

 

 

 

ミカは、誰も殺してなどいなかった。

 

 

ミカは、人殺しの重みを、罪の十字架を、背負ってなどいなかった。

 

 

ミカは友人を―─失ってはいなかった。

 

 

 

 

 

 

「……そっ、かぁ――生きて、たんだ……セイアちゃん――なぁんだ……あはは……は……――よかった

 

 

 

 

 

 流し尽くしたつもりで引きつつあった涙が、また溢れて来る。ミカはマッシュの背に手を回し、強く、強く抱き寄せながら、胸の中でまた泣き叫ぶ。涙と血が混じって二人の服を汚しても、構わずミカは泣く。大切な友達が、無事だったのだから。

 

 

 

 

「よかっだ……ほんどに……―よがっだよぉ…!!」

 

「うん―――本当に、よかった」

 

「……ミカさん、これでもう…戦う理由はありませんよね?」

 

 

 

 

 泣きながら、小さく頷くミカ……それを見て、ハナコは大きな声で言う。

 

 

 

 

 

「――勝敗は決し、先生が勝利しました!」

 

 

 

 

 マッシュ・バーンデッドと、聖園ミカの激闘──エデン条約・人外魔境体育館決戦。

 そのはじまりは、小さな一部活の試験を巡って始まった、エデン条約を巡る謀略と駆け引きの応酬。その果てに、トリニティの未来を超えてキヴォトスの命運すらも賭けて行われた、人知を超える超決戦を支配したのは──マッシュ・バーンデッドだった。

 

 

 

 

 

「…我々の、勝利です」

 

 

 

 

 

勝者はマッシュ、そして補習授業部だった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「や、やった……やった、やったぁぁぁぁーっ!!やりましたぁぁぁ!!」

 

「先生〜〜〜!!」

 

「信じていたぞ…先生!!」

 

 

 

 

 

 

 ハナコが勝利宣言した瞬間、ヒフミ達は歓喜の声を上げながらマッシュに駆け寄る。しばらく泣き続けていたミカは、そんな様子を見て、マッシュに呼びかける。

 

 

 

 

 

「行ってあげて…先生」

 

「けど」

 

「もう大丈夫だから……ありがとう」

 

「……うす」

 

 

 

 

 

 マッシュはミカから離れ、ハナコと共にヒフミ達の元へと歩く。ぺたん…と座っているミカの元に、アリウスの生徒達がやって来る。

 

 

 

 

「…聖園ミカ」

 

「アハハッ…ごめんねみんな………負けちゃった――このあとは、好きに」

 

「我々は…マッシュ・バーンデッドに投降する」

 

「…え?」

 

「あんな戦いを見せられたあとに、どうやって戦えと言うんだ」

 

「そ、それはそうだけど……いいの?」

 

「……このまま帰っても、どうせ死ぬだけだ。なら……大人しく、牢に入っていたほうがいい」

 

「尋問とか…すごいよ?うち」

 

「どうせ、我々は大した情報を持っていない」

 

 

 

 

 

 

 そう言ってアリウス生徒達は武器を地面に捨て、ミカの近くへと座る。

 

 

 

 

 

「……………今更、許してくれとは言わない―─けど、これだけはわかってくれ……我々も…やらなければ…」

 

「手引きしたのは私。手を下したのはそっち。……どっちも悪いよ」

 

「……あの男──マッシュ・バーンデッドなら」

 

「?」

 

「我々を…我々の仲間達を、救ってくれる…かも…知れない」

 

「…そうだね」

 

「そう思うと―――自然と、戦う気が…失せた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 体育館にいるアリウス生達は皆が絶望していた。"彼女"と呼ばれる存在の強さに、自分たちの境遇に……何が起きても、自分たちは変わらない、助からない…そう思っていた。

 

 

 

 

 

 しかし、マッシュを見て全てが変わった。あの男なら……全て…アリウスの、いや、ひいてはキヴォトスの全てを、変えてくれるかもしれない。

 

