今日の我が家 〜プール編〜
妹『かき氷うま、やっぱイチゴが一番』
弟『一番はブルーハワイ、これは譲れん』
妹『やるき?』
弟『上等!!』
私『泳げよ君達』
なんでプールに来て泳いでないんでしょうね……泳いだとしても、お互いに沈ませ合う……やっぱズレてますよなぁ我々。
それでは本編へ……どうぞ!
「――そして、その狐を見て彼はこう言ったのです」
トリニティの拘置所内、マッシュは差し入れとして持ってきた絵本をアリウス分校の捕虜らへと読み聞かせ
「コン、お前だったのか……いつも鰻をくれたのは…と――ぐすん」
「「「コォォォォォォォーーン!!!」」」
捕虜たちと一緒に絵本を読み、泣いていた。
初めて触れる情操教育を受けた捕虜達は、未だにガスマスクを首元に下げているが、これまで隠してきた顔は涙でぐしょぐしょになるまで濡れていた。
「コン…なんて、なんて健気なやつなんだ…グスッ」
「兵助もいたたまれない………誰も幸せになってない…!!」
「さっき読んでくれた蕪太郎や銀太郎とは全く逆の話だな……」
「…もう少し、楽しいお話を選んだほうが良かったかな。僕も悲しくなってきちゃった」
「…いや、でも……聴いてて楽しかったな、本当に……大切なことを学べた」
「それならよかった」
マッシュは牢獄の中で様々な種類の絵本を整理しながらそうつぶやいた。彼がいるのは牢獄の"前"ではなく"中"である。鍵はいつも通り、許可を得た上で筋力で破壊して外している。
捕虜となっていたアリウスの生徒ら数十名に読み聞かせを行なっていく中、マッシュはしっかりと彼女らの表情を見ていた。
ウキウキしている者、熱心に聴いている者、泣いている者、楽しそうな笑顔を見せている者、どれもこれも新鮮な表情を見せており――今までこんなことなかったんだろう、と静かに確信する。
「……そろそろ聞いてもいいか、マッシュ・バーンデッド」
「長いからマッシュでいいよ」
「なら、マッシュ……なぜ、急にこんなことを?」
「ここに投獄されてる間は絶対に暇だろうな〜と思って」
「暇は……そうだが」
「後は君達とお話がしたいな〜と思ってさ、政治云々とか関係なしに、個人としてさ」
「…………少し変わったな、マッシュ・バーンデット」
「変わった?」
「ああ………この前会った時よりも、知的に見える」
「……ほんと?」
「本当だ」
「……僕も変わったんだなぁ」
マッシュがキヴォトスでシャーレ顧問に就任し、先生として活動を開始してから数ヶ月が経過していた。その間、マッシュは様々な経験を通して、多くの知識を吸収して成長を続けていた。
それは決して悪いことではないはずだが、同時にマッシュがそれまでのマッシュらしさを失うことを意味している。マッシュは少し考えた、「このままでいるのか、昔の自分に戻ってみるのか」という選択を。
「……大人を相手しているようで、少し…嫌だな」
「大人は嫌い?――あっ、そうか……ごめん」
「気にするな………ただ、大人は嫌いだ。嫌いに決まっている」
「…だよね」
「大人ぶっている子供も嫌いだ……大嫌いだ」
マッシュの眼前で膝を抱えて体育座りした捕虜達のリーダー、隊員番号270…すなわち、あの夜の体育館でマッシュと交戦し、ミカとの戦いに勝利したマッシュを見て投降すると決めた生徒が、吐き捨てるように呟いた。
「偉そうに、難しい言葉をつらつらと並べているだけで、結局は私達を見下し利用しているだけ………マダムがそうだった」
「……」
「連邦生徒会の連中も……トリニティやゲヘナのトップ達も……政治家や生徒会役員なんて大嫌いだ……雰囲気も、態度も……少し、似ていて…」
「ミカさんは?」
「奴は違う……子供っぽい、ワガママで幼い、そんなところがあるから……全然…嫌いではない」
「今の、知的っぽい僕は……苦手?」
「知的と言うか…大人っぽいお前は……少し苦手だ」
「なるほど……先生モード、一旦やめようかな」
