セイアさん関連とは言ったものの……ほとんどベアトリーチェ回になってしまいました……ごめんなさい。
でもサプライズがありますので、どうかお楽しみに……それでは本編へ、どうぞ!
ネタバレ注意です
「それでは、次の議題を――」
――ん?
セイアがその意識を浮上させた時、彼女の視界に飛び込んで来たのは薄暗く、陰鬱とした空間。天井に設置されたパネル型のライトが部屋の中を照らし、薄い赤色の壁が周囲を完全に覆っている。
「異論はない、だがその前に確認しておきたい事がある」
「マエストロ…何か気になる事が?」
暗がりで良く分からないが、良く良く見ればこの空間に存在する人影はどれも異形であった。
漆黒を連想させる罅割れた皮膚を持つスーツの男、首のないコートを身に纏った紳士風の影、木製の身体に軋む音を響かせる双頭の人形、白いドレスに赤い肌を持つ長身の女性。
――待て……まさか、彼らは…ゲマトリアか!?
神秘を探究し、それぞれの目的のために動いている謎の組織、ゲマトリア……セイアは夢で、彼らが話し合いをしている空間へと迷い込んでいた……肉体はなく、魂だけの状態のようだったが……今はそれよりも。
―敵の巣窟に迷い込むとは……つくづく、運がない…
「ベアトリーチェに質問がある」
「マエストロ、その前に私から質問をさせていただいても?」
「構わないが……どうした?」
「……その体はどうしたのですか」
「……はて、なんの事だ?」
「―その逞しくなった木製の肉体の事ですよ‼︎」
――……よくよくみたら、なんだ、あの体……
マエストロの肉体、それは普段通り木製の体なのだが……問題は、その木製の体に腹筋があり、スタイルも抜群、なんなら足は内股ではなくなっていた。
「…ああこれか? 少し鍛えてな」
「鍛えて…と言うか、体ごと変えましたよね?」
「はははっ、何を言っているのやら」
「……私も気になっていたのです…マエストロ、一体何があったのですか?」
「そうだな……黒服と同じように、あの先生に魅了された……フッ、それだけだ」
「クククッ……あなたも気づいたのですね、あの素晴らしい肉体の魅力に」
「いい大人がなんの話をしているのですか」
「子供の肉体に惚れ、魅了されそれを真似るなど……大人として恥ずかしくないのですか!」
『その肉体を欲している貴女『貴下』に言われたくない』
マエストロ同様黒服もマッシュほどではないが、綺麗なシックスパック、立派な上腕二頭筋にゴツゴツとした脚……なおかつスタイルがいい、そんな肉体に仕上がっていた。
「ここにまであの男の影響が……」
「……黒服やマエストロがそこまで影響されるとは、さそがし素晴らしいお方なのですね」
「ゴルゴンダもいかがですか?」
「遠慮しておこう」
「そう言うこった‼︎」(全力で拒否)
「デカルコマニーも全力で拒否っている事ですし」
「………そうか」
―………先生…君は、本当に……なんと言うか……
おそらくマッシュにボコされた2人なのだろうとは思うが、負かした相手が自分に影響されて鍛えているだろうとは彼は思わないであろう。
少しして、マエストロが『話を戻そう』と言い、再度ベアトリーチェに質問する。
「……要請によって、私は自身の力を貴下に貸したのは憶えているな? 戒律を守護せし者たちを複製し、そちらの計画に付き合わせた件だ」
「えぇ、感謝していますよマエストロ、お陰様で私は領地内に於いて更なる大きな力を得る事が出来ました」
「……私は貴下がそれを利用する事を許可した覚えはない、そも私の作品をそのように扱うなどと、一度も聞いていなかった」