 

 

 

そう、希望が見えたのだ。

 

 

 

 

 

 

「……隊長、もう少し…だけでも…私は、生きていたい…です」

 

「……ああ、私もだ」

 

 

 

 

 死んでも構わないと考えていた彼女らが、初めて「生きたい」と思った。これは、確実な進歩である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

『わーい!わーい!わーい!わーい!!』

 

 

 

 

 

一方其の頃、補習部とマッシュは勝利の舞いのようなものを行っていた。それぞれわーい!と、バンザイを繰り返して。

 

 

 

 

 

 

「ヒーロー! ヒーロー! ヒーロー!」

 

「主役! 主役! 主役!(ᓀ‸ᓂ)✨✨」

 

「しょ、勝利! 勝利! 勝利!」

 

「ふふっ、ユアヒーロー?♡」

 

「オーイエー」

 

 

 

 

 

 

『わーい!わーい!わーーい!!』

 

 

 

 

 

マッシュの勝利を喜び、回りながら、バンザイを繰り返しながら、喜びの舞いを繰り返す一同。

 

 

 

 

「わーい、わーい、わー―ゲポォッ

 

『わぁぁぁぁ!!??』

 

「先生ぇぇ!!!?」

 

「や、やっぱり…無理をしていらしたのですね!」

 

 

 

 

 

 それを見ていたツルギや、サクラコなどがマッシュに近づく。マッシュは口から溢れた血を拭い、胸を押さえて、その手にべっとりとついた血を見た後……

 

 

 

 

 

「―なんじゃこりゃ」

 

 

 

 

某刑事ドラマのようなリアクションをとった。そして、突然襲い来る体の疲労感と痛み。

 

 

 

 

 

 

「うへぇぇぇぇ………」

 

「先生! しっかり! こ、この指、何本に見えますか!」

 

「うべぇ………二億本

 

「小ボケを挟める元気はあるんですね!よし!」

 

「いやよくないでしょ!?」

 

「と、とりあえずは止血を」

 

「先生は私が運ぼう」

 

「お、お願いします!」

 

 

 

 

 

 流れている血をタオルで止血し、立てないマッシュをツルギが横抱きで持ち上げる。

 

 

 

 

 

「……無茶をしましたね」

 

「人生初の大怪我かもです」

 

「あの、ミカ様の方は」

 

「私なら大丈夫だよ〜…あいたたた…」

 

「どちらも大怪我…ですね」

 

 

 

 

 

 シスターフッドの何人かに肩を貸され、引き摺られるように歩くミカが、アズサを見て問いかける。

 

 

 

 

「……アズサちゃん、自分が何をしているのか、この結果を齎した以上、どうなるか分かっているんだよね?」

 

「……勿論だ」

 

「トリニティが、あなたを守ってくれると思う?」

 

「………」

 

「きっと守ってなんてくれないよ、此処はそういう場所だから。ましてやアリウスなんて場所に所属していた以上、あなたはあらゆる派閥から目の敵にされる」

 

「……そうだろうな」

 

「――これからあなたは、アリウスの影にずっと追われ続けるよ。そしてトリニティに居座っても、必ず悪意に晒される。どこに行っても、朝も昼も夜も、永遠に」

 

「あぁ」

 

「――けど、大丈夫だよね。…だって、先生がいるから」

 

「……その通り、それに…抗う事は、無駄なんかじゃない…と、教わったからな」

 

「…そっか、強いね…貴方は」

 

「ふふん」

 

 

 

 

 

 程なくして、シスターフッドの面々に拘束されたアリウス生徒──その隊長、隊員番号270がマッシュの方へと近づく。

 

 

 

 

 

「……マッシュ・バーンデッド」

 

「なんでしょうか」

 

「私達は使い捨ての駒でしかなく、大した情報は持ち合わせていない」

 

「それは別にいいんだけど……大丈夫なの?投獄されたままは…辛くない?」

 

