8月がもう終わる……虚しい
「……ふぅぅぅ……良し」
ニーナ達との面談を終えたマッシュは、次の目的地であるミカの元へと向かっていた。
(でもミカさんって意外と頑固だからな……どうやって説得しよう、とりあえずシュークリームで釣って、そのあといろんな会話を弾ませて…)
シュークリームで釣れるのはマッシュかシュークリーム狂いの生徒だけなのだが、そこは置いておいて……頑固なのはマッシュも同じであり、一度やると決めたらやめることはない――
だが、かかる時間など関係ない。何時間、何日、何週間かかろうと、ミカを説得する。マッシュには、彼女を助け出すことを誓った揺るぎない意志がある。その意思に勝るものはない。
「……ここだ…なんか、緊張しちゃうな………最初は、軽くノック、軽くノック…ノック……」スッ
マッシュは拳を出し、鉄格子付きの扉を軽く叩こうとする――ここで問題だ
今のマッシュは先生モードではなく子供モード、つまりは元々のマッシュに戻っている。そんなマッシュが今扉をノックするとどうなるのか?
ガバァァァァァァァァァァッン!!!!
「イヤァァァァァァァ‼︎?」
「やべ」
こうなる。
「ねぇマッシュ君!!前々から思ってたけど、扉に何か恨みでもあるの!?」
「恨みはないんですけど……ごめんなさい、ノックの力加減ミスっちゃいました」
「そのレベルじゃないよね!?と、と言うか、何回も聞くけど本当にちゃんとナギちゃんに許可取ったの!?」
「勿論です、ミカさんに会いたいんですけどって聞いたら、OKって」
「軽いっ……!!!」
「まあまあ、細かいことはいいじゃないですが」
「全然細かくないんだけどなぁ〜‼︎」
消し飛ばした扉の破片を拾いながら、マッシュはミカに近づいていく……ミカはマッシュと会った時に話したいことがあったのだが、それが今吹き飛んだ。
「ミカさん、聴聞会に出ましょう」
「……ごめんねマッシュ君、せっかく説得しにきてくれたのに……でも、わたしね?」
「行きましょうよ」ズイッ
「う、うん、だからね?」
「行きま……いや、行こうよミカさん。ついでにこのままナギサさんにもお話を」
「ねぇ一旦話聞こ? ね? ―って、ちょ、近い近い!――今日なんかグイグイ来るね⁉︎」
「引けば負けって言いますし」
「こう言う場面の時は一旦引くの‼︎ あっ、こら、両手掴んじゃダメって…!」
「行くって言うまで、離しません」
ミカの腕をしっかりと掴み、ナギサの元へと運ぼうとするマッシュ。しかもちゃんと力を入れ、地面にヒビが入るほど、足に力を入れていた
「――もう!」ブチッ
「ミカ―うおっ…」
「話を聞いてって……言ってるじゃん!」
そんなマッシュに痺れを切らしたのか、ミカは自分の手を掴んでいる腕を逆に掴み返し、そのまま綺麗な姿勢を作り、背負い投げを彼にお見舞いした。
「おげっ」
「はぁ…はぁ――なんか今日のマッシュ君、ちょっと前のマッシュ君みたいだよ⁉ ほんとに‼︎」
「1人の男としてミカさんを説得しにきたんです、だってミカさんは―」
「あのねマッシュ君‼︎ わたしね‼︎」
「ちゃんと聴聞会に出る気だから‼︎」
「そんなこと言わずに、ミカさんはもう…………えっ、出るつもり?」
「そのことについてもお話がしたいから、とりあえず落ち着いて、柔らかいベットの上で…ね?」
「……うす」
ちょっとした事があったが、マッシュとミカはまた一対一でお話をすることに、その時のミカの目には、マッシュが先生として映っておらず
ただ1人の男の友達として、映っていた。
「ほんとうにすみませんでした」(土下座)
「テンション上がっちゃってたんだし、しょうがないけど……とりあえず扉を壊すとはもうやめよ?」
「…………………………勿論」
「その間は何? マッシュ君って先生モードじゃないと扉を破壊しちゃう病気にでもかかってるの?」
「まあ癖だと思えば…」
「そんな癖早く直そうよ⁉︎」
柔らかいベットの上で綺麗な土下座をしているマッシュと、お姫様座りをしているミカ。シリアスな雰囲気が多かった2人であったが、今は完全にギャグ寄りになり、空気が羽のように軽かった。
「所で……聴聞会に出るって言ってましたけど、どうして急に? ナギサさんのお話だと、行く気はないって言ってたって聞いたんですけど」
「そりゃあ…さ、最初は本当に行くつもりなんてなかったの、ナギちゃんは私が聴聞会に出席すれば全てが丸く収まると思っているみたいだけれど、トリニティはそんなに甘くない。