「そうは云いますが――そもそも、あの現象はあなたの所有物ではない筈でしょう、マエストロ」
「不躾だな、私は所有権を主張しているのではない、それは――」
「まぁまぁ、お二人共落ち着いて下さい、事を荒立てる必要はないでしょう?」
「そういうこった!」
「……失礼しました、マエストロはきっと普遍的な現象を通じて独創的な解釈をする事は、自分なりの表現方法だと考えているのでしょう、彼にとって件の現象は既に作品の一つなのです」
「………」
「しかし、それはマダムの立場では特段考慮する必要がない部分かもしれません、私達は皆、この世界に対する解釈の方法が異なりますから」
「――つまり、私がマエストロの武器を勝手に奪った事が気に食わない、と?」
ゴルコンダの仲裁に、ベアトリーチェはその腕を組みながら淡々とした様子で問いかける。マエストロは悠々とした態度で、ベアトリーチェに告げる。
「貴下が行うのは芸術ではない、そこには何の美学もなく、信念も感じられぬ、ただ兵器を生み出すだけの行為だ」
「えぇ、その通りです――それに何か問題が?」
「……何?」
「ふぅ、良いですかマエストロ、私のスタンスは以前から何一つ変わってなどいません、このように扱うのはあなたの力だけではないでしょう、私は黒服が提供した技術力も、ゴルコンダが解釈したテクストも、同じように使っているのですから、そもそも私はあなた達の芸術に興味などないのです、【ゲマトリア】の一員となる時から主張して来た話だと思いますが?」
「………」
「クックック……えぇ、その通り、それはそれで構わないと、私はそう考えています」
ベアトリーチェの言葉に沈黙で返し、不気味に佇むマエストロ。その二人を視界に収めながらも笑みを零す黒服。
「彼女はキヴォトスに於いて自身だけの領地を確保しています、要素だけを考えるのであれば私達の計画に最も必要な代物でしょう、今、仲間同士で争う必要はないかと」
「彼女の領地……アリウス自治区ですね、ふむ、確かに内乱に乗じたとは云えあそこの全ての生徒と学園を自身の支配下に置いた手腕、それは偉業と云えますね」
―――やはり……ベアトリーチェ、彼女が…!
部屋の片隅で息を顰めながら彼らの言葉に耳を傾けていたセイアは、その言葉を聞き、苛立ちを隠さず表に出していた。彼女のせいで……先生も、友達も、多くの者が傷ついたのだから。
「黒服のアビドスについては非常に残念でしたが……おっと失礼、皮肉を云っているつもりではありませんよ、後一押しで成功する件の計画を惜しんでの言葉ですので」
「ククッ、お気になさらず、えぇ、確かにあの計画はあと一歩の所でしたが――シャーレの先生が介入した以上、成就した可能性は限りなく低いものだったでしょう………それから、できればもう二度と戦いたくないですね……ほんとに」
「……腰の件は、気の毒だったな」
「しかしまぁ――そのおかげで、この肉体があるわけですし……ククッ」
黒服はどこか感傷に浸る様に、マエストロは全身に歓喜を滲ませ、ゴルコンダは深く思案し額縁を撫で、そして、ベアトリーチェは……
「先生――私達の敵対者」
その無数の瞳に殺意を孕ませ、手にした扇子を力の限り握り締めた。ベアトリーチェだけは、他のメンバーたちとは違い……明確な殺意、明確な敵意を出し、その意見を出した。
「ふむ、ベアトリーチェ、その件については私達と貴女で聊か意見の相違がありますね」
「………」
「既に察しているとは思いますが、私は、あの者と敵対するつもりはありません、寧ろ私達の仲間に引き入れるべきだと考えています」