「独房など、幾度となく入ったことがある。気にするな」

 

「………」

 

「――こんなことをしておいて、このようなことを頼むのは──身勝手で、馬鹿なことだとは思うが……頼む」

 

 

 

 

 

 アリウス生徒達は、頭を下げ…マッシュに頼み込んだ。

 

 

 

 

「―アリウスを…救ってくれ……先生」

 

「…任せて―死んでも救うから」

 

 

 

 

 それだけ聞き、満足したように……アリウス生徒達は皆、穏やかな顔で連れて行かれた。ミカも、それに続くように

 

 

 

 

「―先生…ありがとね⭐︎」

 

 

 

 

手を振りながら、去っていった。

 

 

 

 

 

 

「アリウス生徒達の身柄は、我々シスターフッドが責任を持って、正義実現委員会の方へと預けます。ミカさんは先に救護騎士団の方へ運びますが」

 

「色々とありがとうございます、サクラコさん」

 

「いえ……それでは、この辺で」

 

 

 

 

 

 サクラコも続くようにして、その場を去った。残すは補習授業部と、マッシュを抱えているツルギのみ。

 

 

 

 

 

「……さて、私は先生を救護騎士団の方へと連れていく。お前達は急いで、試験会場の方へと走れ」

 

「ツルギさん、僕も」

 

「行く、なんて……言うつもりですか、先生?

 

「なんでもないです黙って治療を受けさせていただきます」

 

「よろしい……コハル」

 

「は、はい!」

 

「頑張るんだぞ」

 

「―─ま、任せてください!!」

 

「私達も負けていられません!」

 

「先生が今まで頑張ってくれた恩を…返す時だ」

 

「ええ――行きましょう!」

 

 

 

 

 

 補習授業部は、マッシュの頑張りに応えるためにも、試験会場へと向かい試験を受けることにした…色々あったが、やらないわけには行かなかった。

 

 

 

 

 

「先生、絶対安静ですよ!」

 

「ぜ、絶対また、元気になって姿を見せなさいよ!?」

 

「どうか、どうか今は…お休みを」

 

「―先生、また……一緒にシュークリームを食べよう!」

 

「勿論―みんな、頑張ってね」

 

『はい!!』

 

 

 

 

 

ヒフミを先頭に、皆が走り出し試験会場へと向かった。ボロボロの体育館に残っているのは、ツルギとマッシュのみ。

 

 

 

 

 

「……もう姿が見えなくなりましたよ、先生」

 

「………そうですか…じゃあ……―……ちょっと…寝ます…ね……zzzzzz」

 

「寝るのが早すぎます…」

 

 

 

 

 

 マッシュはツルギに抱えられながら、眠りについた。体の疲れがどっと出たのだろう。ミカやアリウス生徒達、そして補習授業部と話している間はみんなに心配をかけさせまいと、また我慢をしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「……お疲れ様です、マッシュ先生」

 

「…zzzzzzzzzzzzzzz」





令和こそこそ家族話。


『私が彼氏できた!!って言ったらどうする?』

『病院連れて行く』

『応援する』

『よし弟お兄だけは歯を食いしばろうか』

『だってぇ!!妹先生に彼氏ができるなんておもわぬぁいんだもん!!』

『ハッハッハッハッハそのなんか言い値で買うからさ、表立てよ』

『さーせん』




『じゃあ私がその彼氏に浮気されたらどうする?』

『その彼氏を土に埋める』

『生き地獄を提供してやる』

『こっわ、流石にやりすぎ』

『まあ埋めるは冗談、クソキレて殴る』

『まあ埋めるのは冗談だよね〜w』




『俺は本気やけどな』

『え』

『なんなら妹はやらん!!って叫ぶぞ』

『シスコン兄者……』



 
妹には幸せになって欲しいけど兄貴として離れてほしくないと思っている今日この頃………自分でも引くぐらいシスコンだなって思っています。


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