「こっち?」
「は、はいそうです…」
「いやぁ楽しみだなぁ……新技お披露目するの」
(ヒィィ!?)
「……あ、聞くの忘れてた。君達はどうして祭りを壊して欲しいって言う依頼を受託したの?」
「お、お金のため……なのと、その」
「その?」
「…そいつに言われちゃったんです、『君達みたいな不良は祭りなんて楽しめない、自分たちが楽しめない祭りを黙って見ていて何が楽しいんだ?』って」
「………それで?」
「最初はそりゃキレて、反応しましたよ?…け、けどあいつの言ってることほとんど正論っぽくて……どうせどうせ祭りが楽しめないのなら…ぶっ壊しちゃってもいいんじゃね?って最終的になっちゃいまして」
「……そっか、みんなは祭りを楽しみたいんだよね?」
「で、できれば……はい」
「だったら僕がなんとかするよ、祭りはみんなのものだからね」
「け、けど私らは」
「いっぱい迷惑をかけた、でしょ?なら僕も一緒に謝りに行く、せっかくのお祭りなんだからみんなで楽しまないと」
『せ…先生…』
「でもシズコちゃんの鉄拳を喰らう覚悟はしておいてね、多分普通にしそうだから」
『う…ぐ』
「………さて、今のうちに」ポチポチッ
マッシュに銃を向けながら、雇い主の方へと向かっている魑魅一座、もうこのまま雇い主をぶっ飛ばしてくれた方が自分たちも助かるので、さっさと案内する。
「―連れてきたぞ」
『……ご苦労だったな魑魅一座、やればできるじゃ無いか…報酬は弾むぞ』
「ああ」
『さて……フンッ、やはりこんな子供に権力を持たせた上の奴らの気が知れん…本当にふざけているな』
「………ニャン天丸さん?」
「…フフフ、残念ながらそれは偽名だ」
そうクツクツと笑いながら、テチテチと足音を立てて闇から現れた全ての元凶にしてこのお話の悪役。
「この儂こそが魑魅一座に命を出し、この祭りを中止にしようと計画し実行した張本人……ニャテ・マサム――」
ビタンッ!!!!
「ニャウン!!?」
マッシュはニャン天丸ことニャテ・マサムニェに向かってビンタを繰り出した。ビンタを食らったニャテ・マサムネは鼻血を流しながら倒れる。
『ええぇぇぇぇぇっ!!?』
「ガッ…ブッ―き、貴様! なんのつもりだ!!?」
「…?悪人に制裁を与えただけですけど」
「せめて人の話を聞くぐらいはしろ!!聞いたこともないぞ!?悪役のセリフを無視して殴る奴!」
「殴ってません、ビンタです」
「かわらんわ!!」
一応魑魅一座はニャテ・マサムニェを心配し、手を貸し起こす。猫に向かってビンタをした、字面だけ見たら虐待だがマッシュは気にしない。
「っ……ま、まぁとにかく、私はコミックによくいる悪ではない…徹底的にやらせてもらう―さあ、端末を渡してもらおう」
「どうぞ」
「え、素直………そ、…そうだな、チェーンで体を縛らせてもらう」
「どうぞ」(後ろで腕を組む)
「嫌だから素直!―っ、もういい、おい!あれで先生を柱に括りつけろ! キツくな!」
「う、うす」
魑魅一座達は申し訳なさそうな顔をしながらマッシュをチェーンでギッチギチに縛り上げ、柱にくくりつける。ニャテ・マサムニェは愉快そうに笑い近づきながら告げる。
「これでおぬしは逃げることも助けを乞うこともできない…孤独無援―いや?飛んで火に入る夏の虫と言うところかな?」
「ソウデスネ」
(………鉄のチェーン如きでこの先生のこと止められるのかな?)
(つうかあのおっさん私らの話聞いてなかったろ)
(いや〜多分聞いてたけど、信じてなかったんじゃないか?)
