透き通る世界に拳を一つ   作:六科

131 / 363




マッシュ・バーンデッドと騙された忍び

 

 

「ふあぁ……それにしても先生は凄いね、私だったらあんな速度で迫ってくる手裏剣を振り切るなんて無理……スゥ…」

 

「何普通に先生の膝を枕にしてるの!?」

 

「だってちょうどいい硬さなんだもん…」

 

「もんじゃない!!」

 

 

 

 

 

百夜堂に戻ったマッシュたちは作戦会議を行なっていたのだが、いい案が出ずに困っていて。ツバキはそれで眠気が一気に来たのかマッシュの膝を借り、寝っ転がっていた。きっとこれを見た他校の生徒は血涙を流すことであろう。

 

 

 

 

 

「ツバキちゃん、先生も困って……無い?むしろ…無?」

 

「あれ、何でわかったの?」

 

「実は私、読心術と呼ばれるものが得意でして、対面しただけで相手の思考や欲求を把握することができるんです」

 

「ええすご、じゃあ僕の思考や欲もわかるの?」

 

「勿論です(…先生のことを少し調べさせてもらいます、いい人なのは間違い無いのですが……少し、少しだけあなたのことが気になってしまったので)」

 

 

 

 

 

 

ミモリは自身の特技である読心術を発揮しマッシュの欲やら思考やらを読む。顔があまりにも無表情すぎるので、逆に気になってしまったようだった。

 

 

 

 

 

(読心術を鍛えて数年……私の読みは外れたことがありません、どれだけ気持ちや欲を隠していても心の中までは細工できない……先生、あなたの心を読ませていただ――)

 

 

 

 

ミモリが読心術で読み、見えたのは……大量のシュークリームに埋もれているマッシュの姿だった。

 

 

 

 

(シュークリーム……え、シュークリームのみ?―いや、あの、それでいいんですか?貴方の欲はそれでいいんですか!?)

 

「ボーーーーーー…」

 

(何故、何故その状態で無表情を? 普通焦りませんか?異性が膝に頭を乗せているのですよ!?――いえ、何かの間違いでしょう…もう一度、もう一度……)

 

 

 

 

ミモリは再度マッシュの思考を読む…が。

 

 

 

 

【至福……】

 

「………」

 

「ね、ねぇミモリ?さっきから黙ってどうしたの?」

 

 

 

 

 

「―シュークリームとは、生地の中が空洞になるよう焼き、その空洞にカスタードクリーム詰めた菓子の一種である」

 

「ミモリ!?」

 

「目が虚になってマスよ!?」

 

「特にクッキーシューは硬さのある生地にトロトロのクリームが入っており、その姿は人で喩えるならば強さの中に優しさを秘めているようなもの、従って――」

 

「なんか急に饒舌に!?」

 

「とにかく先生は優しい人だということがわかりました、疑ったりしてごめんなさい」

 

「全然いいよ、それで……どうするかの話なんだけど、元凶が誰なのか、それを考えない?」

 

 

 

 

 

話を戻し、元凶がどんな存在で誰なのかを考えることにした。あれだけの数の魑魅一座を傭兵として雇えるほどの財力を持つ者……つまりはただ者では無い。

 

 

 

 

 

「やっぱり悪いやつに違いない! みんなが楽しそうに笑ってるのが気に食わないとか、そんな理由で暴れさせてるのかも! うん、絶対そう! 絶対悪いやつ!」

 

「元凶の場所とか、どうやって探る?」

 

「一番確実な方法があるわ。まず街に出て、どこかで悪さをしてる魑魅一座を見つけたら、一気に包囲するの。お祭り運営委員会だけでは成し得なかった大掛かりな作戦だけど、修行部もいる今なら可能なはず!」

 

「ほうほう」

 

「包囲して〜、その後はどうする……?」

 

「もちろん全員で一気に撃退! 拘束! それで、そいつらから元凶を吐かせれば終わり! 必要なら多少過激な方法もやむなし!」

 