「そんなスイッチを切り替えるように性格を変えられるのか…?」
「ここにきて身につけたスキルだよ」
「………ツッコまないぞわたしは」
マッシュはこれまで、キヴォトスの生徒達にとって頼れる存在として在り続けるために、生徒との接し方に「先生らしい振る舞い」を欠かさないことを心がけていた……しかし、接する相手が大人を苦手とする以上、これまで通りの子供に戻るのも手である。
「………一つ教えてくれ、マッシュ」
「?」
「お前はここにきて…寂しくないのか?元の世界が恋しくないのか?」
「そんなことはないって言ったら嘘になるかな、唯一の親であるじいちゃんに会えてないってのは結構悲しい………でも、なんでかな――元の世界より、こっちの世界の方が住みやすいんだ」
「何故だ……銃弾一発で、お前は死ぬ。加えて私達のようにお前を狙う存在もいる…それなのに、そんなキヴォトスがお前にとっては住みやすい場所なのか?」
「あー、言い方が悪かったかな……一応それについて分かってもらうためには、説明しなきゃいけないことがあるんだけどさ……君達に教えて大丈夫そう?」
「……頼む、ここにいる全員が…お前を、知りたがっているんだ――どのような事実であっても、私たちは受け入れる」
「……じゃあ話すよ、僕の全部を」
マッシュはその場にいるアリウス生に、自分の知っている限りのことを話した。
自分がいた世界──魔法界には、ちょうどキヴォトスの生徒に神秘が存在するように、全ての人間に魔法を使う力が与えられている。生まれて間もないマッシュは捨て子となり、彼を拾った育ての親であるレグロはまぐれ当たりの聖人だった。しかし自分はその魔法を使う力がない……それ故に人前で生きることは叶わず、ひっそりと親子二人で暮らしてきたことを、全て話した。
「世界から嫌われてたり、僕やじいちゃんと同じような人が迫害されてたり、肩身が狭い思いしてるって話は最近知ったんだけどね」
魔法を使えない魔法不全者や、生まれつき魔力が弱い人々がどのような扱いを受けているのかについて、そして知らずのうちに自分が迫害されているという事実を知ったのは、以前にレグロがこの世界に現れ、柴関ラーメンに立ち寄った時のことだった。
席を空けている間、マッシュはトイレの中でレグロの話を聞いていた……最初はかなりの衝撃な事実だったが
『世界からどう思われていようと関係ない、僕の運命は僕のものなんだから関係ない』
と、当初は気にしないスタンスを貫いていた。
「………………はっ……ははっ……」
「えーと……面白かった?」
「ちがう………違うんだ…、マッシュ…!われ……我々は……私はっ…お前たちを、迫害した者達と同じように…お前を……お前を…殺そうと…!!!」
「あー、なるほど」
「やっと、やっとこの世界で、お前は周りから愛されたというのに…いうのに…!」
「それなんだけど、僕は―」
「ごめんなさい…ごめん…なさい…!!」
「すまない……本当に…すまないっ……!」
「………みんな?」
リーダーだけではなく、周りに座っていた捕虜達も涙を流し、罪悪感に襲われていた……ここでもまた、ベアトリーチェの魔法がアリウス生の心を蝕んでいた。ベアトリーチェはあらかじめ、彼女らに魔法をかけていたのだ……
「…………この子達を縛り付けて、本気で壊すつもりだったんだ」ギリギリッ
その意図を理解したマッシュは、激しい怒りを押し込めて歯を食いしばる。大人の先生ではなく一人の人間として、彼女たちを穢れた
「――結局……我々が、幸せになる…価値なんて……」
その言葉を遮る形で、リーダーの両頬にマッシュの手が添えられた。
「よく聞いて、僕の命を君達が狙って来たことに関してはもう何も感じてないんだ。だってもう、過去のことだ」
「だが、だが! 例え許されても……過去は…!」
「過去は消えない、それはそうだよ――だから、今を塗り替えるんだ」
「塗り…変える?」
