透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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自分の作品の評価が下がっちゃうと、どうしても気分が落ち込んじゃう時があります……ありません?


けどもう止まらない…‥ここまできたら、突っ走るしかねぇ!!せめてエデン後半までは続けるぜぇぇ!!


てことで本編へ……どうぞ!


閑話1
マッシュ・バーンデッドと怪我への反応


 

 

 

マッシュ・バーンデッド

 

 

 

 

 今やこのキヴォトスにおいて、彼は学園都市の維持になくてはならない存在である。彼なくしては連邦生徒会長失踪事件以上の大混乱が生じ、その時点でキヴォトスが実質的な機能不全に陥る、とまで言われている。

 

 

 

 

 それほどマッシュという存在は、キヴォトスにおいて数々の功績を打ち立て、シャーレという組織に反感を持つ者たちや組織を実力で黙らせてきた、重要な存在。

 

 

 

 そして、この都市に生きる生徒達はじめ、多くの市民にとって大切な存在……そんな彼が死に瀕する危機に直面していた事実を、生徒たちが知った瞬間──一体どうなるのか?

 

 

 

 今回は、そんな一日の物語である。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「………仕事しづら」

 

『で、ですからリンさんのいう通り、怪我が完治するまでお仕事はお休みで良かったのでは?』

 

「でも溜まったら溜まったですごい量になるでしょ?」

 

『それはそうですが……』

 

 

 

 

 

 

 

 シャーレのオフィスにて。補習授業部での問題を解決してオフィスに戻ったマッシュは、これまで通りの通常業務をこなしていた。

 

 しかしミカとの激戦で受けた傷は癒えておらず、頭と胸の包帯はそのまま、さらにギプスもつけたままである。そのため関節の可動域が制限され、身動きに少なからず支障が出ている状態だった。当然、仕事をするには煩わしい。

 

 

 

 

 

 

「骨って意外と治らないんだね」

 

『数日で治ったら、それこそ人間卒業ですよ』

 

「そうなんだ……今までこんな怪我したことないから新鮮だなぁ……まぁ、なんとかなるか」

 

(肋骨が心臓に刺さりかけてた人のテンションじゃない…!)

 

「……にしてもリンさんのあんな顔初めて見たな」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 昨日早朝、マッシュが松葉杖を片手にシャーレへと戻った際のこと。シャーレのオフィス内にて、書類を抱えて待っていた七神リンがいたのだが…

 

 

 

 

 

『お疲れ様です先生、早速ですがこちら、溜まっ…て………―――…は?バサッ

 

『あ、お久しぶりですリンさん……あの、書類落としちゃいましたよ?』

 

『………先生………その…傷は?』

 

『――そういえばまだ報告してませんでしたね、ちょっとトリニティで色々あって、怪我しちゃいました』

 

『…………………そうですか』

 

 

 

 

 

 

 

 マッシュは直前まで、リンに自分の怪我の話をしていなかった。今回の事態は連邦生徒会長が発案したエデン条約に深く関わる事件でもあるため、マッシュは連邦生徒会を含めたトリニティ以外の学園や組織に対して、未だ今回の事件について口にしていない。

 

 

 トリニティやゲヘナの関係悪化を危惧する点もあるが、そこには同時に「そんな大変な状態で、自分なんかの身について過度な心配や迷惑をかけたくない」という、なんともマッシュらしい理由も多分に含まれている。

 

 

 現に、リンが初めてマッシュの怪我を知った瞬間は、絶句のあまり目を大きく見開き、何かを堪えている様子だった。

 

 

 

 

 

 

『………どういった経緯で、その傷を?』

 

『あーそれは………えーと…』

 

『……何か、言えない事情でも?』

 

『…そ……そう…ですね(…言えない、生徒と殴り合ったなんて言えない)』

 

 

 

 

 

 夢の中、セイアから告げられたあの未来。その詳細を知らされたマッシュは、「トリニティの生徒会長にこんな目に合わされちゃいましたテヘペロ!」などと間違っても言えるわけがなかった。

 

 言ってしまったら、ミカだけでなくトリニティ全体がキヴォトス中の学園から猛烈な批判に晒されるばかりか、エデン条約締結の当事校であるゲヘナにまで影響が飛び火し、両学園の生徒たちの身に危険が及ぶかもしれない。

 それこそエデン条約がご破算となるだけで済めばいいほうで、白状すれば自分がこの傷を負ってまでミカを止めた意味が泡と消える。マッシュもそれを分かっていた。

 

 

 

 

 

『…………』

 

『…………』(目逸らし)

 

『……先生がそうまでして話さないと言うことは―、生徒関係ですね?