(気持ちはわかるけど…)
マッシュはチェーンで縛られて柱に括り付けられながら、負けちゃった……みたいな演技をする、こんなものでマッシュを止められるはずもないのに…愚か。
魑魅一座からマッシュの話を聞いてはいたが、そんなわけないだろ? と笑いながら信じていなかったニャテ・マサムニェ、本人はもう完全に勝った気でいる。
(――うぅ、先生……ど、どうしてそんな簡単に捕まってしまったのですか? 先生が負けるはずなど無いのに…)
その様子を、忍びらしく気配を消し見ていたイズナはそう思いながらソワソワとしている。そしてマッシュが口を開き、問いかける。
「どうしてこんな事を?」
「儂の目的は至ってシンプル―金さ」
「お金?」
「百夜ノ春ノ桜花祭……このお祭りが一度開かれるたびに、一体どれくらいの金が動くと思う?」
「30000円くらい?」
「舐めているのか?――んんっ、この規模だ、それなりに大きいことくらいは分かるだろう。なのにその金をお祭り運営委員会…あんなチビどもが握っとる。儂はそれが気に食わんのだ」
「……チビども」ミシッ
「お祭りを素敵なものに? そのためならあのミレニアムに依頼してもいいと?―はっ!儂に任せた方が何倍も稼げたというのに!」
「そのためにお祭りを、みんなの楽しみを台無しにしようと?」
「そうさ、お祭りが中止になれば連中は責任をとって運営を降りるしかない……そこを、これでも商店街の会長である儂がその運営の権利を得る…そのための計画さ」
「………そのために、あなたの私利私欲のために、イズナちゃんも騙したんですか?」
ギロッと睨みつけながらそういうマッシュ、自分が儲かるために、自分が気に食わない…ただそれだけのためにイズナを利用した、そのことに怒りを抱いていた。
「イズナ……ああ、あと自称忍者のちびっ子か―そうだな、あいつはまぁ、よく役立ってくれたよ。大した金をかけていないのに…本当によく働いてくれた」
「……」
「ちょっとお遊びに付き合っただけであれだ、本当に扱いやすかったよ……実力だけなら魑魅一座十人はあったからな」
「お遊び…?」
「ああ、幼稚な子供のごっこ遊びだろう? あいつの言う、魔法のような忍者なんてファンタジーだけの話だ」
「…イズナちゃんは真面目にそれを目指してるんですよ」
「だからこそだ、『雇い主としてご命令を』だとか『ご命令とあればなんでもこなすのが忍びの道だとか』……プッ、ふはははっ!!思い出すだけでも笑ってしまうわ」
「………あなたにとってイズナちゃんは、便利なだけの道具だったと?」
「ああ、本当に便利な奴だ。実に経済的で、馬鹿で、こちとら大助かりだよ…ふはははははっ!」
頭を抱えながら、腹を抱えながら、心の底から笑うニャテ・マサムニェ。あまりにも大人気なさすぎで、魑魅一座は普通にドン引きしていた……そしてマッシュは流石に怒りを燃やし、今にも飛び出しそうだった。
「…お金のために、イズナちゃんの夢を利用したんですか」
「……夢? 何を言っているんだ? あんな夢想とすら言えないバカな妄言を…夢だと? お主も付き合いのいい奴だな、先生の力を持っているとは言え…大したお人好しだよ」
(……っ…そ…そんな…だって、あの時…イズナの夢を…応援するだとか、忍者として活躍してほしいって…言ってたのに……それもこれも全部、イズナを騙すための嘘だった?)
「それにしてもお主……少し脳が足りていないんじゃないか? 儂に騙されていると知っていたのなら、儂が雇っているあのイズナと共に行動するなどと……愚かにも程があるな」
「……まあ、そうかも」
「なんだ、自分でわかっているんじゃないか」
「……けどそれは僕が勝手にやったこと―イズナちゃんは関係ないですよ」
(っ…!)