今のティーパーティーの権威は地に堕ちた、以前と比べれば一目瞭然、表の騒動とか見なかった? 時々、サンクトゥス派の生徒がデモを起こしに来てるけど」
「その人達はもう追い払いましたよ」
「…流石はマッシュ君……ちょっと驚いちゃった、以前ならあぁいった活動も全部取り締まれていたんだけれどね? 学園内の世論も、政治的な立場もそう、今のティーパーティーは学園を制御出来る程の力が無くなってしまったの――当然だよ、私があんな事をしちゃったんだから」
最早、現在のティーパーティーは権力が失われたに等しい。幾つもの分派の集合体であるトリニティ総合学園を取り纏めるだけの力は皆無、ホスト代理として活動しているナギサが指揮を執っても尚、騒動の収拾がついていない現状が状況を示している。
「そんなボロボロの状態でさ、ナギちゃんが私を庇っちゃったらどうなると思う? ナギちゃんどころか、同じティーパーティーのセイアちゃんの立場すら危うくなっちゃうよ」
「ミカさん……」
「私なんかの為に、そんな事にはなって欲しくない……これは全て私が払わなくちゃいけない代償なの」
「……その代償なら、もう」
「――って、この前セイアちゃんにぶちまけちゃったんだよね〜」
「…………あれ?」
なんとミカは、自分のその思いをセイアに話していた。他人を頼れ、1人で抱え込んじゃダメ、そうマッシュに教わったので、ミカは遠慮しながらもセイアに頼ってみた……その結果。
『――FOXアタッーーーク‼︎‼︎』
「って言われながら、ステンレス性のトレイで殴られちゃったの⭐︎」
「アグレッシブすぎませんか? セイアさんってそんな人でしたっけ」
「『君のようなタイプは殴った方が手っ取り早い‼︎』って言われちゃった……」
「……………」(同じようなタイプの人)
「トレイで殴るのはなんで?って聞いたら、『夢の世界じゃないここで君を頭を殴れば、わたしの腕が折れる』って……夢ってなんなのかわからなかったけど」
「…………」(自分のほっぺたを触れる)
「……あ、話を戻すね? セイアちゃんのそのあと、病み上がりなのに、わたしをしっかりと叱ってくれたの」
ミカが思い出していたのは、その時の光景。ゼェ…ハァ…と息を吐き、慣れないながらも大声で自分を叱りつけた友達の姿、それを線密に思い出していた。
『わたしの立場が危ういだとか、私達に迷惑がかかるだとか、そんなの私たちが一言でも言ったのかい!? 』
『で、でもさ…セイアちゃん』
『君と言い先生と言い、なぜこうも力の強い者達は1人で抱え込もうとするのか……心配するこっちの身にもなって欲しいね‼︎』
『え、えっと、ごめんね…?』
『…先生が君を許したように、私も君を許している……この話は、これでおしまい。―だからミカ、もう自分を責めず…戦ってくれ』
『セイア…………ちゃ…ん……』
『そもそも、君とちゃんと話をしていなかった私も悪いんだし………悲しい思いは、もうたくさんなんだ――そうだろう? ミカ』
『―――う"ん‼︎』
2人は、今度こそ本当に仲直りをしていた。ミカともっと話していれば、セイアともっと親身に話し合っていれば、ナギサとちゃんと腹を割って話し合っていれば、こうはならなかった……そうティーパーティー全員が後悔をしていた。
それを気づかせ、行動へと移させてくれたのは…マッシュだ。
「僕の知らない所でそんな事が…」
「ナギちゃんにはまだ言って無いんだけどね……と言うか言えてないの、忙しすぎるみたいで、お話の機会とか、あんまりなくってさ」
「成程」
「私さ……罪から逃げてた気がするの、みんなから許されなければ、そのままおしまい、苦しむのも終わりって」
「…」
「でも……今は違う、罪を償うためにも、背負っていかなきゃダメなんだって」
「その罪と一緒に背負う―って、僕言いましたしね」
「一緒に罪を償う……おかしな話だよね、先生は何も関係ないのに」
「ここにいる時点で、それはありませんよ」
「――先生はそう言う子だったね……」
ミカは『ん〜〜〜』と言いながら背筋を伸ばし、マッシュの方へと体を向ける、そして、彼の腕へと手を伸ばし強く握る。
男らしい、ごつごつとした手…けれど温みがあり、握っていてどこか安心する…そんな手。
「……ねえマッシュ君…今のマッシュ君って……どっち?」
「どっち…とは?」
「先生なのか、私達と同じ子供なのか」
「今の僕は後者ですね……あっ、あと1人の男の友達」
「ふ〜〜〜ん……なら――え〜〜い!⭐︎」バッ!!