 

『ギクッ……うぅ』

 

『先生は先ほど()()()()()()と言いました―─あの学園はアビドスと異なり、カイザー系列企業の手は回っていません。不良生徒も少ない、それこそ犯罪とは程遠いお嬢様校です。先生に匹敵する剛健や強肩の武闘派が少なからず存在する、という但し書きが付きますが

 

『ウググゥ……』

 

『先生が庇っている……そんな存在は、生徒の誰か以外に考えられません…先生は、優しい方なので』

 

『……………』

 

『………先生、どうしても、話して頂けないのですね?』

 

『……すみません、その、できれば調べたりなんかもしないで欲しいんですけどぉ……』

 

『―─全く、貴方という人は…………わかりました、先生がそうおっしゃるのなら』

 

『あ、ありがとうございます……』

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「あの後仕事があるから帰ります…って言った時、小さく『―何処の…誰が…』って呟いてたんだよね――めちゃくちゃ怖かった」

 

『ふ、普段のリンさんからは考えられない雰囲気でしたね』

 

「…それだけ、僕が傷ついたことに怒ってくれてたってことなんだろうけど……嬉しいような悲しいような」

 

『……私だって、心配してたんですよ?』

 

「ごめんね……何かあってからじゃ遅いから、部屋に隠してたりして」

 

『―私に頼ってくれれば……あのときの、試験会場での爆発からも…先生をお守りできたのに…』

 

「……ごめん。次からは、しっかりと頼るから」

 

『―そ…そうです!そうなのです!この先生専用スーパーAIのアロナを、もっともっと頼ってください!』

 

 

 

 

 

 作り笑いを思わせるような空元気のアロナが、声だけは気丈な言葉でシッテムの箱から自分の存在を主張する。

『次からはもっと、ちゃんと頼ってあげよう』、そう思うマッシュだった。

 

 

 

さあ仕事に戻ろう、今日から久々に当番が…………

 

 

 

 

当番?

 

 

 

 

―─と、マッシュはここで、完全に失念していたとんでもないことを思い出す。

 

 

 

 

 

「――HEY、アロナちゃん。今日は…何曜日?」

 

『今日は月曜日ですね』

 

「――やばい、本当にやばい」ガタタタッ!!

 

『ど、どうしたんですか?』

 

「き、今日はアビドスの方からホシノさんとシロコちゃんがやってくるんだ……『トリニティでのお仕事お疲れ様〜〜』、みたいな、感じ、で…」

 

『――それってつまり?』

 

「まじやばい」

 

 

 

 

 

 

 リンでさえ、マッシュの負傷を前にして黒いモノを滲ませていたのだ。親友ともいえるホシノやシロコがやってきたら、大変な事になりかねない……それは、非常にまずい。

 

 

 

 

 

「え、えーと、今日の当番は無しで……だめだ、文字が打ちづらくて時間がかかっちゃう……―そうだ、そのまま逃げて――」

 

 

 

 

 

 マッシュは端末を取り出し、メールで当番制の一時休止について送ろうとする…しかし、包帯が巻かれた利き腕では文字がなかなか打てずに苦戦……その間に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガチャッ……

 

 

 

 

 

生徒はやってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ん、先生久しぶり。今日はシュークリームを作っ……て……………………………………え?

 

『どうしたの〜シロコち………………………は?

 

「……………バッド…タイミング」

 

 

 

 

 

 

 

 元気よく扉を開け、鼻歌を唄いながら入ってきたアビドスの生徒・小鳥遊ホシノ、砂狼シロコの二人……張るように立っていたシロコの両耳は、包帯とギプスに覆われたマッシュの姿を見た瞬間から、萎縮したように垂れ下がる。

 

 

 

 

 

 

 

「………先生、どうしたの…その傷」

 

 

「あ、え、その…」

 

 

「…ごめん、聞き方が悪かったね―――言い方を変えようか。」

 

 

 

 

 

 

 

「何処のどいつにやられたの?」

 

「ビェッ……」

 

 

 

 

 

 

 

 シロコに続いてマッシュを見たホシノは、これまでのゆるふわおじさんの姿から一変した。かつて名を馳せた"暁のホルス"へと変貌したホシノは、有無を言わせない威圧感を持った眼光を向けて、マッシュの傷について問い正す。

 

 

 

 

 

(『おめでとう、ホシノ先輩はアビドスクジラオジサンからアビドスマジギレオジサン(暁のホルス)に進化した!』ってコト…⁉ いや、全然おめでたくないんだけど…)

 

「せ…せんせ? だ、だいじょうぶなの…?」

 

(あ、まずい、シロコちゃんが泣き始めた…それを見たホシノさんの目がもっと鋭くなった……ほ……本当にまずい)

 

「先生がそうなる相手ってことは……かなりの強敵だよね? カイザー連中みたいなオートマタな訳ないし……てことは、生徒か」

 

(な……なんとかして誤魔化さないと)

 

「……先生?―何処の生徒にやられたの?」

 

「…イ、イヤダナー、ホシノさん。ぼ、僕が、こんな傷、負うわけないじゃないですか」

 

「…え?」

 

「ホ、ホラ、ドッキリ? って、やつデスよ――い、いえーい、ド、ドッキリ大成功〜〜」

 

 

 

 

 

 

