透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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マッシュ・バーンデッドとひとまずの決着

 

 

 

ヒエロニムスが消え去り、戦場には何も残らず、静寂が周囲を支配する。

 

あまりにも無慈悲な暴力、あまりにも残酷な始末……自分が丹精込めて作り上げた作品が、ただの筋肉と鉄のハンマーによって無惨にも破壊され、芸術がもはやただのガラクタになってしまっている。

 

 

 

 

 

「――……あぁ」

 

 

 

 

 

我慢できず飛び出してきたマエストロ、彼はガラクタになってしまったヒエロムニスの残骸を優しく抱き抱え、胸にグッ…と抱き寄せる……マエストロからしてみれば作品はいわば子供のような物。作品を粉砕されたマエストロは酷く嘆き、マッシュに怒りを燃やす―

 

 

 

 

 

 

 

「―心から感謝しよう…先生!」

 

 

 

 

 

ことはなく、むしろ感謝に歓喜の気持ちでいっぱいだった。抱き寄せていたヒエロニムスの残骸を自身の手で完全に粉々にすると、両手を広げ、空に向かって叫ぶ

 

 

 

 

 

 

「不完全な姿でお見せしてしまった事は汗顔の至りだが、直ぐに完成させて見せる――私の矜持に掛けて……ああ、ああなんて…なんて清々しい気分なのだろうか…長い年月をかけて作り上げた私の作品……しかし、しかしそれ以上の芸術が、現れてしまった……私は―浅はかだった…!」

 

 

 

 

 

 

マエストロはマッシュの力を少し舐めていた。子供なのだから、複製品を壊した程度なのだからと完全なる慢心をしていた……その結果がこれである。

 

芸術家として、ゲマトリアとして……マッシュの芸術を過小評価していた――そんな己の目に、感覚に、激しい怒りを抱いていたマエストロ。

 

 

 

 

 

 

「黒服の云う通りであった……普段は共感できないものの、この件に関しては感謝をせざるを得ない、黒服のお陰でそなたという最高の理解者に出会う事が出来た……この奇跡に…感謝を」

 

 

 

 

 

 

清く正しい姿勢での一礼、それをその場でしたあと、マエストロは後ろを振り返り、そのまま闇の中に消えようとしていたので

 

 

 

 

 

 

「待ってくださいよ」ガシッ!

 

「!」

 

 

 

 

 

マエストロの両肩を掴み帰らせまいと力を込めて止めるマッシュ。いきなり変な人形が現れて芸術云々かんぬんいってきたので、よくわからないがとりあえず捕まえることにした。

 

 

 

 

 

「いきなり現れて変なことばっか言って……怪しさ満点、そんな人を逃すとでも?」

 

「―ああ、自己紹介が遅れてしまって申し訳ない……私はマエストロ、ゲマトリアの一員であり…芸術家だ」

 

「僕はマッシュ………ん?ゲマトリア?」

 

「ああ、黒服が世話になったようだな……なぜか、最近やけにゴツくなっている気がするが、きっと先生の影響なのだろう」

 

「………あの怪物は貴方が?」

 

「作品、と言ってほしいが……そう、あれは私が作った物だ……そしてユスティナの使徒、あれを私が複製した」

 

「…………ふーん」

 

「お気に召したかな? 私の作品達は―」

 

 

 

 

 

 

マエストロが自信満々にそう言おうとした瞬間、マッシュはマエストロを自分の方へと向かせると、再び両肩を強く掴む。

 

 

 

 

 

 

「貴方は芸術家なんですよね」

 

「……いかにも」

 

「なら是非、僕の作品も見て欲しいんですけど」

 

「な、なに!?先生の作品を……ふ、ふふっ、いいだろう……思う存分見せてくれ!その肉体で作り上げた作品を!」

 

「じゃあ見せますね、僕の筋肉で作られる作品――ひび割れた人形って言うんですけど」

 

「ほうほう………ほう?」

 

「―フンッ」

 

 

 

 

 

 

マッシュはマエストロの二つの頭に向かって、連続で頭突きを繰り出し、木で出来ているマエストロの頭部に結構なヒビを入れ、マエストロを倒れさせた。

 

 

 

 

 

 

「オォォォッッ!!!?」

 

「空気読んでくださいよ、あんないい雰囲気であんなの出されたら溜まったもんじゃありませんので」

 

「と、頭部が…ぅ、なんだこの痛みは…こんなの……初めてだ…」

 

「と言うかあの使徒達って、過去にこの世に存在していた人達なんですよね? その人達の体を勝手に使って複製するのって倫理的にどうなんですか」

 