「辛い過去を幸せな今に、過去の罪を今の宿罪に、そうしていかないと、人は前に進むことも、後ろを振り返ることとできない……って、僕は思うな」
「……マッシュ……」
顔から手を離し、マッシュはリーダーがつけていたガスマスクを取る……
「……過去の自分とさようなら。こんにちは、今の自分」
「……いいのか…? 我々が……
「勿論。それに、そもそもアリウス分校っていうのはその人のモノじゃない。君達の運命は君達のものなんだ――悪い奴の奴隷になんて、ならなくていい。君達はもう───」
マッシュはガスマスクを両手で持ち、力を込め
「自由だよ」
『―――――――――ッ!』
ガスマスクを破壊し、彼女らを呪いから解放した……彼女らは子供、まだまだ青春を楽しめる権利がある、それを縛り付けることは…誰にも許されていない。
捕虜達は次々に涙を流し、安堵の気持ちを溢れさせながら…希望を抱きながら、マッシュに礼を言っていく。そんな捕虜らに、マッシュは一言
「助け遅れてごめんね――ここから、遅れを取り返すよ」
そう告げ、右拳から親指を立てる。
「あり……がとう…!」
「どういたしまして……でも遅れちゃったのは事実だし、何か欲しいものはない?なんでもいいよ」
「そ、そんな、助けてくれる、その気持ちだけで…」
「そうだ、私達は、もうそれで…」
「せっかく自由なんだから、これまで許されなかったワガママもどんどん言っちゃおうよ――全然許すから」
そうは言うものの、彼女たちはまだ世間を知らず、自らの意思で自己決定する力を持たない。
そんな中、リーダーだけが声を上げた。
「………名前が、欲しい」
「名前…………えっ、まさか皆名前までないの?」
「ああ……これまでは皆一様に、番号か兵種で呼び合っていたんだ」
「でも、サオリさん達やアズサちゃんにはちゃんとした名前があるよ?」
「あの人達はネームド……つまりは、位の高い人であり、マダムの計画にとって重要な存在だったからな……雑兵にはそんなもの必要ない、と…昔から言われてきた」
「……………ベアトリーチェって人を殴る理由が一つ増えた」
「私も…名前というものが欲しい………私という存在が、私だけだという理由が………欲しいんだ」
そうお願いされたのなら断る理由はない、マッシュは真面目に、真剣にどんな名前にするか考える……のだが、名付けという人生において大事なことを決めるので、かなり緊張していた。
「今まではなんて呼ばれてたの?」
「……270、私の隊員番号だ」
「ニーナナゼロ………ニーナナ……――閃いた」
「本当か?」
「うん……ニーナ、
「ニーナ……か――気に入った」
発想は安直かもしれないが、恩人が考えてくれた名前。
「――そろそろいかないと、この本とクマの人形、置いてくね」
「ま、マッシュ!」
「ニーナちゃん、なにかな?」
「お前は、お前のやりたいようにやってくれ……先生としてではなくて――一人の、人間として……頼む……アリウスを――皆を、あの場所から救ってくれ!!」
「……任せなさい」
ニーナの願いを受け取ったマッシュは、右拳の親指を立てて牢を後にし、次なる目的地へと向かう………そしてマッシュはこの時、この瞬間に、
「――先生モード、ちょっとの間、やめよう」
この一件の間は「シャーレの先生」ではなく、一人の男───マッシュ・バーンデッドとして動くことに決めた。
帰ってきたぜ、わたしたちのマッシュ君が!!ということで、次回から少しの間は先生モードを切ったマッシュ君……つまり、難しい話を少しは理解するものの、ショートもちゃんとするマッシュ君が戻ってきます。
ニーナちゃんの見た目は、アリウスモブと似たような感じなのですが、髪型はポニテ、身長は160、年齢は16ぐらいだと想像しております……想像力が乏しいのが憎い。
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