 苦しすぎる言い訳。暁のホルスを前にして震えと冷や汗が止まらないマッシュだが、どうにかして作り笑いでごまかそうと必死で声を絞る。だが、「キヴォトスで怒らせていけない生徒ランキング」なら問答無用で1位を掻っ攫うだろう生徒を相手に、この程度の言い訳が通じるはずがない。

 

 

 

 

 

「――もう〜先生も人が悪いな〜」

 

「……ん、本気で心配した」

 

「ご、ごめんなさい。久しぶりに会えたからテンション上がっちゃって」

 

「そうなの? それは嬉しいな〜アッハッハッハッ」

 

「ハハハハハハハ」

 

「ハハハハハハハ〜―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで誤魔化せると思った?」

 

「先生、流石にそれは無理」

 

「…………ですよね」

 

「先生がそんなくだらない真似、するわけないでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人の目が「我慢の限界」と言わんばかりに鋭くなったために、マッシュは否応なく経緯を話すことにした…しかし、ここでミカの名前を出すのはやめておくと決めたマッシュは、ここではその名を伏せた。

 

 

 

 

 

「……ふーん……ふーーーん?

 

「あ、あの……その……怒ってますか?」

 

「……先生には怒ってないよ? 怒ってるのは、その生徒に対して」

 

「OH……け、けど、もうその問題は解決したので、その子を許しては『無理』…あぅ」

 

 

 

 

 

 

 ホシノはその生徒を許すつもりはなく、マッシュの制止を振り切ってでも報復を計画する程の憤りを腹の底に滾らせていた。シロコは今にも泣き出しそうなほどの心配と不安に駆られ、包帯とギプスに巻かれたマッシュの体をペタペタと触っていた。

 

 

 

 

「……せんせい…そんなになるまで……なんで…たたかったの?」

 

「…止めないと大変なことになる、その人が一人になる、なら止めないとって…思って」

 

「そんなになるまで、ぼろぼろにされたのに? せんせいが、こんなに傷付く必要なんて、どこにもないよ…」

 

「僕もおんなじようなことしちゃったから、お互い様だよ」

 

「……キヴォトス人は、傷なんてすぐ治る――でも…先生は違う……だ、だから…お願い」

 

 

 

 

 

 

 シロコはマッシュの服を両手で握りしめると、目を潤わせながら、純真な願いを口にした。

 

 

 

 

 

「無茶しないで……いなくならないで……」

 

「私も、シロコちゃんと同じ意見かなぁ…先生までいなくなっちゃたら、私もう生きてけないよ」

 

「………――うん、わかった…約束…は、無理だけど…できるだけ無茶しないようにする」

 

「……――うへぇ。先生も一人の人間だってこと、忘れないでねー?」

 

「…うす」

 

 

 

 

 そしてそれから約二時間、シロコはマッシュの膝から離れようとせず、ホシノは盾を持ちながらマッシュとの雑談を続けた…その間、二人は一秒たりとも周囲への警戒を緩めることはなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……二人が帰ったところで……早速メールを送信しないと」

 

 

 

 

 

 マッシュは二人が帰った後、左手でなんとかキーパッドを操作して文字を打ち込み、生徒達へとメールを送信した。

 

 

 

 

 

 

【昨日シャーレへと戻ってきました。しかし訳ありで、当番制はしばらく停止します。色々とごめんなさい】

 

 

 

 

 

 

「……完璧だ」ポチッ

 

 

 

 

 

 端末から送信音が鳴ったことを確認し、『とりあえずこれで一安心だ』、と息をついたマッシュ。椅子に沈み込むように座りながら、シロコが作ってきてくれたシュークリームを手に取る。それを一口食べようとした……その瞬間

 

 

  

 

 

 

 

 

ガシャァァァァアン‼‼‼‼

 

 

 

 

 

 

 

「―――――…えぇ?(困惑)」

 

先生!!――……っ⁉」

 

 

 

 

 

 

 

 突然、窓を突き破って入ってきたのは、ゲヘナ学園風紀委員長・空崎ヒナ。予想できない来訪に目を白黒させて硬直するマッシュだったが……デストロイヤーを構えたヒナは、殺気立った目をしながらマッシュに近づく。

 

 

 

 

「せんせ……っ、もう、もう大丈夫だから…!」

 

「あ、あのですねヒナさん」

 

「何処の誰が…――なんでもいい……誰でもいい……必ず見つけ出して…報いを…!」

 

「ストップストップヒナさん、僕は大丈「その体で大丈夫な訳ないでしょ!?」うぅデジャブ」

 

 

 

 

 

 常に冷静、規則や秩序に厳格で責任感が強く──そして神経質な面もあるヒナ。

 だが今の彼女は、傷を負っているマッシュを前にして完全に冷静さを欠き──いや、ある意味では正気を失い、シャーレの中で愛銃を乱射しかねないほどに殺気立っている。

 

 

 

 

 

「胸にも頭にも包帯だらけ、ギプスまでつけて――それのどこが大丈夫なの⁉」

 

「血も出てませんし、痛みも正直あんまりありませんよ――ほら、シュークリームだって食べられます」

 

「それでも…!!」

 

「ヒナさん、メールを見て……駆けつけてくれたんですよね?ありがとうございます、心配してくれて」

 

「…心配するに決まってる…こ、このメールを見た時……怖く、なって──―『何かあったんだ、先生が危ない!』って、 そう思ったら…居ても立っても居られなくて……怖くて…怖くて…!