「私としても黒服の意見に賛成だ、彼の事は大変気に入っている、あの者は私達の真なる理解者になってくれるかもしれない存在だ、同胞として共に並び立つ事があれば、これほど喜ばしい事はない」
「ふむ……私はまだ判断を保留していますが、興味深いのは確かですね」
「――いいえ、あり得ません……あの男が味方になるなど…あってはなりません」
低く、ドスの効いた声でそう告げるベアトリーチェ……ゲマトリアメンバー達も、その殺意を感じ取り、冷や汗を少しかいてしまう。
「あの者は私の敵、私が倒すべき相手なのですから」
「………ベアトリーチェ、貴下は何故先生にそこまでの敵意を出している……計画を邪魔されたことは対しての怒りか?」
「それもありますが……私は、あの者の存在自体が忌々しくて叶わないのです」
「……ほう?」
「あの者は神に愛されず、然るべき祝福を知らずに生きてきたただの砂利……その砂利が、あの肉体を持っていることに―我慢ならないのですよ」
「……ふむ」
マッシュは魔法界で、神からの祝福…つまりは魔法を授かる事ができず、見放され、呪われた存在として生まれた。そんな存在が何故自分よりも高貴な力を持ち、素晴らしき肉体を持っているのか……それが我慢できなかった。
一番憤怒しているのは――その血
「あの方の血が混じっているはずなのに……どうして、ああも劣等遺伝子として生まれて来たのか……理解に苦しみます」
「ベアトリーチェ……あの方とは誰のことだ」
「貴女の様な人があの方、なんて言葉を使うとは……一体、どの様な方なのですか?」
「そう言えば……まだ話していませんでしたね……わたしがあの方とお呼びしている存在――それは、あの男の父親……イノセント・ゼロ様のことです」
『――‼︎』
――イノセント・ゼロ…‼︎
イノセント・ゼロという言葉に、セイアは驚愕し、黒服らはマッシュの父親だと言う言葉に度肝を抜かれ、その興奮を抑えきれずにいた。
「ベアトリーチェ、彼の父親と…接触していたのですか?」
「かなり前の話になりますがね」
「その者は……一体、どのような存在なのだ?」
「その者ではなくその方と言って欲しいですが……そこは一度置いておいて――あの方は、まさしく絶対者、神に最も等しい存在です」
「神だと?」
「……えぇ」
女性が自分の婿となる相手を、他の者に話す時のような声色と表情で、ベアトリーチェは淡々とイノセント・ゼロについて説明した。
「目に映すのも烏滸がましいほどの美貌、圧倒的なカリスマ性に他者を寄せ付けないほどの力……神にも等しい魔法の数々……あぁ、思い出しただけでも笑みが止まらない」
――あの男にそんな魅力なんて………いや、悪だからこその魅力か………厄介な…存在だな
「……接触したとおっしゃっていましたが、そもそもどうやって?」
「……ふふっ、そうですね…まずは、そこから話さなければなりません…――お話いたしましょう」
ベアトリーチェは持っていた扇子を広げ、口元を隠しながら、事細かく丁寧に、イノセント・ゼロと接触した時の話を語り出す。
「あれは数十年前……わたしが、崇高なる存在へと至るため、ありとあらゆる遺跡、書物を調査していた時でした」
――――――――――――――――――――――――
「…………?」
自室で古い書物を読んでいる時、何処からか視線を感じたのです……盗撮でもされているのでしょうか、そう思い、視線がする方へと目を向けたのです。
それは、窓から見える夜空……疲れているのでしょう、そう思い目を逸らした……その時
ズズズズッ…!