「サスガ委員長! 悪党たちには小指ザクリの刑デスね!」

 

「うわっ……」

 

「あら……」

 

「流石にそれは却下だよ」

 

「とにかく、魑魅一座を捕まえて元凶について吐かせる! もう時間が無いの。百夜ノ春ノ桜花祭のクライマックスは明日!」

 

「あっ、聞いたことある! 花火でしょ、ホログラムの! パンパンパーンって!」

 

「ええ、盛り上がりも最高潮。桜花祭のラストを飾るのに相応しい新たな花火を用意したわ」

 

 

 

 

 

そう言ってシズコは花火の装置へと目を向けた。ミレニアムに依頼したという、ホログラムの花火を投影する装置。

 

 

 

 

「もしあれを使っている時に魑魅一座が暴れたら、騒ぎじゃ済まなそうだね……」

 

「もしそんなことになったら、責任を問われて私たちお祭り運営委員会は……」

 

「そんなことはさせない、それにもしそうなってしまったとしても、僕が責任を取る」

 

「そ、そんな、先生が悪いわけじゃ無いのに」

 

「悪くなくても責任は取る、それが先生だからね――けど安心してよ。このお祭りはみんなのお祭りなんだ…だから死ぬ気で守り抜く」

 

 

 

 

 

ツバキはマッシュの膝から自分の頭を退かせ、マッシュは立ち上がりグググっと体を伸ばしながらそう言う。

 

 

 

 

 

「先生がそこまで言ってくれてるんだし……早いところ元凶を探す! それで私がこれまで受けてきたストレスをそっくりそのまま叩き込んでやらないと、腹の虫がおさまんない! 絶対ボコボコにしてやるんだからっ!!」

 

「私も先生が変な目に遭っちゃうのは嫌だし…頑張っちゃうよ〜」

 

「そうデス、先生のためにも、お祭りを楽しみにしてくれている人たちのためにも―頑張りマショウ!!!!」

 

 

 

『おー!!!』

 

 

 

お祭り部・修行部・マッシュ一行はお祭りを守るため、皆のため、鬨を上げた

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「……やらかしちゃった」

 

 

 

 

しかしマッシュはやらかしてしまった、何をしたかと言うと。今日中に元凶をとっ捕まえて、明日の花火の邪魔をさせまいと、パトロールをしていたのだが…そこで問題を起こしていた生徒を発見、鎮圧していたところ。

 

 

 

 

「迷った」

 

 

 

 

思いっきり迷ってしまった、一応端末でシズコに連絡はしているが、そっちでも何やらトラブルがあったようで合流するには時間がかかるようだった。

 

 

 

 

「先ず向かう場所はお祭りをやっている場所……なんだけど、どっちだっけ…………ん?」

 

「……ササササッ!」

 

「………」

 

 

 

背後から気配がしたので目を向けると、そこには多分隠れているつもりでいるイズナがいた。口でササササッ!と言っているのが可愛いが、これは大チャンス。

 

 

 

 

「……あ、あんなところに伝説の巻物が」

 

「え!?どこ!?どこですか!?」

 

「はい捕まえた」

 

「し、しまった!―くっ、なんと巧妙な罠を!」

 

「巧妙かな」

 

「と、とにかく…イズナは、イズナは忍者として主君に仕える身! たとえ拷問されても、主君の情報を話す気も、敵である先生と馴れ合う気も―」

 

「あっちからお菓子のいい匂いがするから、一緒に食べに行かない? 奢っちゃうよ」

 

「いいんですか!?わ〜〜い!」

 

(…………僕、この子の事が心配になってきたな)

 

 

 

 

 

ちょろすぎると言うか騙されやすいと言うか、マッシュはそんなイズナの事が結構心配になってきた。とりあえずうまく会話を弾ませ、屋台を回っていき、少し祭りを楽しんでいた。

 

 

 

 

「綿飴にりんご飴……美味しいなこれ、シュークリームにも負けてない」

 