 

「……………」(変な罪悪感が湧き上がってくる)

 

「ほんとに……ほんとうに…平気……なの?」

 

「勿論」

 

「…そう―――よかった…よかったわ」

 

 

 

 

 

 

 ヒナは落ち着きを取り戻したようで、身の丈ほどもある銃を下げるとともに深呼吸を繰り返し……これまで通りの冷静な顔で言葉を継ぐ。

 

 

 

 

 

 

「……何があったの? 直近の仕事を考えれば、トリニティで何かがあったことは確定だけど」

 

「大変なこととか、不思議なことがたくさん起きちゃって」

 

「…その内容は私……いえ、ゲヘナには話せないようなこと…なの? 例えば、エデン条約に関わる…とか」

 

「……………うす」

 

「どうしても……他には教えちゃ、ダメなのね」

 

「……うす」

 

「………そこまで話したくないのなら、いいわ。深入りはしない」

 

 

 

 

 

 ヒナはデストロイヤーを担ぐと、マッシュに背を向けてシャーレから立ち去る。

 

 

 

 

 

「とにかく、先生が無事でよかった……。仕事を途中で投げ出してきちゃったから……帰らないと」

 

「お、お疲れ様…です?」

 

「…………またね、先生――でも一つ覚えておいて?」

 

「?」

 

 

 

 

 

 

 

「私はゲヘナ生、復讐とか……普通に考えちゃう生徒だから……それじゃあ」

 

 

 

 

 

 

 その言葉を言い残したヒナは、再びマッシュに背を向けると、自分で壊した窓から外へ飛び出し、ゲヘナに向かって帰っていった……残されたマッシュは、一言。

 

 

 

 

「………僕って、もしかして危ない存在?」

 

 

 

 今更ながら、そんなことを呟いたのであった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「……よし、ちょっと逃げ出そう

 

『えぇ⁉』

 

「じゃないとみんなあんな風になっちゃうし…」

 

『し、しかしですね? ここで先生がいなくなったら、治安もそうですが、生徒さん達のメンタルが圧倒的に大変なことに……』

 

「そう言われると………うーむ……」

 

 

 

 

 

 

 マッシュが悩んでいた時、オフィスのドアが再び開かれる。

 

 

 

 

 

 

『パンパカパ〜〜……ん???

 

『あ、コラァ! 扉を雑に開けるんじゃ…………あ?

 

『ご主人様〜!メイド二人と可愛い勇者が来た…………ぇ…?

 

 

 

 

 

「………神様、僕何か悪いことしちゃいましたか?」

 

 

 

 

 

 やってきたのは、ミレニアムの生徒三名。C&C所属・3年生の美甘ネルと一之瀬アスナ、そしてゲーム開発部の勇者・天童アリス。

 部屋に入るなり、予想だにしていなかったマッシュの姿に絶句した三人は、我に返るとともにマッシュに詰め寄る。

  

 

 

 

「……おい先生、何があった」

 

「色々と…」

 

「怪我、してるの?……え、ご主人様が?こんなに? …だ、だい、じょうぶ?いたく、ないの…?ま、まって……ふぅ……大丈夫…大丈夫…うぅ

 

「アスナさん、僕は大丈夫ですよ」

 

「―――先生がこうなる…相手……ラスボス超えの、何かがいたんですね⁉」

 

「う、うん……そうなの…かな(よかった、アリスちゃんはいつも通りだ)」

 

 

 

 

 

 

 ネルは冷静だが…対してアスナは、以前よりマッシュが心配していた病的な動揺を見せており、精神的に危うい。アリスについては、いつも通り快活な様子だったのでマッシュも安心……していたのだが。

 

 

 

 

 

「―安心してください先生!アリスが先生にそこまでのダメージを与えた裏ボスをやっつけます!

 

「ダメダメダメ、それはダメだよアリスちゃん」

 

「大丈夫です、アリスは最近戦闘データの収集も、戦闘の訓練も、経験値稼ぎでのレベリングもしっかりと行っていますので─―裏ボスの攻略なんてへっちゃらです!」 

 

「そう言ってるわけじゃ………!」

 

「……アリス、落ち着け」

 

どうかしましたか…? アリスはいつでも落ち着いています!

 

「ならなんだ、その(つら)と手は」

 

……あ…れ?