「なっ……―ッ!?」
天が歪み、一つの暗い穴が現れ、私はその穴に吸い込まれていきました。どれだけ抵抗しようとも無駄、無意味……私は、あっという間にそこへと吸い込まれてしまいました。
「――ッ……ここ…は……」
目が覚めると……そこは異質な雰囲気が漂う一室、魔法陣のような造形をしている円型の大きな机、その上に私は寝そべっていました。
(あの穴は……一体…それにここは……いえ、まずはここが何処かを突き止めなければ…)
すぐさま起き上がり、この場を調べようとした……まさに、その瞬間――今までに無い悪寒が全身に走り……彼らは現れました。
「……あ? なんだあの女、あんなとこで寝そべって」
「興味深い見た目の女性ですね……今まで見た事がない種族……――少し、興味が沸きましたね」
「待て……実験する前に遊ばせろぉ…」
「……兄様達、あれはおそらく侵入者です。僕がすぐに排除します」
「待て、お父様の意見を無視し、事を行うことは許されていない……指示を待て」
「…はい」
「っっっ…‼︎?」
目の前にいたのは五人の子供……1人はマスクで目を覆っていて、1人はメガネをかけながら、プリンを片手に持っており、1人はピエロのような服装、1人は独特な髪型をしていて、1人はピンク色の髪を持っている……年は大体8〜9歳程度、独特な見た目を持つただの子供……ではなかった。
「……あ? 何睨みつけんだお前―――殺しちまうぞ」
(私よりも……はるかに…強い…‼︎)
「やめろデリザスタ、お父様の指示に従え」
「ドゥウム兄様……そのお父様が今不在だから、今のうちに殺しとこうって話してるんだけど?」
「僕も賛成です」
「ほら、ドミナもこう言ってんじゃん」
「殺す前に遊ばせろ、試したい悪戯が山ほどあるんだ……エビデムに譲るのはその後」
「ファーミン…兄者、それはずるいですよ――兄者がいたずらをした相手なんて、ほとんど虫の息じゃないですか……それだと実験の意味がない」
子供の会話とは思えない単語の数々……1人、1人が異質そのもの……特に、おそらくは長男であろうと思われる、マスクで目を隠している子供は……あまりにも…強すぎる。
「貴様らいい加減にしろ、私は無益な殺生や無粋な振る舞いを起こす事を好まない、お父様の命令以外での殺傷は許さん……命令が聞けないのであれば、ここでわたしが――」
「貴方達は一体、なんなのですか‼︎ ここは、一体――」
「喧嘩はやめなさい、お前達……喧嘩をするために、集めたわけでは無い」
『…………』
「……‼︎⁉︎」
「彼女は、世にも珍しい客人なんだ……丁重におもてなしをしなさい」
異質の中の異質………五人の子供達とは比べものにならないほど……いや、比べることもできない程に……強大な存在。
「初めまして…私は、イノセント・ゼロ……君を覗かせてもらっていた人間さ」
「私を……のぞいて…?」
「元の世界のことは心配しなくてもいい……どうせここへ来れるのは一時的だけ、すぐに戻れる」
私はそんな彼の方を恐れ、立ち上がり声を張り上げる
「何者だ‼︎ 除くとはどう言う……そもそもここは……ッ…答えなさい‼︎」
「ハハハッ、そう焦らなくても、ゆっくりと話していくさ…だがその前に……君は――」スッ
ザシュッ!!
「少々図が高いな」
「―ァァァァヅヅヅ!!?」
彼の方が手を上げた瞬間、私の両足は深く切り付けられ、再度机の上へと倒れた。私の両足を切り付けたのは、血のついた巨大な剣を所持していたドゥウムと言う子供。
「さあ、これでやっと話ができる」
「きさ―ガッ!?」
「お父様が喋っている最中だ、黙って聞いていろ」
(なんと言う、握力を…‼︎)
「お嬢さん……時間はまだたっっっぷりと残っている」
机の上に乗り、痛みで表情が崩れ怒りを燃やしている私のほおに触れ…彼の方は
「楽しいお話をしようじゃないか……君のことを聞かせておくれ…
紅色の肌を持つ、美しい…お嬢さん」
怪しげな、人のそれでは無い笑顔を見せ……いえ、魅せてくれたのです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「(っ……今の、は、いったい……いえ、いまは……)……ぁ…ぅ"…ぃ“…‼︎」
