透き通る世界に拳を一つ   作:六科

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ナギサ様のような感じにはできませんでした、なんでだ……。

ベアトリーチェなんか強化されまくってね?と思っているそこの貴方!

マッシュ君相手からこれぐらいしないとだめだかなぁと思ってなので……


それでは本編へ…どうぞ!


アリウス・スクワッドと膨れ上がる罪悪感

 

 

 

 

 

遡ること……数日前

 

 

 

 

 

 

「いたぞ、向こうだ、追えッ――!」

 

「くッ……!」

 

 

 

 

 

 

 暗闇の中、スラムに声が響く。

複数人の忙しない足音、同時に背後から飛来する弾丸。発砲音と閃光が瞬き、直ぐ傍の外壁へと銃撃が突き刺さる。アリウススクワッドは、その表情に焦燥を滲ませながら無我夢中に足を動かしていた。

 

 

 

 

 

 

「リーダー、この先は袋小路。誘導されてるよ」

 

「何――?」

 

「……嵌められてたんだ、最初から」

 

「も、もうおしまいです……っ!」

 

「……反対側も、包囲された」

 

 

 

 

 

 背中には外壁、左右の建物からもアリウスの生徒が物越しに銃口を覗かせている。

 

 そして正面には今しがた追撃を仕掛けて来た部隊がいる……スクワッド全員がゆっくりと後退しながら銃を構えるも、数が違いすぎるため、無駄な足掻きとなってしまう。

 

 

 

 

 

「万事休す、だね」

 

「ううぅ…」

 

「……まだ手は、ある」

 

「…リーダー、まさか…ヘイロー破壊爆弾を、使う気?」

 

「あの場では一切使えなかったこれを……使う時が、来たようだ」

 

 

 

 

 

 エデン条約調印式に先駆けて支給された、ヘイロー破壊爆弾。

 通常兵器と異なり、キヴォトスに生きる生徒を死に至らしめるソレは、正に切り札。

 

 先の戦闘で使えなかったのは、マッシュの存在が大きい……使って何かをする前に、防がれる可能性があったからだ。

 

 

 

 

 

「ミサキ、ヒヨリ、私が時間を稼ぐ――その隙に姫を連れて離脱しろ」

 

「……サオリ」

 

 

 

 

 サオリは、自らの命を引き換えに自爆する気でいた。自分もろとも、アリウスの部隊に大打撃を与え、三人を逃がす……その目論見はアリウスの追撃隊も先刻承知、アリウスの部隊は迂闊に攻撃できず、ジリジリと距離を空ける他なかった。

 

 しかしこれはただの膠着状態であり、いつまで持つかもわからない……このまま逃げろ、そう指示を出しサオリは覚悟を決める――だが

 

 

 

 

 

「彼女が求めているのは私、そうでしょう?」

 

「――えぇ」

 

「……姫ちゃん?」

 

「私が行くよ、私が彼女の元に戻る……だから、他のメンバーは見逃して欲しい」

 

「……!」

 

「アツコ!?一体、何を――」

 

「逃げ出そうって言ったのは、私」

 

 

 

 

 

 

 サオリが声を荒げ、アツコを止めようとする。しかしアツコはサオリの腕を掴んだまま、強くはっきりとした口調で断じた。

 

 

 

 

 

「でもこれ以上は逃げ切れない、此処が限界だと思うから」

 

「アツコ……ッ!」

 

「トリニティにゲヘナ、そしてアリウスさえも、私達を追って来る――多分、このキヴォトスの中で私達が安心出来る場所は無いんだって、身に染みて分かった。私達の命が尽きるまで、息を潜めて逃げ隠れる人生が続くだけ……今までの私は、運命に流されて生きて来た―――だから最期くらい、自分で決めたって良いでしょう?」

 

「ア、ツコ――……」

 

 

 

 

 

 その笑顔……その柔からな表情が、サオリは大好きだった、どんな理不尽に見舞われても、アツコが、家族が笑ってくれているのなら…それでよかった―それなのに…なぜ、こうなってしまうのか。