 

「アリスちゃん、気持ちはわかるよ? 私だって、ご主人様は心配……だけど、ね…?」

 

「………っ!」

 

 

 

 

 

 アリスの声は、表面上はいつも通りの明朗さを感じさせる。しかしその表情と手の握り方には、これまで見せてこなかった怒りを宿しており、声色と振る舞いはまるで一致していない。それでいて、いつものようにコロコロと変化する無邪気な表情には、純粋な狂気で表情を貼り付けたような不気味さが溢れ出している。明らかに平常時とは違う振る舞いのアリスを見かねたアスナとネルは、アリスの両肩に手を置いて、諭すように落ち着かせる。

 

 

 

 

 

「アリスの……アリスのパーティーメンバーが、負傷させられました……アリス…アリスはそれが許せません!

 

「許せねぇって気持ちはあたしも同じだ……けど冷静になれ、あの先生がこうなる相手だぞ――なんとかできるとでも思ってんのか」

 

「………それは…」

 

「それにさ、アリスちゃん……ご主人様は、仕返しなんて…そんなこと求めてないよ…きっと」

 

「その通り、それにもうこの問題は解決したから…ね?」

 

「………アリスは…しょうきに…戻った」

 

「ならいい……それはそうと、ド派手にやられたな、先生」

 

「ええ…まあ」

 

「―――ご主人様が無事でよかったぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 アリスはマッシュの体を支えるように服を掴み、顔を埋めて体温を確かめる。アスナも同様に、マッシュを支えるように彼を抱きしめ、胸板に顔を埋めて安堵していた。

 

 

 

 

 

「……誰にやられた、とか…聞いてもどうせ言わねえんだろ?」

 

「はい」

 

「なら余計な詮索なんてしねえ……ただ…一つ覚えとけ」

 

「…?」

 

「アンタは自分が思ってるよりも、周りの生徒から大事にされてる人間だ。アスナからも、あたしら(C&C)も……もちろんゲーム開発部のチビからも、な」

 

「…うん」

 

「だから……つまり…あれだ、無理はすんな…厳しくなったら、いつでも呼べ」

 

「――是非、頼らせていただきます」

 

「そうしろ」

 

「アリスも!アリスもお手伝いします!先生を倒そうとする悪い奴なんて…アリスの光で吹き飛ばします!!」

 

「私も手伝うよー?―あ、なんなら今手伝っちゃう! 」

 

「あたしも手を貸してやる……どうせ無茶しまくって大変だったんだろ?」

 

「うぐぐ」

 

「今ぐらい頼れ……ほら、書類やらなんやら見せろ」

 

「……ありがとうございます、ネルさん」

 

「気にするな」

 

 

 

 

 

 

 その後、四人で仕事を終わらせたマッシュ達はいつも通り、シュークリーム片手の雑談で近況について語り合った。ゲーム開発部での騒動やユウカの説教など、マッシュが不在だった間の話題には事欠かなかった。

 

その後も何人かの生徒達が現れ、話をしたが……全員が全員、去り際に

 

 

 

 

 

『無茶はしないで』

 

 

 

 

 

と、念を押すように言い残した……けれど、マッシュには『無茶をしない』という選択肢はどうも選べない…ので

 

 

 

 

 

「ほどほどに、無茶しますか」

 

 

 

 

そう決めた。

 

 

 

 


 

 

 

「……すっごい疲れたな」

 

『お、お疲れ様です』

 

「アリスちゃんがあそこまで怒ってるのって珍しかったな……心臓止まるかと思ったけど」

 

『ネルさんもアスナさんも……かなり目が本気でしたね』

 

「ほんとに、もうほんとに怪我しないようにしないと」

 

 

 

 

 

 

 ホシノ・リン・ヒナ・アリス・ネルには、同じような感情が表情や視線・雰囲気に表層化していた。アスナ・シロコからは、また別の感情を感じ取ることとなった。ある意味肝が冷えてしまったマッシュは、息を吐きながら椅子に座る。

 

 

 

 

 

「……じいちゃんも、あんな表情になっちゃうのかな」

 

『悲しませてしまうと、思います』

 

「だよね……肉体強化の訓練でもしようかな」

 

『それ以上にお強くなるつもりですか?』

 

「うん」

 

『具体的に…どれほど?』

 

「そうだな……大陸をビート板にして海を泳ぎ回るぐらい?」

 

『先生は何を目指してるんですか……』

 

 

 

 

 

 

 ギャグっぽいことを言っているが、マッシュの決意は本気である。今以上に強くなり、怪我をしなくなれば平和になる、その確信があり、怪我が治り次第鍛えてやろうと思っていた。

 

 

 

 

 

「そのためにも今は……休憩ですな…また後でねアロナちゃん」

 

『はい!』

 

 

 

 

 

 マッシュはシッテムの箱の電源を切り、一人ソファに寝そべる。もしかしたら、セイアに会えるかも知れない。そんな思いも込めながらマッシュは目を閉じた―――

 

 

 

 

 

 

ガチャッ!!

