イノセント・ゼロさんに向かって、何やってんだお前ぇ!!って感じになる回です。そして、多分イノゼロパパの出番はこれで終わりです。
それでは本編へ……どうぞ!
圧倒的な迫力、気迫、威圧感……イノセント・ゼロが発動させたサモンズ、それで顕現させたクロノスという杖…只者ではないその杖に、ベアトリーチェは冷や汗をかき、今までにないほどに警戒する。
「…フフフフッ」
(――何かを仕掛けてくる前に、仕留めなければ‼︎)
ベアトリーチェは複眼にエネルギーをため始める、それを見たイノセント・ゼロは空を飛び仲間ら杖を軽く振る…そして
「タイムズ」
そう彼が呟き、杖が赤く光ったと思った次の瞬間……彼はベアトリーチェの前から姿を消した、瞬きをするほんの一瞬、ほんの数秒足らずで彼は姿を消していた。
(――いったいどこに!)
「君が目指す崇高なる存在……そのためにはいったい何が必要だと思う?」
(―後ろ‼︎)
声がした方へと振り返り、そのまま赤色の光線を放つ──
……しかしそこにイノセント・ゼロはおらず、ベアトリーチェはまた彼の姿を追って周囲を見渡す。
「答えは単純……力だ」
「そんなこと、言われずとも分かっています‼︎ だからこそ私は、ありあらゆる手段を使い、力を!」
「いいや――君はまだ、甘い……」
「なんだと…⁉︎」
「君は確かに素晴らしい力を手にしている――だが君は、もっと力を手に入れられるはずだ……タイムズ・リウォンド」スッ
クロノスをベアトリーチェの腕に向けてローマ数字を帯びた波動を浴びせる、するとベアトリーチェの腕は時が過ぎたかのように枯れる。タイムズ・リウォンドは、対象の時間を急速に早める効果があるのだ。
「―ッッ‼︎―腕が…枯れて…‼︎」
「君は、今の自分に満足しすぎている……それで良いのか? 崇高なる存在が、今のままで止まっていても良いのか?」
「何が言いたい!」
「君は恐れているんだ……自分の身が力を制御できず……自らの身を滅ぼし、朽ち果てる事を」
「自分の身を案じず、何が大人でしょうか…!」
「自分の身を案じているからこそ――自らの体を強くするんだよ…ベアトリーチェ」
イノセント・ゼロはこれまで数々の魔法での改造で、人であることを辞めており、素顔は目も鼻も口もないのっぺらぼう。
そんな体になってでも、死なず、老いもせず、なおかつ強い……完璧なる生命、それをイノセント・ゼロ……シリル・マーカスは追い求めた。
その部分だけ見れば、イノセント・ゼロはゲマトリアと少し似ている。
「私の固有魔法の名はタイムズ……能力は名の通り、時間を操れるのさ」
「時を――操る……待て……たとえそうであったとしても、そのような芸当を高頻度で使えるわけが無い!」
「言っただろう? 私は自身の体を魔法で改造を施している…とな」
「――貴様に恐怖はないのか、自分の体が自分の体でなくなることに、抵抗はないのか‼︎」
「恐怖が無いわけではないさ。寧ろ、死への恐怖があったからこそ――私はここまで、変わったのさ……タイムズ・アローレイン」
顔つきが真剣な表情へと変わり、杖を軽く振るい、時計の針を大量にベアトリーチェへ放つ。まるで雨のように降り注がれ続ける針に、ベアトリーチェは苦戦しながらも光弾していく。
「ベアトリーチェ――もっと欲張れ、もっと傲慢になれ」
「私は―グッ、大人だ…‼ ︎大人が、獣のように意地汚く欲張るなどと!」
「それ何がいけないんだ? 人間は、最も欲深い生き物だというのに……ベアトリーチェ、君は強者だ――強者が力を求めて何が悪い? 人間である私達が、その中でも群を抜く力を持つ者が、自らの欲するままに欲張って何が悪い?」
アローレインを食らいつつも、ベアトリーチェは諦めずに光線で反撃を続ける、しかし杖が光った時にはもうその攻撃は消え、逆に反撃される……まさに一方的な暴力。
「私はねベアトリーチェ……―ん?」
「はっ……ぁ……は…ぁ……」
「…おや、もうそこまで疲弊していたのか。すまない、気づかなかったよ」
「ッ……どこ…までも…神経を逆撫でするのが大好きな存在ですね…貴方は‼︎」
「人の嫌がる事を率先してやるのが私でね……さて、実のところ私はまだ君と遊んでいたい、久々に自分の力をフルで活用できる相手が現れたんだから――しかし君はそろそろ限界だろう」
「戯言をッ!」
「だから――こうしようか」スッ
杖を軽く上に掲げ、イノセント・ゼロは再度、呪文の名を呟く
「タイムズ」
「させない‼︎」
ベアトリーチェはその手を伸ばし、鋭く尖らせると、それでイノセント・ゼロの腹部を貫く。痛覚が鈍いと言ってもダメージはダメージ、これで時間停止を防いだと――思っていたが
パッ‼︎‼︎
「⁉︎」
「惜しかったねベアトリーチェ…あと数センチ、上を狙えば、私の心臓を貫いていたであろうに」
