苦しい……けど、モヤってしたから、この回は必要なのだ……本編へ…どうぞ
暑すぎて思考回路が上手く働かなく、内容が変な感じになってるかもです…
「……すまな、かった───見苦しい所を、見せて……」
「全然いいですよ。気分はどうですか?」
泣きに泣き尽くした後、サオリはすっきりしたのか、マッシュから離れて立ち上がった。マッシュはヘイロー破壊爆弾を持ちながら、爆弾の総数をサオリに確かめる。
「……少し、スッキリした」
「それはよかった。あの爆弾って、これだけですか?」
「後は……これぐらいだ、いざとなれば」
「はい没収、そして―…それっ」ブンッ!
「あっ…」
「からの……フンッ」ブンッ‼︎
手榴弾型、設置型……各種合わせて数個のヘイロー破壊爆弾をサオリから全て没収したマッシュは、それを空高く投げると、地面に散らばっている石を集めて投げ付け、爆弾を破壊した。
「僕が持っていても使わないからね。生徒を殺すようなことなんて、僕はしたくないし」
「………石であれを破壊……した、のか」
「行きましょうサオリさん、ミサキちゃんとヒヨリちゃんを探さないとね……あっ、2人って僕よりも年上だったりします?」
「それを気にするのか……2人は、先生と同い年のはずだ」
「じゃあちゃん付けでよんでも問題ないですね―…よっと」スッ
マッシュは膝をつき、サオリを背負う体制に入る。サオリは突然そんなことを行う彼に対し困惑し、戸惑いながらも問いかける。
「先生……一体、何をしてるんだ?」
「今まで散々走ってたんですよね?なら疲れてるはず……なので運んで行きますよ」
「い……いや、待て、流石にこんな状況で……」
「こんな状況だからこそですよ。それに、僕がサオリさんを運んで2人の元に向かった方が早いですし」
「納得はできるが……い、いいのか?」
「全然。ほら、カモーン」
「……し……失礼…する」
サオリがマッシュの背に近づき、寄り添う。マッシュはサオリの足に腕をかけ、そのままおんぶする形で背負い上げたのだが――マッシュは思わず
「え、かる……軽すぎません?」
「そ、そうか……?これでもアリウスの中では重い方なのだが……」
「………帰ったらみんなでシュークリーム食べましょう、千個……いや十万個ぐらい」
「そんなに食べきれないが!?」
「寧ろ食べきれないほど用意しましょう、絶対そうしましょう――あの人を殴る理由がまた増えましたね」
(せ……背中から伝わる覇気……何を、そんなに怒っているのだろうか……体重が軽いことは…やはりダメなことなのか?)
別に、軽いことが悪いというわけではない。サオリの体重が軽すぎる理由が問題なのである。
マッシュが愛用している筋トレ道具とは比べ物にならず、ひいては身長ではサオリより低いはずのホシノやヒナなどの生徒に程近い。
「……とりあえず、今は向かいましょうか――マッシュ号出発」
「あっ、ちょっ、待って―」
「エッホ、エッホ、エッホ、エッホ」
サオリを背負いながら、ミサキやヒヨリがいるであろう場所に向かっていく。加速度で意識が飛ぶこともなく、風圧で呼吸を圧迫することもない速度で、マッシュは駆け出した。
「……………いい…な」
背負われたサオリは、謎の幸福感を感じていた。今まで誰かを背負うことはあっても、背負われることが全く無かったため、新鮮な感覚が彼女を満たす。
(わ…悪くない…施される側とは…こんな感じ……なのか…)
と、経験したことがない喜びと温かみで心を満たされ、自然と顔と表情が和らぐ。マッシュの背中から伝わる温もりと力強さに、虚しさを強いられてきた心が満たされていく感覚が、心地よくて仕方がない。
場所は変わり、アリウススクワッドが散り散りとなった場所へ。マッシュはサオリの案内の元、逃げ出したミサキとヒヨリがいるであろう場所へと到着していた。
「………気配がするな」
「……ああ、先ほどから……妙な…気分だ」
「……ひとまず進みます、捕まっててくださいね」