 

 

 

 

 

 しかし事件は唐突に起こる、今回これで四度目、もはや運命の神が悪戯をしまくっているとしか思えない。

 

そしてやってきたのは────ゲヘナの零細企業・便利屋68の社長にして、マッシュの同輩でもある陸八魔アルだった。

 

 

 

 

 

 

 

「先生!メールを見てとん―――――ぇ…

 

 

(……デジャヴ、これで何回目だろ)

 

 

 

 

 

 

 傷だらけのマッシュ、それもソファに寝っ転がっている状態。何も起こらないはずもなく。

 アルはすぐさまマッシュに駆け寄り、青ざめた顔で問う。

 

 

 

 

 

「せ、せん、先生…?…ど、どうしたの…この、傷!!」 

 

「話すの長くなるんですけど……あ、それよりもアルさんお久しぶりですね、最近どうですか?」

 

「特に変わってないわ―じゃ、なくて!!変わってるのは先生よ!?何があったの!?先生が、こうなるほどの…事件が、あったの……?」

 

「……まあ、はい」

 

「そう………そう…なのね…それで先生は…無茶を…したのね?」

 

「……うす」

 

「…ケガの、様子は?」

 

 

 

 

 

 マッシュは起き上がりながらケガの具合を説明した。

「大したことないですよ〜」と気楽に伝えたつもりだが実態はそんなはずもなく、寧ろマッシュが自覚している以上に深刻な傷だった。そもそもマッシュに限らず、骨折や打撲によって病床での治療が必要になる時点で重傷であることには変わりない。

 

 

 

 

 

「命に別状はない、のね……」

 

「そこは安心してください、この程度じゃ死なないのが僕なので」

 

「………けれど」

 

「ほら、この通り、シュークリームだって食べれますし、片手で逆立ちをしながら筋トレだってできますし」

 

「怪我人よね?」

 

「心は健康者です」

 

「心はそうでも側が違ったら意味ないの!」

 

「あっ、お茶出しますね。よいし『ダメよ!!』

 

「そんな体で動いちゃダメ!それ以上怪我が悪化しちゃったらどうするの!?」

 

「でも『でもじゃない!』

 

「先生は誰がなんと言おうと怪我人なの、その怪我人である先生は、大人しく!ここで!休んでいる!…いい?」

 

「…うす」

 

 

 

 

 

 

 マッシュをソファに押し留めたアルは、オフィスに備え付けられた簡易キッチンに立って戸棚に手を伸ばした。ティーポットやティーカップなどの器具やカトラリーの一式*1を取り出したアルは、ストックされていた紅茶の葉(ナギサからの支給)を使って紅茶を作り始める。

 ソファで寝転んだマッシュは、紅茶を淹れるアルの背中をじっと見つめている。

 

 

 

 

 

 

「中々に素敵なカップね……確かこれはこうで……フフッ、さすがは私」キリッ

 

(……キリッとしてるアルさんはかっこいいな、いわゆるギャップ萌え…それによく見たら…いや、よく見なくても…アルさんはキレ―)

 

 

 

 

 

 

 そうマッシュが心の中で思いかけた時、アルの顔つきが変わった。頬に汗が浮き出し、体が震え始めている。何事か、とマッシュは起き上がろうとするが……

 

 

 

 

 

(あ、あら?な、何故色が変わらないのかしら……確かこう、チャプチャプすれば色が変わるはずなのに…!)「―あっ、あら!?よく見たらこれお湯じゃなくて水!お湯すら湧いてないじゃない!?」

 

「アルさん?」

 

「ち、ちょっとまっててちょうだいね先生!いま完璧な紅『バシャッ!』ああ!こ、こぼしちゃったわ!!?」

 

「アルさん、とりあえず落ち着いて」

 

「わ、わたわたわたしは冷静よ!?と、とりあえずこぼしてしまった紅茶…?を拭い―きゃっ!!?」ステンッ!

 

「うぶっ」

 

 

 

 

 

 紅茶(というか茶葉を浸した水)を溢したアルは、布巾やキッチンペーパーを手に床を拭こうと屈む。しかし溢した水に足を取られたアルはそのまま転がって尻餅をつき、手放してしまったカップがマッシュの額に命中した。

 

 

 

 

 

「な……な―なんで、こうなるのぉぉぉ!!?」

 

(……まあこの感じがアルさんだし、こっちの方が落ちつくな)

 

 

 

 

 

 その後、マッシュの手伝いもあって何事もなく紅茶の用意を終えた二人は、ソファで隣り合って近況報告と世間話を始める。

 

 

 

 

 

「――みたいな感じで…みんなが僕のケガを見た瞬間そんな感じになっちゃいまして…」

 

「…そんなことがあったのね」

 

「アルさんもてっきりそうなっちゃうのかと思ってヒヤヒヤしちゃいました」

 

「フフフッ、私のことを誰だと思っているの?真のアウトローを目指す便利屋68の社長、陸八魔アルよ?―─先生が大丈夫と言ったのなら…それを信じて、いつも通り接するのが一番よ」

 

「アルさん……─―普段からその調子でいけばモテますよ」

 

「なんの話!?」

 

 

 

 

 

 