 

 

 

 

 

 

『それは貴女が弱いからですよ、サオリ』

 

『っ!』

 

「……マダム」

 

『よく覚悟を決めましたね……褒めて差し上げます……そして約束致しましょう。―あなたが私の元へと戻れば、()()()()()()()()()()()()()()()()は、不問に付しましょう……我が名、ベアトリーチェの名において誓いましょう』

 

「うん――約束だよ」

 

 

 

 

 

 ふっと、アツコはベアトリーチェの約束を聞き届け、その身から力を抜く……そんなアツコを前にサオリは何もできなかった……いや、動けなかった。

 

 

 

 

 

『――動けないでしょう、抵抗する気も起きないはずです。それが貴女の限界なのですよ、サオリ』

 

「マダ…ム……」

 

『……さっさとあの男に頼っておけば良いものを』

 

「っ…それは」

 

『――ああ、そんなこと出来るはずもありませんか……あんなことを言ったのですら』

 

 

 

 

 

 

 サオリに限らず、アリウススクワッドはマッシュを頼ろうとしなかった。アツコは何度か提案をしたが、他のメンバーはマッシュに対し負い目を感じていた……そのため、マッシュの元へ向かうことができなかった。

 

 

 

 

 

 

『先生を殺そうとした……ああなんて罪深いことをしてしまったのでしょうか』

 

「命令したのはアンタでしょ、一体どの口がっ……!!」

 

『ミサキ、貴女はいつから、私の計画に対してそのような物言いが出来る身分になったのですか?この計画もまた、全く虚しき人生からあの者を解放する慈悲の一端であったとも知らず……ああどうして、彼はここまで不幸なのでしょうか……ああ、本当に可哀想に』

 

「じ、慈悲…?──ま、マダムは、先生の何を知っているんですか…!?」

 

『全てを知っています……彼の世界、彼の出生――彼が、元の世界で受けてきた扱いも』

 

「…元の世界で、受けてきた扱い…だと?」

 

『――フフフッ』

 

 

 

 

 

 

 

 怪しい笑みを浮かべながら、ベアトリーチェは彼女らを追い込むため――ある真実を告げる。

 

 それはマッシュにとって最大の呪いであり、マッシュが生まれた瞬間から決まっていた宿命……

 

 

 

 

 

『彼…マッシュ・バーンデッドは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元の世界で、全ての民から命を狙われている存在なのですよ?

 

「………………は?」

 

「…え……え?」

 

「――――――どういう…ことだ……?」

 

『正確には……生きることすら許されない……といったところでしょうか』

 

「な…出鱈目を言うな…!あの、お人好しの塊のような──アズサを助けた男が、なぜ…なぜ…!?」

 

生きていることが罪、この世に在りべからざる最たる異端、抹殺の対象とされてきた者―それが、彼の正体なのです』

 

 

 

 

 

 

 

 悦に浸ったような笑い声を上げながら、ベアトリーチェは真実を明かしていく。

 最初こそ、信じがたい事実に否定的だったアリウススクワッド……だって、あの男はあんなにも愛されているのだから。そんな扱いなんて、あり得ない……

 

 

 しかし脳裏に浮かぶのは、自分たちの言葉によってどこが傷ついたような顔をしていた、彼の顔。

 

 

 

 

 

 

 

『世界から愛されている――それはこの世界(キヴォトス)だけの話です……元の世界(魔法界)では、その逆……その存在が露見すれば、全世界からその命を狙われる─―匿っている家族もろとも……ね?』

 

「――は…はっ…? 何、言ってんの……それが、本当なら……本当…なら……」

 

『貴女達が浸ってきた、このキヴォトスというぬるま湯のような環境ではなく……極寒に凍てつくような無情極まる世界で、マッシュ・バーンデッドは生きてきました………それも、唯一の家族を失うかもしれないリスクと背中合わせで。それなのに、そんな彼に対して貴女達はなんと言ったのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 ミサキとサオリは言葉を詰まらせていた、元の世界で彼、マッシュ・バーンデッドは存在そのものを否定されていた。

 

 

 

 

なのに自分たちはなんと言った?