マッシュは軽く走りながら、周りを散策する。到着してからすぐに、二人は謎の気配で空気が張り詰めた様を感じていた。
「……!!」
そしてその気配は、一瞬にして鋭い殺意へと変わり――マッシュが背負っているサオリに向かって、一発の凶弾が放たれた。サオリが反射的にマッシュにしがみつくとともに、マッシュは即座に旋回し、それを蹴りで弾き飛ばす。
「っ…先生───」
「降りないで、絶対に僕から離れないで」
「し、しかし…!」
「……説明してくれるかな―――ワカモちゃん」
「――ああ……あなた様、お話は途中から聞かせて頂きましたよ――えぇ、確りと」
撃ってきた方向から現れたのは、他ならぬシャーレ初の常駐部員・狐坂ワカモ。特徴的な狐の面を被りながら、装備をしっかりと整え、マッシュの前に現れた。
「……助けてくれる相手が先生しか居ない……だからなんだと言うのでしょう?あなた方はそんな先生に対して何をしたというのですか?」
「ワカモちゃん、その銃を下ろして」
「いいえ、例え……あなた様のご命令であっても、今回ばかりは従えません」
「……なんで」
「なんで………それは、こちらの台詞ですよ……あなた様」
銃剣をぬらりと光らせる黒い小銃、『真紅の災厄』を向けながら二人へとゆっくりと歩み寄り、内に秘めているその怒りを表に滲ませるように、噛み締めるように告げていくワカモ。
「アリウスは、あなたを殺そうと……あなたを散々苦しめようとしていたのですよ?その行いがまかり間違えば、キヴォトスの滅亡の引き金になる可能性すらあった。そのような者どもを…救う必要がどこにあるというのですか」
「そのことに関してもう何度も言ったはずだよ。気にしてない、許してるって」
「あなた様がお許しになられても……私は――到底、許すことができないのですよ!!!」
「…………」
肩を振るわせながら、仮面に顔を隠して叫んでいるワカモ……それは、愛する者を奪われそうになったことへの、悲痛な叫びだった。その叫びを、サオリは黙って聞くしかなかった。
「あなた様の肉体が毒に蝕まれたお姿を見た時…私は、胸が引き裂かれたような思いでした。己の無力さを悔み、回復することを祈るしかなかった自分が許せませんでした」
「…それは」
「何より私が悔やんだのは、あなた様の御心に添えなかったこと、追い詰められたあなた様に何ら手助けができなかったことです。死の淵に瀕してなお、あなた様は……あなた様は誰よりも、アリウスのことを考えていました―─―自分の身など、どうでもいいと思いながら!!」
「先生…それは、どう言う…ことだ?」
「先生は、アリウスを救えれば…
「ワカモちゃん、やめて」
「泣くこともできない、誰にも頼ることもできない、ずっと……ずっと
「ワカモちゃん」
普段なら生徒の前で使わない、硬い声でワカモの発言を遮ったマッシュ……しかし、ワカモの言葉に誤りはなかった。あの時のマッシュはあまりにも自分に厳しく、あまりにも周りに優しすぎた。
それ故に起こった悲劇――そこまで追い詰めた原因たるアリウスを、ワカモは許すことができなかった。
「先生は……そこ…まで……私の、せいで……そんな……」
「もう終わったこと、自分は変わった、とあなた様はおっしゃいました………しかし、アレが─―再発しないと言い切れるのですか…?再び下手人が現れたその時……先生はまた、誰かのために傷つき、苦しみ──またあのように、独りで嘆かなければいけないのですかっ!!?」
「僕は助けたいんだ、困っている人を……だから、力を貸してくれないかな」
「お断りします………その者共があなた様に……貴方に何を言ったのか、何をしたのか、忘れたわけではないでしょう!!?」
「っ…ぅ………」
罵詈雑言を浴びせ、暴力をぶつけ、自分達を救い出そうとしてくれている者を一方的に拒絶し続け、否定し、その手を払いのけ、ひいては身勝手な目的のために命すら奪おうとした……