 マッシュの怪我に対して、生徒たちが返したリアクションについて話を聞きながらも、アルの姿は常日頃と変わらない。アルも、便利屋の近況や最近の身の上話を挟みながら紅茶を口にする。二人は『先生と生徒』ではなく、同じ16歳の同輩──『子供と子供』として、語り合った。

 

 

 そして早くも数時間、日が落ちる頃合いを見てアルは事務所へと帰る準備を進める。

 
「また何かあれば依頼をしてちょうだい、先生なら特別サービスもつけちゃうから」
 
そう言い残し、アルは社員たちが待つ事務所へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………っ――ああ、ダメよ…やめなさい…私……先生は…先生はそんなの…そんな事(報復なんて)…望んでないでしょ…!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 その帰り道、アルは胸を押さえ、込み上げてくるものを必死に抑えていた。もう解決していること、マッシュ自身何も気にしていないこと、それはわかっている……しかし────

 

 

 

 

 

 

 

 

(あんな怪我で……あんな、あんな姿で…大丈夫だって――大丈夫なわけがない…!!それに…あの時の顔……)

 

 

 

 

 

 

 

『そこは安心してください、この程度じゃ死なないのが僕なので』

 

 

 

 

 

 

(あの顔は…私の知る先生の、マッシュ・バーンデッドの顔じゃなかった―──あの顔は、大人が子供(生徒)を安心させるために、嘘をついた顔…とても、私と同い年の子がしていい顔じゃない…どうして…どうしてよ先生…どうして、そんなに……!!)

 

 

 

 

 

 マッシュの身への憂いからか、自分への苛立ちからか、あるいは別の誰かへの黒い感情からか、アルは奥歯を噛み潰すように歯軋りする。土産を詰めた紙袋の紐を握り込んだ手に、爪が食い込んで血が滲んだ。いつか聞いた言葉が、脳裏に反響し、反芻される。

 
──その子は捨て子。その上、魔法が使える証拠である黒い線状のアザがなかった。
 
──……先生は魔法が使えないから、親に捨てられた…ってこと…?
 
──生憎、わしの世界では魔法が全て。魔力の弱いものは、生きる価値も育つ意味もない…そう思われているんじゃ。魔法が使えない者は神から見放された存在であることを意味し、生きる権利はない……と言われている
 
──マッシュと同じように魔法が使えない者、あるいは後天的に魔力を失った者は、世間では『魔法不全者』と呼ばれている。そのまま放置すれば、何の罪も犯していないのに処刑されてしまうんじゃ

 

 

 

 

 

「……ねえ、もし…もし神様がいるのなら…教えてくれないかしら――─あの子が、一体何をしたの?…どうして、どうして――あの子に、こんな残酷な運命を背負わせたの?……それに、連邦生徒会長──貴女は何故、そんな彼に"先生"(大人の責任)を背負わせたの?どうして──」

 

 

 

 

 

アルはそんな思いを抱きながら、事務所へと足を進めた。

 
「どうして───どうして、先生ばっかり、こんな目に合わなきゃいけないの───どうして……なんで……」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「―気のせいかなぁ…アルさんも──なんとなく、なんとな〜く……他のみんなと同じか気配を感じたんだけど…――うん、考えるのやめよ」

 

 

 

 

 

 マッシュは残った紅茶を飲み下して呟き、時計を見る。時刻はいつの間にか17時を回り、夕食の準備を進める時間になっていた。

 

 

 

 

 

「今日は何にしようかな〜…って思ったけど、僕これだからな………デリバリーに頼るか」

 

 

 

 

 マッシュは端末を取り出し、フードデリバリーサービスのアプリでメニューを探す。その時、オフィスのドアを叩く音が聞こえた。

 

 

 

 

 

「?…こんな時間に誰だろ……どうぞ〜」

 

「失礼しま―――っ…よ…よお!先生!久しぶり…!

 

「モブエちゃん、久しぶりだね」

 

 

 

 

 

 やってきたのは放課後シュークリームクラブのリーダー、モブエ。手にはシュークリームが入った紙箱を持ち、オフィスに入るとともにマッシュに近づく。

 

 

 

 

 

「いやぁ……にしても…あれだ、聞いてた通り…ひでぇ怪我だな」

 

「誰に聞いたの?」

 

「ツルギさんだよ。トリコと話した時にあの人からも聞いたんだ……あの人、泣きながら色々話してくれたんだ。補習授業部、だっけか。そこにいた後輩を慰めてた辺り、結構強い人かと思ったけど……あの人も、相当ショック受けてたんだな、って」

 

「ツルギさんがそんな事を…後でメールしないと」

 

「それから店長にも顔を出してあげなよ?あの人、この話を聞いた瞬間泡吹いてぶっ倒れたんだから」

 

「わお」

 

「私がここにきたのは……し、新作のシュークリームができたから、試食してもらうかと思って来たんだ…食べてくれるか?」

 

「勿論、ちょうどお腹減ってたんだ。ありがとうモブエちゃん」

 

「……いいってこと…よ」

 

 

  

 

 