「一理ある……が、私は依頼されただけであって、元々はベアトリーチェの」

 

「言い訳無用」

 

「くっ、話が通じない、というも本当のことだったか―――だがしかし……いい、とてもいいな…このリアリティは……ふ、ふふふっ! 素晴らしい! また作品へのアイデアの浮かび上がってきたよ!」

 

「えぇ…」(困惑)

 

「感謝しようマッシュ・バーンデッド………そして良ければだが、手を貸して欲しい。さっきので立てない」

 

「………いいですけど」

 

 

 

 

 

 

マッシュはマエストロを立たせるだけ立たせて放置、自身の目をアリウスの方へと向ける……が、そこにアリウス・スクワッドの姿はなく、腹を押さえているアズサの姿だけがあった。

 

 

 

 

 

 

「アズサちゃん…!」

 

「っ、ごめん…先生………逃し、ちゃった…」

 

「…そんな、頼ってくれるって言ったのに」

 

 

 

 

 

 

サオリはアズサの腹を殴り倒れさせ、スクワッドを連れてその場をさっていた。マッシュに光を見出し信じてもいいと思った彼女達だったが……だからこそ、マッシュが光だったからこそ、自分たちが許せなかった。

 

 

 

 

 

「一度闇にいたものは、光にいるものに助けを乞うことは無い……なぜか、わかるかな?―それは自分達とその光のものを比べた時……どうしても、自分達を許せなくなるからだ」

 

「……………」

 

「彼女らは君に牙を向いた、それも殺害をしようともしていた……そんな相手に、何を今更助けを乞うのだと言うのだろうか」

 

「僕はそんなの気にしない、サオリさん達が助けてと言ってきたのなら」

 

「先生……それは、あまりにも甘すぎる考えだ」

 

「甘い?」

 

「ああ…甘いとも」

 

 

 

 

 

 

マエストロはヒビの入っている自分の頭を抑えながら移動し、闇の中へと足を踏み入れる。そしてマッシュの気にしないと言う発言に対し、ゲマトリア…ではなく、大人としての意見の述べた。

 

 

 

 

 

 

「一度自分が危害を及ぼした相手、そんな相手に助けを求めたり、許しを乞うたりする事は……あまりにも、難しく難題だ」

 

「………」

 

「当の本人が気にしなくとも、傷つけた者達の心には一生その傷が残り、自身を追い詰める……それが善人であるならば尚更だ」

 

「…それが、普通なんですか?」

 

「一般的に見てみれば…な、―マッシュ・バーンデッド、これは大人としての意見だが……罪を犯したものをハイそうですかと、世間は簡単には許してくれない…それを忘れないように」

 

「……………」

 

「それでは―また会おう、先生……奇跡の肉体を持つ者よ」

 

 

 

 

 

 

それだけ言って、マエストロは去っていった。今のマッシュにはマエストロを追いかける気力も無く、心臓部位に刺された時の毒が全身に回り始めていて、体力も無くなって来ていた。

 

 

 

 

 

「……先生、サオリ達は『助けるよ』」

 

「絶対に――間違ったことをしちゃって、償いたいとサオリさん達が思っているのなら、僕は、何度でも更生のチャンスを与える」

 

「……世間からしてみれば、それは厳しいと思うが」

 

「それでも…諦めるのは違う、―何がなんでも助ける……絶対に」

 

 

 

 

 

マッシュはそう強く拳を握りながら呟き、空を見る……少しの光を目にしながら、マッシュはアズサに

 

 

 

 

「それじゃあ……一旦帰るとしますか―僕達の居るべき場所へ」

 

 

 

 

 

そう告げ手を出し

 

 

 

 

「――何て事のない日常へ」

 

 

 

そうも告げた……アズサはクスリと笑いながらその手を掴み、地下から外へと帰っていった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「ゲホッ、ゴホッ……!」

 

「り、リーダー、大丈夫ですか?」

 

 

 

 

 

トリニティ自治区郊外・カタコンベ通路、トンネル付近。一度地上に上がり、人気のないカタコンベへと通じるトンネル通路にて足を止めるスクワッド。

 

 

 

 

 

「皆、端末は……」

 

「全部撃って、水に沈めた、追跡は出来ない筈」

 

「それで、何処に行く? まぁ、行く宛なんて…何処にもないけれど」

 

「……どちらにせよ、自治区には戻れない――彼女に、殺される」

 

 

 

 

 