「うわぁ、ドゥウム兄様は容赦ないな〜」
「彼女、あの痛みを耐えていますね……本当に興味深い」
「……あれで死なないんだなあいつ、今までの奴らは、みんなあれでショック死してたのに……」
「お父様を前にあんな態度を……むしろあれで済んだことを感謝すべきです」
「相変わらずだなぁドミナは」
あのような痛みは生まれてはじめの体験で、切り付けられた両足からは大量の血が流れ、体から何かが抜け出ているような感覚に襲われ、汗も止まらず……あの時は本当に大変でした。
「ドゥウム、彼女を離してあげなさい」
「…よろしいのですか」
「ああ……話し合いをするのに、これじゃああんまりだからね」
「……」スッ
私の体を押さえつけていたドゥウムという子供は、彼の方の指示で私を押さえつけることをやめ、剣についた血を拭いながら他の子供達の方へと戻りました。机の上には、私と彼の方のみが残されました…。
「私は君がいた世界を、過去に何度も覗いていた……だが、覗けば覗くほど謎が深まり、さらには様々な妨害を受けてしまってね」
(妨……害…いや…そもそも、この男は……ッ…ぁ…)
「……ん?――ああすまない、その状態だと、碌に喋れないし話も聞けないな」
「なに…を…!」
彼の方がわたしの傷ついた足に触れ、何かの呪文を唱えたかと思うと……次の瞬間――私の足は、綺麗に治っていたのです……まるで、傷なんてつけられていなかったかのように。
「これ…は…⁉︎」
「ふふっ、良いリアクションだ」
「今……何を、したのですか」
「なぁに、ただの治癒魔法さ」
「……魔法…ですって? そのような、非現実的なものがあるはずが…」
「それはおかしな反応だな……現に、その非現実的なことが眼前で起きて、君はそれに巻き込まれたことでここにいるんじゃないか」
「ッ……」
「フフッ、そう睨まないでおくれ……せっかくの美貌が台無しだ」
彼の方が私の顔に触れた、触れられた……あの頃の私はそれが腹立たしく思いました。私は怒りに身を任せ、扇子に仕込んだナイフであの方を刺し殺そうとしました…けれど
グサッ!
「なっ……‼︎?」
「積極的だなぁ君は……嫌いじゃないがね」
(手に刃物が刺さっているのに、この態度……痛覚がないのか…⁉︎)
「勘違いをしているようだが、私にも痛覚は存在する……しかし、これまで数々の魔法で体を改造を続けてきた弊害か……今となってはなんとも鈍くてね」
「人間……なのですか、あなたは」
「勿論…」
「ッ…‼︎」
刃物が刺さったまま、態度を変えず顔色ひとつも変えないあの方に……私は生まれて初めて、心の底から、「この者を排除しなければならないという確信」を得たのです………今思えば、いずれにせよ私には達成できなかった愚行です。
「あなたがどのような存在なのかは存じ上げませんが……私の―─この私の計画に支障をきたす可能性があるものは、徹底的に排除しなければいけません」
「……ほおぅ?」
「――お前…」
「ドミナ、命令だ……手を出すな」
「しかし…お父様」
「彼女が狙っているのはこの私だ、なら部外者であるお前が口を出す権利はない……良いな?」
「……はい」
「それに彼女1人くらい、私だけで十分だ」
「――その口を…今すぐにでも、閉ざして差し上げましょう‼︎」
その宣言と共に、私の肉体が変質してゆく……その身体は人型のものから異形のものへ、乗っていた机が破壊され、衝撃で私以外の者達は後ろへと後退する。
私の足は根の様に伝い、木の枝のように枝分かれした翼を模した骨格が伸びる、蕾の様に閉じた顔が、紅を浴びて開花する。
そして花弁一枚一枚に張り付いた瞳、眼光、背に顕現する赤の円環……怪物となった私が、彼の方を見下し、笑みをこぼしていたのです。
「これこそが本来の姿――偉大なる大人の姿なのです‼︎」
「うっわ気持ち悪……センスの無さが天元突破してんじゃん」
「ますます興味が湧いてきますね」
「……でも雰囲気が完全に変わった、あいつ、まあまあ強いな」
「邪魔にならぬよう下がっておくぞ」
「……お父様、どうかお気をつけて」