 モブエが紙箱から取り出したシュークリームは、一見すれば固く焼き締められたビスケットのようにも見えるものだった。マッシュは動く片手でそれを口に運び、一口齧る。シュー皮は見た目通り堅パンのような歯応えがあるものの、詰められたカスタードは口当たりが滑らか。

 卵黄のコクとまろやかな甘さに、マッシュはほぼ条件反射に近い太鼓判を押す。

 

 

 

 

 

「美味しい、とっても美味しいよこれ……名前とかはもう決めてるの?」

 

「外面はお堅い奴だが、中身はトロットロに甘いやつ。単なるクッキーシューとは一味違うぜ……名付けて、『ギャップ萌えシュークリーム』だ!」

 

「こりゃまたすごいシュークリームを」

 

「私が一晩かけて考えたやつだからな。どうだ、センスあんだろ〜」

 

「流石はクラブのリーダー。ヨッ、天下一品」

 

「よ、よせよ〜照れるじゃねえか〜……ハハッ………ダメだな…私」

 

「?」

 

 

 

 

 

 それまで気丈に振る舞っていたモブエだったが、突如として俯いてしまった。この瞬間まで、いつも通り快活に見えるような皮を被っていたモブエは、神妙な顔つきと口ぶりでマッシュに思いの丈を伝える。

 

 

 

 

 

「……私は…先生に恩を感じてるんだ」

 

「恩」

 

「そう、恩だ……私みたいな不良に手を貸してくれた、好きな物を認めてくれた、働き口を紹介してくれた…その恩を、私は一生かけて返し続けるつもりだ」

 

「気にしなくてもいいのに」

 

「初めてだったんだ……あそこまで、親身になって寄り添ってくれる奴ってのは――だから、だからさ……私にとって先生は、特別なんだよ」

 

「それはそれは――超嬉しいね」

 

「そんな特別な先生が…大怪我を負ったって聞いた時は、ほんとに、はんとに心臓が止まるかと思ったんだ……正直に言う───何よりも、怖かった……!

 

 

 

 

 

 モブエは、マッシュの傷だらけの胸に飛び込むと、背中と首筋に手を回して抱きしめ、すすり泣きながら震えた。

 

 

 

 

 

「私は…私は先生が心配で仕方ねえんだ…!先生が強いのはわかってる、わかってるけど…さ!!それでも…心配なんだよ……今回みたいなことが今後起こらないなんてこともない……先生がいなくなっちまったら私…私は…!!」

 

「モブエちゃん…」

 

「先生……たのむ…たのむから……逝かないでくれよ………」

 

「―――勿論だよ。僕は、皆を置いて逝ったりしない。絶対に」

 

「……ほんとか…?ほんとに、逝かないか?」

 

「そんなつもりも毛頭ないしね……でも、ごめん。ケガをしないっていうのは、約束できない。今回の一件にも言えることだけど、吐き出す方法がわからないような苦しみを抱えてる生徒はたくさんいる。そういった子達の苦しみや痛みを少しでも和らげることができるなら、僕はそれを受け止める器として、幾らでも殴られるつもりだよ。頭の悪い僕じゃ気の利いた言葉も言えないし、それくらいでしか生徒の皆には役立てないからさ」

 

「っ」

 

「それでも、これだけは絶対に約束できる――僕は負けないし、死なない」

 

 

 

 

 

 

 マッシュはギプスと包帯で覆われたその手で、優しくモブエを撫でる何が起こるかわからないこの学園都市で、シャーレの先生という存在として、無傷のまま過ごすことなど不可能だった。

 

 けれどマッシュなら、「死なない」「負けない」という点では絶対に約束できる。

 

 

 

 

 

 

「皆にも言っておいてくれないかな、僕は死にませんって」

 

「……約束だぞ?」

 

「うん、約束」

 

「破ったら、許さないから──しんだら、ころすからな

 

「神に誓うよ」

 

「――だから……もうちょっとだけ、こうさせて

 

「OK」

 

 

 

 

 

 

 モブエはしばらくマッシュの胸に顔を寄せ、しばらくそれが続いた。19時を回り、モブエが寮に帰ったことでオフィスは再び静寂に満たされた。

 

 

 

 

 

「………僕は絶対に負けないし、絶対に死なない」

 

 

 

 

 

 マッシュは改めて、決意を固めたのだった。

*1
ナギサから「お詫びの品」として受け取ったもの




おし、シリアスはこれで十分だな!次回からギャグ満載でやるぞ〜〜!!

今回特に書くことはないんですが、弟先生と妹先生が揃いも揃って聞いたきたことをここに書きます




『春原シュンって子……いるけどさ、同姓同名もちっちゃい子いない?とりあえずクッッッソかわいい』

『おっきい方のシュンちゃん……この子人妻とかじゃないよね?ロラっ子はいいぞロラっ子は、私はロリでもショタでも大歓迎』




『あ、その子はね?イベントで薬を飲んでちっちゃくなっちゃったんだよ』
   


『コナンやん』



あのイベントは本気でびっくりしましたね……ほんとに。


励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
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