「イズナはこの焼きそばが好きです!やはりソースは正義!」

 

「射的?って奴、イズナちゃんは上手かったね」

 

「これでもイズナは銃を扱っていますので!…まさか先生が射的で銃を使わず、素手でクリアするとは思いもしませんでしたが」

 

「お陰で色々貰っちゃった」

 

「あ、先生!あちらのお店にも行ってみましょう!」

 

「いいね」

 

 

 

 

 

次から次へと店を回っていくマッシュとイズナ、マッシュはやっぱり違和感が半端じゃなかった。ここまで祭りを楽しんでいるイズナが、何故祭りを壊そうとしている集団に手を貸しているのか……やはり騙されている、そうとしか考えられない、そう思いイズナに問いかける。

 

 

 

 

 

「お祭り、楽しい?」

 

「はい!…えへへっ、イズナはこの百夜ノ春ノ桜花祭が本当に大好きなんです! ですのでこうやって先生と一緒にお祭りを楽しむ事ができて、イズナはとっても嬉しいのです…!」

 

「うん、こんなに楽しいのに…中止になっちゃうのは嫌だね」

 

「え?…ち、中止!?いきなり、なんで、どうゆう事ですか!?」

 

「…イズナちゃん、君を雇った人は―祭りを壊そうとしてるんだよ」

 

「えぇ…?で、でも、あの人はイズナに、事業の邪魔をする者達を成敗して…くれ…と………――っ!?」

 

「そう言う事」

 

 

 

 

イズナは完全に騙されていた、依頼の内容が『事業の邪魔をする悪党を倒す』と言ったものだったのだが、その悪党がマッシュであり、マッシュは祭りを守ろうとしていた……つまり、イズナは知らないうちに祭りを壊そうとしている悪人に手を貸してしまっていたのだ。

 

 

 

 

 

「そ、そんな…い、イズナは……イズナは忍者になりたくて……」

 

「…イズナちゃん、雇い主のこと、教えてくれないかな?」

 

「そ…それはできません! 主君のことを裏切るなど忍びにあってはならないこと……イズナは、立派な忍者になりたいのです!だ、だから……でも…――っ、イズナ、今回は……今回は失礼します!」

 

「うん―またね、イズナちゃん」

 

「…!―は、はい!」

 

 

 

 

 

そう戸惑いながらも笑顔を見てたイズナは、その場からジャンプし去る。マッシュは手に持っていたりんご飴や綿飴を食べ終え、ゴミをちゃんとした場所に捨てた後。

 

 

 

 

 

 

「――そこにいるんでしょ?…出ておいで」

 

 

 

 

 

そう後ろに向かって言った、そしてそこから出てきたのは魑魅一座の生徒が数名。いずれもびびっており、震えた声で話し始める。

 

 

 

 

 

「ば、バレてた…のか?」

 

「気配が丸わかりだったよ、イズナちゃんは動揺しててわからなかったっぽいけど」

 

「やっぱり隠密なんて、私らには向いてねえ…」

 

「僕を捕まえにきたんでしょ?…僕も用があったんだ、君らを雇った悪ーい人に」

 

 

 

 

 

マッシュは魑魅一座に近づき、目線を合わせ

 

 

 

 

 

「連れて行ってくれないかな?――そいつの元に」

 

『う――うっす!!』

 

 

 

 

そう強くも優しい口調で言った。こうしてマッシュは魑魅一座に案内され、雇い主の元へと向かっていったのであった。





前書きは無いのかって?書くことが無かったんです……こっちもネタ切れ?ですね。

そしてそろそろこのイベントも終盤で、次回はちょっとした小話を入れた後。いよいよエデン後半です……例のトラウマボスの戦闘シーンをどうしようか悩んでもいます。


励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします!

百花繚乱後に見たい話

  • まだ交流がない生徒との話
  • アイデェア箱から選んだお話
  • ラビット2章
  • 愛が重い生徒との話
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。