「体が……戻った…?」
「タイムズ・アローレイン」
「カッ――ぁ……ぁ…ぅ」ガクッ
イノセント・ゼロは、ベアトリーチェが自分の姿を変貌させる前の時間まで、時を戻し、唖然としている彼女をアローレインで貫いた。
タイムズはその名の通り時間を操る魔法、操れる時間も、世界の時間、敵の時間、自分の時間、自分以外のものの時間など、対象は多岐に渡るため応用性は非常に高い。
使い方の他、時間を操作して瞬間移動し攻撃を回避する、時間を巻き戻して敵の魔法をキャンセルするという、強力無比な技。
欠点と言えば、時間に干渉するという特性上あまり高い頻度で使用できない点だが、魔力のキャパシティを増大させているため、幾ら乱発したとて魔力は枯渇しない…………つまり、完全無敵―それがイノセント・ゼロに相応しい二つ名だった。
(ここまでの差が…?……私が……私が、ここまで…追い詰められるなんて…――なんだ…なんだ、この……胸が凍るような、体が、ひり付くような…感覚は―)
「それが、死への恐怖だよ…ベアトリーチェ」
「私が……恐怖を…?」
「そう――君は死ぬ、腹を貫かれたんだ……すぐにでも失血死するだろう」
「死ぬ……? 私が……?――まだ何も、成し得ていない………こうなるまでに―どれだけの、どれだけの時間を…‼︎‼︎」
ベアトリーチェは血まみれの状態で床に倒れながら、必死に死ぬ事を拒んでいた――自分が目指す者にまだ近づけていない、まだアリウスをいいようにできていない、そんな状態で死ぬ……それをベアトリーチェは拒んでいた。
ありとあらゆる手段を使い今の力と地位を手に入れた、長い時間を費やし、支配し、やっとこれから全てがうまく動き出すはずなのに……はずだったのに。
(こんな――こんな…ところで……私は―まだ、誰にも……――
誰にも認められていない‼︎)
ベアトリーチェの思考、考え、その全てが今まで、世界から否定されてきた。恐怖による圧倒的な支配、崇高なる存在への価値、自分の存在……そんな自分を認めさせるために、見返すために………
「――君はさぞ…苦労してきたのだろうね」
「…!」
「誰にも認められず、1人で、孤独で……さぞ苦しかっただろう」
認められるはずがなかった、ベアトリーチェの思想はあまりにも悪……常人が受け入れるはずもなく、認められるはずもなかった。ましてや善人なんてもってのほか、話にもならなかった
―しかし、
「君は人一倍頑張った……なのに世界は君を認めなかった、君の才能や力、考えまでも、否定した――私にはわかってしまうよ…君の気持ちがね」
「―貴方も…?」
「ああ……生まれつき才能があるはずの私を、私の考えを、私の恩師は認めてくれなかった……それどころか――私よりも劣っているはずのあの男だけが…優遇された」
杖を力強く握り、ギリッと顔を顰める……その顔には身に覚えがあった――自分も、過去にあんな顔をしていたのだから。ベアトリーチェは少し、彼に引き込まれた。
「力のない
「思う………ええ、確かに思いますとも…‼」
「だが同時にこうも考えてみたんだ――奴らに、自分よりも劣っている存在に認められる事に何の意味がある…?―とね」
「…‼︎」
「自分1人が満足できればそれでいい……他の者を気にする必要など全く無いんだよ――我々と他では、位が違うのだから」
ベアトリーチェはその言葉にハッとした、そうだ…自分は他とは違う、他とは違うのだから――それらの目を気にする必要があるのか…と。
「君を、誰も認めてくれないのなら……私が君を認めてあげよう――君と同じ立場にいる私が…ね」
イノセント・ゼロはベアトリーチェの顔を触れ、傷を全て癒す……優しく、包み込むような――引き込むような、そんな声と表情でそう告げた。
「もう大丈夫だベアトリーチェ……私が、君を救ってあげよう―私は君を否定しないよ」
「ッッ〜‼︎」
悪には悪の理解者が必要であり、悪には悪の救世主が必要……ベアトリーチェという悪を認め、救ったのは……イノセント・ゼロという巨悪だった。
マッシュが生徒らに何をされても、何を言われても手を差し出したように
「元の世界に帰るまで、まだ時間はあるはず……その間に、私が恩師より継承した最高峰の魔術を教えてあげよう。それだけではない、話術も、魔力も、技術も、知識も、映像投影魔法も、与えられるだけ君に与えておこう――大丈夫……君には、私がいる」
イノセント・ゼロも、ベアトリーチェに手を差し出した。
――――――――――――――――――――――
場面は元に戻り、ゲマトリア達がいる部屋へと移る。
「――あぁ……今、思い返しても…とても良い時間でした…」
『………………』
――狂っている……彼も、彼女も…!