「うおっ…」
ミカは勢いよくマッシュに飛びつき、そのまま押し倒した。完全に油断していたマッシュは、ミカの飛びつきに反応できず受け入れてしまい、自分の上にミカが寝そべっている状態になってしまった。
「えへへ〜、一度やってみたかったんだ〜⭐︎」
「いきなりは危ないですよ」
「いいじゃんいいじゃん、マッシュ君って頑丈だし」
「それはそうですが」
「お布団とは違って、ごつごつとしてて硬いけど……ちょっと安心するね……暖かいし、このまま眠っちゃいそう…」
マッシュの上に寝転がり、耳を心臓に当てる…それを聞きどこか安心したような息を吐き、微笑んでいると、ミカはマッシュに告げる。
「アリウスのみんなを…助けに行くんだよね?」
「はい」
「マッシュ君……私は、何があっても、マッシュ君の味方だよ」
「この前を言われちゃいましたね、それ」
「例え世界が敵に回っても、どんなにマッシュ君が嫌われても――マッシュ君のことは、私が守ってあげる」
「……こそばゆい…です」
「え〜もう〜!照れちゃって可愛い〜〜‼︎」
「揶揄わないでください…」
「マッシュ君も男の子なんだ⭐︎」
「………………そうです、男ですよ…だからミカさん」
マッシュはミカに向かって、真剣な表情で告げる。
「僕以外の男の人に、こう言うことしちゃダメですよ」*1
「――――――マッシュ君のバカッ!」
「ええなんでいきなり…?」
「知らない‼︎」
「じょ、情緒不安定…?」
ミカはマッシュの胸筋に顔を埋めながら、その照れている顔を隠す……羽を大きく羽ばたかせながらも、その恥ずかしさを必死に隠す。
(………怒らせちゃったかな)
「……なんでこの子が、あんな思いしなくちゃダメなんだろう」
「…?」
「あっ…ごめん、気にしないでねー」
「……し、しばらく…こうしておきますか?(機嫌を直してもらわないと…)」
「うん! 動いちゃダメだよ?」
「善処します」
マッシュがもう無心で胸を預けている間、ミカはあることをずっと考えていた――それは、セイアと話をした時に告げられた……一つの真実。
(――ねえ神様……マッシュ君が何かしたの?)
それは──神々に嫌われ、然るべき祝福を知らずに生きてきた、息苦しい世界の住人……マッシュ・バーンデッドの真実だった
セイアさんが強化されまくってる? マッシュ君パワーですよ、マッシュ君パワー。
今週中にはもうアリウススクワッドのみんなを助けれると思います、そしてそのシーンは胃が痛くなる予定です……私が!!
皆さんはあのクソ猫との戦闘はいかがですか?……私はもう、やめまたした………セト君の方が楽しいもん。なんなら妹弟先生もキレてました……あの猫だけは本当に!嫌い!!
次回はセイアさんのあれこれ、そしてその次がいよいよ……あの伝説のシーンの回です、どうぞお待ちくださいませ
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