 

 

 

 

 

 

――()()()()()()()()()()に、助けてもらいたいとは思わない

 

 

 

 

「―違う」

 

 

 

 

――どうせ……親に愛されて、恵まれた環境で育って、周囲から愛されてたんでしょ…? そんな奴が、私達の気持ちがわかるわけがない…!

 

 

 

 

 

「そんな…つもり……なかった……違う…ちがう…!!しらなかった、そんな事実を知ってたなら―しって、たなら…!!」

 

 

 

 

 

『ミサキ、貴女はこう言っていましたね?―─虫唾が走る……何も知らないくせに、何も抱え込んでないくせに……何の痛みも知らない奴…と、――しかし実際は……どうですか?』

 

「ぁ……の…ときは、そんなの…知らな…くて……」

 

『知らなかったとしても……言ってしまった――痛みを理解している者に対して。例え環境が劣悪でも、確かに生きることを許されていた貴女達とは違い、全世界を敵に回し、枷に喉を圧迫されて生きてきた彼に対して』

 

「――ぃ、や、ぃゃ…ち…あぁぁっ…!

 

「ミ、ミサキさん!?しっかり!!」 

   

 

 

 

 

 

 

 ミサキは膝から崩れ落ち、自分の頭を抱えて呻き出す。

──「何も知らないくせに救おうとするな」などと、どの口がそれを言った?
何も知らなかったのは一体どちらだ?

 

 自分達だってマッシュの真実を知らなかったのに、あれだけのことを……そんな罪悪感が、ミサキに襲い掛かる――今までないほどに

 

 

 

 

 

 

「マダム、やめて!お願い…!!」

 

『裏切りについては問わないとは言いましたが……先生に対する仕打ちを咎めないとは、一言も言っていませんよ?

 

「ッッ!」

 

『――――サオリ』

 

「ぁ……ぁ……ちが………わたし…は…」

 

『生きることさえ許されず、差別され、弾圧され、迫害され…生きているだけで罪人として扱われ、処刑されていくのが当たり前――そんな世界で育った……そんな世界で生きてきた彼を貴女は―――』

 

 

 

 

 

 

 

 支離滅裂な言葉を呻くように漏らしながら、許しを乞うように自分の耳を塞ぐサオリ……だがそれも無意味、ベアトリーチェの声は魔力によって脳に直接響く……自分の罪を、はっきりと、突きつけられる形で。

 

 

 

 

 

 

 

『この世界でも……殺そうとした』

 

「………………………………ぁ…ぅあ…?」

 

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、サオリの脳内に流れたある光景………それは自分がマッシュに対して言った心のない言葉の数々

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――お前のような、恵まれている人間にはわからないだろうな!!

 

 

 

 

 

 

 

全く恵まれていない人間

 

 

 

 

 

 

ゴミ溜めで育った、頼れる親もいない、満足な食事もない、光さえ届かないどん底のさらに下で……その下で生きてきた……

 

 

 

 

 

 

彼を拾った育て親がまぐれ当たりだっただけで、他の者が拾ったなら……否、他の者なら、拾うこともなくゴミ溜めに捨て置いたであろう人生

 

 

 

 

 

 

 

生まれるべきじゃ無かった私達の気持ちなんて―─わかるはずがない!!!