ベアトリーチェは彼……イノセント・ゼロを崇拝していた――崇拝される側だと思っていた者が、逆に他人を崇拝している……何とも奇妙な事。
「悪のカリスマ……成程――貴方がそのような者に惚れるとは思ってもいませんでしね」
「あの方はただの悪のカリスマではありません……真の意味での悪、純粋なる悪にして完璧なる存在……それが彼の方の正体」
「ベアトリーチェ……貴方のお話は、よく分かりました……だからこそ気になるのです――今の貴女は、一体何を目指しているのですか?」
「崇高なる存在………いえ、"完全無欠な生命"ですよ」
――完全無欠……完璧な生命の隣に立つのなら、ということか……
イノセント・ゼロのような存在の隣に立つためには、自分がそれに相応しい存在にならなければいけない。そのためにベアトリーチェは、マッシュの肉体、アツコの力を手に入れようとしていた。
「彼の方が欲しているのはマッシュ・バーンデッドの心臓……あの方は私に、『その肉体を互いに分け合おうと』…仰ってくださったのです」
「先生の肉体を取り込み、最強の体を手に入れる……そして心臓はイノセント・ゼロに譲渡……か」
「その通り」
「……ベアトリーチェよ、生命体として欠陥のない完全無欠な存在になったとして、貴下はその力をどうする気だ」
「ここキヴォトスをありとあらゆる害から守り、生徒らを含め、この世界を生きる全ての民を統治する……そしてあの方がキヴォトスへ降り立つための準備を行う。それが私の目的です」
「彼にここを渡すつもりですか?」
「勿論です」
「……元より私達は各々の目的を追求する存在、……私達は互いの研究や計画に干渉する権利を持っていません」
「しかしだ黒服――、これがうまくいって仕舞えば」
「あなた方にも、いくつか"プレゼント"をご用意させていただきます……同じ、ゲマトリアとしてね」
ベアトリーチェはクツクツと笑いながら席を立つ、今のベアトリーチェは危険そのもの、黒服達は何もできなかった。
「私の計画を邪魔させないためにも、あの男は必ず殺します……話によれば、心臓は動いてなくとも大丈夫なそうなので」
――どこまでも先生を……モノ扱いするのか…‼︎
「ネズミが一匹入り込んでいますが……まあ、いいでしょう」
――こちらの存在にも気づいているか……ッ、先生以上にデタラメだ…‼︎
セイアの存在に気づきながらも、ベアトリーチェは関係ないと無視していた、もう彼女の目には、マッシュと計画の成功以外見えていなかった。
「では、私はこれで」
「……ベアトリーチェ――あまり先生を、甘く見ないことです」
「ご忠告…ありがとうございます」
ベアトリーチェは扇子で口元を覆い、心臓部分を大事そうに押さえながら、その場を去る……残された黒服達は一様に、当初とは様変わりしたベアトリーチェに形容し難い複雑さを感じながら、そこにとどまる。
―――先生……先生に…伝えなければ‼︎
セイアはそう思い、何とかして意識を取り戻そうと動く――マッシュの身も、アリウスの身も危ない。
ベアトリーチェの存在そのものが――バッドエンドに繋がる鍵……そう自覚したのと同時に――
「――セイアさん」
「ぅ、ぁッ――はっ!?」
「おっ、起きた……大丈夫ですか?」
セイアは目を覚ました――その隣に、マッシュがいる状態で。
次回、やっと生徒とマッシュ君のお話になります……お待たせしました。
カップリング? ノンノン、片思いですよ片思い、しかも男の方は恋愛とか全く興味がないし、ベアトリーチェのことをいいように使える駒としかみてません……だってイノゼロパパなので。
さーて、そろそろベアトリーチェ戦がやってきます……覚悟しとけよぉ!?
その前に土下座と救済回ですね、はい。
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