「仮に…その者があなた様に寝返るとして、再びその御心を裏切らないと証明出来るのですか?二度も、三度も、伸ばした手は振り払われたのに、どうしてその様な者を信用出来ましょうか?」
「話して、本音を聞いて、理解したんだ。この人達は悪い子じゃないって。アリウスの皆は嘘をついて人を騙すような子たちじゃなくて、逆に純粋だったから、悪い大人に騙されちゃっただけなんだよ──だから僕は、アリウスを信じる」
「一度信じたものが裏切らないと、誰が証明しましたか?あなた様はあまりにも……あまりにも、優しすぎるのです!!いつ、どんなタイミングであなた様は死ぬかも分からないというのに……なのに……どうして!?」
「それが僕なんだ……それに、僕を裏切らないことの証明なら─―ワカモちゃんが今、こうして示してくれてるでしょ?」
「っっ……!!」
ワカモはマッシュを裏切らない、マッシュを裏切って敵に寝返ることも、マッシュを殺すことも絶対にしない――何故ならマッシュを、心の底から愛しているから。
「………まだ、あなた様の齢は十六なのですよ?…あなた様は……私よりも……年下の……あなたが、子供らしい貴方が――苦しんでいる様を見るのは、もうたくさんなのです!!」
「………」
「……いかないでください……お願いですから……――痛い思いを…しないで…――愛している人が…いなくなるのは、嫌です…!!」
ワカモはもうたくさんだった。マッシュは自由を保証されるべき未来ある子供なのに、誰かに縛られ続け、先生という肩書きを背負い、毎日奮闘していること───
同じ子供のために命を張っているのが、自分たちよりも傷つくのが、ワカモは我慢できなかったのだ。マッシュは多くの者に優しくしているのに、この世界はそんなマッシュに対して、あまりにも冷酷すぎた。
「……ワカモちゃん、僕は正義のヒーローじゃない―─―ただ、みんなが平凡に暮らせる世界をぶっ壊すような奴らが許せない…ただそれだけなんだ」
「あなた様……!」
「ワカモちゃんの気持ちは……よくわかった、でもごめん……今投げ出したら、大変なことになる」
「あなた様に関係のある…ことなのですか」
「今回ばかりは……大いにある。アリウスの皆は絶対に助ける」
「………………私は、アリウスへの手助けなど───致しませんよ」
「それは君の意思の問題だから、僕が何かを強制できることじゃないし、とやかく言わないよ………でも……ありがとう、そんなに、僕のことを思ってくれて……僕も、愛してるよ…君も、みんなも……だからお願い――邪魔しないで。どうか、僕を止めないで」
「…………」
「……行きましょう、サオリさん」
「………っ……ああ」
マッシュは銃を向けているワカモの横を、ゆっくりと通っていく。ワカモは固まって動けなかった……愛してる、と面と向かって言われた。
「………いかないで……離れないで……」
「……後で、ちゃんと、話をするから……今は、ごめん」
マッシュはワカモよりも、アリウスを優先してしまった。今、マッシュの選択全てにキヴォトスの命運が、生徒らの命が掛かっている―――これは、仕方のないこと。
「先生……私は────」
「何も、言わないで―――今は、一刻を争うんでしょ」
「…………ああ」
マッシュはその場にワカモを置いて去っていった。空から雨が降ってくる……へたり込んだ彼女は1人、自分の手を見ながら──
「――あなた様……私は……私は……!!」
独り、蹲るしかなかった。
落差すごいって? その通りです…‥あ、次回もこんな感じの落差かもです。
こんな回の後にいうのもアレなのですが、番外編、外伝のような物を別作品で書こうかなと思っております。
内容は完全なる短編で、よくあるifストーリー、マッシュル世界のあの人が先生ならな〜〜という妄想が爆発しそうなのでそこで消化したいのです。
出来上がったら、そっちの方もどうぞよろしくお願いします。
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