それでは本編へ……どうぞ……
「これで、調印は完了した」
「………」
古聖堂、地下。
大きく開けた空洞の中に佇むアリウスと、不気味な双頭の木人形。彼はタキシードを纏った凛とした佇まいのまま、冷たい光沢を放つ指先で襟を正す。
「木の人形が、喋れるのか」
「――無作法だな」
アリウスの一人が、思わずと云った風にそんな声を漏らした。瞬間、淡々とした様子を見せていた彼の声に苛立ちと怒りが滲み出す……大人の怖さそのものだ。
「私を呼ぶのであれば、芸術への敬意を込めて、マエストロと呼んで欲しいものだ」
「……っ」
ゲマトリア、その中の一人である彼もまた、自身を芸術家と称する者の1人であり。木の擦り合う軋んだ音を立てながら、彼は朗々と唄う様に告げる。
「ふむ、しかし、そなたらにはまだ芸術の何たるかは尚早だろうか……? ならば済まないが、そなたらとは愉しい対話は成り立ちそうにない、知性、品格、経験、そして信念――それらを携えて来るが良い、キヴォトスの生徒達よ、どうかわたしを落胆させてくれるな」
彼にとって、彼女達は良き言葉を交わす相手になり得ない。しかし興味が全くない訳ではない……今は石ころレベルでも、磨けばダイヤのような価値になる。そうマエストロは踏んでいた。
「本来であれば、この様な事に手を貸すのは不本意なのだ、されど、あの守護者たちの、威厳を
「………」
「おかげで私の実験は、更に崇高へと近付く事が出来るだろう」
彼の前に立つアリウス生徒――アツコは静かに頷く。
スクワッドのメンバーである彼女の役目は、この場所でロイヤルブラッドの名の下に、条約に調印し戒命を動作させる事……つまり、本来開催されていない調印式を強制的に開かせたのだ。
数百年前に存在した戒律の守護者は再びその力を取り戻し、戒律に背く者を懲罰する為、銃を手に取り行進を開始……これこそがアリウスの狙い――決して斃れる事のない、不死身の軍団との契約。
「正直言って…今私が興味をしてしているのは…シャーレの先生、彼だけだ」
「……」
「完成された肉体、超人的な力、純粋無知な瞳に精神………何もかもが素晴らしい!」
「……」スッ
「自分の作品達を壊されていくのはいいのか……か、普通なら好ましく無い事だ…しかし今回は別――彼の力が見られれば…それでいい、そのためにアレも用意したのだからな……私は知りたいのだ―彼の―
肉体構造の秘密を!!なぜ彼が、あのような力を持って生まれたのかを!!」
笑いながら、アツコの前を通るマエストロ。黒服からマッシュの話を聞き、映像を見て、彼のその力や肉体に芸術的価値を見出した……だからこそ、ベアトリーチェに協力をした。
「……ふむ、説明は退屈にして由無し事だろうか、では約束通り、この地下にある教義の下まで案内して貰う事にしよう」
「………」
「まあ、不死身の軍隊がそう易々と倒されるわけもないが……力を見れるのならなんでもいい」
目指すのは薄暗い秘密通路。アツコの背中を頭部を揺らして眺めていた彼は、静かにその一歩を踏み出す。
「さぁ、いざ往かん――我が芸術の最果てへ…」
――――――――――――――――――――――
「フン、フンフン……フンッ」ゴッ!
辺りに響く破壊音、人間が放っているとは到底思えないえげつない攻撃。次々に襲いかかる使徒をものともせず、一撃で破壊していくマッシュ。
(なんなの……なんなの、あいつ!!)