「……そろそろ僕からも言わせてもらいますよ」
マッシュはニャテ・マサムニェのことをじっと見る。そして淡々とした言葉で、真っ直ぐニャテ・マサムニェへと向かって行った。
「…あなたはこの計画のために、何日も何日も苦労したことはありますか?」
「…なに?」
「あなたは周りから無理だ、諦めろ、そう言われ続けても…その計画のために頑張れるんですか? その計画のために、一生懸命自分一人で頑張って、努力して、周りからどんな目を向けられても…あなたは頑張れるんですか?」
「……何を言いたいのかさっぱりだな、儂は無理だとわかったらすぐに諦めて現実を見るさ、努力?そんなものになんの価値がある、楽して得たものの方が何倍も優位だ。いいか?儂ならもっと頭を使い上手く―」
「出来ないのなら黙ってろ」
『っ…!?』
マッシュは柱に括り付けられている状態、身動きができない状態で口調を強くする。キレると口調が変わると言うが、まさにその通り。敬語からタメ口へ、そんな口調になっていた。
「自分の憧れに向かって一生懸命頑張っている、周りからどう思われようが自分の夢のために必死に努力をしている……そんなすごいことをイズナちゃんは本気で頑張ってるんだ………それをごっこ遊びだとか、そんなふうにバカにするなよ」
「っ、理解できないな…あんなごっこ遊びを努力だと認めるのか? あんなできもしない夢が努力だと? 空想の!フィクションな存在になるための無駄なことを、お主は頑張れと言うのか?」
「いいじゃん。夢でもフィクションでも、憧れて頑張ることが悪いことだとか、僕は思わない」
「話が…通じないな―どいつもこいつもそうだ!儂が、この儂が祭りを運営した方がもっと、もっと利益を上げられると言うのに」
「それなんだけど」
ミチミチミチッ…と音を立てながら、マッシュは無表情で当たり前でしょ?と言うようなテンションと口調で
「みんなのために祭りを運営する生徒達と、金儲けの、それも自分のためにしか祭りを運営しない大人……そりゃ、生徒達に任せようってなりますよ」
「ぐっ…っ」
「大人に比べて子供が夢みがちなのはその通りです……けどそれの何が悪いんですか?―夢を見ない人と夢を見た人……僕は後者の人の方が幸せだと思う」
「もう、もういい!!お主と話しているだけで時間の無駄だ…おい、銃を貸せ!!今すぐにこの先生を―」
ブチッ!
「…は?」
「やっと自由だ、長かった〜」
「な、は、チェーン…を、鉄のチェーンが、ハズレ…いや、引きちぎ……は?」
「その銃で僕を撃つのは構わないけど……そのあとはどうなっても知らないよ」
「―魑魅一座!こ、こいつをなんとかしろ!金はある!!」
ニャテ・マサムニェはさっきまでの大人の態度を完全に崩し、声を荒げて魑魅一座にそう怒鳴る…が。
「いや無理っす」
「なに!?」
「なんかもう勝ち目無いよな、うん、絶対無理だ」
「な、ふ、ふざけるなよ!!お前達にいくら払ったと!」
「まだ払われてないし」
「そもそも払われるのかどうかすら怪しい……ので」
『寝返る!!』
「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!!」
形成逆転、マッシュ&魑魅一座vsニャテ・マサムニェ、はっきり言って勝てるビジョンが浮かばない。
「な……ならば!うまいことあいつを利用して」
「へい、イズナちゃん」パチンッ
「―――はい!先生……いや、主人殿!」
「んなっ、お、お主、いつのまに!」
「さっきからずっっっっと見てました……忍者として主人を裏切るのはいけない事―しかし!その主人が悪人ならば、イズナは従う気はありません!」
「ぬ、ぬぅぅ!」
「イズナの夢を応援してくれた、怒ってくてくれた……そんな先生こそ、イズナの真の主人…よって!」
イズナは封筒を取り出しそれをニャテ・マサムニェに向かって投げつける。そこには大きく『辞表』と書かれていた。
「今までお世話になりました…!―イズナは、転職します!」
「こ、この、恩知らずめ!」
「恩を仇で返したのはそっちでは?」
「くっ……ふ、ふふふ、あまり大人を舐めるなよ先生……儂はこんなこともあろうかと、別のオートマタの傭兵を雇っておる!祭りが無くなればそれでいいのだからな!!」
「ふーん」
「今頃!奴らは祭りをめちゃくちゃにしているだろう……ふ、ふはは!儂の勝ち――…ん?」
突如、ニャテ・マサムニェの端末に電話が入った。恐る恐るその電話に出ると…そこからは聞いたことがない女性の声。
「わ、わたしだ!祭りはどつなっ『貴方が雇った傭兵なら、全員、学園に入る前に排除いたしました』 だ、誰だ貴様は!!」
「ワカモちゃん、ちゃんとやってくれたみたいだな」
『あ!貴方様〜♡ このワカモ、ご命令通り、別傭兵を全て蹴散らし、祭りを継続させました♡』
「わ、ワカモ……あの、災厄の狐である、あのワカモか!?――い、いや待て、そもそも……わかっていたのか? ワシが別の傭兵を雇っていると!」
「戦力が足りなくなったり、ピンチになったらそれぐらいするんじゃないか? そう考えただけだよ……それから」
遠くの方から、こちらへと走ってくる音が複数聞こえてくる。そして一つと叫び声が、その場に響き渡る。
「――ニャテ・マサムニェェェェ!!!!」
「か、河和シズコ…!?」
「あんたまあよくもやってくれたわね!!」
「いろんな人に聞き回った所、怪しいのは貴方一人でした」
「聞いてたら、魑魅一座も騙してたんだってー?…ふぁあ」
「払う気なんて一切なく、むしろ何事もなかったかのように追い払おうとした…」
「あり得ないわ!」
「それによくも先生をイタメつけてくれマシタたね!!」
「あ、そこは全然平気だよ……さてと」
修行部・お祭り運営部・魑魅一座・イズナ&マッシュvsニャテ・マサムニェ……はっきり言って絶体絶命。
「飛んで火に入る夏の虫……あの時の言葉、そっくりそのままお返しするよ」
「……こ…………こう…なれば…!!」
ニャテ・マサムニェはバッ!と後ろを向き全力疾走
「さらばだ!!!」
「逃げ足早!?」
「任せて……とっておきの忍法がある」
「…忍法?」
「忍法!✨」
マッシュは地面に手を入れ、少し掘る…そして
「筋肉忍法・土遁の術―フンッ」ズボボッ!!