「心配ないさドミナ――クククッ、何年振りだろうか……
姿を大きく変貌させた私を前にしても、彼の方の態度は変わらず、むしろ私の姿を見て歓喜していたようにも見えた――それが、私にとっては屈辱でしか無かった……下に見られている、見下されている…それが、わかってしまったから。
「この私…ベアトリーチェが、貴方をここで排除し、今度は後ろにいる子供達を消し去ってしまいましょう‼︎」
「面白い……やってみると良いさ…ベアトリーチェ」
私は彼の方に挑んだ……持てる力を全て使い、大人として彼の方を排除するために全力を尽くしました―――けれど彼の方は
私が……私のようなものが勝てるような相手では、無かったのですから。
―――――――――――――――――――――――
戦闘が始まると、真っ先に攻撃を仕掛けたのは変貌したベアトリーチェ。
彼女は両の手を天に掲げ、紅の光を収束させた。風を巻き起こし、収束する紅の光は凄まじい濃度を誇る、収斂した光をイノセント・ゼロに向けて放つ。
「小手調べといきましょうか…‼︎」
「魔力とは違う、別の力……興味深いじゃないか」
「その余裕、いつまで持つか見ものですね‼︎」
数秒後、凄まじい轟音と共に射出される紅の極光。それをイノセント・ゼロはスルリとかわし、ベアトリーチェと距離を空ける。極光が壁へ当てると、その壁は消し飛び、巨大な空洞だけが残った。
「チィ!」
「どうしたどうした、私はここだぞ?」
「小癪な…‼︎」
ベアトリーチェは紅色の魔が魔がとした光弾をイノセント・ゼロに向けて乱射していく。速度も威力も申し分なく、常人ならば当たるだけで即死なほど。
「良い攻撃だ……だが、まだまだ甘い」
イノセント・ゼロは防御魔法である黒いバリアのような物を貼りながら避け続け、ベアトリーチェの動きをよく観察する。
「ならば!」
「それも甘いよ、ベアトリーチェ」スイッ
「空まで…どこまでもデタラメな!」
手を伸ばしイノセント・ゼロを掴もうとするも、通り抜けるように空に避けられ、手で打ち付けようとしても防御魔法で防がれるなど、ベアトリーチェはまるで弄ばれているような感覚を味合わされる。
「……さて、そろそろ私からも反撃と行こうか」スッ
(――来る!)
「―ナルコス」
イノセント・ゼロは空中に魔法陣を展開させ、魔法界に伝わる初級攻撃魔法の基礎・ナルコスをベアトリーチェに放つ。ベアトリーチェの光弾に近い速度で飛んできた魔力弾に彼女は驚かされたが、威力は然程問題ではなかった。
「この程度の光弾で…!」
「ナルコスパス*1」
「ッ!くどい! その程度と言ったはず――」
「……フフッ、久々に使ってみたが、良いものだな」スッ
「んなっ―」
「ナルコスパス・ディアゴルス*2」
イノセント・ゼロはベアトリーチェを囲むように魔法陣を無数に展開し、タイミングを見て腕を振り下ろす……腕が振り下ろされた瞬間、先ほどよりも高火力な光弾がベアトリーチェを襲った。
「グッ…‼︎ ガッ―ッァ!!」
「……あいつバカだろ、あんなバカデカい図体じゃただの的でしかねえ……戦闘初心者か?」
「恐らく今まで碌に戦ったことがないのだろう……あれだけの力を持っておきながら、惜しい者だ」
「ッッ――ハァァッ!!」
「――おや」
「私を……舐めるなぁ!!」
ベアトリーチェは弾幕を喰らい続けながらも天井を見て、紅色のエネルギーを貯め始める、それが上に向けて放たれると、雨のように降り注がれる。
子供達はそれをかわしながら退避し、ベアトリーチェは止まらず放ち続ける……やがて地面が見る影もなくなってきたところで、ベアトリーチェはやっと攻撃を止める。
「はぁ……はぁ……やった…のか……?」
今持てる最大火力での広範囲攻撃……倒せなくとも、かなりのダメージを与えられたのだと確信したベアトリーチェ
―――驚いたよ……ベアトリーチェ
だがそれはあまりにも浅はかであり、イノセント・ゼロを舐めすぎている。
イノセント・ゼロは魔法界に住んでいる並の魔法使いでは太刀打ちできないどころか……蚊をつぶす程度の感覚でやられてしまう、それほどまでに強大な存在なのだ。
(傷ひとつ……無い……?)