「相手が生徒なら躊躇したり手加減をしたりする……けれど、
そう言い、顔、腹、肋と連続で拳を放っていくマッシュ。そのパンチに情はなく、ただひたすらに物を壊す……そんな感覚で攻撃を放っていた。
「さ、流石は先生です!」
「アレこそまさに、神の一撃……ああ、やはりキヴォトスは彼に救われている!」
モブ生徒達がそう言ってマッシュを祭り上げるが、ツルギ以下、主力の面々は感じていた……違和感を。マッシュがいつもとは違う…そんな雰囲気を。
「……先生の攻撃って…あそこまで鋭かったっすか?」
「なんと……言うか、まるで……躊躇が無い…ような」
「まるで……暴力の化身…そんな、気が…」
「もしや先生は…お怒りになられているのでは?」
「だとしてもあそこまでは……ツルギ先輩は…先輩?」
イチカがツルギに目をやる、ツルギはマッシュの繰り出す攻撃や動きを観察……過去に自分と戦った時の動きと比べ、その違いに気づく。
(……使徒の攻撃を避けようともしていない、それに、一撃一撃が力みすぎている、先生の攻撃の一つ一つにはしっかりとした形があった…しかし今は――ただ、力任せに拳を振っている)
躊躇が無い、むしろそんな次元ではなく……優しさが一切見えない暴力の塊、それが今のマッシュの攻撃だった。やがて使徒の数がどんどん減っていき、片手で数える数になると、マッシュはミサキの方を向く。
「……まだやる?」
「っ!」
ミサキはランチャーを構えるが、その前にマッシュが近づきランチャーを取り上げ、ミサキの額に向かってデコピンを繰り出す。
「いっ……づ…!」
「まだ、やる?」
マッシュはランチャーを地面に転がし、ゆっくりと近づく。その様子を見て、ミサキはあるものを隠れて手にした……それは対先生用のナイフだ。
「…………」
「僕、君たちを助けたいんだ……お願い、もうこれ以上は―」
マッシュがミサキに触れられる、その距離まで近づいた瞬間、ミサキはマッシュの肩へ向けてそれを振るった。
しかし、少し頭身が刺さる程度で……マッシュは軽傷で済んでしまった。
「なんなの…ほんとに!!」
「……お願い、これ以上は」
「うるさいっ……アンタみたいな奴が、一番…一番嫌い」
「………」
「痛みも苦しみも、その本質も理解してないような……甘い、温い環境で暮らして来たアンタに…――私らの助けになんてなってほしくない」
「…………」
ミサキはマッシュと距離を取り、そのナイフをマッシュの心臓部分へと向ける……そしてマッシュが動こうとした瞬間、赤い小さなボタンが押され、ナイフが発射された。けれどまたもやマッシュの体には傷一つ付かず、無駄に終わった。
「……そんなに丈夫な体を持てて、妬ましいよ」
「たまに不便なことがあるけどね」
「……」
ミサキは、もうこのまま爆弾でマッシュ諸共自爆するか、そんな風に考えていた時……鐘の音が聞こえた。聞いたことのない、重く苦しい音だった。
「……鐘?」
「合図………また、死にぞこなった」
「!」
ミサキは隠し持っていた爆弾を空中で爆破させ、ミサイルを持って逃げる。逃がさない、ここで逃せばまた救い出すまでに時間がかかってしまう……それはダメだ。
「せ、先生!」
「絶対罠っすよ…これ!」
「ツルギさん!先生を!」
「しかし…この場にお前達を置いていくのは」
「数も残り少ない、こんなの私たちだけで大丈夫です――心配なのでしょう?」
「………すまない」
ツルギはミサキを追いかけたマッシュを追う、マッシュとツルギ、そしてミサキがその場に居なくなったの同時……スッ、とユスティナの使徒らがまた現れた。
「……サクラコ様」
「言わずとも、わかっています――これよりここの指揮は私が請け負います……ツルギさんやマッシュ先生が帰ってくるまでの間、何がなんでも時間を稼ぎますよ!!」
『――はいっ!!』
ユスティナの使徒との戦闘が、その場でまた始まった。そして同時刻
「ヒィィィィイイヤァァァァァァァァッ!!!!」
「待ちなさい…!」
ヒヨリも、ヒナから逃走していた。鐘の音が聞こえ、その場所へ向かおうと全力疾走、罠だとわかっていても逃すわけにはいかない。ヒナはデストロイヤーを構えながら走っていた。
「―!」
「時間を、稼いでください…!」
「何、あなた達は……っ、邪魔!!」
それを、またもやユスティナの使徒らが現れ妨害される。数も軽く60は超えている、何がなんでもヒナを先に行かせまい……そんな気が使徒らからは感じた。
「邪魔しないで―――どきなさい!!」
ヒナはその場で戦闘を開始、これによりツルギ、マッシュの2人と合流させないようにする時間は稼がれた。
「来るといい…マッシュ・バーンデッド……ここが貴様の、墓場だ」
独り、鐘を鳴らしたサオリは、巨大な棺桶を撫でながら………そう呟いていた。
テンションの振れ幅がやばいので、今回はそこまで書きません……とりあえず。
次回!テニス!!!
お楽しみに
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