セイントプレデターを担ぎながらそう吐き捨てるミサキ。それにサオリは呟く様な声で応える。その言葉は真実だ、今のスクワッドに向かうべき目的地など存在しない……今は、確実に。

 

 

 

 

 

「……私達はまだ、先生に頼るわけにはいかない……やるだけのことは、やっておかなければ」

 

「……本当に、あいつのこと信じられる?」

 

「…光が見えた、それも忌み嫌っていた物ではなく……本物の光が」

 

「な…尚更、助けを求められませんよね……あんなことしちゃったんですし……それに今も、大変な時ですし」

 

「…ことが落ち着くまで、身を隠す―ゲヘナ郊外のスラム、あそこなら、、きっと身を潜められると」

 

「ゲヘナ、ね……ま、今更か、トリニティだろうとゲヘナだろうと、大して変わらないだろうし」

 

「えっと、郊外だと、カタコンベの地下通路から行けるのでしょうか……?」

 

「流石にトリニティ自治区外だから無理だと思う、大橋から通れるルートが近くにあった筈だから、そこからゲヘナに入ろう、今なら多分トリニティの騒動に掛かりきりで、向こうの警備や戦力も手薄だと思うし」

 

「……そうだな……長居は無用だ、すぐに移動するぞ」

 

「……了解」

 

「わ、分かりました」

 

 

 

 

 

サオリが先導する為に歩き出し、その背後にミサキと彼女に肩を貸すヒヨリが続く。その後ろにいるアツコは、仮面を取った状態のまま……マッシュとアズサのことを思い、祈る。

 

 

 

 

 

「――2人に幸福を……どうか、幸せに」

 

 

 

 

アリウス・スクワッドは再び…影の中へと消えて行った。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

「―――忌々しい……どこまでも…!」

 

 

 

 

 

アリウス自治区――バシリカ。

 

祭壇上階、アリウス自治区の主として使用している一室に彼女は横たわっていた。椅子代わりに用いられる物品は徴収し、積み上げられた幾つもの聖書。

 

 

 

 

 

そして、一つの人工的な杖と、それと似たような姿をしている杖を人に授ける神が描かれているそんな絵も、彼女のそばに存在していた。

 

 

 

 

 

 

「……せっかく手に入れたこの絵…情報―知識―力、利用せずして何が崇高が」

 

 

 

 

 

横たわっていた状態から身を起こし、その杖……神々しくも、何処か現代的……杖と呼ぶにはあまりにも異質なそれを、彼女はじっと見続ける。

 

 

 

 

 

 

 

「早く……早くあの世界へ向かう手段を探し出さなければ……そのためにも、アレを……―いえ、これは一度考えるのはやめましょう…」

 

 

 

 

 

杖をしまい、近くにいたアリウスの生徒らに指示を出す……それは冷徹極まりない、非情な指示。

 

 

 

 

 

「彼女──秤アツコ以外は、全員処理(殺害)で構いません……逃亡者に情けは必要ないでしょう、見つけ次第彼女以外、その場でヘイローを破壊しなさい――あぁ、確かスクワッドのリーダーにはヘイロー破壊爆弾を持たせていましたか、それを奪って使っても構いません、好きな様に処理して下さい」

 

 

 

 

 

 

 

アリウス・スクワッドは任務に失敗した。

 

エデン条約を強奪し、ユスティナ聖徒会の力をアリウスのものとする、その果てにトリニティとゲヘナを手中に収め、危険な大人であるシャーレの先生(マッシュ・バーンデッド)を排除する……それこそが彼女達の任務だった

 

そうすればロイヤルブラッド…つまりは秤アツコを【生贄】にしなくて済むと。

 

 

 

 

 

 

 

「――まあしかし…生贄の血のおかげで、私の力は更に増し……神をも見惚れる力を手入れました――まさに、魔法のような…ね」

 

 

 

 

 

 

杖を軽く振るうと、現れるのは…火・水・岩・風……神秘による力なのか、はたまた別の力なのかはわからないが――はっきり言おう

 

 

 

 

 

 

「――来るならば来るといいマッシュ・バーンデッド……神に見放されし、哀れな人種よ」

 

 

 

 

 

いまの彼女……ベアトリーチェは――マッシュにとって強敵と言ってもいいほどに…成長していた。





マッシュ君の相手をするのなら、エデンのラスボスならばと思い……ちょっとベアトリーチェを強化いたしました、詳しい内容? 後日ということで……


ハッピーまであともう少し…‥ですのでどうか、コメントと評価を、どうぞよろしくお願いします

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