「一応この部屋には結界が貼ってあってね……私の子供達は魔力が強く、よく事故で物を壊してしまうんだ…だから、壊されないように色々と工夫していたのだが――それを、君はこうも簡単に破壊した」
(疲れている様子もなければ……魔力と呼ばれるものが減っている様子も……ない)
「……謝罪するよ、ベアトリーチェ……私も、少し君を下に見すぎていた――ここからは、私もちゃんとした力を使うとしよう」
(この男は――無敵…なのか⁉︎)
口調も荒れ、焦るベアトリーチェ。すぐに反撃しようとエネルギーを貯め始めるが―――その瞬間、イノセント・ゼロの気配が変わり、莫大な魔力を放出。
ベアトリーチェはそんな彼を前に、否応なく萎縮させられてしまう。本能的に脅威を察知する危険信号が、彼に秘められた危険な力の存在を彼女に強く告げてくる。
「ベアトリーチェ、君は一体を何を目指しているのかな?」
「崇高なる存在……全てのものを導く、絶対的な
「―あぁ……やはり君は、素晴らしい欲の持ち主だ……そんな君の志と力に敬意を評して…
――私の力を見せてあげよう」ビキビキビキッ!
(アザが…増えた…?)
キヴォトスに住む生徒に神秘の証であるヘイローが浮かんでいるように、魔法界に住む人間は生まれつき黒い線状のアザを持っており、その本数によってどれほどの魔力や技能を持っているのか判別できるとされている。
一本ならば一般的に存在する普遍的な魔法使いであり、二本ならば文字通り一線を画した実力の持ち主であることを示す。そして三本あるのなら───それは神に寵愛され人の身に余る祝福を受けたような、一度の百年紀でもたった数人が生まれる程度に限られる鬼才であることを意味している。
イノセント・ゼロのアザは、左目に時計の針のような形のモノが2本……しかし、魔力を放出し気配を変えた彼の右目にも、新たに2本のアザが発現していた。
「我々は生まれながらにして魔法を扱える。それに伴って、この世界の人間にはその者にしか使えない形で先天的に生まれ持つオリジナルの魔法、"固有魔法"が存在している」
「オリジナルの魔法……」
「その内容や巧拙、そして生まれてからどこまでソレを高い次元に磨き上げ、昇華させるか──それが、ある意味この世界における人間のアイデンティティの一つでもある。そして、人の数だけある固有魔法の中でも、ごく限られた存在だけが扱える高等魔法……それがセコンズ」
「まさか、今の貴方がそれを扱えると…?」
「いや……今、私が使おうとしているのはそれの更に上――限られた者の中でも、さらに厳しく限定され、選り抜いた者だけしか扱えない超高等魔法……神に選ばれた才能とも評される魔法―――名をサモンズ」
イノセント・ゼロの手元には、ベアトリーチェよりも更に暗く禍々しいオーラを放つ力が集まり──―質量を得たそれは、ある一本の杖を顕現させた。
「それが……、その力が……神に愛された者のみが、扱える力……‼︎」
イノセント・ゼロの手元に現れたのは、先端が巨大な時計に変形した一本の杖……彼のみが扱うことを許され、彼の身が扱える杖――名を
「サモンズ・
その杖が現れた……それはつまり
「ここからが……私の、真骨頂さ」
ベアトリーチェの敗北を意味していた。
おそらく次回と今回が最後の登場であろう、悪魔の五つ子達でした……エミュ難しい、原作でも出番がねぇーほんと!!
ベアトリーチェがイノゼロパパを崇拝しているような形になった理由は次回です。
悪魔の5つ子達を知らない方のために説明しておくと……全員が全員、頭がおかしいくらいに強い敵キャラで、キヴォトスにきちゃダメな存在だってくらいに強いです。
詳しくはこちらを……情報がすっくないのですがhttps://dic.pixiv.net/a/%E6%82%AA%E9%AD%94%E3%81%AE%E4%BA%94%E3%81%A4%E5%AD%90
励みになりますのでコメントと評価、どうぞよろしくお願いします。
次回、イノセント・ゼロ……何やってんだお前ぇ!!回です
百花繚乱後に見たい話
-
まだ交流がない生徒との話
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アイデェア箱から選んだお話
-
ラビット2章
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愛が重い生徒との話