『土の中に……潜った!?』
「わぁ!本物です!✨」
「あれでいいの!?」
マッシュは地面の中へと潜り、潜水。そのままニャテ・マサムニェの方へと進んでいき…ここだ、というタイミングで。
「ぬぉ!?―ぎゃぁぁ!!?」
手を出しニャテ・マサムニェの足を掴んで地面へと抉り込ませる。身動きが全く取れないニャテ・マサムニェに対しマッシュは普通に地面から出てくる。
「―これだけのことをしておいて逃げるのは無しだ」
「ま……待て、待て先生…わかった……と、取引をしないか!?」
「取引?」
「今ここで儂を見逃し、協力してくれたら……いくらでも報酬を渡そう!悪い話ではないはずだ…な?」
「まあ、お金はいくらあってもいいよね」
「だ、だろう?だから『じゃあ用意してください』」
「――100億円」
「………は?」
「100億円用意してくれたら、考えてあげるかもしれません」
「ふ……ふざけるな!!そんな大金用意できるわけが」
「あのお祭りにはそれだけの価値がある……いや、そもそも金で買えるような物じゃない。いくら積まれても、それを壊そうとは僕は思わない」
少しして、他メンバー達がやってくる。先ほどのマッシュの声が耳に入っていたのか、シズコは満足そうな顔をしていた。
「色々やらかしたんだ――お仕置きしないと気が済まないな」
「わ、儂を殴る気じゃない…よな…いえ、ですよね?だ、だって儂老人だし、猫だし…ね?まさかそんな非道なことはしませんよね?」
「あんたどの口で…」
「…僕が本気で殴ったらあなたは生きていられません」
「だ、だろう?」
「なら――他の方法で制裁します…イズナちゃん」
「はい!サクラ大福、ご用意しました!」
「え、いつの間に?」
マッシュはサクラ大福を持ちながら、体の上半身だけを出しているニャテ・マサムニェに向かって近づき…しゃがむ。
「さあ、みんなもご一緒に〜?」
「……誰に向かっていっモゴゴゴッ!!?」
「サクラ大福パ〜チ〜、サクラ大福パ〜チ〜、サクラ大福パ〜チ〜、サクラ大福パ〜チ〜、サクラ大福パ〜チ〜、サクラ大福パ〜チ〜」
「モ、ゴッ!ム、ゴ、ボボボッ!!?」
サクラ大福をニャテ・マサムニェの口の中に突っ込んでいく、速度は一定、慈悲はなく、ただただサクラ大福を口の中に押し付ける。その絵面にほとんどの者はドン引き、イズナだけはメモっていた。
(く、口の中に甘さが―広がって、…くるしい!けどうまい! あーでも、苦しい!―あぁでも美味しい!――だ、だめだ、頭が混乱する、わけがわからなくなる………くるし…あま…く…あ―あ―)
『ァァァァァァッッ!!!!!!?』
こうして悪は退治され、一連の事件は一度幕を閉じたのでした。
深夜にラーメンを食べた結果、見事に胃もたれを引き起こした作者です。
やらかしました。
そしてお気持ちになってしまうのですが……復興イベの報酬、少し下方修正されていませんか?私の気のせいなら申し訳ないのですが。
まあ新規の弟妹先生は
『お腹!!良き!!』
『何この子達可愛くない!?あぁ!ミユって子可愛いねぇー!娘にしたい!!』
って叫んでいましたが、本当に私の兄弟かわからなくなってきました。
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