 

 

 

 

 

 

生まれることそのものを望まれていない彼に対して――彼女、錠前サオリはこんな言葉を幾度も重ね…挙げ句、彼の命を奪おうとした。

 

 

 

 

 

 

「ァ……ァ、ァ、ァ…!」

 

 

 

 

 

 自分の似たような境遇の―─痛みを知るからこそ手を差し伸べてくれた――彼を

 

 

 

 

 

 

 

「ぁぁぁぁぁアアアアアッッッッッ!!!!!」

 

「サオリっ!!――マダム……!!!」

 

『………ここまでの効果があるとは……ふふっ、貴方の言った通りでしたね…イノセント・ゼロ――暴力による教育よりも、こういった手段を用いたほうが効果は大きい』

 

 

 

 

 

 

 サオリは両耳を押さえながら地面へと屈み込んだ。

自分を認めてくれると言った人間を、光を見せてくれた彼を、家族(アズサ)を笑顔にしてくれた者を――心身ともに攻撃した、その罪悪感が膨れ上がって精神を押し潰し、遂にサオリは壊れた。

 

 

 

 

 

心の中にある罪悪感を膨れ上がらせ、発狂に追い込む古の禁忌魔法。習得しておいて正解でした……固有名がないのは、なんとも残念ですが』

 

「わたしは、私は、わたしは、私は……―私は……!」

 

「ぁ、ぅぅぅぁぁ……」

 

「ふ、2人ともしっかりしてください!!」

 

『その魔法は罪悪感を肥大化させるだけではなく……その体を蝕む作用もあります……さあ、次はヒヨリ、貴女の番ですよ――悪いと思っていることはちゃんと謝らなければ………ね?』

 

「うっ……!!」

 

 

 

 

 

 ベアトリーチェがヒヨリに、古の魔法をかけようとした瞬間……ヒヨリの前に、サオリが立つ…その体を震えさせながら。

 

 

 

 

 

「やめて……くれ…」

 

「サオリさん…!」

 

『――見事です……錠前サオリ。心身ともに弱っているはずなのに、そこまで動けるその強靭な精神を讃え………最後の"温情"を差し上げましょう』

 

「だめ、聞いちゃだめ!! サオリ!!」

 

『その苦しみを家族に浴びせられたくなければ従いなさい……従わなければ、アツコにもヒヨリにも……味合わせます――体さえ残っていれば、後はどうでも良いので』

 

 

 

 

 

 

 

 無情にもそう告げるベアトリーチェに、サオリは反対できなかった……自分の苦しみを家族に味合わせたくなかった、自分の罪を、誰かに背負わせたくなかった。

 

 

だからこそ、その温情の条件を……飲んだ。

 

 

 

 

 

 

『シャーレの先生……彼に深傷を負わせ──彼を消しなさい。救いのない人生を歩み、貴女達からも罵られた彼を、苦しみに満ちた虚しき人生から解放すること。それが、今の貴女に出来る唯一の贖罪です。貴女の命と引き換えにしても、例え刺し違えようとも、どんな手を使っても構いません……それまでの間は、その二人を逃すことにしましょう』

 

「―――ぅ、うわぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」ガシッ

 

 

 

 

 

 

 

「逃す」という言葉を聞いたヒヨリは、近くにいたミサキを抱え、その場から逃げ出した。

 

 

 

 

 

 

「ッ、待て!!各員、追撃しろ!!」

 

『追わなくて結構、放っておきなさい……さあ…サオリ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『最後くらい…()の役に立ちなさい』

 

 

 

 

 

 あまりにも無情で、過酷で、理不尽な光景を、アツコはただ見ていることしかできなかった。

……判断を誤った。心の中で何度も謝罪をしながら、無力感(虚しさ)に心を蝕まれるような感覚の中、アツコは──

 

 

 

 

 

 

(――せんせい…)

 

 

 

 

マッシュに、祈りを捧げるほかなかった。




すみません、アリウス曇らせ(捕虜)は次回になります……いやぁ〜はっはっはっ……胃が痛い。

 
Q.イノゼロパパがすぐに帰らせたと言っていたのに、なんで魔法のことを教わっているの?

A.また後ほどわかるので、どうかお待ちください。





総力戦をやっている弟妹先生が今日こんなことを言っていました


『この猫だいぃぃぃぃっきらい!!!』


と、私もまあまあ嫌いです。


励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。

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